超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
多分この辺りからそれなりに展開が違ってくる……はず、多分。
本作はジ・オリジンとファースト、並びに各種媒体が都合よく混ざったごった煮世界ですので、ガンキャノンとガンタンクは正式名称が既にジオンにも知られています。
その前提でお読みください。
急な戦線の拡大にジオン側の補給が追い付かなくなり、同時に連邦側もズタズタに寸断された勢力図の中で、ゲリラ的な戦闘行動しかできず、奇妙な膠着状態へと陥って数ヶ月が経過していた。
その間に起こったことで、特筆すべきことといえば、オーガスタ基地を俺が主導し陥落させたことぐらいだろう。
だが、施設が小規模だったことから人員はさっさと逃げ出してしまい、研究員も研究内容も押さえることはかなわなかった。
そのまま、地下に潜って研究を再開されてしまえば、そんなに劇的な変化は望めないだろう。
精々、数ヶ月ほど研究を遅らせる程度といったところか。
上手くいけば、アレックスの開発が遅れて、バーニィやサイクロプス隊が死ななくて済むようになるかもしれないが、それは俺個人の感覚の話でしかなく、戦略レベルの効果はない。
ペイルライダー計画はそもそもEXAMシステムを参考にしているはずで、まだ計画自体が存在していないだろう。
場所を変えて開発されるだけだ。
その日、連邦によるゲリラ活動の基地の1つを捕捉し、部隊を率いてイフリートで鎮圧した俺は、ニューヤーク基地に帰還していた。
この数ヶ月、ガルマはもっぱら政治的な活動を主軸としていて、北米の住民や有力者とは良好な関係を築いている。
コロニーの一部が落下した北米でだ。
正直どうやればそれが可能になるのかさっぱりわからない。怖っ。
そういった、政治や社交方面の活動でガルマが多忙な分、軍事関係の雑事は主に俺が担うことが多くなっている。
さすがに重要な案件や作戦はガルマの裁可を必要とする。
だが、ドズル中将からの出向武官である俺には一度だけ、その決定に待ったをかける権限すら付与されている。
階級は中佐のままであるが権限はかなり大きいと言えるだろう。
もっとも、完全な作戦停止権というわけではなく、デギン公王とドズル中将の思惑から与えられた、ガルマの短慮を抑える安全弁のような機能としての権限である。
だから、何故それを差し止めたのかの説明の義務はしっかり付随しているし、理由の説明後にガルマが再度同じことを決定すればそれに従わなくてはならない。
身も蓋もなく言ってしまえば、「ちょっと待て。お前これは考えたか?」とガルマの決定にツッコミを入れる権限であった。
ジオンだから可能なシステムだなこれ……。
その日、ガルマは北米の有力者からの支持をさらに強化すべく、社交パーティーに参加することになっており、基地には不在であった。
そのため、基地に帰還していた俺に、ドズル中将からの直接通信が回されてきた。
基本的には、俺かガルマのどちらかは基地に常駐しているので、中将はそこそこの頻度で通信を繋げてくるのである。
「連邦のV作戦、ですか?」
「そうだ。シャアが察知し、奪取を試みたが失敗した。
結構な数のザクが失われたわ」
とうとう原作が開始されたようだ。
そして同時に、ここがジークアクス時空でないことが一応確定した。
歴史にあの天パが引きずり出されることも……。
「そのモビルスーツの特徴は?
武器は?」
ガンダムの性能自体は大体知ってはいるが、聞いておかねばその脅威をガルマに説明できるアリバイが立たない。
万が一、原作と性能が乖離でもしていれば、その知識も役には立たないので確認は必須と言っていい。
「ザクマシンガンを受け付けない装甲を持っている。
それと戦艦並の威力を持つビーム銃とビーム剣を装備していることしか分かっておらん」
「……それだけでも十分な脅威ですね」
今のところは原作とさほど性能は変わっていないように聞こえる。
ただし、それだけでもジオンの地上におけるモビルスーツ戦術は根底から崩壊する。
ザクであろうと、グフであろうと、ドムであろうと、どんな重装甲なモビルスーツでも、ビームライフルの一撃を受ければ一撃必殺である。
エース級のパイロットはともかくとして、後方から掩護するザクと前衛で戦うグフという基本戦術は確実に崩壊する。
量産機で唯一まともに戦えるのは、機動性を利用して攻撃を避けることができるドムぐらいになるだろう。
「それが試作機であっても、実際に装備できるということは、連邦には既にそれを生産する技術があるということです。
機体全てには無理でしょうが、せめてシールドには対ビームコーティングを施すことができないか、技術班に検証させておきます」
「頼む。
シャアによると、連中はルナツーへと逃げ込んだらしい。
そうなるとこちらも迂闊には手を出せん」
普通はそう考えるよなぁ。
ただ、原作知識だとシャアは生身でルナツーに潜入、破壊工作をしてホワイトベースをあぶりだすはずだ。
やっぱりシャアはどこかネジが一本外れていると思う。
まあ俺も同じ立場ならやるだろうが。
「私は、
そういうと、ドズル中将はがははと豪快に笑う。
「言うではないかエルンスト。
ならばシャアの手際、じっくり見させてもらうとしよう。
また何か進展があれば教えよう」
「はい。
ゼナ様とミネバ様へも、よろしくとお伝えください」
そして通信が終了する。
俺はふーっと息を吐いた。
原作は既に始まった。
ガルマの戦死を阻止するという俺の目的の上で、最も大事なキーとなるのがその序盤。
いわゆる1つの正念場という奴である。
一応、ルナツーへの潜入作戦でシャアがガンダムを鹵獲してしまうウルトラCを決めないとは限らない。
それでも、ホワイトベースが北米に降りてくる状況は想定しておくべきである。
そう考えて、俺はキャリフォルニアベースへの通信を開いた。
キャリフォルニアベースの後は、マ・クベ中将にも連絡だな。
現実的な対応策の構築と同時に、
数日後、ガルマと一緒に書類仕事を片付けている俺のところに、シャアからの通信が入ってきた。
ということは、原作通りにホワイトベースは北米に降下するルートを辿っているようだ。
「よお、何だい赤い彗星?」
「その呼び名は返上しなくっちゃならんようだよ。
ガルマ・ザビ大佐」
極秘の調査任務を命じられていたシャアと、地球に赴任したガルマ、交流など早々取れるはずもない。
おおよそ8ヶ月ぶりの友人との再会である。
「ははは、ずいぶんと弱気じゃないか。
V作戦とやら、随分と厄介なモビルスーツを作ってくれたようだな?」
原作では初耳だったかもしれないが、こちらのガルマには俺がドズル中将経由で得た情報を既に共有してある。
そこまでの驚きはないだろう。
「ああ、そのおかげで私はザクを8機も撃破されてしまったよ」
「凄いものだな……。
エルンストはどう思う?」
まあ、この数ヶ月、戦術担当は俺が結構肩代わりしてきたのもあるし、ここで意見を求められるのは自然な流れではある。
ガルマに水を向けられたので、俺が通信を代わる。
「久しぶりだなシャア。
ルウム以来か」
「そうだな。
エルンスト、話は聞いていたと思う。
君ならばどう戦う?」
シャアが挑発気に聞いてくる。
やれるものならばやってみせろ、とでも言いたげな表情だ。
確かにルナチタニウム合金、後の時代のガンダリウムαは強力な装甲だが、ザクバズーカの直撃やヒートホークではダメージが入る。
しかもパイロットが現状で素人同然のアムロ・レイならば、如何にガンダムといえども1対1でならば撃破はたやすいだろう。
改良されて、一応はモビルスーツと呼べる程度の性能になったガンキャノンやガンタンクからの支援を考えても、多少てこずるだろうが何とでもなる範囲ではある。
だが、俺としては現状でのガンダム撃破のメリットを正直感じてはいない。
「極めて強力なモビルスーツなのだろう?」
俺は前提条件を問い返す。
「その通りだ」
「なら簡単だ」
俺は言い切った。
「
やるならば徹底的な
ホワイトベースのクルーたちには悪いが、北米を脱出するまでの間、悪夢の北米ツアーにご招待と行こうじゃないか。
シャアとの通信から約1時間後。
ガルマの許可の下で、俺とガルマを乗せて発進した飛行攻撃空母ガウは、大気圏に突入したシャアのコムサイを無事に回収し、『木馬』を捕捉していた。
ちなみに『木馬』とは正式名称がジオンにとっては不明なため、暫定的に付けられたホワイトベースのコードネームである。
しばらくして、回収されたシャアが、ガウのブリッジへと入ってくる。
それをガルマが労った。
「よう、シャア。
サイド7からここまで、お疲れさま。
ほとんど休みもなかっただろう?」
「休み返上でもこなすべき価値はあるさ、ガルマ。
いや、地球方面軍北米戦線司令官、ガルマ・ザビ大佐とお呼びすべきかな。
そしてエルンスト中佐も壮健そうで何よりだ」
「士官学校時代と同じガルマで良い」
「俺もエルンストで構わん。
前にも言ったが、お前に敬語を使われると違和感が凄い」
「言ってくれる」
シャアは笑った後、モニターに映されたホワイトベースを見た。
「あれが木馬だな」
「赤い彗星とうたわれるほどの君が仕留めきれなかった船とはね……。
どう見る?」
ガルマがこちらに視線を向けた。
原作知識とこの世界から得た知識を、逆算的に考えて理屈をつける。
「形状から判断して、空力特性で飛行していることは考えられない。
おそらくミノフスキークラフトで浮遊し、ロケットエンジンで推進するシステムだろう。
大気圏を艦艇のまま突破し、そのまま飛行していることを考えても、ジオンの同系技術と比べても、より実用的な段階にまで落とし込まれているな」
ジオンじゃ同じミノフスキークラフト搭載でも、アッザムに搭載されたものの精度はお世辞にも高いものではないからな。
戦艦を地上でずっと浮かせ続けられるというのは、よく考えればとんでもないシステムである。
「そのことを踏まえて、連中の戦闘能力を計算させてはいる」
ガルマが言った。
ちょっと待ってくれ。
そういう指示はせめて俺のいる前でやって欲しかった。
「いや、分からんぞガルマ」
やんわりと、出てくる前の段階でその導き出される計算結果を否定しておく。
情報が少ないまま、敵の戦力を計算しても意味が無いだろう。
「どういうことだ?」
「これまで、シャアが得たデータで判明してるのは、奴らの宙間戦闘における戦闘力に過ぎない。
ここは連中の生まれ故郷の地球だぞ。
これまでのデータが参考になりはしても、地上でもそうだと確定するにはまだ早い」
「ならば、どうするかね?」
シャアが聞いてくる。
「まずは威力偵察だな。
何をするにしても、奴らの情報を全て引き出してからだ。
ガルマ、威力偵察の許可を」
「うむ、認めよう。
シャアはゆっくり休んでくれ」
シャアが退席するのと同時に、俺が指令を出す。
ガルマの許可をもらった以上、暫定的にではあるが、この場の指揮権は俺に移譲されたことになる。
「ドップ編隊、木馬への攻撃を命じる。
ただしあくまで威力偵察の一環だ。無理に落とそうとするな!
木馬の高度が下がったのち、陸上部隊でも威力偵察を行う。
功を焦るんじゃないぞ!」
俺の命令を受けて、ジオンの戦闘機であるドップが飛び立っていく。
ホワイトベースはドップが相手であっても、近づいてこられれば応戦するしかなく、弾薬を消費せざるを得ない。
こちらが積極的な攻勢に出なくとも、弾幕を張らねばならず、弾幕が薄ければ短距離ミサイルを撃ち込まれて損害が出る。
だから、ホワイトベースにドップを相手に弾薬を節約するといった真似はできない。
そしてここは北米。
彼らには補給経路が確立されていない。
ただでさえ苦しい財布事情を火の車にしてやればいい。
こちらは撃墜されないだけでも十分に元が取れる。
ホワイトベースが高度を下げ始めたな。
「敵のモビルスーツが確認でき次第、航空部隊は援護に徹しろ。
ザクは偵察装備1と掩護装備2に分けて換装、出撃指示を待て。
マゼラアタック部隊も同様だ。
それと、俺のイフリートも降下の準備をしておいてくれ!」
「君自ら出るのかい?
ならば木馬もここで終わりかな?」
もう試合が決まったかのようにガルマが言う。
だから威力偵察と言っとるだろうに。
「終わらせるつもりはない。
適度に痛打を与えたら引くつもりだ」
「さっきも威力偵察と言っていたが、何故だい?
奴を落としてしまえば、ジオン十字勲章ものだと思うが……」
「パイロットとしてはそうだろうな。
しかし北米方面軍司令補佐としては、
「別のうまみ……。
それは、何だい?」
「少し説明には時間がかかるな。
この作戦の後ででも、きちんと説明しよう」
ドップの攻撃にさらされているホワイトベースは、対応策が他に無いのだろう。
ガンタンクを投下した。
確かにガンタンクは対空攻撃能力もそれなりにあり、ドップに対抗するには最適解ではある。
ドップが相手ならば。
「ドップはガンタンクと無理にやり合うな。
マゼラアタックを狙い撃とうとする、木馬の砲台を狙うだけで良い。
マゼラ隊も無理はするな。敵艦に着実にダメージを与えられればそれでいい。
改良されたとはいえ、元はガンタンクだ。
マゼラアタックを狙うには小回りが利かない。
引っ掻き回してやれ!」
申し訳ないが、連中の思惑に乗ってやるつもりは全くない。
ガンタンクを翻弄されれば、いずれはガンダムが出てくるだろう。
地球降下時のシャアの部隊との連戦の疲労もあり、可能なら出し惜しみしたいのだろうが、そうはさせない。
きっちり全機出撃させて、弾薬の消費と疲労を積み重ねてもらう。
「敵のモビルスーツが変わった場合、無理をせずに距離を取れ!」
現状の打破が難しいと思ったのか、ガンタンクがホワイトベースに一時帰還する。
そろそろだな。
「モビルスーツが収容された。
攻勢を強めたのち、敵新型モビルスーツの射出を確認次第、距離を取れ!」
さすがにガンダムが出てきたら、ドップやマゼラアタックでの対応は難しいだろう。
一通りの指示を終え、ガルマに視線を向ける。
「連中には精々出血を強いてやるさ。
特等席で見ていて欲しい」
そう告げ、格納庫へと向かう。
さて、グフを通り過ぎて、いきなりイフリート戦だ。
アムロ・レイには精々嫌な思い出を刻むとしよう。
読んでいただきありがとうございます。
ホワイトベース、ナイトメアモード。
徹底的に、相手にやりたいことをさせず、出血だけを強いて、物資を浪費させて、精神を削る感じ。
地球降りるまでシャアとやってたゲームとジャンル違くない?
8ヶ月地上に一緒にいるガルマでも顔が引きつっているし、シャアは多分ドン引きしてる。
実績解除:シャアをドン引きさせる(2回目)