超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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書いてて筆が乗ったと思ったら、4000字超えてしまったので投稿です。




第11話 開戦直後

 そうして2ヶ月が経ち、俺とラル大尉の睡眠時間を犠牲にして、部隊編成とそれに伴う練兵を何とか期日までに終えた数日後――。

 

 

 U.C.0079 1月3日

 

 ジオン公国は地球連邦政府に対して宣戦を布告した。

 ドズル・ザビ中将*1指揮のジオン艦隊は、連邦の宇宙軍巡航艦隊を撃破、殲滅。

 

 同時に、キシリア・ザビ少将*2率いるモビルスーツ強襲部隊は月面都市グラナダを制圧。

 続いて、フォン・ブラウンも奪取した。

 

 そしてその、月面都市攻略МS部隊の隊長の1人が俺である。

 

 何で?

 

 ドズル中将指揮下なら、サイド2・ハッテに対しての攻撃に参加するんじゃないのか?

 なぜか月面攻撃にはシャアも参加している(原作通り)し、他にもドズル中将傘下の部隊もちらほらいるから、『ハッテよりも月面都市の制圧の方が戦力が必要』と判断されたのだろうか。

 

 あえて別の理由を考えるとしたら、コロニーへの攻撃は軍内部でも良くない印象を持つ連中もいるだろうし、明らかに親ザビ派ではない、ラル中佐*3に仕事を押し付けようとしている可能性もあるな。

 その場合、士官学校首席でかつ同期で一番出世している俺は、プロパガンダの素材として、汚れ仕事をさせる(経歴に傷がつく)のを避けたということも考えられるが……。

 

 思い当たる理由が多すぎて分からない。

 理由をつけようとすればいくらでも考え付く。

 

 ちなみに、俺が仮にコロニー落としを命じられた場合、罪悪感が湧かないこともないが、命令は命令として実行するだろう。

 冷血に思われるかもしれないが、優先度の違いである。

 倫理観を重視して命令を拒否しました。それで孤児院の兄弟姉妹が飢えて死にました。などということになるわけにはいかないのだ。

 ただし、後で責任だけ押し付けられるのはごめん被るので、書面による正式な命令書の発行を条件にはするだろうが。

 

 とはいえ、現実問題として、俺がハッテの攻撃に参加していない以上、色々考えてもどうにもならないだろう。

 

 なお、月面での戦闘は圧勝であった。

 フォン・ブラウンでの戦闘には、前回戦ったあのガンキャノン(歩行戦車)もちらほらいたが、申し訳ないが俺のブグや配下のザクたちの敵ではない。

 数もそこまで多くなかったし、あの戦いの結果を受けて、生産(発注)自体は止まっていたのかもしれない。

 そんな貴重(?)なガンキャノンを8機ほど爆散させ、さらに機体の希少価値を高めた俺は、そのまま臨時任官の部下たちとともに、アナハイムのフォン・ブラウン工場を制圧。

 そこで俺の任務はひとまず終了となった。

 

 

 そうして俺が月面に駐留している間に、ハッテのメインコロニー、アイランド・イフィッシュは正史通りに3つに割れて地球に落着した。

 

 ラル中佐は毒ガス注入に抗命し、2階級降格で大尉に戻された挙句、予備役送りになったらしい。

 ここも本筋では歴史(ジ・オリジン)と同じと言えるだろう。

 

 ただ、その時に艦橋外の廊下で聞き耳を立てていたブリッジ要員の話*4によると――、

 ラル大尉は「ならば、あなたはその作戦を、あの小僧(エルンスト)が隊長であったとしてもやらせるというのか!」と怒鳴ったのが聞こえたらしい。

 それにドズル中将は答えられなかったとも――。

 

 なんというか、複雑な気分だ。

 

 というかドズル閣下、この時点で罪の意識はもう持っていたのか。

 たしか原作(ジ・オリジン)だと、「どうせハッテの住民はみな死ぬのだから、その死を価値のあるものに変えてやるのはむしろ理性的な行為だ」とか、かなりとんでもない理論展開をしていた記憶があったんだが……。

 それが俺という要因が混じったからなのかは分からないが、それでもギレン総帥から指示されれば実行しなくてはならないというのが、現場の辛いところなのかもしれない。

 

 なお、住民の()()は海兵隊が行ったらしい。

 こんなごった煮世界線でも、シーマさんは貧乏くじを引かされるのか。

 お労しいことだ。

 もし遭遇するようなことがあった場合、少なくとも俺は敬意をもって接させてもらうよ。「あなたは命令に従っただけの立派な軍人だ」とね。*5

 

 

 そして――数日が経過し、

 

 俺はズム・シティの公王庁の入り口で待機していた。

 月からとんぼ返りの強行軍だ。

 公王庁で開かれる会議に参加するドズル中将閣下の護衛というかお付きである。

 中将曰く、「ラルの奴が予備役になった以上、現状最もモビルスーツに詳しいのは貴様だ」と、場合によってはモビルスーツの運用に関しての意見を求められるかもしれないと言われてここにいる。

 

 とはいったものの、俺の記憶通りに会議が進んだ場合、ここはギレン総帥*6の独演会と化して、言葉に詰まったデギン公王*7がガルマ*8と共に退席するような感じだったはず。

 そうなると俺の出番は結局ないはずなので、一応、呼ばれた時の心構えさえしておけば、割と気楽に過ごしても構わないだろう。

 そう判断し、公王庁を護衛する兵士たちと、情報交換を兼ねた軽い雑談に興じていた。

 俺自身、年齢を考えると非常識にも程がある出世の仕方をしているため、こういった現場の人員との関係を構築しておくのは必須だと思っている。

 公王庁の現在の空気とか、聞いておくと後々参考になりそうな話もいくつか聞けるしね。

 

 しばらくした後、ドズル中将が難しい顔のままで出てきた。

 やっぱり、まだブリティッシュ作戦(コロニー落とし)での犠牲を引きずっているらしい。

 娘であるミネバ・ザビが生まれて、心境の変化があった描写が原作であった記憶があるので、まあこれはその通りといえばその通りなのだが……。

 

 自然と感じてしまった、中将からの後悔の思念波の中に、俺の名前がたまに聞こえるのが気になるんだよな。

 

 ラル大尉に怒鳴られたのがそんなに効いたのか……。

 豪胆なくせに妙なところで繊細な人だ。

 

 

 退庁するドズル中将に付き従って、そのまま公王庁を後にする。

 そのまま中将の私邸*9に到着し、付き人の任務も終了したと帰ろうとしたところ、ドズル閣下に呼び止められた。

 

「エルンスト、少しミネバの顔でも見ていってくれないか?」

 

 おおう。

 ずいぶんと、メンタルが弱ってるのかもしれない。

 

「分かりました。

 お邪魔にならないようでしたら」

 

 了承すると、ドズル中将は自身の顔を叩いて気合を入れてから、自宅の扉をくぐった。

 

「ゼナァッ! ミネバァッ! 帰ったぞぉ! まだ起きているかぁっ!」

 

 いや虚勢にしても声がでかいよ。

 アニメでも見た記憶があるが、これは普通に赤ん坊が泣く。

 

「閣下、閣下ッ!」

 

 割と焦って声をかける。

 

「どうしたエルンスト?

 遠慮するな!

 そうだミネバァ! エルンストも来ているぞぉ!」

 

 違う、そうじゃない。

 

「赤ん坊は寝ている時間帯です閣下!」

 

 とは言ったがもう遅い。

 奥の方から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

 

 あちゃー。

 

 

 

 仕方ないので、顔見せついでに俺がミネバをあやすことになった。

 こう見えても、孤児院育ちは伊達ではない。

 物心ついた時点から、マザーの手伝いとして色々やってきたし、いまだに帰省した際は幼少組の世話も焼いている。

 むずかる赤子を寝かしつけるなど造作もなく、ほどなくミネバは再度眠りについた。

 

 ちなみに実家の孤児院の現状であるが、新しく入ってくる孤児は、さすがに俺たちの世代ほどにはいない。

 増えても年に1人か2人といったところで、それすらもある程度成長してから仕方なく預けられた子どもたちであり、乳飲み子が捨てられるということは実際ほとんど無くなっている。

 やはり俺たちの年代が異常だったのだろう。

 

 ちょっと離れたところにはドズル中将がゼナ女史に頭を下げている。

 少しは反省して欲しい。

 

 眠ったミネバから離れて、2人に近づく。

 

「眠りました。

 また起こしてもかわいそうなので、少し離れましょう」

 

「う、うむ」

 

 複雑そうな顔をしている中将の背中を、ゼナ女史が押して移動させる。

 まあ、自分の声で泣いた娘を、赤の他人が寝かしつけるのは、父親として何か情けなく感じてしまうのも無理はないだろう。

 とはいえこっちは赤子の扱いに年季が入っているのだ。勘弁してもらいたい。

 

「ゼナよ……俺の顔は悪鬼羅刹のような顔だろうか?

 何億人ものミネバを殺してしまった、悪魔のような顔だろうか?」

 

 移動したリビングルームで、酒を少し嗜んだドズル中将は、ゼナ女史に膝枕をされてそうこぼす。

 俺もいるんだから、夫婦でのいちゃつきは程々にしてほしいと思いつつも、出されたリンゴジュースをすすった。

 

「そんなことはありませんよ。優しい顔ですわ」

 

 ゼナ女史も、素面でそう言えるのは凄いな。

 客観的に見たらもの凄いレベルの強面だよこの人?

 

 ふと、ドズル中将がこちらに視線を向ける。

 ()()()()()()()で。

 

「ランバ・ラルに言われた……。

 仮に作戦を実行するのがお前だったとしても、俺は命令を出したのか、とな。

 俺は答えられなかった。

 きっと、これがただの虐殺だということが分かっていたんだ……」

 

 膝枕で言われても格好がついていないのであるが、逆に言えば、それほど彼の心が弱っているということだ。

 俺は視線をドズルへと向けたまま、ジュースを一口飲む。

 

「それでも俺は、ギレン兄の指示に従わねばならん……。

 昔はよかった。この家にいた頃はみな仲が良かった。

 サスロ兄もいた……。

 ガルマも小さくてかわいかった……ガルマは今でもかわいいが」

 

 本当に弱っているのだろうか?

 少し自信がなくなってきた。

 

 ほら、ゼナ女史もどう答えていいのか分からなそうだぞ。

 と、中将が起き上がった。

 

「ゼナ、俺はお前がザビ家に嫁いできたことを後悔させぬつもりだ」

 

 それからこっちへと顔を向ける。

 

「エルンスト、貴様にもあの日、俺を頼ったことを悔やんで欲しくはない。

 俺はお前たちと共に、新しいザビ家の歴史を作ってみせよう」

 

 再びゼナに顔を向ける。

 躁鬱を繰り返してるような感じがしたが、躁に落ち着いたか?

 まあこの方が中将らしいと言えばらしいのだが。

 

「ゼナ、たくさん子供を産んでくれ!

 ミネバの弟も、妹も! 良い子供たちをたくさん!

 その子供たちは俺が守る!」

 

 だから俺がいるというのに――。

 まあ、それはそれとして、俺個人としては中将に通しておいて欲しい筋がある。

 

「お前とミネバに手を出す奴は、誰であろうと俺が許さん」と気勢を上げる中将に、俺は声をかけた。

 

「ドズル閣下、失礼ながら、その決意を実行するためにも――

 

 ひとつつけておくべき()()()があると思います」

 

 ドズルは意外そうな顔でこちらを振り返った。

 

「けじめ……何だ?」

 

 俺はリンゴジュースを一口。

 一拍だけ置いて告げる。

 

「ランバ・ラル大尉」

 

「!?」

 

 固まったドズル中将に、間髪入れずに続ける。

 

「喧嘩別れに終わってしまったのでしょう?

 そして今、あなたはご自分の行いが倫理的に間違っておられたことを認められている。

 ならば、非公式でいい。一言だけでもいい。

 ラル大尉に謝っておくべきだと俺は思います」

 

「う、ううむ……」

 

 再びジュースを一口。

 ジュースが無くなったので静かにグラスを置く。

 

「俺としては、おふたりがこのようなことで仲違いしたままでいて欲しくはありません。

 予備役となったことを覆すのは難しいと思いますが、せめておふたりのわだかまりだけは解いてほしい。

 そう俺は願います」

 

 そう言って、席を立つ。

 割と好き勝手言ってしまった気もするが、ジュースを提供された時点では『私人』だと割り切って話をさせてもらった。

 飲み終わった以上、俺はドズル中将の部下の立場に戻るべきだろう。

 身を正し、敬礼する。

 

「身を弁えぬ発言、失礼いたしました。お許し下さい。

 ()はこれにて失礼いたします。

 ゼナ様も、ご壮健であられますよう。

 ジュース、ごちそうさまでした」

 

 踵を返して退席する。

 その背中にドズル中将の声がかかった。

 

「エルンスト。

 貴様の忠言、胸に留めておく……ありがとう」

 

「過分なお言葉です。では!」

 

 さて、言いたいことは言えた。

 自分のモビルスーツの調整に戻るとしよう。

 

 ルウムでの戦いに備えないとだ。

*1
公王制への移行に従って、大佐より昇進。

*2
公国制移行に伴い、中佐より昇進。

*3
先日昇進された。

*4
また聞きによる噂話ではある。

*5
それが慰めになるかは分からないが。

*6
公国制への移行に伴い、首相から総帥となった。

*7
公国制への移行に伴い、議長から公王となった。

*8
悲しいかな、彼だけ少尉のままである。

*9
旧・ザビ家本邸




読んでいただきありがとうございます。

開戦はしました。

しかし、ルウム戦役に入るとは言っていな(ズギューン)

筆が滑りましたすいません。
でも、作中で描写しないにしても、ドズルにラルに対して一言謝らせておきたかったので、このシーンは無駄ではないと信じたいです。

立ち位置的にはドズル家長男モドキ。
ゼナとも士官学校同期で付き合い長いですしね。片方が珍獣枠でしたけど。


次はさすがにルウム戦役でしょう。
多分。
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