「っはぁ......はぁ......!」
一寸先すら見えない夜の闇の中、1人の女性がその闇を走り抜ける。
まるでその足取りは悪魔を恐れる天使のようだった
「ゲヘヘ......ついに追い詰めたぜ...お嬢さんよぉ」
「こっ、来ないでっ!」
やはり悪魔は天使を追い、その可憐な翼を袋小路へと追い詰めた。
これから起こるであろう悲劇的な末路を想像し、天使はぎゅっと瞳を閉じ、その『末路』を待つ
だが
「悪いが、お前のような悪魔にこの可憐な天使は似合わない」
ダンッ!!
「ぐあっ!?」
あらゆるものを壊さんとするその巨体を、1人の青年がそれを阻んだ。
「君に涙は似合わない」
天使の瞳から溢れた小さな雫を青年はそっと拭い、少しキザっぽいセリフで飾った
「あなたは......?」
「......Code No.7...ただの名もなきエージェントさ......」
「素敵......」
天使の潤んだ瞳、そして唇が彼女を守り通したエージェントの瞳に映る。
そしてその情熱を形に________________________________
『あー......楽しんでいるところ悪いが......そろそろ起床の時間だ、セブン』
「.........んごっ......?」
「good morning,seven.」
一人の青年は、何者かに幸せな夢から目覚めさせられた。
眠たげな目を擦り、『セブン』と呼ばれた青年はようやくその意識を覚醒させた。
「ふわ......おはよう...『ゼロ』」
起床した青年の目の前にいたのは......
「ふっ...君のようなエージェントがそんなだらしない姿で大丈夫か?」
『メカメカしい人型の何か』
側から見ればその機械と青年は平然と、何事もないかのように話し続けている奇妙な光景。
「...ふっ...ゼロ、軽いジョークさ。エージェントたるものウィットに富んだ回答を求められるだろ?」
「ははは...great.そんな君に今日もとっておきの依頼を用意している。」
やれエージェントだの、やれ任務だのドラマや映画の中でしか聴くことはないであろうセリフを平然と吐く二人。
「Neighborhood cleanup......それが君の、今回のミッションだ」
「......町内に潜む汚れの数々を除去せよ...」
詰まるところ町内清掃である。
「はぁ...エージェントの型番だって持ってるんだから、もっと銃撃戦とか派手な任務にあたりたいんだけどなぁ......」
「自らが住むゾーンを清潔に保つことも、エージェントの勤めだ」
「......ま、その通りだ......コードNo.7、ミッションを開始する」
そう言ってセブン......『万津 莫』はタオル片手に顔を洗いに行くのであった。
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「おはよう莫ちゃん」
「おはようございます!」
「よっ莫、朝から掃除なんて偉いな!」
「ふっ...これも歴としたミッションだ。卒なくこなすのがエージェントのあるべき姿......」
「おお、今日も訳分からんが頑張ってんな!」
莫は好青年である。
日頃から『ミッション』や『任務』と称して町内の清掃や迷子探しといった様々な人助けを行なっている。
そのため、町内での人気はとてつもなく大きい。
「莫が人助け...ってことは一山ありそうだな......」
「そうねぇ、今日は野球ボールってところかしら」
「いやいや...いくら『不幸体質』の俺でも連日何か起こるなんてことは“っ!?!?!?」
「ほら来た」
「あら、サッカーボールね...」
清掃中の莫の後頭部にクリーンヒットしたのはどこからともなく現れたサッカーボール。
「すみませーん。ボールとってくださーい」
「イタタ......はい、ボール!次からはちゃんと公園で遊ぶんだよ!」
ボールを莫へと蹴った当人たちである子供に莫は優しく注意をし、再び清掃活動に戻る
「おお、やっぱあの程度じゃ動じないな」
「サメに噛まれたり雷に打たれるぐらいじゃないと。...ってどっちも経験してたわねあの子」
お察しの通り、万津莫は極度の『不幸体質』である。
趣味の欄に『人助け』と書くほどお人好しの莫であるが、その人助けを行うたび莫は不幸にさらされて来た。
今回のように軽い不幸もあれば、自らの命に関わるような重いものまで数々。
そのため病院の常連でもある
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「よし......ある程度は終わりか......もしもし、こちらセブン、ミッション完了だ」
『OK,seven.今夜はカレーを用意してある。迅速に帰投しろ』
少し遠くまで清掃を行なっていた莫は同居人の『ゼロ』に連絡を入れ、帰宅の準備をする
「......?あれは......人!?」
誰の目にも着かないような場所で、誰かが倒れている。
やはり莫はその倒れた誰かに駆け寄り、介抱をしてやった。
「この子...は...」
特徴的な狐の面、そして和装
「百鬼夜行の生徒か......?いや、それならD.Uまで来る理由は......」
ここで、一つ説明を入れよう
莫が暮らすこの都市は『学園都市キヴォトス』
幾千、幾万の学園が重なり合ってできた巨大な都市である。
莫が住む場所は『D.U地区』という比較的都会に近い場所
一方推定だがこの少女の様相から見て所属は『百鬼夜行連合学園』立地としてはかなりの距離である
「いや...怪我人に変わりはない。とりあえず病院に...」
「っ......ぅ...にげ......なさい......っ」
莫がその少女を背負うと、少女の口からか細い声が響いた。
キヴォトスの『生徒』は普通の人間に比べればとても頑丈な体をしているがため、血は出ていないが少なからず意識が朦朧とするのは異常事態の証。
少女を助けようと莫は動き出す、が
ダァンッ!!!
「っうおっ!?」
足元に何かが着弾した。
おそらく、弾丸
『......その娘を置いていけ』
「不良...?いやっ違う......!」
莫たちのかなり後方から銃のようなものを撃ってきたのは見たこともない形をした『化け物』
一瞬でその異様さに気づいた莫は少女を背負って駆け出した。
だが、ただの成人男性が人一人を背負って何かから逃げられるような走力を出すことはできない。
「はぁっ!はぁ...!」
莫は建物の中へと逃げ込んだ。
「誰か!!助けて!!!!」
どれだけ声を張り上げようとも、その声に反応を示す人間はいなかった
「なんなん...だよっ!!」
息を切らしながら莫は走る
走る
走る
走る
息を切らす
逃げる
逃げる
迫ってきてる
来てる
追ってきている
消えない
来る
『お前はどこへも逃げられない』
「ぐあっ!!?!」
足首を弾丸が掠めたのだろう。その影響で莫は派手に倒れた。
同じく、背中の少女も少し離れた場所へ放り出された
「はぁっ...はぁっ......!ひ...!」
『もう逃げ道はない』
莫は
エージェントなどではない。
ただの平和な土地で暮らしている一般的な成人男性に過ぎないのだ
それが、ただ町内活動をするボランティアだっただけ。
「っ.....!」
莫は手を伸ばした
莫は『人を助ける』と言う行為を諦めない。
自分がどんな不幸に晒されようが、彼は絶対に誰かを諦めないたとえそれが、身の丈に合わない正義だとしても
『お前に結局何ができる?』
『夢の中でしか誰かを助けられないお前が』
『何もできない無力なお前が』
『何ができるんだ?』
化け物の問いを
「......わかってるさ......っ......けど...俺はっ...自分じゃない誰かを助けたい......!それが夢の中でも......現実でも......!」
『身の丈にあわないお前の偽善をか?』
莫は
「......それでも......!」
その行動で、真っ向から否定した
「俺の心は......俺が1番わかってる......!」
莫は少女の手を掴み、守るようにして化け物を睨みつけた
その瞬間
「っ!?壁......って......ここ、は......」
化け物と莫たちを遮るように、壁が立ち並びそれが部屋となった
「......乗り越えたようだな、よくやった」
逆光でよく見えないが、そこはいつも自分が暮らす部屋。
「......ゼロ......?」
「ああ。その少女は私が休ませておこう。ご苦労だった、セブン」
階段の先でこちらを見下ろす影は、人間の姿をした『ゼロ』の姿。
「......機は熟した、と言ったところか」
そうゼロが呟くと、莫の傍にあったアタッシュケースが静かに開いた。
「......君には......夢を叶える力がある」
ゼロは淡々と、それを語った
「さぁ......セブン、本当のエージェントになる時だ」
莫......コードNo.7がアタッシュケースの中にあった『ベルト』のようなものを手に取り__________
「......
覚悟を決めた眼差しで、部屋の扉を押した。
__________________________________________________
『.......』
「......
化け物はさっきとはまるで雰囲気が違う莫を見て身の危険を実感していた。
『......悪夢は終わらない......』
「......お前があの子の悪夢なら......俺がお前を倒す」
その言葉に反応したかのように、銃の化け物は莫に向かって弾丸を放った。
だが
『ZZZ DRIVER』
それを完全に見切ったかのように、莫はドライバーを胸に装着した
そして____________________
『インパクト!!』
悪夢を打ち払う力を、その身に流し込む
『メツァメロ...!メツァメロ...!』
「
「変身!!」
ドライバーに装填した『フィジカムカプセム』をドライバーのラインに沿って回し、己が夢の力を解き放つ
『ッ!!』
化け物も負けじと弾丸を放つが、全てを見透かすように流れるエネルギーはその弾丸が莫の体を貫くことを許さない
『グッドモーニング!!ライダー!!!』
『ゼ......ゼ......!ゼッツ!!!』
物理音を奏でながら、莫は化け物ににじりより_____________________
『ぐはぁっ!?』
容赦なく拳を叩き込んだ。
莫の体にかかったモヤが払われ、洗練されたその肉体......ボディが現れる。
無機質な黒いラインにカプセムの赤く発光するエネルギーが流され、暗闇に映えるその姿が露わとなった
『インパクト!』
「...はぁっ!!」
驚異的な跳躍力により痛みに悶える化け物へ飛びかかり、再び拳をお見舞いした。
今度はそれを逃さぬようしっかりと掴みを入れつつ何度も拳を叩きつける
『っ!!調子に乗るなァ!!』
化け物もやられてばかりではない。謎の力により莫へ鎖を伸ばし、その強力な腕部を封じた。
「ぐ...っ...!」
だが、莫がその腕に力を込めれば再び腕部が肥大化し、それ以上鎖を引くことが不可能となった。
もちろん、脚部の筋力も傘増しされているため莫自体を動かすこともできない。
「困るんだよ......今は......今だけは...!ここは俺の夢だ!!!」
莫は腕から化け物と同じエネルギーを鎖に流し、逆に化け物を絡め取った。
『うおおおおっ!?!?!?!』
莫は強化された肉体で豪快に化け物を振り回し、強く地面へと叩きつけた。
『ぐ......ァ...!』
もはやトドメを刺すのみ。
莫はドライバー上部の『トリガム』を3度押し込んだ
「はぁぁぁぁぁぁ......!!!!!」
腰を低く落とし、脚部に筋力を集中させる
そして、カプセムを回した
「消えろ」
『インパクト!!』
『ぐあぁっ!?』
正拳突き
『7』
踵落とし
『7 7』
そして__________
「はああああああああっ!!!」
『バニッシュ!!』
体重全てを乗せた飛び蹴り
ライダーキックを叩き込んだ
『777』
『ZZZ』
『ぐああああああああああっ!!!!.....ぁ......ぐぅ......ぐぅ......』
化け物は紫の光に飲まれ、闇へと消えた
「ミッション......コンプリート」
莫はそう呟き、変身を解除
「......夢、じゃない......」
そしてようやく、今自分の身に起こったことが現実であることを再認識
「っ...!そうだ!さっきの子!!」
莫は急いで部屋を目指す。
彼はまた、自分ではない誰かを助けるために走った。
その姿勢は_____________________
彼の目指した『エージェント』そのものであった
好評だったら続けます
好評じゃなくても三話までは続けます