初の戦闘回
――――――――――――――――――――――――――――
視界いっぱいに青が広がり、世界が一気にデータに変わり暗転する。視界は真っ暗で何も見えないが、両手を握る温かい感触がある。次第に光が差し、次に目を空けた瞬間には、私達はベロブルグのとある場所に居た。
「いつもの戦闘エリアだ。」
「ここが、模擬宇宙、ですか。」
「本当にそこにいるみたいですね。息も普通にできますし、鉱物の独特の香りもします。」
「ここはベロブルグっていう場所が元になってて、上の方に行けば雪が見れるよ。まぁ、模擬宇宙だと各エリア内しか動けないけど。」
「ふむ、救世主よ、あの前に鎮座している奇妙な生物.......いや、物体が敵対存在なのか?」
「そうだね。」
カイザーが指を差した先にいるのは、ベロブルグで蔓延っている敵、氷と炎の造物だ。鳥のような羽を持ったクリスタルの飛行生物、いや生物?.........まぁ、そういう敵ってところかな?
「あれが敵.........動く気配がないようだが?」
「それはそうよ。ここはあくまでデータの世界。
「わっ........なんだ、ヘルタか。あれ?いつものキャラは?」
「あれを映すの少し手間だし、何より今そんな姿出したところで、誰もわからないでしょ?」
「え?別に私達普通に見れると思うけど。」
「あぁ、気にしないで。貴女たちに向けての言葉じゃないから.......とにかく、今はそんな気分じゃないの。それに、私の姿が代わりに映し出されてるはずよ。それで我慢しなさい。」
「ふーん、まぁ、いいけど。ヘルタ、なんか変だね。」
「......ホログラムだから何をしてもいいってわけじゃないけれど、もう突っ込むのも疲れたし、好きにしていいよ。」
やった、ヘルタの帽子を伸ばすぞ!
「はぁ、とりあえず星は放っておいて、まずは.......私の奇物とか聖遺物とか、もろもろ盗もうと企んでたそこの子猫ちゃんから挑んでみて。」
「こ、子猫ちゃん?あ、アタシ多分アンタよりも長生きしてるんだけど?」
「あの世界の中ならそうかも知れないけど、貴女はこの世界についさっき生まれた存在っていうのを忘れてないかしら?この世界において貴女は赤子も同然なんだよ。分かったかしら?こ·ね·こ·ちゃん?」
「き〜!また子猫って言った!見てなよォ、アタシの強さに驚いて、ぎゃふんと言わないようにね!」
「あ、サフェル―」
「さぁ、かかって来い!」
しーん
「あ、あれ?」
「そいつらを攻撃しないと、戦闘始まらないよ?」
「〜!」
「少しは落ち着きなさい、セファリア。」
「さ、さぁ!仕切り直して始めるよ!」
ほいっと〜!と言って見事なサマーソルトを決める。通常攻撃だね。造物の顔面(辺り)の結晶が軽く砕けた。相当な威力........ん?
「あ、あれー?」
あれ、なんか、造物ピンピンしてない?いくらサフェルに会心率を盛ってないからといって、こんなにダメージが少ないのはおかしい......あっ
「なんか、あっちの潮の造物よりも硬くない?」
サフェルも異常に気づいたようで、何がおかしいのか自分の体を確かめてる。あっ、造物の攻撃が―
「痛ったぁぁぁぁ!ちょっと!めちゃくちゃ痛いんだけどグレっち!なんか本の角で叩かれるぐらい衝撃があるんだけど!」
「ち、ちょっとヘルタ、難易度おかしくなってない?」
「おかしいわね。星がいつもあっちで挑んでる難易度と同じぐらいの強さのヤツを用意したんだけど..........待って。星、今すぐ彼女の装備を確認してちょうだい。」
「装備?......あっ、サフェル!」
「な、何?グレっち。今こいつらの攻撃を避けるのに必死で―」
「ちょっと失礼!」
「え?わぁっ!?」
強制的にデータを閲覧。サフェルのレベルとか攻撃力とか、なんだかそれ以外の情報も見れるような画面だけど今はそこじゃない...........あ、やっぱり。
「サフェル、聖遺物付けてないね。」
「え?聖遺物?」
「この感じだと皆もそうだよね。オッケー、ヘルタ。聖遺物つけ忘れてただけだったよ。」
「ふぅ、少し焦ったじゃない。ほら、敵の動きを止めておいたから、さっさと装備させちゃって。」
「了解!」
「ちょ、グレっち?なに手をワキワキさせてるの?なんか、笑顔が怖いんだけど?目のあたりに影があるのすっごい嫌な予感がするんだけど!」
「大丈夫だよサフェル、すぐに終わるから。」
「ひ、ひぃぃぃ!」
にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「うぅ、も、もうお嫁にいけニャい.....」
「あ、皆の分も付けておいたから、これで大丈夫だよ。」
「えぇ!?ちょっと!アタシのヤツは何だったの!?」
「.........よし、気を取り直して検証していこう!」
「ねぇ!露骨に話題そらしたけど、絶対いらなかったよね!」
「いろいろ納得いってないから、この鬱憤を晴らさせてもらうよ〜!」
少しワチャワチャしたけど何とか気を取り直して戦闘が始まる。最初は通常攻撃をしただけだったが、次にサフェルが取り出したのはでっかいマグネット。
「へへっ、ひっさしぶりに自家製のコレを使うけど、さすがに壊れてないよね?じゃあ、アンタらのお宝ぜーんぶいただくよ〜!もーらい、っと!」
ジャラジャラジャラ
造物から、明らかに持ってないであろう量のコインが磁石の元へ吸い寄せられていく。そのコインがなんなのかあんまり分かってないけど、アレを吸い寄せるたびに敵にダメージが入ってるから、もしかしたら敵の生命をコインに変えてるのかなって思ってる。もし自分の財産が吸い取られたことがショックでダメージを喰らっているとすれば、造物に感情があるってことになるからね。
「へへへ、こんなにたくさんのコインがぁ........まぁ、全部データだから手元には残らないんだけどね。」
あ、哀愁が漂ってる。というか、そのコイン全部に価値があるのだろうか?多分信用ポイントじゃないから換金しないといけないし、換金するとしても、それに価値がなくちゃいけないと思うけど。
「危ない!」
コインについて考えていると、造物がサフェルに攻撃を仕掛けてきた。自分に速度を盛っておいて良かった。幸いダメージが入る前に攻撃して止めることができた。でも、今の私は
「まずい、攻撃が―」
「ありがとね〜、グレっち。」
「サフェル?」
「グレっちが攻撃してくれたおかげで溜まったよ!」
サフェルがいつの間にか手に持っていた弊を弾いた。
「油断大敵!ほら、捕まった〜!」
弊はサフェルの踵蹴りにより、勢いよく造物に向かって弾かれる。サフェルのこの追加攻撃は造物の胴体にグリーンヒットして、ついに消滅させた。
「ふぅ~、やっと倒せたぁ。」
「お疲れ、サフェル。」
「グレっち、油断大敵!まだ一体居るよ!」
「えっ」
しまった、炎は倒したけど氷はまだピンピンなの忘れてた!
「まずっ」
「チィッ!弊を弾いてもやっぱり走れない―」
「セァッ!」
咄嗟に目をつぶっちゃったけど、痛みが来ない。目を開けてみれば、真っ二つにされた造物が消滅していく姿があった。
「大丈夫か?相棒。」
「ファイノン!」
ファイノンが造物を切ってくれたんだ。流石相棒!頼りになるね。
「ふぅ、さすがに今までの特訓がここに来たことで無かったことになってなくて良かったよ。立てるかい?」
手を差し出すファイノン。あ、そういえばさっきので尻もちをついてたんだっけ。
「星、お前......」
「星っ!」
「あっ、なの....わっ!」
「大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫だよ、なの。傷一つついてない。」
「よかったぁ.....だけど、ちょっと不安だよ。今までだったら尻もちつくことなんかなかったのに、体調が悪いの?」
「え?うーん、別に悪いところなんてないけど.....」
「そっか。それならいいけど、もし体調が悪いなって思ったら言ってね!検査なんていつでもできるんだから。」
「うん、分かったよ。」
―――――――――
「........ヘルタ。」
「奇遇ね、丹恒。」
「もしかしたらだが、そのときは頼めるか?」
「普通なら断るけど、今回は状況が状況だしね、いいわ。もしもがあったら私も手伝うよ。」
「助かる。」
―――――――――
「さて、次のエリアに来たわけだけど。」
「これは........いえ、
「はわぁ!な、なんですかあの可愛らしい生き物!」
「キメラ、に似た四足歩行の生物のようですが、目が見当たりませんね。」
「とても庇護欲をそそられる見た目をしていますが、あれは一体何なのですか?」
「ふふん、あれはね、次元プーマンだよ。」
プギウ!プギ!
今黄金裔の皆が見ているのは、次元プーマンの群れだ。四足歩行でヨチヨチ歩いてるパムの次に人気(そうな)キャラ、次元プーマン。鼻をヒクヒクさせながら前に進む姿はとても可愛らしい。基本的に敵意や戦闘能力はない........ここの繁殖のコンテンツ以外は、ね。プーマン、壊滅、反射攻撃、うっ、頭が。
「こめかみを押さえてますけど、どこか痛むんですか?グレーたん。」
「いや、大丈夫だよヒアンシー。ちょっと苦い思い出が.....」
「?」
できれば、ヒアンシーにはこのプーマンの凶暴性を知らないままでいてほしいよ。
「あの、ふれあいに行っても、よろしいですか?」
「あー、触れ合うのは無理だよ。」
「なぜでしょう?」
「だって今から私たちはこのプーマンを時間内に消滅させないといけないんだよ?」
「..............」
黄金裔(一部を除く)女性陣、唖然。
「ひ、人の心とかないんですか!?」
「さすがのアタシも、敵とはいえ無抵抗な相手を一方的にやるのは、ちょっと。」
「せ、せめて一匹だけでも、生き残らせることはできませんか?」
「でも、この場にいるプーマン全部倒さないと、報酬全部もらえないし。」
あぁ、そういえばもうこのイベントに慣れすぎて何も思わなくなってたけど、普通はそうだよね。一応星穹列車にもうちの可愛いプーマンがいるから、分からなくもない。まぁ、あのプーマンはエーテル戦線のプーマンでデータだから厳密に言えば本物のプーマンじゃないんだけど、もしここのプーマンが全部あのプーマンだったら、さすがの私も倒せないかも。
「星穹列車にここのとは違うプーマンがいるし、あのプーマンの群れはデータだよ。先に進むためにもこのイベントはこなさなきゃだし、報酬なしだと、いくら検証とはいえ模擬宇宙をクリアできなくなるよ?」
「.......腹をくくるしかなさそうですね。」
「とても可愛らしいけど、僕たちは進まなくちゃいけないんだ。心苦しいけど、倒させてもらうよ。」
皆渋々戦闘態勢に入った。もちろん、私と丹恒、なのはこれに慣れてるからなんにも思ってないから、普通に武器を構える。
「よし、じゃあ―」
プギッ―ウゥォォ
「え?」
「どこに時間をかけてるのよ。プーマンを倒すのが辛いからって倒すまで悩みすぎ。この先もそんな感じでいられたらたまったものじゃないし、プーマンを暗黒の潮の造物に変えておいたわ。これなら心置きなく―」
バスッ、ズバズバ、ドカーン
あっ、全報酬獲得した。
「それじゃあ行こうか。」
「ファイノンを筆頭に、黄金裔の皆容赦なさ過ぎ。」
「まぁ、ウチらを散々苦しめてきた奴らだもん。」
「もし、今回のボスがライコスだった場合、どうなるんだ?」
「あら、もしかしてまずかった?」
「おい、まさか―」
「ま、全力でやってもらわないと判定できないし、丁度いいでしょ。」
とても不穏な単語が聞こえたけど、うまく聞き取れなかったな。後で聞いてみよう。
「遂に精鋭エリアだね。」
「ここは........雰囲気だけでいえば
「よくわかったな、セイレンス。そうだ、ここは仙舟羅浮にある場所だ。そして、今回の精鋭は金人門番か。」
ゴウンゴウンと音を鳴らしながら待機している仙舟の門番。全身にあるゆる機能が詰め込まれた人型のからくり。仙舟の安全を守るために作られた機械であるが、たまに暴走してこちら側を襲ってくる...........いや、フィールドにいるやつは大抵暴走してるから、欠陥だらけじゃない?
「今度はこいつを殺ればいいということだな。」
「........モーディス、大丈夫?」
「あぁ、問題ない。」
「メデイモス........」
「モスちゃん、無理ちないでね。」
「分かっている、トリスビアス。心配するな。」
「........あ、あのぉ、私もトリスビアスなのだけど、モスちゃん。」
「......心配するな、トリビー。」
「おお、なんか、トリビー呼び珍しい。」
「そういえば、黄金裔って確か十三人よね?何で十三人以上ここにいるのよ。というか、あのゲル状の物体はなんなの?」
「オイ!オイラをゲル状の物体って呼ぶなよ!オイラはザグ、いや、バトルスっていう名前があるんだぞ!」
「....まぁいいわ。とりあえず始めて。」
「無視すんなよ!」
バトルス、これは仕方ない。明らかに私たちの中で人間じゃなくて、なおかつ生物とも捉えられないような見た目をしちゃってるから。
「なんでオイラは此処に来てからこんなに不憫なんだよぉぉぉ!」
↓(三人称です。)
「動き出したか。」
門番が持つ警棒が虚数の光を帯び、頭部のライトが光る。その巨体は軋むような音を立てながら立ち上がり、彼らを敵として認識し、戦闘態勢に入る。
「まずは僕からだ。喰らえ!明日のために!」
ファイノンが剣を高らかに構え、前方の門番に斬りかかる。剣は門番の警棒に防がれ、拮抗する。だが、
「くうっ」
ファイノンが押し負けた。
「ファイノン!」
「あら、通常攻撃判定ね。」
「ファイちゃん、もしかちて。」
「くっ、救世の力がないから、剣に今までみたいな力が込められない。」
「やはり私やメデイモス、ヒアンシーだけではなかったのですね。」
「ファイノン様.....」
「危ない!」
背後から警棒が迫る。
「下を向くな!救世主!」
すると、鮮血の如き真紅の結晶が、ファイノンに迫る攻撃を防いだ。
「め、メデイモス!」
「ぐ...!」
地面に突き立てた拳から、そして、モーディスの口から血が流れる。黄金裔であった彼ならば問題などない負傷、しかし、今の彼は、
「これしきのことで、止まると思うなよ........クレムノス人の辞書に、不可能という言葉は、ない..........!」
彼の血が固まり、結晶となっていく。そして、モーディスの足を起点に波状に結晶が突出し、門番を貫いた。
「死を......受け入れよ!」
拳で砕くと同時に、大地から生えたそれらが爆ぜる。門番の体の損傷が目立ってくる。だが、
警戒形態、移行
門番の周囲に金魚をかたどった機械が現れる。
灯火龍魚
警戒形態に入った金人門番が繰り出す兵器であり、奴らは場に出てからすぐに行動を開始する。
「まずい、あいつらはすぐ!」
「メデイモス!」
「不覚を取ったか.........」
「モスちゃん!頭を下げたまんまにちてて!」
「む?」
モーディスが背後に目を向ける。そこには、
「トリアン、久しぶりだけど大丈夫?」
「問題ないぜ、トリビー。射角よーし、狙いはあのごっつい機械!」
「燃料、問題ありません。」
トリビー、トリアン、トリノンの3人がロケットを準備する姿が。
「皆でいくよ!せーのっ!」
「「「西風に乗ってぇ、しゅっぱーつ!!」」」
3人の手によって準備されたロケットが門番に当たり、爆発する。
「それだけで終わると思わないでね!」
「もういっちょう!準備万端だぜぇ!さぁ、飛べぇ!」
トリアンが乗ったロケットが寸分の狂いなく敵陣に突っ込み、辺りを巻き込んで爆発する。そして、爆発に巻き込まれた龍魚は大破、門番を巻き込んで更に爆発を起こした。
「トリアン、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だぜぇ、ぼくを、なめるなよぉ?」
ふらふらになりながらもグッと親指を立てるトリアン。
そして、龍魚の爆発似よって遂に体を維持できなくなった門番は膝を突き、爆発音を立てながら消滅していった。