メデル・プルーフ   作:Cr.M=かにかま

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31.北イルバース

ランダリーファミリーのアジトを後にしたクロフはライムとジンを連れてイルバースの北部を目指していた。

 

「ちょっと待って、何で俺あんたらと一緒に行動することになってんの!?」

 

「何を言っているんだ、パックの野郎の退院を一日でも早めるために君の能力が必要なんだ」

 

「あぁ、あいつの眼は必要になってくるからな」

 

ジンとクロフが何を今更、という感じで肩を竦める。

あの後クロフはロブに事情を説明して、一旦別行動を取ることになった。

その際、ハルクとクロフが連絡先を交換したり、ジンは「クロちゃーん!」っと号泣しながらクロフに抱きついたりと色々あり、最終的にライムとクロフが再会し、途中までジンの魔法で飛び飛び移動しているのが今である。

 

「ていうかジン、何で一気に移動しないんだよ!これじゃあ時間がかかっちまうぞ!」

 

「できんのだ、俺っちの魔法は直径5メートル範囲内でしか効果はないからな。移動できるのも5メートル先、それに連続の移動は体に負担が掛かるからある程度休憩が必要なんだ」

 

ジンは帽子を被り直してライムに丁寧に説明する。

ジンの魔法は現在多様されている移動魔法の起源にも近い魔法で自分自身と触れたモノを術者を中心に直径5メートル範囲内ならば移動させることのできる魔法。

連続で移動するということは、高速で移動しているにも等しいので体がついていけないのだ。

乗り物酔いが更に酷くなるものと思えば良いだろう。

 

「それにしても、君とクロちゃんが知り合いだったとはな」

 

「知り合いってほどじゃないさ、一回命を助けてもらったって仲だよ」

 

「それに加えて治療魔術師とはね、まさか本当にいるとは思いもしなかったよ」

 

「.....やっぱり他に生き残った人はいないのかな」

 

ライムは顔を俯かせて不安な表情を浮かべる。

あの火災で生き残れるという方が少ないことだろう。

しかし、それでも生き残りはいると信じてきたがライムも現実的に厳しいと感じていることも真実である。

 

「ジン、そろそろ行けるか?」

 

「えー、もう少し休憩させてよクロちゃん」

 

「クロちゃんって呼ぶな!急いでるんだ、本当なら俺一人でも行きたいところなんだ!」

 

「無茶言うな、いくらクロフでも俺っちの移動に掛かる負担は知ってるはずだ。それにライムもいる、多用してしまえば俺っちの魔力が尽きちまう」

 

「.....そうだな」

 

「焦る気持ちはわかる、だが、こういう時こそ冷静にならねばならん。そうだろ、リーダー?」

 

「.....その通りだ」

 

クロフとジンが互いに笑みを浮かべ合い、急ぎイルバースの北を目指した。

ライムも必死になって二人の後を追いかけた。

北に近づくごとに人や建物が少なくなってきていることにライムは不思議に感じていた。

 

活気も感じられず、人々が無意識にこの辺を避けているようにも感じられる。

北部と南部を分ける壁が目の前に迫ってきたところでクロフとジンが立ち止まる。

 

「そろそろ移動するぞ、二人とも俺っちに掴まれ!」

 

「あぁ!」

 

「おぅ!」

 

ライムとクロフはジンに差し出された手を握る。

ジン自身、男と握手するなど以ての外と心の中では思っているが今は決してそのようなことを言っている状況ではない。

ジンが魔力を込めると、その場から三人はパッと姿を消した。

 

 

 

一方、ランダリーファミリーのアジトではゴルドス率いるランダリーファミリーの場所を特定するために動き始めていた。

ハルクはクロフとの唯一の連絡網なのでアジトを離れることができないため、イムの携帯の場所を逆探知するために壊れかけの携帯を駆使していた。

 

ミスティとレッド、リリーは街中を捜索するために街へ。

その際、ミスティは宿に戻ることはないだろうと判断しチェックアウトを済ませて荷物もしっかりと回収した。

これはレッドの案である。

 

ヨルダンとゾブ、サイガ、ケイジはミスティ達とは別ルートを利用しての街中での捜索を行っていた。

 

ロブは武器の点検と精神統一で決戦に備えている。

 

ハルクはスペアの携帯にクロフの連絡先を登録し、もう一方の携帯をモニター室にて逆探知していた。

モニター室の管理人、及び主任デベロは機械関係にも携わっており機械に強い男である。

ランダリーファミリー唯一の機械担当と言っても過言ではない。

 

「で、どうだ?ゴルドスさんの位置わかりそうか?」

 

「.....難しいですな、今逆探知してみたら途中で途切れてしまいます。電波の届かない所からやってるわけでもなさそうだし、どうやら向こうにも相当の技術者がいるのでしょう」

 

「じゃあ、その電波はどこで途切れてるんだ?その近辺を探せば」

 

「.....それが、アジトから1メートルも離れてない場所で途切れてるんですよ、探すとしても範囲が広すぎます」

 

この結果にはデベロも思わず頭を抱えてしまう。

逆探知さえすればすぐに位置が特定できると思っていたのだったが、やはりそんな簡単にはいかなかった。

 

「とにかく、また別の手段で逆探知してみます。ハルクさんはスペアを持ってヨルダンさんかリリーさんの所と合流したらどうでしょう?」

 

「.....今更俺が行っても仕方ねぇよ。それに今ここを手薄にして幹部クラスの奴が来ることもあり得る。おやっさん一人じゃ厳しいかもしれねぇ、俺が離れる訳にはいかねぇ」

 

ハルクは煙草を咥えながら話す、実際敵の戦力はゴルドスとゲルマック以外は未知数である。

イムも人質に取られている形では思うように動くことはできない。

 

「ハルクさん、わかりました。では、僕は若をお救いするために必ず逆探知してみせますよ!」

 

デベロも気合いを入れ直して、再び機械を弄り始めた。

 

 

 

イルバースの北部に到着したライムとジンは彼らの仲間であるパックの入院する病院へ向かっていた。

クロフは一人急いでイルバース邸へと向かったため別行動となった。

 

「ここが、イルバースの北部」

 

「これこそ魔法都市イルバースさ、南部とは違って魔力が溢れている。手練の魔術師もわんさかいる」

 

南部とは違い、多くの魔術師があちこちを往来していた。

大理石で出来た台地と建物、あらゆる物を魔力で補っており豊かな大都市というのがライムの第一印象だった。

本来ならば、首都であるリーノイアからやってくるのが普通である。

南部から入るためには厳正な審査が必要らしいが、クロフ達は顔パスだったため、ライムも彼らの連れということで簡単に入ることができたため、審査がどのようなモノかはわからない。

 

「急ぐぞ、この中では魔法は容易に使えないから徒歩で向かう」

 

「え、どういうこと?」

 

「数年前から魔法による犯罪が多発していたんだ、それを防止するために設けたのが魔術師に対する魔法の発動を抑制する特殊な結界が北部には張られているんだ。最初からイルバースにある魔力を持つ物体以外は魔法が使用できないというわけさ」

 

「なるほど」

 

最初は多くの魔術師から反感を買ったが、魔法による犯罪が激減したため徐々に認められるようになってきた。

この案を提案したのが現在イルバースの最高権力者であるブロス・イルバースなのだ。

 

「ていうことは、ジンの仲間の治療はどうすればいいんだ?」

 

「一度パックの奴と一緒に南部に移動してから行う、クロちゃんともその時に合流する予定だ」

 

ライムはジンの言葉に頷く。

 

「とにかく急ごう、時間が迫っているわけではないが余裕は少しでもあるほうがいい」

 

「そうだな」

 

ライムは北部の珍しい光景に目を奪われながらもジンの後を必死に追いかけた。

 

 

 

病院に到着して、ジンは院長にパックの退院を要求した。

突然のことで院長も戸惑ったが、渋々了承してくれた。

ライムの存在は一切話していない、話してしまえば院長はもっと渋ってしまうとジンが判断したからである。

 

ライムが外で待っているとジンと一緒にやって来たぽっちゃり体型の大柄の男が何かを食べながら歩いていた。

 

「ジン、貴様、俺はまだ病院の料理全部食ってないというのに退院とはどういうことだ、コラー!」

 

「状況が変わったんだよ、豚野郎が。これからクロちゃんと合流して仕方なしにお前の傷治してやるから大人しく俺っちに従え」

 

「誰が貴様の言うことなんぞに従うかよ、それでクロフはどうしたんだ?」

 

「あン、緊急事態だっつってんだろ、黙って俺っちの言うこと聞いとけ」

 

「冗談じゃねぇぞ!」

 

バチバチバチバチ、と二人の目からは火花が飛び散っていた。

相当仲が悪いようだ、おそらくバーカイフというチームはクロフがいるから成り立っている、だからクロフがリーダーをやっているのだろうとライムは目の前の光景に溜息を吐きながら普段苦労しているであろうクロフに合掌した。

 

「それで、さっきからいるコイツは誰です?」

 

「ライムだ」

 

「名前じゃねぇよ、何者かって聞いてんだよ!」

 

「俺っち達の協力者だ、ていうかお前相変わらずうるせぇよ!」

 

「貴様だけには言われたくないわ!」

 

再び、バチバチバチバチと二人は目から火花を飛ばし合っていた。

このままでは埒が明きそうにないのでライムが仲裁に入る。

 

「ジン、そろそろ行かないと、余裕持っとくことにこしたことないんだろ?」

 

「黙ってろライム、今俺っちはそれどころじゃない!」

 

「頼むから剣を抜くのやめてもらえませんか!?お願いだから本来の目的を思い出して!」

 

「この豚を切り刻んでベーコンにすること、だったよな?」

 

「だったよな、じゃねぇよ!いい加減にしろよお前!」

 

仲裁に入ったはずが、第三勢力として参戦してしまったライムだった。

ちなみにパックはまだ治療が完全に終わってないせいでフラフラしながらも喧嘩している。

 

「ったく、わかったよ。とりあえず一旦南部に戻ってクロちゃんと合流しよう。まだ連絡来てないし」

 

「まさか、貴様の肩を借りることになるとはな」

 

「俺っちだってこんな重量馬鹿に肩を貸すなんて人生最大の恥だよ」

 

ジンが溜息を吐きながらも歩き始めた。

ライムは二人の仲を見て今後がとても心配になってきていた。

 

 




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