超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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プロローグです。


プロローグ 夢は夢であるから楽しいのであって

 

 

 まず、これは夢だと思った。

 

 そう判断するのに、特別な理由はいらなかった。

 目の前に広がる空間は、あまりにも現実感がなさすぎたからだ。

 

 周囲はまるで、俺の好きなアニメシリーズ『機動戦士ガンダム』で描かれるニュータイプ空間みたいに、細かな光がきらきらと漂っている。

 星屑のようでもあり、粒子のようでもあり、手を伸ばせば掴めそうなのに、どこまでも掴めない。

 上も下も同じように輝いているのに、不思議と上下の感覚は失われていなかった。

 

 一応、床という概念は存在しているらしい。

 俺はその『床』の上に胡坐をかいて座っていた。

 重力は感じないのに、身体は安定していて、姿勢が崩れることもない。痺れもしない。

 

 そして、誰かと談笑していた。

 

 相手は一人。

 だが、顔は見えない。

 表情も、年齢も、性別さえ分からない。

 輪郭すら曖昧で、そこに()()()()という事実だけが分かる。

 

 ――なのに。

 

 俺はそのことを少しも不自然だと思っていなかった。

 夢なんて、そんなものだろう。そう納得して、会話を続けている。

 

 話している内容は、『ガチ』と言い切るほど専門的ではないが、『にわか』と切り捨てられるのは心外だ、と思う程度には濃いガンダム談義だった。

 宇宙世紀から始まり、アフターコロニー(ガンダムW)アフターウォー(ガンダムX)未来世紀(Gガンダム)までも話題は飛び、いつの間にか宇宙世紀ifの話で盛り上がっていた。

 

「だからさー、ギレンとかに転生したらジオンは勝てるかもしれないけど、結局レビル逃がさずに南極条約で講和とか、条件勝利エンドしかないじゃん?

 ア・バオア・クーで勝っても、双方消耗しつくしたままの講和で大差ないじゃん?

 キシリアいるから結局打てる手が限られてくるじゃん?」

 

 相手のテンションは相応に高かった。

 自分も負けじとテンションが上がるのを感じる。

 

「ギレンの野望ぐらい、技術的優位で独走できたらなぁ」

 

「それ言い出したら、下手したら一年戦争にデラーズ紛争、下手したらグリプス戦役の機体出て来ちゃうでしょ」

 

 まるで酒が入っているかのような勢いで、会話は続く。

 互いに突っ込み合い、議論にも満たない妄想を言い合い、そして馬鹿笑いする。

 

 どれだけ笑っても息が切れないし、時間の感覚もない。

 ただ、この空間と、この会話だけが続いている。

 

「やっぱり史実ネームドに転生しても、大体取る行動って最適解が分かってるから無難になっちまうわけよ。やっぱオリキャラでしょ」

 

 相手が続ける。

 割と転生ネタを引っ張る奴だな。

 

「オリキャラって僕が考えた最強のパイロット~、とかにしかならない奴じゃん」

 

 俺は笑いながら言う。

 

「いやいやー、だって考えてみ?

 一年戦争後半アムロレベルがジオンに一人いたって、ジムの大軍を全部処理できるわけないでしょ。

 ガンダムの開発計画潰しても、結局ジムの大軍に遅かれ早かれ群がられるっしょ」

 

「ジークアクス時空にならなければの話だけどな!」

 

「ララァ乙!」

 

 双方ともに、またしても爆笑する。

 こういう馬鹿話って、どうしてこんなに楽しいんだろうか。

 

「ならパイロットとしてできることってあんまないと思う?」

 

 相手がそう問いかける。

 ほんの一瞬、間があったような気もしたが、所詮は夢の中での話だからと俺は気にしなかった。

 

「いやー、どうだろうねー。

 個人的にはガルマが死ななきゃ、ジオンが負けるにしてもかなりマシだったという気はする。

 その上で、ドズルも死ななきゃ相当マシじゃない?

 デギン、ギレン、キシリアは生き残っても、シャア・アズナブル(あの赤いの)の抹殺ゲージがピコピコ点滅してるから、戦争で生き残っても最終的に死にそうだわ。

 あくまで持論だけど」

 

 自分でも、好き勝手言っている自覚はある。

 でも夢の中だ。だからこそ、遠慮なく言える。

 

「おおー、ならそうするためには、()()()()()()()()なら行けると思う?」

 

 少し楽しそうな声だった。

 

「厨設定盛り込めってか?

 そうだなぁ。

 ヒイロみたいな肉体・頭脳と、カミーユに比肩するニュータイプ能力、後はシーブックみたいな悪運の強さがあればなんとかなるんじゃね?」

 

 相手が爆笑する。

 

「欲張りセットにも程があんだろ」

 

 俺も笑う。

 そうだよ。欲張りセット特盛だよ。文句あっか。

 夢の中でぐらいは、これぐらいはっちゃけても許されるだろ。

 現実で友達に語った場合は、恥ずかしくて転げまわるしかないが。

 

「まあこれぐらいあればなんとかなるっしょ。

 これで無理なら誰も無理じゃね?」

 

 俺は笑いながら、軽くそう言った。

 真剣に考えての発言ではない。ただの雑談だ。夢の中の戯言だ。

 

「じゃあ、()()()()()()()()

 

 相手の声のトーンが、少しだけ変わった気がした。

 

 その声を最後に、俺の意識は暗転する。

 

 ――ああ、これは夢から覚めるな。

 

 そう思った。




リアルが忙しいと妄想が捗るので、ついつい執筆というものに手を出してしまいました。

対談相手の()()()は、水の中に石を投げこんでその波紋を見ることを楽しむような視点とメンタルなので、以後ちょっかいはかけてきません。
多分飽きたら他の人間と他の世界にちょっかい出して同じことを繰り返す。
別名舞台装置。
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