俺のチートアカデミア(ただし、主人公はヒーロー科に入学できないものとする)   作:かりん2022

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十手目 罠対策

体育祭から数日後。

緑谷は相澤に呼び出されていた。

職員室に行くと、別室に案内された。

部屋では飯田くんが待っていて、緑谷に勢いよく頭を下げた。

 

「緑谷くん! 君を頼らせてほしい……!」

「飯田くん!? どうしたの?」

 

 飯田の必死の頼みに、緑谷は驚いた。

 

「飯田のお兄さんがヒーロー活動中に大怪我を負ってな。通常の治療では治せないんだ。緑谷。オールマイトだけじゃなくて、リカバリーガールにも師事するって体育祭での覚悟、今も変わってないか?」

「はい。僕はこの異能も背負っていきます。綺麗なのも汚いのも背負って、僕は立ちます。轟くんにも僕を見ていて、って言いました」

 

 相澤の問いに、澄んだ瞳で緑谷は言う。その覚悟が本物である事は、どれほど怪我をしても立ち上がってきた生き様で示している。

 緑谷は回復薬も作れるので、大怪我をして薬で無かったことに、というかなりハードな練習も積んでいる。

 

「そうか……。異能に関しては、今の所、個性より厳密に国に管理していく事になる。流石に自衛に関しては自由だが、報告は必須。使用も基本的に申告してからの使用になる。増殖に関してはその度ごとに協議をしてという形になった。緑谷の回復の異能は負担が大きいが、回復系は需要も大きく立ち回りも難しい。暴走への対策もあるし、国からの縛りはお前に有利に働くと思う。その治験依頼の第一号に飯田のお兄さんが決まりそうなんだ」

「リカバリーガールの異能は暴走した時の危険が大きいし、記憶も何もかも巻き戻るというデメリットがあって、兄が気にしていてね。怪我をしたのは数日前だし、このぐらいなら暴走も殆ど起きないと思う。これは俺と兄のわがままなんだ。本当にごめん、緑谷くん!」

 

 飯田はもう一度頭を下げる。

 時を巻き戻す異能は記憶だけ残すと言った事ができず、本当の意味で丸ごとロールバックなので、例えば若がえりや怪我の治癒などと言ったとき、それまでのその人の人生をロールバックしてしまう事になる。

 オールマイトの異能も戻るんじゃないかとか、全盛期にロールバックして仕舞えば、という意見は本人の強力な拒否と人道的見地から無かったことにされている。

 

 異能の中では暴走しても弱く、極めて有用な回復の異能は、扱いやすい方なのだ。

 

「僕は人を助けるためにヒーローになる。友達を助けない選択肢はないよ」

「ありがとう……本当にありがとう」

 

 緑谷は幼い頃の悪魔との出会いを思い返す。

 今はあの出逢いに感謝してる。甘かった自分は、あの時決めた。

 個性があるからヒーローたり得るのではない。いや、確かにオールマイトのようなヒーローになるには強力な個性が必要だ。だが、心が追いつかなくては、そもそもヒーローになれないのだ。

 

 絶対条件。正義の心。それがなくては、そもそもヒーローたり得ない。

 

 力も経験も個性も、全てそれがあれば上に行きやすいというだけでしかない。

 それはヒーローの絶対条件ではないのだ。

 

 それ以来、緑谷はヒーローである為にはどうすればいいか、常に悩んできた。異能についても。そして、体育祭で答えを出したのだ。

 

 異能も抱えてヒーローになる、人を救うと。沢山の人の力を借りる事で、それは可能になると知った。一人で強くなる、それもまたヒーローの絶対条件ではないのだ。

 

 国と連携する時点で、ヒーローの未来は約束されたようなものだ。

 

 相澤はうむ、と頷いた。回復能力者の立ち回りについては、リカバリーガールに学べばいい。治験第一号に緑谷の友達の兄を持ってくるあたり、断りにくくして取り込むき満々で面白くはないが、緑谷の覚悟が決まっているというのなら、積極的に国を利用していく方がいい。回復系の異能は本当に立ち回りが難しいのだ。

 

「話はそれで終わりだ。インターン前には治療が行われることになるだろう。治療の目処は立ったんだから、お兄さんのこと、思い詰めるなよ。話は終わりだ。緑谷は残れ」

「はい! ありがとうございます、相澤先生! 緑谷くん!」

 

 飯田がドアを開けると、オールマイトとデヴィッドが入ってきた。

 

「やあ、とてもナイスなマスコットだね!」

「ああ、このキーホルダーですか? 体育祭を見てファンになったという人から、お守りだってもらったんです」

「そうか……。いや、大活躍だったからね! じゃあ、頑張りなよ」

 

 そして飯田は今度こそ部屋を出ていく。

 

「やあ、緑谷くん。話は終わったようだね。私からも大事な話があるんだ。デイブ」

 

 パタンと扉を閉めて、オールマイトがデヴィッドを見た。

 

「ああ、盗聴器はない。室内カメラも記録を止めた」

 

 デヴィッドの異能は機械への説得を可能とする。これもかなりチートの能力である。それに、説得相手の探知はほぼ負担無しでできるから、盗聴器などの発見などに非常に強い。

 

 二人が入ってきて、改めて席を薦められる。

 

「オールマイト。話って……」

「ああ、さっきの飯田くんのファンだがね」

「飯田くんの?」

「スパイの可能性が高いんだ。USJ訓練施設の襲撃事件に関わりがあると見られている」

 

 オールマイトは深刻な顔をする。

 

「さっきのキーホルダーは発信機だね。この調子だと、お兄さんの怪我も関係ありそうだ」

「そんな! 何故飯田くんが……!」

 

 デヴィッドは捕捉する。緑谷はばっとドアを振り返った。

 言わなくてもいいのだろうか。泳がされている? 危険はないのだろうか。

 

「スパイにしようと考えているのかもしれない。治療をしようと学校を出たところを襲うつもりなのかもしれない。目的は無数に考えられる」

「ただ、確かな事として、あのキーホルダーに発信機がついていて、彼は裏口入学の可能性があり、抜き打ちテストと定期テストの出来があまりに違いすぎ、嘘の個性を申告している。彼の個性はパペット。ぬいぐるみに直接触れている間動かすというのが申告されたものだが、実際の個性は憑依のようだ」

「憑依……?」

 

 憑依とパペットでは大分違う気がするが。

 

「触れたものに意識を移すことが出来る。虫、ぬいぐるみに意識を移して自在に動かせる事は確認している。体育祭の活躍チャンスを蹴ってまで調べてくれた子がいてな。今、公安ヒーローが動いている。体育祭の時、A組の偵察をしていた事が確認とれていてな。おそらくUSJの事件の時も憑依を使っていたらしい。何をしていたのかまではわからないが」

「公安ヒーローが……」

「ここまで話しておいてなんだが、話すな動くな。オールマイトの後継者だから話した。しっかり護衛と見張はつけておくから、俺達大人に任せておけ」

「はい……」

「あと、身の周りにはしっかり気をつけるように。峰田がそろそろ家に帰りたがっていたんだが、取りやめになって代わりに峰田の異能習熟訓練もする事になった」

「峰田くん、ホームシック気味でしたもんね……」

「緑谷はオールマイトの後継者としても回復の異能者としても狙われる理由がある。注意しすぎる事はないからな。爆豪にいうのもなしだ」

 

 緑谷は、しっかりと頷いた。




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