超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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あけましておめでとうございます。

なんとか書けたので投下します。
基本的にOVA版で描写されてたシーンが多めになってしまうのですが、描写すれば冗長になりそうという危惧と、一年戦争でここら辺削るのは説明足りなくないかという葛藤のせめぎあいの産物です。


第14話 地球降下前のお仕事

 

 2日後。

 

 勲章授与式は無事執り行われ、俺は中佐に、シャアは少佐へとそれぞれ2階級昇進することとなった。

 また、『黒い三連星』は1階級、ガイアが大尉に、オルテガとマッシュは中尉に昇進した。

 レビルを捕らえるという大手柄を立てたのに1階級しか上がっていないのは、別に評価されていないとかではなく、単純に3人が士官学校を出ておらず、佐官教育を受けていないからである。

 

 そして、勲章授与式の後に行われる戦勝祝賀式典が始まり――

 俺とシャアの周りにはそれぞれ、大量に女性が集まることとなっている。

 もっとも、シャアに近づく理由と、俺に近づく理由は違う。

 前者はミーハー気分でスターに対する態度としては正しいと思うのだが、残念ながら――後者は愛玩動物扱いである。

 真正面から「頭撫でてもいいかしら?」とか聞いて来るとか、名家のご令嬢は根性が据わっておられることよ。

 この祝賀会に招待される家格の令嬢からの申し出とか、断れるわけないじゃないか……。

 

 今、マスコミが写真を撮ったならば、ほとんど死んだような目をしながら撫でられている俺と、撫でる順番待ちをする令嬢たちという、訳が分からない写真が紙面を飾ることになるだろう。

 心を無にして、列が捌けるのを待っていると、チヤホヤされているシャアに対して、オルテガがブチ切れそうになっている気配を感じる。

 デギン公王の前なのでマッシュですら自重しているというのに、あいつはさぁ……。

 

 あ、ガルマがシャアのところに向かったようだ。

 女性陣が一通り、俺の頭を撫で終わるタイミングを見計らって、「申し訳ありませんが、同期のガルマ様に挨拶をしたいので……」と離れることに成功する。

 近づいていくとちょうど会話中だった。

 適当なところで混ざるとしよう。

 今は、ガルマが自身の配属先を説明しているらしい。

 

「最精鋭の空挺師団付少佐だ。今日付で配属になった。

 艦隊戦と違って、地上部隊での制圧は難儀だ。泥と血にまみれる。

 階級は少佐だけど、僕の下にはほぼ1個機甲連隊がいる」

 

 そう、今日付でガルマは少尉から少佐への3階級特進を遂げたのだ。

 端から見たら驚きの所業である。

 大きな部隊を率いる関係上、佐官の地位は妥当だったとは思うが、士官学校卒業からもうすぐ2年もたつというのに、なんで大尉や中尉にでもしておかなかったんですかデギン公王、とは言いたい。

 

「それを率いて近々、ルウムの残敵を掃討するつもりだ」

 

 ガルマが続ける。

 そう。

 ルウム戦役での大敗を受け、ルウムへの連邦軍の支援はなくなったのだが、何故かルウムはジオンに対して降伏していないのである。

 いくらジオンに対して腹に据えかねているとしても、肝心の戦力がほとんど残っていないのだから、形だけでも従っておけばいいだろうに。

 ルウムの連中には自殺願望でもあるのだろうか?

 なので、残った残敵を掃討し、ルウムを完全にジオン勢力圏に組み入れる作戦が必要となり、その総指揮にガルマが就くこととなった。

 俺が護衛の任としてつくのも、この作戦である。

 

 俺が中佐なので、ガルマよりも階級が高くなってしまうのだが、俺はドズル中将の命によってガルマ少佐のもとに一時出向という扱いになるため、俺への命令権をガルマが持っているという少々特殊な形になる。

 まあ、上官の階級が低くても、「上官がザビ家である」と言えば納得されてしまうのがジオン軍なのではあるが。

 

「ほう……」

 

「僕には無理だと、今そう思ったな、シャア!」

 

 ガルマが声を荒げた。

 ガルマの煽り耐性が低いのもあるが、シャアの口調もまるで「感心した」と言いたげな天然の煽りトーンなので、それがものの見事に噛み合っているな。

 本来なら悪い噛み合い方なのだが、これでガルマが奮起することも多いので、善し悪しが判別しづらい関係である。

 

「そんなことはない。ただ、危険な任務だ。

 君には似合わない汚れ仕事だ。

 デギン公やドズル閣下がよくそれを――」

 

「関係ないっ! 僕は僕だ!」

 

 おっと、ガルマが暴発しそうだ。

 いい加減混ざるとしようか。

 

「ずいぶんと語調が激しいな、ガルマ」

 

 2人がこちらを振り向いた。

 

「エルンスト……」

 

 ガルマとは先日あったし、シャアともルウムで戦っているので、どちらも久しぶりという感じではないな。

 グラスを掲げた手を軽く上げて、「やあ」と挨拶する。

 当然というべきなのか、俺のグラスだけオレンジジュースである。

 

「会話に混ざるタイミングを計ってはいたんだが、中々いいタイミングがなくてね。

 そのガルマの任務だけど、俺もモビルスーツで参加することになっている」

 

 シャアの顔がわずかに、笑みの形に歪んだ。

 どうせ、「ドズル中将からの護衛(おもり)か」とか思っているんだろう。

 露骨すぎて思念を感じるまでもなく分かる。

 だが、それを口に出すんじゃないぞ。

 そう思いながら、俺はガルマへと顔を向けた。

 

「ガルマ、君は暁の蜂起(あれ)から実に2年ぶりの実戦だろう?

 戦場の勘を取り戻すにはいい機会だと思うぞ」

 

 俺に水を向けられて、幾分かは落ち着いたのか、ガルマは「そうだな……」と頷いた。

 

 

 この2人、本当に面倒くさい関係の親友だよ。

 

 

 

 

 

 数日後。

 サイド5・ルウム。

 

 現在、ここでは掃討作戦という名の、ある意味で一方的な戦闘が繰り広げられている。

 爆炎が立ち込める市街地の中を、ジオン軍の大型陸戦艇ギャロップがホバー走行しながら、砲撃を放っていく。

 ビルが爆発し、崩壊する様は、有体に言ってもこの世の地獄の一つだろう。

 

「一気に制圧しろ!

 進め!」

 

 そんな中、褐色のパーソナルカラーで塗装された、専用のギャロップの戦闘ブリッジで、ガルマが指揮のために叫んでいるのが聞こえる。

 連邦軍もよせばいいのに、市街地に分散してのゲリラ戦を選択したのだ。

 市民のパルチザンも加わり、機関銃で応戦してくる以上、降伏する意思なしと見なされるのも仕方がないだろう。

 

「連邦の手先を蹴散らせ!」

 

 ガルマが叫ぶ。

 聞こえる砲撃音と、数瞬後に響く轟音。

 またビルが一つ倒壊したな、これは。

 

 頃合いと判断したのか、ギャロップの前面部に存在するハッチが開く。

 ギャロップには内部に3機のMSの搭載が可能となっているのだ。

 

 中にいるザクⅡが2機、外に飛び出して攻撃を開始した。

 残りの1機である俺のブグは、外へ飛び出さずにギャロップのハッチ内からザクマシンガンで射撃する。

 ガルマの護衛が最重要任務である以上、ガルマの搭乗するこのギャロップから離れるわけにはいかないだろう。

 射撃モードを3点バーストに設定し、敵の射撃地点を1つ1つ、丁寧に潰していく。

 

 モニターの隅に逃げ惑う市民たちが見えた。

 哀れに思わないでもないが、宣戦布告が正式になされている以上、これは避難勧告すらしていない連邦側の責だろう。

 連邦の艦隊が大敗北を喫したんだから、ジオンがいずれ来ることは明白である。

 ベイエリアがシャアの奇襲で損傷しているため、サイド5そのものからの疎開は難しいにしても、シェルターに避難ぐらいさせておくべきだったろうに。

 しかもそんな状況でも、敵は重火器でビルの上から攻撃してくるのだ。

 

「斉射、敵防御陣地に集中!

 潰せ! 潰せ!」

 

 ガルマがいきり立っているのも、もしかしなくともこれが原因だろう。

 彼からしたら、これだけ時間を与えても市民を避難させていない時点で、連邦側が人間の盾を利用しているようにしか見えないはずだ。

 

 ジオンもこの戦いで褒められたことをしているわけではないが、かといって連邦側も中々に悪辣なことをやってくれる。

 そんなことを考えながら、ただただ敵のいる地点を破壊していく。

 敵が固まっている防御陣地が見えた。

 おそらく、あれが本命だろう。

 

「投降は絶対に許すな!」

 

 ガルマの声をバックに、俺はザクマシンガンを連射モードへと切り替えて、敵陣地へと撃ち込んだ。

 爆発と悲鳴を最後に、敵陣地が沈黙する。

 コロニー駐留軍にはモビルスーツに有効な火器などほとんどなく、気分は完全に弱い者いじめである。

 

 南極条約が結ばれるまでは、敵も味方もルール無用の戦いってことかと辟易してしまう。

 いや、結ばれてからであっても、局所局所ではルール無用のままだったか。

 鹵獲したザクを使って騙し打ちとか……。

 まぁ、こっちも水爆使ってたっけか、ガンダム(天パ)のおかげで未遂に終わったが。

 

 ガルマには悪いが、どうにも真剣になれていない。

 一応、ガルマへの殺気を感じれば先んじて潰せるよう、態勢を整えてはいる。

 よって、ドズル中将の命令はしっかりこなしてはいる。

 

 ガルマへの狙撃の警戒がなければ、本来俺みたいなの(エース級)は必要ないレベルの任務なのだ。

 

 何より面倒くさいのは、連邦が立てこもっているコロニーは他にも数十とあることだ。

 別動隊と同時に複数のコロニーで掃討戦を繰り広げているとはいえ、1日程度では到底終わらないだろう。

 せめてガンキャノンぐらいあるのなら、護衛の任務と言ってもいいのかもしれないが、ガンキャノンどころかガンタンクすら見当たらない。

 連邦が見放したのかは分からないが、しばらくはこの死体蹴りが延々と続くことになりそうだ。

 

 俺の精神を犠牲にしつつ、全コロニーの掃討が完了したのは、それから1週間後のことだった。

 

 

 

 

 ただただ、作業感が虚しかった任務を終えて数日が経った。

 

 その間にジオン公国政府が連邦に対して、独立自治権の承認と連邦軍の軍備縮小という事実上の降伏勧告を突きつけて、連邦政府が受け入れる方向で調整することになっている。

 まあ、デギン公王、ギレン総帥、キシリア少将、そしてレビル将軍の思惑がある意味で噛み合って、これがぶち壊しになることを俺は知っているんだが。

 

 連邦政府がそのまま調印に応じた場合、駐留軍として地球に赴任するガルマ大佐*1の下に出向する形で、俺も地球に降りることになるだろう。

 まあ現実では、地球侵攻軍北米担当として赴くことに変更されると思うが。

 

 シャアはそのまま原作通り、V作戦(ガンダム開発計画)の調査に任命されたらしい。

 ドズル中将が話してくれた。

 

 俺をあてることを考えたりもしたらしいが、俺をガルマの下に出向させることは前々から決めていたとのことだ。

 俺としても、原作展開(ガルマ散る)を変えたい立場であるため、その方がありがたい。

 

 

 地球侵攻軍の構造としては、トップとなるマ・クベ中将の下に北米担当のガルマ大佐。

 そのガルマの補佐として、宇宙攻撃軍から出向してきた俺が中佐として入る予定だ。*2

 

 ドズル中将の威を借る形になってしまうが、マ・クベ中将とも直接話ができる立場となるらしいので、地球降下前に一度話しておく必要があるだろう。

 武人肌のドズル閣下は学者肌であるマ・クベ中将を嫌ってはいるが、俺の受けた指令は『ガルマの護衛と補佐』だ。ガルマへの便宜を図るためにマ・クベ中将と交渉することも仕事のうちである。

 とはいえ、今、本人は条約締結のために南極へと降り立っている最中だが。

 

 

 なので、やることと言えば新しく支給されたザクⅡ指揮官型の調整と慣らしぐらいしかない。

 前回の任務にて、とうとうブグの予備パーツが無くなった部分が出てきたのだ。

 ブグ自体、機体の完成度は高い分、拡張性に乏しく、地上での運用状況を見てからの現地改修も難しい。

 そういった事情も重なって、とうとう乗り換えることとなった。

 ブグのその後であるが、聞いた話によると、何かの記念館のようなものが建てられてそこに展示されるらしい。

 

 ザク乗りになったわけであるが、俺としても予備パーツが潤沢にあるのは助かる。

 本気でぶん回すのは無理だろうが、ブグほど操縦に気を使わなくても良いというのは気が楽だ。

 整備員たちへの負担は、たびたび差し入れをするので勘弁してもらうとしよう。

 

 MS関連の仕事しかなかったため、ここ数日は余裕があり、孤児院の兄弟姉妹やマザーへの挨拶も済ませておけた。

 1年弱ほど帰れない日々が続いてしまうだろうが、今の孤児院にはザビ家の庇護がある上に、ラル大尉とハモンさんもいる。

 俺が地球に行っている間ぐらいは大丈夫だ。

 

 そして――

 

 

 U.C.0079 1月31日

 

 映像の中で、ジオンを脱出したレビル将軍が演説している。

 まあ演説内容は見知った通りなんだが――。

 

「ジオンの力を過大に評価するべきではないっ!

 人的・物的資源がもとより限られているコロニー国家ジオンは、長く困難な戦いを戦い得ない!

 

 事実として、彼らは年端も行かない子供を少年兵として育成し、エースパイロットなどと祭り上げている!

 このことこそが、ジオンの人材の厳しさを証明している!

 

 それ故にジオンは早期講和を望んでいる! その思惑に乗るべきではない!

 戦い続けるべきである!

 ジオンに兵無し!」

 

 ……あれ?

*1
先週の任務で昇進した。本当に早い。

*2
俺が出世しなかったのは、ガルマと階級が並ぶとやりづらいという上の都合だろう。あんな任務で大佐になっても喜べないので、俺としては助かった。




ブグよさらば。

そしてガルマ出世しすぎ(原作描写です)
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