明日を越えた未来の日常   作:まな板とベーコン

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#8 奇跡の星々は夜空にきらめく

ツーツーツー

 

 

 

うーん、えっと、こう、で合ってるかしら?

 

ふふっ、ハァーイ、皆、私に会いたかった?長い間重い雰囲気が漂ってるから、少しでも明るくしたくて、ちょっと無理言って出てきちゃった♪あ、心配しなくても大丈夫よ?ここに文を綴ってた人の許可は得ているから。

 

うーん、やっぱりダメね。画面の向こう側の景色を見ることは私たちにはできないから、皆がどんな反応をしてるのか見れなくて少し残念。私が出てきてポカンって顔してるの?それとも、私が出てくることが分かってて納得した顔をしてるの?

 

...........ふふっ、やっぱり反応しづらいわよね。大丈夫、あとで分かるから。

 

それじゃあ、これ以上ここの人を困らせるわけには行かないから、元の場所に戻るわね♪

 

あ、そうそう。

 

もし、未来に不安を抱いていたり、自分の悩み事について考えすぎて押しつぶされそうになったりしたら、

 

 

たまには空を見上げて、()()()()()()()()()()()()()

 

 

そうすれば、少しは気分が晴れるはずよ?それに、もしかしたら、願いが本当に叶うかもしれないわ。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

けたたましい警報音にも近い音声が空間に鳴り響く。この模擬宇宙自体がリュクルゴスという存在の危険性を訴えているのだろうか?

 

「さぁ、最後の戦いを始めましょう。」

 

「ウソ、空間が........!」

 

最終エリアのデザインは宇宙ステーションヘルタ内のとある場所が元となっていたが、ライコスがその背にあるチューブを天井に突き刺すと、周りの空間がバラバラになって、気づいたら私たちは創世の禍心に居た。

 

「そんなにここがお気に入りなの?」

 

「貴女たちと私が初めて、明確な敵として対峙した場所ですから。それに、黄金裔たちが再び歩み出す起点となった場所でもありますしね。」

 

「いい性格してるね......!」

 

「おや?素直に感想を述べただけなのですが。」

 

確かに創世の禍心は私たちにとってかけがえのない場所ではある。だけど、セイレンスと一緒に行ったあの時、ファイノンがいろんな人と何度もここにたどり着いてフレイムスティーラー、カスライナに仲間を殺され、記憶を引き継いで再創世を行った事実を知ってからあんまりいい思い出がない。

 

それに、観衆とか言っておきながらちゃっかり毎回出てくるライコスにもうんざりしてた。何度もここで英雄になると誓いここで何度も人が殺されたと思うと、どうしてもお気に入りの場所とは言えなかった。

 

「さて、お喋りは此処までとしましょう。」

 

生み出された造物たちが押し寄せる。データの世界だからって好き勝手しすぎじゃない!?

 

「カイザー、下がれ。」

 

「いや、前に出ろへレクトラ。」

 

「だがそれでは―」

「僕よりも優先すべきことがあるだろう。行け。」

 

「.....分かった。」

 

「アナクサゴラス。」

 

「言われずとも分かっていますよ、金織。物量で押されては、今の私たちではひとたまりもありません。ですが、見たところ無尽蔵に生み出せるわけではないようです。」

 

「こんだけいるのに?しかも、今もバチバチいわせながら暗黒の潮の奴らを生み出してるのが見えるんだけど!適当言ってないよね?」

 

「話の邪魔をしないでいただけますか?猫女。」

 

「な、まぁた言ったなぁ!今度こそ許さ―」

「セファリア!」

 

「うわっ、あっぶなぁ。」

 

「戦いのさなかよそ見をするとは良い度胸ですね、セファリア。」

 

「うっ.........でもライア、アイツが―」

「セファリア。」

 

「.........ちぇっ。」

 

「はぁ、アナクサゴラス、貴方もです。貴方が自分の話を遮られることをこよなく嫌うのは知っています。ですが、そんな事で張り合わないでください。仮にも樹庭の学者ですよね?」

 

「...............貴女に説教される日が来るとは思いませんでしたね。少々頭に血が昇ってしまったようです。」

 

一触即発とはこういうことを言うのだろうか?やっぱあの2人は混ぜるな危険だね。

 

「それで、どうするの?あんな数をまとめて相手をしてもキリないよ!」

 

敵が大量に押し寄せてきた!とりあえず数を減らさないと。

 

「だが、分断しようにも場所が狭すぎる。なにより数が圧倒的に足りない。」

 

「全体に攻撃できるのって、多分私とアナイクス先生、ぐらいだよね?」

 

「.........ミス・ヘルタ、何か対策はないのか?」

 

「今スクリューと共同で解析にあたってるわ。」

 

《判明:ミス・ヘルタ。彼は模擬宇宙内の残存リソース内でしか動くことができないようです。さらに自身が存在するために必要分のリソースを切り崩しています。つまり、このまま残党を処理し続ければ自滅します。》

 

「それはいい情報ね。じゃあ、どれぐらいでアイツは死ぬの?」

 

《推測:残されたリソースと彼の戦闘能力、造物の強さから判断すると、おそらく三十分前後かと。》

 

「じゃあ、あの白髪クンはそんな長い時間の間無事なままで戦い抜ける?」

 

《.............不可能です。》

 

「なら、その三十分(無駄な時間)をどれだけ短縮できるかって話よね.......スクリュー、模擬宇宙の構築プログラム側からライコスにアタックしてみてちょうだい。」

 

《了解》

 

まずい、ヘルタのとこに.......!

 

「アウトッ!........ヘルタ、どうだった?!」

 

「どうもこうもないわよ。結局のところ、ここでライコスをさっさと倒さないと白髪クンが危ないってことが改めて分かったってだけ。」

 

なんとか間に合ったけど、やっぱりこの状況を楽々打破するアイデアは出なかったみたいだね。

 

「狂うがいい.......皆さん!リュクルゴスが生み出している造物の強さはそこまでです。何度も喰らえば致命傷にはなってしまいますが攻撃も容易く避けれます。ですが.......厄介なことに体力は今まで戦ってきた敵よりも高いようです。」

 

数少ない全体攻撃の手段を持っているアナイクス先生がそう言った。確かに、あれだけ殴ったのに数が減ってない。感覚的にはもう三体ぐらい倒せててもおかしくないのに。

 

「やはりか........前提を間違えていたようだ。再び策を練る。戦士たちよ、もう少し時間を稼いでくれ。」

 

どこからか取り出したチェス盤を取り出し何かブツブツ言いながら再び策を練り始めたケリュドラは、一筋の汗を流しながら滅多に見せない焦りを顔に出している。

 

あ、危ない!

 

「カイザー!」

 

「問題ない!」

 

ケリュドラを切り裂かんと襲いかかる造物が十字に切り裂かれ崩れ落ちる。

 

「ここから一歩も通さない。」

 

セイレンスが二振りの剣を構え敵を睨む。これでケリュドラの方は大丈夫そうだ。でも、

 

「ぜんっぜん足りない.........!」

 

まず、ここにいるメンバーの殆どが単体戦闘に強いけど、たくさんの敵に囲まれると途端に辛くなる。かといって全体攻撃のメンバーは火力を出せるのかと言われたらそうでもない。アナイクス先生はどちらかと言うとデバフを付与するサポーターだし、トリ三姉妹はれっきとしたサポーター。追加の全体攻撃はあくまでおまけ。なによりトリアンの負担が大きくなってしまう。全体攻撃で火力を出せるモーディスは今ここには居ないし...............どうしよう!?

 

「あっ」

 

目の前に黒い刃。振りかざすのは暗黒よ潮の闘将。この距離、避けられ―

 

「攻撃させるわけがないだろう。」

 

立ち昇る水柱。黄金の流れとともに荒れ狂う波が闘将の体ごとのみ込み消滅させた。

 

「っ、あ、あれ?」

 

「大丈夫か、星。」

 

「た、丹恒!」

 

腰よりも長い髪に、額に生えた2本の角。切れ長の目は一見鋭く見えるけど、丹恒の優しさがにじみ出ている。

 

「流石にあの姿だと力が出せないからな。」

 

「そっか、飲月の力なら全体攻撃ができる!」

 

「ちょっとぉ!丹恒だけじゃないよ!」

 

遠くから聞こえるなのの声。振り返ってみると、

 

「ふふん!ウチの早着替え術は彦卿師匠と雲璃師匠仕込なんだからね!」

 

なのがいつもの服から仙舟で修行してた時の服に変わっていた。悔しいけどとても可愛い。

 

.........というか、あの特訓の中で早着替えの項目なんてしてなかったしやってなかったと思うけど........

 

「はぁ。」

 

「ちょっと丹恒!何でため息をつくの!?」

 

「いや、お前らしいなと思っただけだ。」

 

「むー、ふん。そうやってウチを馬鹿にできるのも今のうちだからね!」

 

そういうなのの後ろに造物が迫る。

 

「三月!」

 

「大丈夫だよ!青龍、白虎、ミルクティー最高、喰らえ!」

 

あ、その技の詠唱ってやっぱそのままなんだ。なんというか、その格好からは想像もできない締まらない技名だなって毎回ちょっと思ってしまうのは仕方ないんじゃないかな?

 

なのは剣撃で敵を切り刻み、そして派手な爆発エフェクトと共に決めポーズ。いつもの必殺技だけど、なんか、こえ、気が抜けるというか、なんというか。

 

「あ、星!」

 

「.........?なに?」

 

なにやら用事があるのか、うまいこと敵の隙間を掻い潜ってこちらにやってきた。いや、敵を倒してほしいんだけど。

 

「えーと..あったあった!これどうぞ、()()!」

 

仰々しく跪いたなのが手にしていたのは、タピオカミルクティー。あー、そういえばなのはこれでスキル効果を得られるんだっけ?でもなー、

 

「今飲むとお腹が痛くなっちゃうよ。」

 

「それでも飲んで!戦いのためだよ、背に腹は代えられないでしょ!」

 

といって―グブッ

 

ヂューヂューヂュ...........プハッ

 

「も、もういいかも。」

 

「............よしっ、師匠になったね!」

 

「師匠になったねって......別にこんな事しなくたって師匠になってくださいってお願いすればいいだけなのに......」

 

「........の」

 

「ん?」

 

「修行中にミルクティーを飲んでてひらめいちゃったからこんなふうになっちゃったの!毎回これのためにミルクティーのストックを作らないといけなくなったんだからね!?」

 

完全なる自業自得だ。涙目で必死に叫ぶあたり相当懐にダメージが入っているらしい。うーん、私は特段何かに使うこともないし、信用ポイントなんて有り余ってるし........(マジで見てみたら400万だった、私使わなさすぎじゃない?)

 

私がミルクティーを飲んだことでなのに力が宿る。私は今は壊滅だから、

 

「よぉし、力がみなぎってきたよぉ!」

 

攻撃力(パワー)アップだったっけ。なのがスーパーな金髪星人並みのオーラを放っている。

 

「えい、やぁっ!」

 

剣を振るう姿は仙舟での特訓期間(あの時)よりも様になっていて、でもセイレンスと比べちゃうと............

 

だめだ、さすがにそれはなのがかわいそうだ。これ以上は追求しないでおこう。

 

「はぁっ!」

 

それにしても、数が多すぎる!打っても打ってもキリがない............!

 

「アナイクス先生、後ろです!」

 

「なっ」

 

しまった、油断した!気づいたらアナイクス先生の後ろに巨大な闘将が剣を振り落とす直前の姿。私じゃ届かない!

 

「んー、あっわかった!」

 

なの!

 

「えい、えい、えい、えい........やぁ!」

 

丁度私の攻撃回数が一定に達したようだ。なのが私のキルスコア(経験値)を得て追加攻撃を放つ。

 

今回はフルヒット。闘将は遠距離からの攻撃に対応できずにそのまま崩れ落ちる。

 

「助かりました、なのかさん。」

 

「困ったときはお互い様だよー!」

 

なののおかげでピンチを乗り越えた............

 

「ってわけじゃないよね。」

 

「ふふふ、やはり 救世主(あなた)たちとてこの数を前には無力のようですね。」

 

()()覚醒状態のザンダーは次々に造物を生み出している。オムニックだからいま弱っているかどうかさえ分からない。

 

「ヘルタ.......アイツのHPは見れないの?」

 

「.............覚悟して見れる?」

 

「え?覚悟って...........」

 

「これよ。」

 

「え。」

 

な、なにこれ。いち、じゅう、ひゃく、せん.................おく、ちょう、う、嘘だよね?

 

「アナタ、本当にフザけてるわね。」

 

「いいえ、ふざけてなどいませんよ。逆に質問なのですが、どうして貴女たちのような敵を拒む相手が必ず倒されるような存在でなけれはまならないのですか?私は私で譲れないものがあります。勝つためならばあらゆる手段を取る。この考えは合理的ではないでしょうか。」

 

映し出されたHPゲージはいつも見る赤色じゃない。示す色は、青。でも、()()()()()()()()。それだけなら、最初にコイツと戦ったときと同じ。だけど、違う。ヘルタが見せてきた透明な板のような電子モニターが、点滅しながら%表記でない数値を私たちに伝えていた。百どころじゃない、文字通り桁外れのHP。これじゃ、鉄墓の時と同じ.......

 

確かに、ライコスの言ってることは分かる。それに、そういう敵はマンガとかの都合のいい世界にしかいないことも。今までのラスボスも皆強かったし、仲間が一人でも足りなかったり新しい力を手に入れてなかったりしたら負けるような手強い相手ばかりだった。でも、これは......こんなのって―

 

「星、しっかりしなさい!」

 

「へ、ヘルタ―」

 

「アンタ、オンパロスから帰ってきてから()()()()()()()?」

 

「え」

 

なに、それ。

 

「違和感しかなかったのよ。やけに動きのキレが悪いし、注意力も散漫。おまけにこれ..........前のアンタはこんなことで諦めたり絶望したりするようなヤワな人間じゃなかったはずよ。」

 

「そ、そんなの知らないよ。私はいつもと変わらない。気のせいじ―」

「気のせいじゃない。」

 

「ぁ..........」

 

「貴女も分かってるはずよ。無意識にその事実から避けてるだけ。現に、他は知らないけど丹恒はすぐに気づいていたよ。」

 

「...........」

 

正直、わかってはいた。バットを握る手は震えているし、息も荒い。戦いでも多分、足を引っ張ってる。他の皆はそれぞれの役割をこなしてるのに、私だけは......

 

オンパロスのとき、皆と会えなくなって、キュレネもいなくなって、つらくて、くるしくて、()()()()()()()()()()()()()。皆の笑顔が、楽しい時間が過去のものになるのがとても怖かった。

 

自分たちだけが先に進んでいく事実を、認めたくなかった。

 

キュレネは思い出のなかにいても、もう一度笑う姿をみることは叶わない。

 

列車での出来事や旅先での話を、黄金裔の皆と共有して笑い合うこともできない。

 

そんな未来に、私は希望を持てなかった。

 

ナナシビトとしては、多分失格だ。ナナシビトは、手助けをするにせよ旅を楽しむにせよ、先に進み開拓していかないといけない。ミーシャみたいにその地に留まってもナナシビトではあり続けられても、立ち止まってしまったら、列車の皆とは一緒にいられない。それでも、私は立ち止まってしまった。結果的に今もナナシビトとして皆と居るけど、失うことの、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして今、ライコスに勝てないとファイノンが死んじゃう。また、ファイノンがいなくなってしまう。

 

それが、怖い。この幸せを失うのが。

 

だから全力で戦ってる。全力で戦っているよ!でも、こんなの、どうしたら..........

 

弱い、散漫、事実から逃れてるだけ...........そんなの、仕方ないじゃないか。こんな敵を前にして絶望しないわけがない。敵もほぼ無限に出てくるし、圧倒的にこっちが不利。こんな状況でファイノンを助けに行くなんて、無理―

 

「.......はぁ、あぁもう!」

 

「うゅぅ!?」

 

ちょ、ほっぺた痛いし顔近―

「いい?おこちゃま。アンタはこれまで、こんなのよりも遥かに絶望的で強大な敵に立ち向かってきたはずよ。反物質レギオン、星核を取り込んだベロブルグの元守護者、巡守の絶滅大君、記憶域ミーム、そして、知恵の絶滅大君。どれも一歩間違えれば簡単に死んでしまうような敵ばかり。」

 

私の両ほっぺを強く片手で挟んでくるヘルタ。唇がタコになりそう......

 

「どれもこれも強い.........(こんなこと言いたくないけど、)多分私だと負けていた戦いもあったかもしれない。」

 

「ぅえ?しょんなこてぉ(そんなこと)―」

「あるのよ!」

 

ちょ、強くしないでイタタタ!

 

「アンタは星穹列車に乗ってからの短い間にたくさんの敵と戦ってきた。ヘルタを通して見てた最初の頃は、星核を宿してるだけのただのナナシビトだと思ってた。でも......でも星。アナタは、星穹列車の仲間と共に数々の困難を乗り越えてきた。これは紛れもない事実よ。」

 

「..........!」

 

「いろんな所で、いろんな場所の人たちを、星を救ってきた。だから貴女はここにいる。だから貴女はここに立っている。ねぇ、思い出してちょうだい。貴女は今も、仲間と一緒にいるの。さっきまで三月なのかとか、丹恒とかと喋ってたけど、さっきの一瞬で忘れてない?貴女の頭の中、今仲間と一緒にいること、戦ってること、その事実が消えちゃってるでしょ?」

 

「ぁ」

 

な、かま。

 

「何を恐れてるかは、想像つくけど、私はあえてなにがどうとかは言わない。でもね、これは忘れちゃだめ。貴女の仲間は、こんな程度でへこたれるような奴らじゃないよ。」

 

「!!」

 

「そうだ。」

 

荒れ狂う水の音が聞こえる方向を見る。

 

「お前は一人じゃない。これまでも、これからも。だから、自分を追い込むな。お前が例え挫けようと、俺たちがお前を支える。」

 

丹恒。

 

「うんうん!それに、あの黒幕機械は、アンタとセイレンスで倒してたじゃん!そんなアイツにウチらは倒されないよ。それに、今は敵の数が凄いけど、今はウチらも居るんだよ!ウチら皆の力を合わせれば、パワー百倍、いや、百万倍だよ!だから、」

 

なのが振り返る。その顔は、再会したあの時の元気いっぱいの笑顔で、

 

「いっしょに頑張ろ!ウチらなら、不可能すら可能にできるよ、星!」

 

目の奥がジンとした。鼻の奥がツーンとする。でも、胸が温かい。

 

「星、貴女はバルネアにて交わした約束を最後まで守り抜き、そして私たちの悲願を叶えてくれました。貴女なら、あの時に逃げることもできたでしょう。ですが、貴女は諦めなかった。そんな貴女のおかげで、止まっていた歯車が動き出し、私たちを天外へと連れ出してくれたのです。」

 

「いきなりのことだったけど、あたちたちと一緒に火追いのために協力してくれてありがとう。」

「いきなり現れてびっくりしたけど、星たちが協力してくれて、ボクたちはうれしかったし、すごく助かったんだ!」

「見ず知らずの私たちに惜しみなく力を貸してくれました。だから、私たちも精一杯頑張ります。」

 

「星様の優しさが、私を救ってくれました。命が危ない中でも、貴女は私と共に歩んでくださいました。あの時は別れてしまいましたが、貴女の温もりを忘れたときはありません。今度は、私が貴女を支える番です。」

 

「そーそー♪まぁ、アタシは移動のときとか、あんの黒マントにやられるちょっと前ぐらいしか関わってこなかったけど、少ない機会の中でも、グレっちが凄いってことは十分に分かってたよ〜。単に強いってだけじゃなくて、救世の坊やとか、クレムノスの王サマとか、いろんな人と繋がりを持てるってのも相当なことだよ。アタシは、役割も役割だったし、そんなことできなかった。でも、グレっちにはそういう強みがある。だから、こんなことで不安にならなくても大丈夫!」

 

「グレーたんは、天空でもとっても頼りになりましたし、私があの時あの場に残る時も、泣いてくれましたよね。私もとっても辛かったんですけど、それでも、グレーたんは私を信じて先に進んでくれました。グレーたん。信じる力というのも強さの1つなんですよ。私も、そんな貴女の信頼に応えます!」

 

「貴女は、最初こそは違いましたが、神に疑念を抱き、そしてオンパロスの真実にたどり着きました。決しておごることなく、飽くなき探究心をもって真理を追い求めるその姿勢に感心しました。それに、貴女は大地獣に絶大な信頼と愛情を持っている。自信を持ってください。貴女は素晴らしい人ですよ。」

 

「僕はオンパロスの未来のために死んだ。だから、短い間の付き合いしかない。だが、あの厳しい状況下でセイレンスと共にライコスと、共にいた僕を疑い、己の正しさのもと動いたその胆力は評価に値する。僕が断言しよう。星、そして僕たちが負けることなどあり得ないと。」

 

「孤独に歌う私を見つけ、そして地底から引き上げてくれたのはお前だ。あの時、私だけでなく、灰色の小魚も天外の存在として戦っていた。そして、創世の禍心で共に戦い、勝利した。お前の不屈の精神は何ものにも負けないだろう。自信をもて、星。」

 

みんな

 

「まぁ、ありきたりな展開だけど、今の貴女には............十分なようね。なら、私がダメ押しで。」

 

胸がいっぱいで、視界がゆがんだ。そんな視界を紫が支配する。

 

「アンタの頑張りは、私も見てたのよ。正直、凄いと思ったわ。私じゃとうていできない..........この天才の私ですら不可能なことをいとも簡単にやってのけてるのよ、おこちゃまは。だから、自信を持ちなさい。」

 

優しく、背中を押された。

 

あぁ、そうだ。私には、私を信じてくれる心強い味方が沢山いるんだ。

 

「.............うん。そうだよね。ここでへこたれてちゃ、ダメだよね。」

 

ゴシゴシと目元を拭いて、ぼやけた視界のままライコスがいるであろう方向を見た。

 

徐々に歪みはなくなり、世界が輪郭を取り戻す。

 

そして、依然として健在なライコスの姿を捉える。

 

「話は終わりましたか?」

 

「うん、終わったよ。」

 

「どこかスッキリしたようですね。」

 

「そういうの、アンタも分かるんだ?」

 

「オンパロスにてさまざまな人々を観察してきましたからね。少なからずそういった変化を察知することはできますよ。」

 

「そう。」

 

「えぇ。ですが、貴女がよい方向に戻ったからといって、この戦いの結果はかわりませんが。」

 

「そうかな?自信を取り戻した私と皆を舐めないでよね。」

 

「確かに、貴女やその仲間の脅威度は極めて高いです。事実、私は貴女たちに負けてしまいましたからね。ですが、」

 

3つのレンズが不気味に輝く。

 

「今回は慢心や油断など致しません。全力をもって、貴女たちを潰し、今度こそ私の悲願を実現してみせましょう。」

 

その言葉を皮切りに様々な敵が生み出されていく。暗黒の潮の造物だけじゃない。他の星で接敵したモンスターや機械、ミームまでもが姿を現していた。

 

見栄を張ってあんなこと言ったけど、さすがに数が多すぎる。

 

ネガティブな考えはなくなったけど、必死に頭を巡らせてもいい案が浮かばない。

 

どうすれば.........

 

「星。」

 

「あ、キュレネ。」

 

後ろからふわりと現れ抱きしめてきたキュレネ。横を見やればほぼゼロ距離にキュレネの顔があった。

 

「わっ、びっくりした。」

 

「あら、ふふっ。驚かせてごめんなさい.........でも、よかった。暗い顔じゃなくなってる。」

 

そう言って私の頬に人差し指を当てて上げるキュレネ。

 

「貴女はやっぱり、笑顔が一番似合ってるわ♪」

 

「あ、ありがとう。心配かけてごめん。だけど、これからどうすればいいかわからなくて。」

 

「大丈夫よ。安心して?」

 

「えっ、キュレネ?」

 

気付いた。キュレネの周りがキラキラ輝いている。その細かな光はまるで宇宙に輝く星々のようだ。そして、神秘的な力を感じさせる。

 

「ライコス、貴方がここを選んだのは、貴方がこの場所に思い入れがあるから、だったわよね?」

 

「ええ、そうです。Philia093........いえ、デミウルゴス。」

 

「そう...........だったら、教えてあげる。ここはね、私にとっての思い出の場所なのよ。」

 

「ほう?」

 

ゆっくりと上を見上げながら、天井に広がる星を抱きしめるかのように手を広げた。

 

「この場所で、モモはカスライナと、この世界の悲惨な運命の輪廻を止めるために歩み続けることを決めた。そして、その旅の最中、モモは私にいろんな物語を教えてくれた。ロマンチックな物語を、ね。だから、ここは私の始まりの場所でもあるの。」

 

上を見上げるキュレネの目は、当時を懐かしむように温かく、そして、上の星を反射して輝いていた。

 

「そして、ここはあの地下の次に私と繋がりの強い場所でもある。」

 

「...........まさか。」

 

「ええ、そのまさかよ♪」

 

キュレネがそう言って、1つの結晶を生み出した。虹色に輝くそれは後ろから見ても眩しくて、美しかった。

 

そして、それを大切に胸に抱きしめた。

 

「星々よ―」

 

胸に抱いた結晶の輝きは増していき、溢れた。

 

「きらめいて!」

 

ばら撒かれた星々。それと同時に展開された桃色のヴェール。私たちを囲んだそれはとても綺麗で、遠くからでもキュレネの温もりを感じる。

 

 

 

 

 

オンパロスという舞台で輝いた星々が、今再び、模擬宇宙(世界)を照らす。

 

 

 

 

 

 

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