六道プリンセス!~世界一民度の低い町で、人類を守るために闘う魔法少女たち~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第42話 最高に素敵な人

「なんであれだけ醜い心を持った人間3人を融合させた超妖魔獣が、1分かからないで浄化されるですぞ……?」

 

 妖魔神三人衆のひとりの赤フードが、真っ青になって震えていた。

 

「拙者、アビとノロジーに妖魔獣の上手い作り方を見せてやるって言って出てきたんですぞ……?」

 

 こんなの恥ずかしくて妖魔神界に帰れないですぞ……

 

 そう、辛そうに呟く。

 

「話が戦闘の段階に至っていないことに気づきなさい!」

 

 天野先輩が赤フードに堂々と言う。

 全く淀みなく続ける。

 

「言っとくけど、私もヒューマンプリンセスも、六道プリンセスの資格を得た日以降、苦戦したことはただの1回も無いのよねッ! 無駄だから諦めて地球から出て行きなさい!」

 

「初日は焼夷弾を兵器錬成。2日目はロードローラーを機械錬成……。そして今日は濃硫酸を化学錬成や。来てもええけど、全くの無駄やで? 勝負になってへんからな」

 

「そーよ! 意味のないことはとっとと止めて、地球から出ていけ!」

 

「発狂させるの面倒くさいから二度と来るな!」

 

 私たちの言葉を受けて、赤パーカーは半泣きになっていた。

 

「お、覚えてるですぞッ! 次こそはギャフンと言わせてやるですぞッ!」

 

 そう言い残し、マインは空間の歪みに消えて行った……。

 

 

 

 そして。

 私たちが変身を解き。

 私と国生さん以外の先輩2人が去った後。

 

 カフェ前の広場で。

 

 妖魔獣と化していたおばさん3人が、人間の姿を取り戻していた。

 彼女らは

 

「……若いときにお高く留まって、誠実な性質をもった男性を些細な不満で切り捨ててきたツケが回って来ただけの話よね……」

 

「若くて新陳代謝が高いときに、体型に気を遣わないで太ったまんまでいたから、恋愛のチャンスを狭めていただけなのに……」

 

「若いときに挑戦を選ばなかったことのツケは、私自身が払うのがスジ。それは国のせいでも男の人のせいでもない……そうなのよね」

 

 自分の不利益が全て自分の愚かさから来たもの。それが今の事態を招いたことを認め、反省し、泣いていた。

 泣いても解決しないことは彼女たちも分かっている。これは自分への情けなさから来る、自己嫌悪と悔恨の涙。

 自分は無駄に年月だけ重ねた、子供のまんまのろくでもない幼稚な老女だ、と認めたのだ。

 他責する心を爆散させられたために。

 

 そこに

 

「ええと……今夏さん、古秋さん、新春さん」

 

 薬で眠らされていたシンヤさんが、起きてきてこの場に現れ。

 

 人間に戻った3人の前に立ったんだ。

 

 ……てっきり、シンヤさんは

 

 あなたたち、今日限りで解雇します。おつかれさまでした。

 

 こう、言うものだろうと思っていた。

 

 だけど……

 

「これからも、僕の大切なコンピニの雇われ店長をお願いしますね」

 

 違ったんだ。

 

 正直、驚いた。

 

「……よろしいんですか?」

 

 今夏さん……私を突き飛ばしたあのおばさんが目を見開き、今度は感涙する。

 シンヤさんは

 

「ええ……。あなたたちは雇われ店長の仕事を完璧にこなしてくれます。僕が欲しいのはそういう人材ですので」

 

 ……笑顔で、そう言ったんだ。

 自分の過ちを全力で振り返り、悔いたのだから。

 

 だったら再雇用良いでしょ。

 

 すごいな……シンヤさん。

 

 脇で見ていた私の方も、その光景を見て感涙していた。

 すごい……すごいよ……!

 

 

 

 そして時間が過ぎ。

 

 飛騨山中。

 

 グオオオオオ!

 

 私は羆相手に、正中線四連突きを繰り出していた。

 マナーの悪い格闘士(グラップラー)が、狩る楽しみのためだけに、山の中に羆を放す事例。

 生態系を変えてしまうのにとんでもないよね。

 

 キャッチアンドリリースって言って、羆を思う存分ボコったら、写真だけ撮って後は解放するって言ってる格闘士(グラップラー)、よくいるけど。

 私、そういうの偽善者だと思ってるんだよね。

 

 自然環境のこと、少しは考えて欲しいよ。

 本来は飛騨に羆なんていないんだから!

 

 だから私は山籠もりのとき、その山に存在しないはずの生き物がいた場合、必ず殺すことにしている。

 殺して、食べる。

 食べきれない場合は、保存食にして持って帰る!

 

 人間のエゴで申し訳ないよね。

 でも、仕方ないから。

 

「阿比須真拳奥義! 頸椎損傷!」

 

 正中線四連突きで怯んだ羆に、上段への蹴り上げを叩き込み、その首をへし折った。

 頸椎がへし折れて、全身麻痺を引き起こした羆を前に

 

「国生さん、牛刀貸して」

 

「うん。ちょっと待ってて」

 

 すぐ傍で、仕留めるまで危ないから死んだふりをしてもらっていた国生さんに、私は牛刀を渡してもらえるようにお願いする。

 鞄の中に入れてるんだ。

 

 堺の職人さんに作ってもらった牛刀……。

 剣豪であれば鉄をも斬れる業物。

 

 それで私は羆の首を切断し。

 

 おなかを裂いて、内臓を取り出す。

 ……ここは食べられないからね。

 

 いや、食べる人もいるかもしれないけど、私は食べない。

 

 だから捨てていく。

 申し訳ないけど。

 

「手際良いね」

 

 国生さんは興味深そうに解体作業を見ていた。

 

「小学校のときからやってるから」

 

 そう、毛皮を剥がし肉を斬り分けながら返す。

 

 そしてふと、思った。

 

 シンヤさんに、羆の肉をお裾分けしたら、喜んで貰えるかな……?

 それをちょっとだけ考えて。

 

(いや、そんなことをしたら気持ち悪いよね。彼女でも友達でもないのに)

 

 すぐに、私はその考えを却下した。

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