明日を越えた未来の日常   作:まな板とベーコン

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#5 相対するのは

すみません、言葉の意味を分かってなくてヤバい単語を入れていました。3月4日にその部分だけ修整いたしました。

―――――――(

 

「やったね、トリアン。」

 

「へへーん、どうってことないぜ!」

 

「それにしては、まだふらふらしてますけど......」

 

「さすがです、師匠。」

 

「んぅ、ら、ライアちゃん、ちょ、前髪が。」

 

わしわしもちもちされてるトリアンだけど、言葉に反してとても嬉しそう。私もやっていいかな?

 

「やめてやれ。」

 

「じゃあ代わりにサフェル撫でとくね。」

 

「いや、もうさすがに喰らわないよ。」

 

ば、馬鹿な........サフェルが学んでいる!?

 

「グレっちってホントに思ってることが顔に出やすいよね。失礼なこと考えてるのが丸わかりなんだけど。」

 

ソンナコトナイヨー、ピューピュー

 

「口笛下手か。」

 

「っ、はぁ、はぁ」

 

「モーディス様、しばらくは安静にしてください。いくら痛みになれてるからといって、紛争の権能なしに、まして、黄金裔の血もないのにあんな無茶な戦い方をしたら、いつか死んじゃいますよ。」

 

「........済まない。」

 

「今解析してみたのだけど、モーディス、だったかしら?貴方の能力は自身のHPを削って力に変えるもので合ってる?」

 

「相違は、おそらくない。」

 

「.......そう、厄介ね。」

 

「厄介、ですか?」

 

「ええ。本来この世界で受けたダメージって現実(こっちの世界)に影響がないようになってるの。痛覚は多少働くけど、肉体に損傷は出ないのよ。だけど、その猟犬クンは違う。能力を使って攻撃したと同時刻にバイタルに異常が出たのよ。医療班に調べてもらったら、肉体じゃなくて心臓の異常で起きたらしいの。つまり、現実であれ模擬宇宙であれ、猟犬クンが能力を使えば死に確実に近づいていくってことが分かったってわけ。」

 

「そ、そんな......」

 

「メデイモス......」

 

「.....フンッ、何を今更。分かっていたことだろう。」

 

額に汗を滲ませながら立ち上がるモーディス。その顔は今はすまし顔だけど、さっきまでの顔は.....

 

「次に行こうとしてくれるのは嬉しいけど、貴方はここでリタイアよ。」

 

「........」

 

「幸い、さっきの戦闘で運命の判定が出たから、もう無理しなくていいの。というか、ここで先に進むよりも、貴方には医療班のいる場所に行って治療とか検査とかしてもらいたいから。拒否権はないよ。」

 

「.......そうか。」

 

そう言って、モーディスは私たちに背を向けた。

 

なんとなく、その背中からモーディスの気持ちがわかる気がする。

 

全身が青に包まれ、透けていく。そして、パラパラと体が崩れていき、モーディスは模擬宇宙から強制離脱させられた。

 

「はぁ、そこのピンク髪のツインテールちゃん、心配しなくても大丈夫だよ。ここの医療班は優秀だから、ある程度の死に際のやつでも治せるよ。」

 

「そう、ですか。」

 

「ヒアンシー....」

 

そっか、ヒアンシーの力はもろに黄金裔の血と記憶の精霊(イカルン)の力だったっけ。今は治せないから、きっと辛いんだろうな。

 

「どうか、モーディス様を、お願いします。」

 

「間接的にだけど、危険な状態にしたのは私たちだから、言われなくても、全力を尽くすよ。医療班がね。」

 

そう、だよね。当時のオンパロス(あっち)で戦ってた時はなんにも思わなかったし、皆も気にしてなかったけど、あの時は現実じゃなくてデータだった。敵の攻撃は痛かったし、私も一度死んでいたわけだから、痛覚はあったんだと思う。それでも、永劫回帰を含めて、死んでも蘇れるっていう確信があったからこそ誰も止めなかったし、暗黒の潮の脅威もあって止められなかっただけ。今そんな戦いをしろなんて言う仲間はいない。それが分かってるからこそ、モーディスは.....

 

「とりあえず、進もうか。」

 

「そうね。早く終わらせて、モーディスのところに行きましょう?それに、お腹が空いてきちゃったし。」

 

「あ、そうか。ご飯食べてなかったね。」

 

「なら、久しぶりに星が作るのはどう?ほら、星って結構ご飯作ってるし、おいしいから。」

 

「フフン、まぁレシピがあるし、一瞬でパパっと作れちゃうからね!」

 

「いや、まな板やフライパンを使ってるだろう。」

 

「あ、ごめんごめん。発作が。」

 

いっつもEscを押して、合成メニューから作ってるとか言えない。

 

「あら、ならお願いしようかしら。」

 

「星の手料理ですか......」

 

「むっ、ご飯の話か?」

 

「はぁ、先に進むぞ。今はそれが最優先事項だ。」

 

「そうだね。それじゃあ、進もうか。」

 

いろいろあって、皆の顔が暗くなってるけど、まずはやることをやろう。そうして、また私たちはワープゲートを進んでいく。

 

 

「ここは........」

 

「夜、だね。ははっ、太陽が昇ってないや。」

 

「それに、高い建造物があちこちに建っていますね。」

 

「星、向こうから虹のような光が出ているぞ。あれは何だ?」

 

「あれは、多分景色として記録されてるから、ここだと近くでは見れないけど、多分スラーダ社だと思う。」

 

「スラーダ?」

 

「ピノコニーっていう星にある会社で、甘い炭酸水を売ってる飲み物屋だよ。」

 

「炭酸水........おいしいのか?」

 

「うーん、炭酸が大丈夫なら、おいしいんじゃないかな?爽快感があるし、甘くどくもないから。」

 

「なるほど、飲んでみたいな。」

 

「ピノコニー、宴の星と名高い場所か。あの少女と見たが、確か夢の中にある都市、であったか。どのようにして国家が成り立っているか分からないが、僕も行ってみたいものだ。」

 

「なら、次はピノコニーに行くか?カイザー。」

 

「.....いや、まずは羅浮からでいい。剣旗卿、お前に早く本物の海を見せてやりたいからな。」

 

「カイザー。」

 

「その話は後だ。今はまず、この奇妙な敵を打ち倒すぞ。」

 

目の前に佇むのは、黄色を基調とする機体、ナイトメア劇団 スウィート·ゴリラだ。厄介なのは、強攻撃の直前に靭性を削れなくなること。そして、背中に背負っているスラーダ瓶を投げつけてくること。あの瓶のダメージはとても高い。一応弱点もあって、シールドを獲得した状態だと、スラーダは逆にゴリラの方に跳ね返って、ゴリラ自身に高いダメージを与えられるんだけど、

 

「すまない。生憎、今の状態で存護(あの力)は使えそうにない。」

 

丹恒は他の力が使えても、やっぱりオンパロスの半神の力は使えないみたい。

 

「ウチもシールドを張れるけど、さすがに皆に張る時間が.......」

 

なのも1回につき1人にしか付与できないから、多分間に合わない。

 

「そう言えば、カイザーは戦えるのか?」

 

「ふん、問題ない。」

 

良かった、カイザーは戦えるみたい。

 

「―と、言えれば良かったが、今僕には戦う力が一切ない。」

 

「え?」

 

「法の権能がなければ、僕は指揮しか出せないただの凡兵だ。戦力として数えることはできないだろう。」

 

「そんな......」

 

一応、機動力に長けたメンバーは多い。ファイノン、セイレンス、アグライア、サフェル、丹恒。遠距離は私、なの、キュレネ、トリ三姉妹、アナイクス先生。一応医療担当として、ヒアンシー。

 

だけど、肝心の半神の力が使えないから、丹恒以外の前衛殆どが通常攻撃しか使えないし、遠距離のメンバーも、なのと私は.......あれ?記憶(今の私)って、戦えるのかな?ミュリオンは側にいるし、一応記憶は、半神になる前になったから、一応はサポートできるよね?でも、なのはもう長夜月じゃないから精霊を出せても戦いに使うことはできないし、キュレネはそもそも記憶の精霊だから..........

 

「駄目だ、それでも足りない。ねぇ、ヘルタ!これ、クリアできなくても大丈夫?」

 

「駄目よ。」

 

「え?なんで?」

 

「採点銃のシステムをここに取り込んじゃったせいで、ここをクリアしないと、どんな運命を進んでいるか、それと、どうして力がなくなってるのか、それが分からない。解析結果がでないまま終わっちゃうってわけ。さすがの私も、スクリューも、これは変えられなかった。」

 

「つまり、クリアしろっていうこと?」

 

「そうね。そして、今回でクリアできなかったら、あの猟犬クンにもう一度力を使わせることになる。」

 

「...........」

 

「........そう不安になるな、救世主よ。」

 

「カイザー?」

 

肩に手をポンと置いたのはカイザーだ。けど、その顔にはいつもの不敵な笑みではなく、とても優しい微笑みが浮かんでいる。

 

「確かに僕は力が使えなくなった。皆への激励も、敵への攻撃の手段もなくなった。だが、使えなくなった駒ではない。自分で言うのもなんだが、所詮は元から、僕は敵を殺す(取る)ことができず、ただ地べたを這いずるキングにすぎない。だが、一歩一歩確実に歩む力がある。それに、ポーンと同様、敵陣にさえ足を踏み入れれば、あらゆる可能性を有する特異点にもなれる...........もう火追いの旅も終わった。今も、クレムノス王の負担を最小限にするための絶対条件があるとはいえ、失敗しても、本当に死ぬわけじゃない。最悪、この身を盾にしてでも攻撃を止めてみせよう。」

 

「カイザー!」

 

「剣旗卿、これは事実であり、そして、僕が最も役立てる配置や役を提案したに過ぎない。そしてこの案は、決して命を捨てるような無謀なものじゃない。僕の代償は肉体の成長の停止だ。かのクレムノスの王よりも余りに安い対価だ。金織卿も、運命卿も、天空卿も、駿足卿も......後の黄金裔となる者たちに強いられた代償は、あまりにも重い。無論、剣旗卿もだ。」

 

「.......」

 

「このままでは、僕は本当の役立たずになる。盤上にすら立てない、役割のないものに。僕は、それだけは避けたい。」

 

「カイザーは役に立っている!あの時もそうだった!」

 

「そうか?僕はあの時も、ただ盤上に立っていただけに過ぎなかった。多くの戦士たちの死を代償に、()()()()()()()()()()()()()()を手繰り寄せただけだ。だが、犠牲の上で得る答えなど、僕以外でも手に入れられる。」

 

「それは......だが、その答えに至るまでの活路はカイザーが。」

 

「だが、貴公に全てを背負わせてしまった。」

 

「....!」

 

「........そういうわけだ。だが、僕が当時のことを後悔すれば、かの戦士たちに向ける顔がなくなる。僕だけは、あの時の犠牲を美化してはならない。だから、僕はあの時の判断を最善であると考え続ける。後悔などもしない。暴君と呼ばれてもいい......僕は全てを背負って生きる。」

 

それ以上、カイザー、いや、ケリュドラが当時の続きを喋ることはなかった。アグライアもトリビーも、へレクトラも、そのことについて言及することはなかった。

 

「話がそれた。つまり、先ほどの内容が、僕がもたらせる最善の手だ。敵をかい潜る盾でも、敵の隙を見出し活路を作る矛でも、なににでもなろう。」

 

これからのため、平和な明日のために勝つぞ。

 

そう言って、ケリュドラはスウィート·ゴリラの方を向いた。その背中がなぜだかとても大きく、頼りがいのあるものに見えた。

 

「そうだね。戦力が足りなくても、頭を使って補えばいい。そのために。」

 

私はカイザーの隣に立って、目を向ける。

 

「どうする?救世主、いや、星。」

 

不敵に微笑むカイザーに対し、私も不敵な笑みで返す。

 

「私たちの活路を開いて。私たちを王手へと導く、的確な指示を頼むよ、ケリュドラ!」

 

「ふっ、任されたぞ。」

 

「頼んだ、カイザー。私も、皆を守り、敵を穿つ盾と矛になろう!」

 

 

↓(三人称です。)

 

全員の覚悟が決まる。

 

圧倒的戦力差。圧倒的不利。だが、誰一人として下を向くものはいなかった。

 

「それでは、手はず通りあの巨猿の一撃を叩き込まれる前に、周りを削り、こちらが攻め入る道を作る。剣旗卿、錬金卿、頼んだ。」

 

「了解した。」

 

「私の出番ですね。」

 

先に前に出たのはセイレンスとアナイクス。

 

「長い時を経たせいで剣筋が鈍っている。今後のためにも、カンを取り戻そうか。」

 

流れるような剣捌き。その一挙一動が美しく、優雅なダンスを見ているようだ。だが、振るわれた剣は敵の弱点を寸分の狂いなく斬っていく。スウィート·ゴリラが召喚した犬型の機械、ナイトメア劇団ソーダ·ドッグは物理弱点であり、セイレンスはカイザーの指示に従い的確にソーダドッグを削っていく。

 

「くっ、旋律に力が込められない。」

 

だが、海洋の半神でなくなった彼女の力は万全でなく、完全にソーダドッグを倒すことは叶わない。

 

「問題ありません、セイレンスさん。私がやりましょう。」

 

アナイクスが構えるのは彼特性の銃。セイレンスは剣撃を繰り出し、そのままの流れで射線から外れる。その銃が狙うはソーダドッグの集団。だが、1丁の銃が複数の敵を撃つには時間がかかる。

 

「錬金術を研究する過程で得た技術を組み込んだこの銃は、このような事もできるのです。さぁ、狂うがいい。」

 

光り輝く黄金の壺が銃に装填され、引き金が引かれる。銃から発射された弾丸は一体のソーダドッグを貫く。だが、その弾丸は止まることなく、即座に跳弾し、次々に他のソーダドッグを貫いていく。そして、弾丸を撃ち込まれるたびにソーダドッグたちに弱点が発現していき、ついに全てのソーダドッグの靭性が撃破された。

 

「私の弾丸は魂を狙い撃ちます。回避は不可能です。」

 

「道は開いた。行け、星!」

 

「ありがとう、セイレンス、アナイクス先生!」

 

動けないソーダドッグたちが作った細い隙間。その間を軽やかに飛び、駆ける一行。

 

「巨猿が動いた。記憶卿!」

 

「....あっ、ウチ!?変な呼ばれ方されて一瞬わかんなかったよ。それじゃあ、アグライアに向けてぇ、ビュン!」

 

なのの力でアグライアにシールドが付与される。

 

「ありがとうございます、三月さん。シッ」

 

しなりの強い黄金の細剣が細身の腕により振るわれる。通常の剣よりも圧倒的に柔らかい刀身でありとても扱いづらい一品であるが、かの金糸を操る金織の手にかかれば、軽々と敵を斬り伏せることができる。

 

「ラフトラがいないので、手数は圧倒的に少なくなりますが、速さだけは、セファリアに及ばずとも多少の自信があります。」

 

目にも留まらぬ速さでスウィート·ゴリラに傷をつけていく。そして、自分の周りを動き続けるアグライアに攻撃を仕掛けるゴリラ。その投擲の命中精度は高く、移動し続けるアグライアにスラーダ瓶が当たる。しかし、その瓶はなのかによるシールドに弾かれ、ダメージを喰らった。

 

「ウチのシールドに攻撃を当てたねー!じゃあ、この特性の矢を、喰らえっ!」

 

なのかが矢をつがえ、放つ。その矢は真っすぐスウィート·ゴリラに向かって進んでいき、当たった。そして、矢を起点にゴリラの身体は氷に包まれ、完全に動きが止まった。

 

「久しぶりの槍だ。鈍ってないといいが。」

 

丹恒は携えた愛用の槍を自在に操り、動けなくなった周りの敵を吹き飛ばしながら、スウィート·ゴリラに斬りかかる。

 

「洞天幻化、長夢一覚。セァッ!」

 

長槍から繰り出される一撃。そして、纏った風よりその切れ味は更に増し、深い傷を作る。

 

「くっ、あと少し届かないか.........!」

 

「問題ないわ、丹恒!」

 

致命傷に至らなかった傷。その攻撃により凍結が解けたゴリラは丹恒に狙いを定める。しかし、傷ついたことにより生じた隙をキュレネは見逃さない。

 

「なのかから見習ったこの弓術、なめないでよね!」

 

「え、ウチキュレネの弓術の先生だったの!?」

 

放たれた矢は真っすぐにゴリラの頭部に直撃し、攻撃の手が止まる。靭性も撃破され動けなくなったスウィート·ゴリラに迫るのは、

 

「出番だよ!」

 

「みゅ!」

 

ミュリオンと星。

 

「最大の隙は作られた。打ち倒せ、星!」

 

「ここで叩き込む!」

 

星の持つ羽根ペンに力が行き渡り光を放つ。それと同時に、ミュリオンの身体はみるみる大きくなっていく。

 

「いくよ、ミュリオン。」

 

「めみみゅ!」

 

「私たちに不可能は、なーい!」

 

「みゅー!」

 

ミュリオンの巨体から繰り出されるのはシンプルな叩きつけ。しかし、その巨体ならではの質量と規模により、その攻撃は強烈な一撃へと変わる。叩きつけられたゴリラの身体からは煙が上がり、関節と思しき部位からは火花が散っていた。

 

「これでもまだ倒れないか。」

 

「まずいよ、丹恒!このままじゃ瓶を不法投棄されちゃうよ!」

 

「大丈夫よ、なのか。最後の攻撃が残ってる。」

 

「そうだよ、なの。キュレネ、もう一回!」

 

「みゅ!」

 

彼女らが繰り出すのは、オンパロスの命運を決める最後の戦いで得た一撃。

 

「「せーのっ、物語を紡ぐ!(みゅ!)」」

 

彼女らが長い間紡いできた物語の力。その重みと分厚さは、どのような物語にも負けない。そして、紡いできた物語に宿る圧倒的力に成すすべもなく、スウィートゴリラ含めたナイトメア劇団らはその機体を維持できず爆発し消えていった。

 

↑(三人称終わり。)

 

「ふー、終わったぁ。」

 

「めみめみ、みゅぅぅ。」

 

「ご苦労だった、2人とも。それに、他の皆も良くやってくれた。我々の勝利だ!」

 

「メーレでも飲むか?」

 

「剣旗卿、まだ戦いは終わっていないのだ。酒を入れてどうする。それは終わってからにしろ。」

 

「では、終わったらカイザーも飲むということだな?」

 

「........言質を取られるとはな。いつからそのような手を使うようになったのだ?まったく.......付き合うとしても一杯だけだ。」

 

「♪」

 

あ、セイレンスめちゃくちゃ嬉しそう。

 

「相棒、立てるかい?」

 

「ありがと、相棒。」

 

ファイノンの手を借りて立ち上がる。

 

「ちょっとぉ!アタシの出番なかったんですけど。」

 

「これは皆様の力の判定を出すためのものなので、サフェル様は最初に戦っていましたし、仕方がないかと。」

 

「そうですよ?サフェル様。それに、無理して参加して怪我をしても、今は治せないんですからね?」

 

「あー、そっか。アタシの自慢の足も今は使えないし、そう考えたら仕方ないのかな?」

 

「戦闘スキルや必殺なしで良く倒せたわね。さすがに驚いたわ。」

 

「あ、ヘルタ。」

 

「見ていて時々ヒヤヒヤしたけど、さすがはオクヘイマを統べた王様、といったところかしら?的確な指示だったわ。」

 

「指示を出しただけにすぎない。それよりも、だ。魔女卿、これ以上の無茶はできないぞ。此度の一戦で皆は疲弊しきっている。持ってあと1、2戦といったところだ。それ以上あるならば休息を取らねばならない。」

 

確かに私も疲れたし、ほかの皆も結構疲れてる。連戦はキツそう。

 

「大丈夫よ。次で最後だから。休憩するのは構わないけど、終わったらすぐ行ってね。」

 

「..........僕は先に進んでるよ。」

 

「ファイノン様、休憩しないのですか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ、ヒアンシー。それに、先に行ってすぐ戦うわけじゃない。皆を待つつもりさ。ただ、気持ちが少しはやっていてね。メデイモスに僕がどれだけこの世界で敵を倒せたか報告したいし。」

 

「ファイノン、またモーディスと競おうとしてる.......」

 

「ファイちゃん、それでも休憩しないとだめだよ?今はまだ動いたばかりで感じていないだけで、ちゃんと疲れてるはずだち。」

 

「無理は禁物だぞ!」

 

「座って待つのも、体力を早く回復するためのコツですよ。」

 

「........わかったよ、トリビー先生にトリアン先生、それにトリノン先生。ちゃんと休まないとね。」

 

「そうよファイノン。どんなときでも冷静に、ね?」

 

「ははっ、そうだね、キュレネ。」

 

ふぅ、なんか一瞬だけピリピリしてたけど、なんとかなって良かった。やっぱりファイノンもモーディスが心配なんだね。早く見舞いに行くためにもしっかりと休んで体力を回復させよう。

 

 

「それじゃあ、行こうか。」

 

「この先に、今までよりも遥かに強い敵がいるのか。」

 

「そう、ではあるんだが.......」

 

「どうしたの?丹恒。」

 

「いや、気にするな。」

 

「?」

 

変な丹恒。

 

そんなこんなで、皆で赤いゲートをくぐり、遂にボスの部屋に着いた。

 

「こいつは........」

 

「ちょっとヘルタ、これどういう事!?」

 

「どうもこうも、ライコスよ。いや、貴女たちの前ではこういった方がいいかな?」

 

 

ザンダー·ワン·クワバラ

 

あの時ぶつかった最悪の敵が、目の前に鎮座していた。

 

 

 

 

 

 

「............あれ?ファイちゃん?」

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