超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
U.C.0077
サイド3、ダーク・コロニーにて。
『黒い三連星』との初遭遇から早3ヶ月……。
「死ねや少尉ぃぃ!」
オルテガのザクⅠが振り下ろしてきたヒートホークを
「寝言は寝て言えっ!」
俺の機体のヒートホークが受け止めた。
なんてバイオレンスな職場なんだろうか。
そのまま鍔迫り合いに持ち込んでもいいが、それだと
そう判断し、右手のレバーを少し緩めた。
それに呼応してヒートホークを押す力が少し緩まる。
同時にレバーの踏み込みを左右逆にして、俺の機体を半身だけ引かせた。
「ぬ……うおお!」
渾身のヒートホークを
転倒させないのはさすがであるが、そこまでバランスが崩れてしまっては立て直しは簡単にはいかない。
そのまま俺はバーニアをふかして機体を浮かせ、半身を引いた動きのまま機体を回転させると、その勢いのままザクの肩部にヒートホークを叩きこんだ。
生身の人間には無理な動きだが、モビルスーツならこういった、関節の駆動域を活かした動きも可能なのである。
「ぐおおおっ!」
元々バランスを崩していたこともあり、オルテガ機が真横にひっくり返った。
直後、コックピット内に赤い警告灯が表示される。
こちらへのダメージとかではなく、戦闘停止を告げる合図だ。
「オルテガ機、撃墜判定です。
模擬戦を終了してください」
中央管制室からの指令が言い渡される。
「ちょっと待てぇ!
俺はまだやれるぞぉ!」
つばがヘルメットのバイザーに飛び散りそうな勢いで、オルテガが不服を申し出る。
あの勢いでヒートホーク叩き込まれたんだから、
ザクでもルナチタニウムを切れる武装は伊達じゃない。
超硬スチール合金なんてバター以下だろう。
「馬鹿野郎!
実戦だとコックピットごと両断だ!」
管制室のラル大尉から怒鳴られて、オルテガ機が渋々と模擬戦モードを解除した。
あ、結構ふらついてる。
ザクⅠのスタビライザーは結構改良された型だったはずだし、当たり所が悪かったか?
そんなことを考えつつ、俺は愛機となった
オルテガ機の馬鹿力に付き合ったためか、機体各部の負荷状況が想定より多少大きいものの、異常は無し。
先ほどの
「ヴァルツァー機、状況終了了解。帰投します。
……やっぱこいつ、
管制に連絡を入れてから通信を終了し、そうひとりごちる。
前述の通り、俺が受領した機体は、MS-05 ザクⅠではない。
その前に開発された、MS-04 ブグである。
旧型機なのかと思うかもしれないが、実はブグの方が性能自体は高い。
ただ、ガンダム世界の試作機の常として、生産コストがバカ高かったため、3機だけ生産されて終わってしまったのだ。
そのうちの1機がランバ・ラル大尉に宛てがわれて、残りは2機。
『黒い三連星』に割り当てるには数が足りないため、残りの1機を予備機として、最後の1機が俺に割り当てられたというわけである。
まあ、『
ちなみにだが、俺が着任する少し前にザクⅠとヅダのコンペは行われていたらしく、ヅダは期待通り(?)爆発事故を起こしたらしい。
ここは俺の知る限りの原作知識とは少しズレがある。
確か公式ではコンペは
だが、この世界ではその時点だと、ミノフスキー博士による融合炉の小型化ですら、まだ終わっていないはず*1だ。
ここで俺は、この世界はジ・オリジンをベースとはしているが、各種媒体の宇宙世紀設定が混入している
仮に、ここがジ・オリジンそのままの世界であると考えた場合、そもそもザクⅠとヅダのコンペが行われたこと自体に違和感がある。
だが、この世界ではYMS-03 ヴァッフはジオン共和国国防軍、ジオニック社、ツィマッド社、MIP社の各社が総力を挙げて開発し、そのままの流れでブグにも割と各社の手が入っている。
そして、その後の正式量産機を決めるコンペにおいて、各社がヴァッフとブグからフィードバックされた技術をそれぞれ昇華して、ザクⅠとヅダが開発されたという流れであるらしい。
話を元に戻そう。
俺が受領したのはラル大尉と同じブグであるため、俺の仕事はもっぱら、高性能なブグの機体特性を活かした、モーション・パターンとマニューバ・パターンの構築である。
ランバ・ラル大尉が白兵戦の名手ということもあり、ラル大尉の担当は近距離から中距離戦のパターン構築を中心としている。
そのため、俺の担当は中距離から遠距離の高機動射撃戦のパターン構築がメインとなる。
まぁ、高性能とは言っても最初期のモビルスーツではある。
機体の反応速度に不満がないわけではない*2のだが、一般兵も扱うマニューバ・データを構築しなければならない以上、かなり余裕を持たせた操縦をしている。
そもそも、いくら不満があろうとも、マグネット・コーティングなんて1年以上経たないと開発されないし、仮にあったとしても、この機体はフィールドモーター方式でなく流体パルス式駆動のため、処置をすることもできない。
ないものねだりをしたところでナンセンスである。
せめてこのデータが技術部に渡って、開発が早まってくれることを祈るだけだ。
言うな。
ちなみに最新鋭ではあるが量産機を受領した『黒い三連星』の仕事は、複数機による連携パターンの構築である。
まあ息もあった三人組だし、適任であると俺も思う。
多分この仕事の延長で、かの有名なジェットストリームアタックを生み出すのだろう。
俺たちの仕事はこういう分担になっているが、それと同時に、ランダムなカードでの模擬戦によるデータ収集も含まれる。
連邦が本格的なモビルスーツをこれからもずっと開発しない、などと考えるほど、ドズル大佐もギレン部長も甘くはない。
いずれ開発された時、あるいはモビルスーツが鹵獲されて敵に運用された時。
そういった事態に備えて、モビルスーツ同士の戦闘データを収集することも、俺たちの重要な仕事の一つである。
そして、先ほどはオルテガ准尉との模擬戦であったというわけだ。
管制の指示通りに機体を開発区画に戻して、ハッチを開く。
「クッソぉ!」
想像の通り、先に帰投したオルテガ准尉が荒れていた。
まあこういった模擬戦で手を抜くのは、戦闘データ収集という俺の仕事の性質上、職務怠慢だと思っているし、そもそもオルテガにとっても失礼だろう。
全力は出せないまでも、本気で当たるのが俺のやるべきことである。
「エルンストぉッ! 次は覚えてやがれぇッ!」
威勢のいい声に、ハッ!と鼻で笑い飛ばす。
喧嘩友達みたいな立ち位置であるが、まあそれはそれで不都合はない。
「これで俺の5連勝。6勝目もゴチになります!」
オルテガは歯ぎしりし悔しがっているが、実際、模擬戦の勝敗は既に決定しているのだ。
肩を怒らせながら、「次こそはケチョンケチョンにしてやる!」と息巻いて格納スペースから去っていった。
悔しさのあまり語彙力消失してないか?
いやそれは元からか。
それとお前、そっちは管制室じゃないぞ、模擬戦の講評どうするんだ?
……まあいいか。
怒るのはラル大尉で、怒られるのはあいつだ。
俺は知らん。
俺は近づいてきた整備員に声をかける。
「シート周りが少しゆるいと感じます。
調整お願いします」
「分かりました」
そして俺は中央管制室へと歩き出す。
俺のブグには、シート周りを少し改造することにより、俺の体格*3でも操縦ができるように調整されている。
もう少しだけ身長が伸びれば、その調整も必要なくなるだろう。
レバーやペダルなどのインターフェース関連に至ってはそもそも調整が不要である。
ジオンにはオルテガやドズル大佐のような巨漢から、小柄な女性までと様々な軍人がいるので、それに合わせられるようにできているのだ。
そもそも連邦でさえ、コックピットに
よりパイロットの少ないジオンにとって、身長によって操縦できない人間がいるというのは、看過できない問題なのだろう。
数分後
「何故オルテガが来ないぃぃぃ!!」
管制室にラル大尉の怒号が響き渡った。
俺に言われてもなぁ。
シャア復帰まで行けませんでした。
それはそうとオルテガ准尉、沸点低すぎて逆に使いやすいですよね。
ジ・オリジン本編でも、シャアが絡むシーンほぼ全部でキレてますしw
まあ本人も怒り散らかしていますが関係は喧嘩仲間みたいな感じです。
ヤンキー漫画かな?
そしてオチ担当として優秀過ぎるラル大尉。
それと主人公の年齢設定について、「肉体がヒイロでも無理がないか」等の違和感をご指摘されることがありますが、この作品の原点として『一年戦争で幼女戦記みたいなことやってみたくない?』という私の妄想が出発点となり、そこ(ターニャ・デグレチャフの年齢)からの逆算が元となっておりますので『そういうものである』とご容赦いただければと思います。
描写で納得させることができない自身の筆力不足を痛感します。