ポケットモンスター〜キセキ〜   作:龍崎悠司

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〜初バトルを終えて〜

 

「ふぅ……お疲れ様」

「おぅ、お互い大健闘だな」

「うん、そうだね」

 

 今しがたバチバチに戦ったライバルなれど、バトルが終われば親友に元通り。

 戦いを終え、少し休んだら、2人と4匹は隣町のラヌータウンにあるポケモンセンターを目指して歩く。

 途中1番道路を通ったが、コギノリとアチャモのお陰で飛び出してきたポケモンは全て追い払われた。

 休んで多少回復したとはいえロイナのポケモンたちの状態では野生ポケモンとの戦闘は辛いものがある。

 コギノリもそれは分かっているので、野生ポケモンが出て来やすい草むらの方ではなく、人の通行で踏み固められた道を歩く様にしていた。

 

「まさか防御のための『まもる』にやられるとは思わなかったぜ」

「咄嗟に盾が目に入ったんだよ、運が良かった」

「いやいやいや、観察眼だろ。普段の行動力考えろ」

 

 到着までの間、2人の話題は先ほどのバトルについてだ。

 勉強会でもあり、談笑でもある会話をする2人は楽しく道を進んでいく。

 

「やっぱり、ひこうタイプのポケモンがいると空間を広く使えるね」

「ああ、やっぱしいつでも3次元的にフィールドを使える強みってのはあるよな」

「でも、そんな理由で仲間にしたんじゃないでしょ?」

「ったりめぇだ、これから旅を始めるってのに友達を誘わない奴があるかよ」

「ふふっ、コギノリらしいや。それにしてもまさか後出しで先手を取られるとは思わなかったよ」

「へっ、だから言ったろ? 俺はコイツとならチャンピオンにだってなれるってよ」

「うん、すごかった」

 

 自慢げに言うコギノリに、その力を見せ付けられたロイナは同意するしかない。

 そうやっていつもの様に駄弁りながら歩く二人。

 日が傾いて空が赤くなる頃にはラヌータウンのポケモンセンターへ到着。

 傷付いたポケモンをお預かりしますよ、と言うジョーイさんへ手持ちのポケモンを預けて待合室で談笑を再開する。

 

「俺は回復したら出るつもりだけど、ロイナはどうすんの?」

「タイレーツを見た人がいるかもしれないし、ポケモンセンターで1泊してから町で聞き込みかな」

「ま、そうするだろうなとは思ってたよ、無理はしねぇようにな」

「うん」

「やれやれ……(コイツが無理しないわけない、か)。忘れんじゃねぇぞロイナ、俺との約束」

「もちろん、覚えてるよ」

 

 それは、ロイナとコギノリが旅に出る前にした約束。

 

「俺たちは、次のセフィルードリーグに出場して、客がいっぱいいる大舞台でバチバチに最っ高の試合をするんだ」

「うん、お互いの全力を出して優勝争い、だよね」

「そうだ。お前は俺が認めたライバルだ。お前がいないセフィルードリーグなんて考えられねぇんだ、だから今は先に行くけど」

「うん、絶対追いつくよ」

 

 コギノリが拳を突き出し、ロイナがコツン、と拳をぶつけて応えた。

 これは誓い。

 大切な男と男の約束だ。

 

 タンタンタララン♪ 

 

 約束を再確認したところでチャイムが鳴った。

 

『マルクェットタウン出身のコギノリさん、ロイナさん、ポケモン達が回復しましたので受け取りにいらしてください』

「よし、行くか」

「うん」

 

 お預かりしたポケモンたちはみんな元気になりましたよ、とジョーイさんからボールを受け取る。

 更にそういえば、と言葉が続く。

 

「お二人ともリーグ挑戦希望でしたね、登録しますのでスマホか図鑑をお出しください」

「はい」

「お願いしゃっす」

 

 ロトムの入ってないスマホを渡し、ジョーイさんが慣れた手つきで手続きを済ませる。

 ピロピロピロ……ピーン! と登録を済ませてスマホを受け取り、いよいよ本格的に冒険のスタートラインへ。

 

「じゃあな、ロイナ。また会ったらバトルしようぜ」

「うん、情報入ったら教えてね」

 

 おぅ、と返事してポケモンセンターから出て行くコギノリ。

 それを見送ってからロイナはジョーイさんに向き直ると、タイレーツのことですね、と言ってくれる。

 流石のジョーイさん、ロイナのタイレーツを見てすぐに特殊な状況を把握したのだろう。

 しかし、その顔は申し訳なさそうだ。

 

「すいません、残念ながら逸れたタイレーツの話はコチラには届いてません」

「そうですか……」

「そろそろ夕方ですので、よろしければ本日は当センターへ泊まっていただいて、明日町の人に聞いてみるのはいかがでしょう?」

 

 幸いラヌータウンはそんなに大きくありませんから、というジョーイさんに元々その予定だったと頷くロイナ。

 

「では、本日はお世話になります」

「はい、ポケモントレーナー向けの利用施設は右手の方に案内板と規約があります。分からないことがあれば聞いてください」

「はい、ありがとうございます」

 

 言われた通りに案内図を確認する。

 セキミラ地方では、旅するポケモントレーナーのための施設が多く用意されていて、ある程度税金で用意や維持がなされている。

 トレーナー側は場所にもよるが有料で色々な施設利用が出来る様になっているのだ。

 もっとも、ポケモンの回復と治療は基本タダなので、そこを心配することはないが。

 

「えっと、ここは雑魚寝方式なんだ。シャワー室やポケモンの洗い場があって、食堂で食事……あ、ポケモンフーズが安く売ってる、ありがたいな」

 

 自身のおこづかいを確認しつつ、まずはポケモンたちに何か食べさせようと思った時。

 くぅ〜。

 自分の腹の虫が主張してきて、自分が朝から何も食べてないことを思い出したのだった。

 

「フシギダネ、タイレーツ、ご飯だよ、出てきて」

 

 購入したポケモンフーズとママが持たせてくれたおにぎりを広げて、2匹と共に食事を始める(いただきます)

 

「美味しい?」

「ダネ!」

「タイレー!」

「良かった」

 

 少し多かったかな、と思う量だったが、あっという間にペロリと平らげたのを見て、今後の食事量と食費をつい考える。

 

(ま、いっか。食事は楽しく、が大事)

「それにしても、今日はお疲れ様」

「ダネ……」

「レーツ……」

 

 昼間のコギノリとのバトルの敗北を思い出したのか、少し目線を下げる2匹。

 しかし、ロイナはそんなもの全く気にしていない。

 

「次は勝てば良いんだよ。それよりフシギダネとタイレーツにも聞いて欲しいんだ」

「ダネ?」

「タイレー?」

 

 ロイナはそう言って、壁に貼ってあるポスターを指差す。

 そこには、1人の男とサザンドラが並び立つ写真とセフィルードリーグの文字が。

 

「僕たちはこれから、あのセフィルードリーグを目指して戦って行くよ」

「ダネ!」

「タイレー?」

 

 フシギダネは研究所の時の交流でなんとなく知っていたのか、元気よく返事を返すが、タイレーツはピンと来ていない様子。

 

(かと言って、細々説明しても分からないよね……)

 

 どうすれば伝わるかと思案していると、あるものが目に入る。

 

「(あ、アレなら)……よし、ちょっと来て」

 

 ロイナが連れて行ったのは、自由利用の出来るパソコンの前だ。

 そこで過去のチャンピオン戦の映像を2匹に見せる。

 そこでは、コーンロウの髪をしたスポーツウェアを着た男性がジュカインを操り、それに対してボサボサなオレンジ髪でソース顔の男性がザングースに指示を出してバトルしていた。

 

『かっは! ノーマルタイプを操るセンス、ほんと流石の腕前っすね! ジュカイン! 『リーフブレード』!!』

『はーっはっは! 褒めても勝ちは譲らんぞ! ザングース! 『こうそくいどう』で躱して『ブレイククロー』だ!』

 

 そこには、大観衆の中で楽しそうに苦しそうに嬉しそうに戦うトレーナーとポケモンの姿が映っていた。

 そこにどんな駆け引きや狙いがあるのか、ロイナにも、フシギダネやタイレーツにもとんと理解は出来てない。

 それでもそこにある熱は理解出来る。

 死力を尽くして戦うことの何と楽しそうなことか。

 全力で相手を越えようとする姿のなんと熱いことか。

 

『ジジーロン! コレで決めに行く! 『はかいこうせん』!』

『サザンドラぁ! 受けて立つぞ! 『ドラゴンダイブ』で真正面突破だ!』

 

 そして、最後の激突の瞬間を終えて。

 コーンロウのトレーナーとサザンドラが残り、チャンピオンが決まった。

 そこまで見てからロイナは映像を止めて2匹に向き直る。

 

「フシギダネ、タイレーツ。僕たちは、()()を目指すよ。それが、コギノリとの約束なんだ。こんな熱くてすごいバトルをするために頑張って行こう」

「ダネ!」

「タイレ!!」

 

 2匹にも伝わったのかやる気満々な様子だ。

 ツノとツルをぶつけて、やる気を共有している。

 その姿に自分たちの道行く方向が揃ったことをロイナは確信した。

 きっと今この時、ロイナたちはチームになったのだろう。

 

「じゃあ、身体を洗ったら明日に備えて寝ようね」

「フシェ!」

「レー!」

 

 そうして、ロイナたちは眠りについた。

 

 

 

 

 翌朝。

 朝食を済ませて支度を整え、ジョーイさんにお礼を言い、他の利用者も見当たらないのでロイナもまた旅立った。

 それからはラヌータウンを歩き回って、道行く人や民家を尋ねてはタイレーツについて尋ねていく。

 

「すいません、このポケモン、タイレーツって言うんですけど、仲間と逸れちゃったみたいで、似た様な姿のポケモンを見ませんでしたか?」

 

 だが、結果は芳しくない。

 散歩中の老人に、民家の主婦に、ショップの店員に、公園の子供たちに聞いて回って聞いて回る。

 それでも、影も形も見た人はいなかった。

 お昼を食べに定食屋に入って、そこの客と店の人に話を聞いても収穫はなかった。

 足が重く感じて来たのも気のせいとして諦めずに町中の見える民家や通りすがりの人に聞くも、情報は得られない。

 そうしてその日も、それなりに太陽が傾いてきた頃の事だった。

 

「あ、あの、ポケモンを探してらしたトレーナーさん、ですよね?」

「え? あ、はい、そうです」

 

 午前中に尋ねた民家の主婦が子供を連れてロイナの元へ来た。

 なんでも、息子さんが台風の日に何かを見たのだという。

 

「本当に? 何か見たんだね?」

「うん、みたよ! ボールみたいなのが1つ、イェシード、イェシード……なんだっけ?」

「遺跡……かな?」

「あ、そうだよ、イェシードいせきのほうにとんでったよ!」

 

 その情報にありがとうとお礼を言ったロイナは、すぐさまそちらへ向かって歩き出した。

 そろそろ日が落ちるまで時間はないがそんなことを言ってる場合ではない。

 仲間を最優先。

 その他の懸念は後回し。

 

(待っててね)

 

 その瞳に、迷いなし。

 

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