ポケットモンスター〜キセキ〜   作:龍崎悠司

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〜お祭り準備〜

 

 イェシードフェス。

 年に1回、イェシードシティ全体で行われるお祭りイベントだ。

 色んな通りに屋台が並び、ステージでは歌やダンスなどのパフォーマンスが一日中行われる。

 この時のためにパフォーマンスを磨くパフォーマーもいるほどだ。

 更に、ルーキー専用飛び入りOKのポケモンコンテストも開催される。

 ポケモンコンテストとは、ポケモンの技をバトルとは別方向で極めることでパフォーマンスとしての腕を比べる競技だ。

 ポケモンを映えさせながらバトルをするという一風変わったコンテストバトルも繰り広げられる。今回はパフォーマンスのみのお祭り用イベントだが。

 そういったセキミラ地方全体で見ても中々大規模なお祭りこそ、イェシードフェスなのだ。

 とりあえずあと数日後に行われるお祭りに参加することを決めながら、街をのんびり歩くだけというのも性に合わず。

 

「おぅ、それこっちに運んでー!」

「はい! 分かりました!」

「それ持ち上げられるー?」

「フシギソウ、『つるのムチ』で上までお願い」

「ソウソウ」

 

 お祭りの準備で広く募集されていたポケジョブをこなしながら、各所でお手伝いをしていた。

 資材を運び、屋台を組み立て、搬入をこなし、果ては人やポケモンを探したりと、ロイナの本領大発揮である。

 

「そっち終わったらこっち来てー」

「はーい!」

「これ押さえてくれる?」

「タイレーツ、お願い」

「「レーツ」」

「うわぁああん! ママー!」

「ママと逸れちゃった? 一緒に探そうか?」

「……うん」

「あ、風船……」

「フシギソウ!」

「フシェッソウ」

 

 一応ポケジョブとして処理されてはいるのだが、あっちにこっちに呼ばれては対応してを繰り返し、本人もどのポケジョブを達成したのかあんまり把握していない。

 

「ママー!」

「もう、どこ行ってたの? ありがとうございます」

「いえ、これくらい。もう迷子になっちゃダメだぞー?」

「うん! ありがとおにいちゃん!」

「あの、イェシードジムのトレーナーです。迷子探しのポケジョブを見たのですが……」

「ああ、それならここにいる方が解決を……」

「あれ!? ロイナさん!?」

「あはは、どうも」

「おーいあんちゃん、こっち手伝ってくれー!」

「はーい、ただいま!」

 

 途中街の困りごとを解決するために動いていたジムトレーナーやポケモンレンジャーに驚かれながらロイナのお手伝いは続く。

 その働きっぷりは、街のあちこちから、とりあえず頼んだらいいバイトとして認識されつつあった。

 割と無茶苦茶である。

 

「ふぅ、イベント1つ開くのも大変だねー、フシギソウ、タイレーツ」

「ソウソウ」

「「タイレー」」

「あー、いたいた、君だねフシギソウと黄色いポケモンを連れている少年は」

 

 ロイナたちが一息ついたところで、声をかけられる。

 その服装からロイナは声をかけてきたのがポケモンレンジャーだと察した。

 

「はい、どうかされましたか?」

「どうかされましたかじゃないよ、ポケジョブの報酬、君ちゃんと受け取ってないでしょ?」

「あ」

 

 渡したいけどどこにいるか分からないって通報が何件も届いたと聞かされて、ようやくロイナはやらかしたことに気付く。

 パフォーマンスのリハーサルや専門知識が必要なものを除いて、引き受けられそうなものを割と困ってる人を見かけたらその場でポケジョブとして受けるという、言うなれば辻お手伝いをしている。

 簡単なものとはいえ、仕事として受けて達成した以上、報酬は支払わなければならない。

 だというのに、どれを受けてどれを達成したか分からない状態は大変よろしくないのだ。

 

「すみません……」

「あー、いいからいいから、たまにいるんだ君みたいなタイプ」

 

 ポケモンレンジャーとしてもポケジョブを複数こなして報酬を受け取りきらない人の相手をすることはあるのだろう。

 そのための仲介手続きを行うこともある様だ。

 支部で手続きするよ、とロイナたちを連れてポケモンレンジャーのイェシード支部まで行き、手続きを行う。

 

「えーっと、君のポケジョブアプリのIDはこれね。……うんうん、頼んだ仕事が終わった人から受け取り待ちが……」

 

 会場の資材搬入と設置が……アレとコレとそれからこっち、失せ物探し、迷子探しと、風船取ってもらった? と内容を確認していく。

 それからあれとそれと……と一通り確認し終えたレンジャーが1つ頷くと。

 

「うん、多いよ!!」

「あ、すいません」

「いや、いいんだけどね! ありがとうね、手伝い色々してくれて!」

 

 キレ気味にお礼を言うが、感謝しているのは本当なのだろう。

 とりあえず手続きを一通り済ませて報酬を受け渡す。

 一つ一つはそこまでではないが、こなした仕事の量が量ゆえに中々な収入となった。

 これならしばらく旅の旅費も心配なくなった上に、お祭りを多少豪勢に楽しむ余裕があるだろう。

 

「うーい、トラブル解決してきたぞっ……と?」

「あれ、あなたは……」

「おかえりなさい、ボハンタさん……って、なに? 知り合い?」

 

 イェシード遺跡の森で救護や保護活動を担当していたボハンタがレンジャー支部に戻ってきた。

 やぁやぁ、よく来てくれた、とお茶とお茶菓子を出しながらロイナと席に着くボハンタ。

 

「いやー、色々とお祭りの準備を手伝ってくれてるみたいで、ありがとうね」

「いえ、逆にご迷惑をおかけしてしまったみたいで……」

「はっはっは! いいのいいのその程度、大したこっちゃあないさ」

 

 豪快に笑うボハンタだが、手続きをしたレンジャーの方は恨めしそうに視線を向けている。

 ロイナは申し訳なさそうに肩をすぼめる。

 

「それで、あれから旅は上手く行ってるのかな?」

「あ、はい、『スパーキーバッジ』をゲットしました」

 

 そう言って、バッジホルダーに付けたバッジを見せる。

 

「へぇ! それはまたすごいね! 初めて戦うにはネリアちゃんは結構手強いのに!」

「ははは、結構しんどかったですよ」

「上手いこと作戦がハマったのかい?」

「今回は張り切ってくれた相棒の力が大きかったです」

 

 そう言って、ボールからフシギソウを出す。

 それを見て合点がいった様子のボハンタ。

 

「おー、進化したのか、ともあれおめでとう」

「ありがとうございます」

 

 それからはお祭りの話へと話題が移る。

 

「それにしても結構色々やりますよね、イェシードフェス」

「はっはっは! 毎年似た様なもんだがね」

 

 それでも結構な規模のお祭りだから大変なこともそれなりにあると言う。

 

「悪い奴が出てきたり、色々持ってこうとするポケモンなんかもいたりするんだ」

「目を光らせるのは大変なんじゃないですか?」

「それなりにはね」

 

 だが、ボハンタ曰くそこまで忙殺されるほどではないらしい。

 イェシードフェスで中心になってるのは、言わずもがなポケモンリーグ運営委員会、ポケモンレンジャー、そしてポケモンコンテスト協会だ。

 セキミラ地方における、インフラとイベントの中心組織ががっつり基礎を築いて対応しているため、何かあった時の対応は何が来ても大抵は問題はない訳である。

 

「それに、これから楽しいお祭りって時に、運営側が死んだ目で忙殺されてたらどうよ?」

「それは、なんか嫌ですね」

 

 でしょー? と笑うボハンタ。

 そんな運営では、トラブルの相談もやりにくく、見えない問題を抱えていってしまうだろう。

 そういった雰囲気がないというのはイベント運営において、意外と大事なのだ。

 

「さぁ、随分と引き留めてしまったが、まだまだポケジョブは残ってるんだろう?」

「はい、引き続きよろしくお願いします」

 

 今度は報酬を受け取り忘れないようにな、と言われて苦笑しながらレンジャー支部を後にする。

 

「さ、フシギソウ、タイレーツ、残りも頑張ろう!」

「ソウソウ」

「「レーツ」」

 

 イェシードフェス開催までもう少しだ。

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