メデル・プルーフ   作:Cr.M=かにかま

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あけましておめでとうございます(^^)
今年最初の投稿です、今年もよろしくお願いします!


11.第二波

ライム達は二手に別れて宿を出発した。

ライム、イム、ハルクの三人は街でランダリーファミリーと名乗り悪事を働いている者たちを捕らえて尋問するために。

ミスティとレッドはミスティがこの街にやって来た本来の目的を果たすために別行動を取ることとなった。

 

本当ならばミスティ一人で行いたかったようだが、一人になることは何かと危険だし、誰かが危機に陥っても応援を呼ぶために必死の説得の末レッドと共に行動することで納得してくれた。

 

ライム達は現在ランダリーファミリーの主な活動場所でもある街の南側までやって来ていた。

 

「ここがランダリーファミリーがよく来るところか?」

 

「あぁそうだ、奴らが来るとは限らないが少なくとも俺たちは買い出しやら盗みやらで来ることが多い。警備隊も街の中じゃ一番少ないし手薄だからな」

 

「.....そんな堂々と悪事をバラされても」

 

ハルクの返答にライムは苦笑いしか出てこなかった。

 

「そういや、ミスティちゃんのここに来た目的って一体何なんだ?」

 

「それが俺にも教えてくれないんだよな」

 

「なんで?あんたの目的は教えてるんだろ?」

 

「あまり深入りしない方がよさそうだったからな、聞こうとするとミスティが普段見せない表情浮かべるし。俺、その表情何か苦手なんだ」

 

「ま、人には探られたくないことの一つや二つあるもんだからな。知らないんなら詮索はしねぇよ」

 

「助かるよ」

 

ハルクはここで煙草を二本取り出して二本とも口に咥えて吸い始める。

 

「ハルクって結構吸うんだな」

 

「これがないと頭回らないんだわ。でも最近値上げしやがったから、主に盗んでるのはこれだ」

 

「ちょ、ハルク兄も盗みやってたのかよ!」

 

「やってたよ、こっそりな」

 

「そんなことするなら禁煙しなよ、体にも今後にも絶対悪いことしかないよ!」

 

「若の頼みとはいえコイツだけは手放すつもりもやめるつもりもない」

 

自由な奴だな、ライムがハルクに抱いた第一印象だった。

どこかイムにも頼られている感じはあるのだが、それでも自分の信念は曲げない。それでいて自由な男だった。

 

「とりあえずどっかで茶でも飲んでゆっくりしようや。歩きっぱなしってのも足腰に悪い」

 

「.....ハルクって意外に老けてたりする?」

 

「俺はまだ20だが?」

 

「え、思ったより若い」

 

「どういう意味だコラ?」

 

口に咥えた煙草を一つ手に取り地面に落として踏みつける。

火が完全に消えるまでハルクは煙草を踏んだ足をぐりぐりと動かす。

 

ひそひそひそ、ひそひそひそ。

 

「いや、ミスティより歳上なんだなって思って」

 

「え、あの人ハルク兄より若いの?」

 

ひそひそひそ、ひそひそひそ。

 

「一応あいつ十代だぞ」

 

「マジで!?」

 

「そいつは意外だな」

 

ひそひそひそ、ひそひそひそ。

 

「.....若、ライム。ちょっと移動するぞ」

 

「あ、う、うん」

 

「おう」

 

ハルクに従い、ライムとイムは近場の路地裏に移動する。

路地裏と言っても家と家の隙間だけではなく、小さな商店街のような道となっていた。

それでも表通りと比べると通行人は少ない。

 

「お前は気がついたか?」

 

「いや。何か見られてる感じにしか」

 

「それでいい、どういうことだ?」

 

ハルクは表通りを見ながら疑問を浮かべる。

 

「いつもなら俺たちが街に出てもこんなに見られることはない。店の奴らから警戒されることがあってもそこらの奴らは素通りするだけだ」

 

ハルクの言葉にイムが「それ盗みの常習犯って意味じゃ」と叫んでいる気もするがここは無視する。

一々反応していては話が進まない気がする。

 

「それが昨日今日こんな感じだ。指名手配犯にでもなった気分だぜ」

 

「.....ん?昨日もこんな感じだったのか?」

 

「あン?そうだな、もうちょっと前からかもしれないが正確には覚えてねぇ」

 

ハルクが煙草を追加しようとポケットに手を伸ばした時だった。

ライム達の視界に映る目の前の店から凄まじい異臭が放たれた。

 

「この臭いは...!」

 

「若、ライム!伏せろ!!」

 

ハルクが声を上げた瞬間、店が大爆発を起こした。

 

周辺はパニックになり、道行く人々は目の前の現実から目を背けようと逃げ惑っているのか、それともこのことを伝えようと知り合いの元へ向かっているのかはわからない。

 

ライムは歯を噛みしめる。

 

「硫化水素...!何の店かはわからねぇが、火を取り扱ってたんだろうな!」

 

「クソ!なんなんだよコレは!?」

 

「おい、あれ!ハルク兄!」

 

イムがライムとハルクに声を掛ける。

イムの指差す方向には店の二階の窓から脱出する二人の怪しい人物がいた。

路地裏の方向の窓から脱出しているため野次馬達は気がつかない。

 

「逃がすか!」

 

「ハルク!」

 

ハルクはそのまま家の壁を蹴り、屋根まで登って人影を追いかけ始める。

ライム達も追おうと路地裏から表通りへ行くが、表通りでは野次馬達が多すぎて進むことが難しくなっていた。

 

「あいつ、早すぎだろ!」

 

「ハルク兄はファミリーの中でも1、2を争う実力者だからね!」

 

ライム達は野次馬達を掻き分けてハルクを追いかける。

店は轟々と音を立てて炎が上がっている。

あの中に助かる者たちが何人いるのだろう、自分は助けられる命を見殺しにしてもいいのだろうか。

 

ザッ、とライムは立ち止まり方向を変え店を睨みつける。

しかし、進むことはできなかった。

 

「.....ッ!」

 

炎、それだけがライムの足を止める足枷だった。

炎を見るたび二年前のトラウマが、悲劇の光景が頭の中でフラッシュバックしてしまう。

 

それでも、心に傷を負ったままでは前には進めない。

 

助けられる命を救うためには立ち止まったままではいけない。

 

「.....できるかよ」

 

ライムは独り言を小さく力強く呟く。

 

「もう二度と、あんなことはごめんだ、クソッタレェ!!」

 

ライムは叫ぶ。トラウマと戦うように一人前進し始める。

 

「え、ちょ、そっちは!?おい!」

 

イムの止める声が聞こえた気がする。

野次馬達の喧騒がより一層騒がしくなった気がする。

 

そんなもの今のライムには聞こえなかった。

 

今の彼には中に取り残されているかもしれない生存者達を救うことしか見えていなかった。

 

「目の前に助けられる命があって、助けられる能力があって、素通りできるかってんだよォォォォォ!!」

 

ライムはそのまま炎の中に飛び込んで行った。

 

 

 

「待てやコラァ!」

 

その頃、謎の人影を追いかけているハルクは器用に屋根から屋根に飛び移り二人に接近していた。

どうやら彼らにそこまでの身体能力はないようで、スピードもハルクよりも遥かに劣っていた。

 

二人組は屋根の移動では追いつかれると判断したのか路地裏に移動する。

 

「どこだろうが逃がすかよ!」

 

ハルクはそのままスムーズに路地裏に移動して追いかけ始める。

現在彼は一本も煙草を咥えてはいない。

 

『あー、テステステス。こちらRF085番、応答願います』

 

『クソ、しつこいなあの野郎!一体何なんだ』

 

『静かにしてろRF152番。通話中だ』

 

『それでも少しは緊張感ってモンを出してくれよ!このままじゃ空気読めねーKYみたいな存在だぞ、お前!』

 

『あ、はいはい。それで、はい、きちんと任務の方は』

 

『聞けやゴるぶぁ!?』

 

『どうし、ガッ!?』

 

「ごちゃごちゃやかましい!」

 

明らかに肉声ではない電子音で会話する二人に追いついたハルクはそれぞれ頭に攻撃を加えて地面に倒す。

二人の容姿はコピーでもしたかのように同じものだった。

黒いヘルメットに機動性に優れてそうな黒いライダースーツを身にまとっていた。

 

ハルクはそのまま二人組の片割れの腰に座りこみ、もう一人の首を掴み、路地の壁に叩けつけてドスの効いた声を静かに出す。

 

「テメェらは何者だ?」

 

『ガッ、はっぁ、だ、誰が貴様みたいな若造にィギ!?』

 

「いいから答えろよ。黙秘権を使うってんなら容赦なくテメェの人生終わらせてやってもいいんだぜ?」

 

『そ、そんな脅しが効くとでも...!?』

 

ハルクは首を絞める力を更に強める。

メキメキとハルクの腕から血管が凄まじい勢いで浮かび上がる。

 

「冗談だと思ったか?」

 

ハルクは感情のこもってない声で笑いながら語りかけた。

 

『ヒッ、わわわ、我らは、ら』

 

「あン?」

 

『我らは、ランダリーファミリー。イルバースの街に轟く悪名、ランダリーファミリーだ』

 

「.....ランダリーファミリーだと?」

 

『そ、そうだ!我々にこんなことしてタダで済むと思うなよ!すぐにボスがっばぁ!?』

 

ハルクは電子音で応える目の前の人物の頭を掴み壁に叩きつけた。

ハルクの顔から笑顔が消えていた。

 

今のハルクは憤怒の表情で凄まじい殺気を放っていた。

 

『お、おい!大丈夫か!?』

 

「テメェのような、人かもわからねぇゴミクズ野郎が、ランダリーファミリーを語るんじゃねぇよ!」

 

『がはッ!?』

 

ハルクはそのまま椅子にしていたもう一人の頭も踏み潰した。

未だに二人とも素顔は見えないが、光沢のある黒いヘルメットには小さなヒビが入っていた。

 

カツ、カツ、カツ、カツ。

 

煙草を吸い始めたハルクの元に一つの足音が近づいてきた。

 

「哀れなり」

 

声を発した人物は先ほど電子音で会話していた二人よりも異質だった。

声は肉声だったが全身を甲冑で身を固めていた。

 

「テメェは?」

 

「我の名はゲルマック。ランダリーファミリーの幹部でそ奴らの上司だ」

 

ゲルマックと名乗った全身甲冑の人物はハルクと向き合って静かに構えた。

 

「.....ったく、俺の記憶力も衰えたのかねぇ。こんな奴ら仲間にはいなかったはずなんだけどな、ていうか見たことすらないんだがな」

 

ハルクは煙草の吸い殻を握り潰し、首をゴキゴキと鳴らしながら唾を一つ吐き捨てた。

 




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