超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
第1話後編でのドズル視点以来の他者視点が入ります。
格納庫に到着した俺は、既に出撃準備が整っているイフリートに乗り込んだ。
「各部チェックOK。
出撃する」
開かれたハッチから、部下のザク3機と共に降下。
まだ、ホワイトベースからは何も発進していない。
「偵察装備のザクは出てくるであろう新型を観察しろ。
どんな微細な情報であっても持ち帰れ!
撃破されることは絶対に許さん。
残りはマゼラ隊の援護。キャノンが出てきても撃破する必要はない。
バランスを崩すだけでも奴の命中率は激減する。
ドップとマゼラを攻撃させないように立ち回れ。
出てきた新型は俺が相手をする!」
「了解!」
ザクたちが散開する。
同時にホワイトベースからコアファイターが発進した。
原作の流れ通りならば、ガンキャノンは出ないかもしれない。
相手にとってドップが厄介な以上、ガンキャノンよりもコアファイターという選択肢は分からなくはない。
ただ、どちらにしても現状を打破するには足りない。
たとえガンキャノンが同時に出撃できたとしてもだ。
「ドップ数機は、あの戦闘機に対応しろ。
旋回・加速性能や武装のデータ取得を優先。
だが、深追いしなければ撃墜しても構わん!」
ドップ隊へと指示を出す。
コア・ブロックシステムにコックピットが対応している以上、ただの戦闘機に見えても、コアファイターは超が付く高級品である。
1機撃墜されるだけでも、整備にも物資にもパイロットにも、けた外れの負担がのしかかる。
欲を言えば、残骸を回収できたらV作戦のコックピット技術も分析できるだろうが、これは高望みしすぎだろう。
その数秒後、ガンタンクが再発進し、その次にガンダムが発進して大地へと降り立った。
初めての地上だからか、若干着地がふらついている。
ちょうどいい。
シールドに設置されたガトリングで牽制程度に発砲する。
足元を揺らして更にふらつかせる程度で構わない。
まずは注意をこちらに引き付けることだ。
ガンダムがこちらを認識した。
こちらにビームライフルを向けてくるが、そんなゆっくりとした照準動作では、射線が分かりやす過ぎる。
機体を少しずらして回避し、同時にガトリングを
間髪入れずに射撃。
命中。
ガンタンクの装甲が盛大に火花を上げた。
さすがルナチタニウム。
命中しても即撃破とはいかない。
だが、これでガンダムには印象づけられた。
相手の緊張感が増すのを感じ取ってから、俺は煙幕弾を射出する。
俺からはガンダムが見えなくなるが、同時にガンダムからも俺は視認できなくなる。
アムロ・レイは才能だけならば宇宙世紀屈指の怪物であるが、現状では軍人教育も受けていなければ、戦いのいろは自体、促成栽培もいいところの新兵だ。
予想通り、焦ってビームを連射してくるが、完全にめくら打ちである。
こちらに当たりそうなビームだけを最小限の動作で回避しつつ、ガンダムに肉薄。
慌ててガンダムがシールドを構えるが――。
「初見の相手に、動きを止めるのは悪手だよなぁっ!」
ヒートサーベルがガンダムのシールドを半分に切り裂いた。
初撃でシールドを破損させられるとは思っていなかったのだろう。
相手の驚きの感情が流れてくる。
しかし悪いが、それで終わるほど俺は優しくない。
俺は、剣を振り抜いた姿勢のまま、イフリートの右足でガンダムのビームライフルを蹴り飛ばした。
ビームライフルが弾き飛ばされて、大地へと転がる。
そのまま俺はガンダムにタックルし、同時にバーニアを全開にしてガンダムをその場から弾き出す。
これでイフリートのスピードとパワーが相手にも伝わったはずだ。
ザクどころか、グフとも違うのだよ。グフとも!
まぁ、そもそも
ともかく、ビームライフルを拾いに戻っている余裕などあるはずがない。
体勢を立て直そうとするガンダムを尻目に、腕だけをガンタンクへと向け、再度射撃する。
射撃体勢でないため命中率はいまいちだが、むしろそれでいい。
ガンタンクの足元から、徐々に本体へと土煙が立っていくのは、焦りを助長させるだろう。
ほら、悠長に見ている暇はないぞ?
俺は、ビームサーベルを引き抜いたガンダムへと向かい合った。
そのまま、通信スイッチを入れる。
相手は偵察装備でこちらを観察しているザクだ。
「あのモビルスーツのライフルを回収しておけ。
安心しろ。それを阻止する余裕など奴らにはない」
「な、なんなんだあの機体は……」
ホワイトベースのブリッジでブライト・ノアは思わず呟いた。
眼下には、ガンダムと剣戟を繰り広げる
ガンダムの剣さばきがビームサーベルのパワーに物を言わせた力押しとすれば、相手の機体はそれを受け流し、反撃し、確実に相手にダメージを蓄積していく洗練された剣術と言ってもいい。
ただ、ガンダムのダメージだけが徐々に積み重なっていく。
練度が違う。
シャアも技量が違いすぎる相手であったが、相手がザクであったためにしのげたに過ぎない。
相手が新型になった現状、アムロにいくら才能があると言っても、対応できる限度を超えていた。
だが、悪いのはそれだけではない。
戦況自体も目を覆いたくなるような状況である。
対空に出したはずの味方が、全く対空行動に移れていない。
思えばサイド7に着いてから、ろくなことはなかった。
シャアの奇襲、ルナツーでの友軍からの扱い、パオロ艦長の戦死、大気圏降下への妨害。
それでも、多少はこちらにも事態に対応するだけの選択ができる程度の余地はあった。
だが今回のようなことは初めてだ。
打ったはずの対応策が、ことごとく潰されている。
効果を見込んで取ったはずの選択が、何の効果も上げられていない。
この戦況を作り出しているのも、あの白銀の機体だ。
こちらの虎の子であるガンダムが完全に押さえこまれてしまっている。
これでは、ガンダムを起点に反撃行動を取ることもできない。
「あの白、いや白銀か?
あの機体のデータはないのか!?」
ブリッジの索敵要員に叫ぶ。
「ホワイトベースのデータにはありません!
敵の新型だと思われます!」
「ま、待て、白銀だと?
白銀と言ったか!?」
艦長席に座っているリード中尉が焦った声を上げた。
顔が真っ青である。
「知っておられるのですか!?」
すると、リード中尉は絶望しきった表情で吐き捨てた。
「白銀……、ルウムで赤い彗星以上の戦果を挙げたバケモノだ。
確かに地上での目撃例があるとは聞いていたが、最悪だ。
赤い彗星の次は白銀だと!?
神は我々に何か恨みでもあるのか!?」
ブリッジに沈黙が満ちる。
ドップからの攻撃による衝撃だけが響いていた。
ブライトは必死に打開策を考える。
「このままだとじりじりと消耗するだけだ。
一体どうしたら……」
しかし、いくら考えても良い考えが浮かんでくることはなく、時間だけが過ぎていった。
「……相変わらずえげつないな」
ガウの両翼部にあるスペースで、戦場の状況を確認しながらシャアは呟いた。
横にいたドレン中尉がうなる。
「信じられません。
我々があれだけてこずった木馬が、あそこまで防戦一方とは……」
V作戦調査任務開始からの副官である。
ずっと共に木馬を追撃してきたのだ。
思うところもあるだろう。
「彼はやっているゲームが違うのさ」
「ゲームですか?」
不思議そうにドレンが言う。
感覚的にはともかく、言葉にすると少々説明しづらいな。
「我々は元々、敵の新型モビルスーツの奪取、もしくは破壊を任務とした秘密部隊だ。
だから補給としてザクを与えられても、それ以外の兵器は手持ちに無い。
それはそうだ。
誰が我々の任務に、
だから必然的に、我々の打てる手はどうしても、モビルスーツによる
一呼吸。
「だが奴の取った手は違う。
ドップやマゼラアタックといった通常兵器を主軸とし、相手が嫌がる手段を取り続ける。
そして、相手の戦術の起点となるであろう白い機体だけは自身で対応する。
きっとエルンストには、あのモビルスーツを破壊する気も、拿捕する気もないのだろうさ。
ただ時間だけ経過してくれれば、互いに棒立ちでも問題ないとすら考えている。
そして、その間に木馬の出血は看過できないレベルになっていく」
聞いているドレンの顔が完全に引きつっていた。
気持ちは分かる。
ジオンの兵には大なり小なり『戦士』としての気がある。
このような、
「正直、彼だけは敵に回したくはないな」
そう言った自分もきっと、ドレンと同じように顔が引きつっているのだろう。
「そろそろか?」
ビームサーベルを構えたガンダムの攻撃を、ヒートサーベルで受けながら俺はひとりごちた。
ガンダムVSイフリート。
おそらく宇宙世紀史上初となる、白兵戦を得意とするモビルスーツ同士の近接戦闘へと移行してから、しばらくの時間が経過した。
ガンダムは装甲の各所に傷が入ってはいるが、戦闘行動には支障は出ていないといったところだ。
とはいえ、内部状況まで考えると、割とギリギリだろうと予測はつく。
今回の俺との戦闘データは、ガンダムの学習型コンピューターを通じて、ジムへとフィードバックされることになってしまうだろう。
だが、逆にジオンにとっても、ガンダムから派生するであろう、ジム相手への格闘戦の貴重なデータにもなりうる。
俺の機体に記録された戦闘データだけでなく、偵察用ザクが記録した詳細な全データが分析に回されるのだ。
学習型コンピューターにデータを提供する見返りとしても、十分に取引が成立するだろう。
「中佐、データは十分に取れたと思います!
ライフルの回収も完了しました!」
偵察仕様のザクに搭乗している部下からの報告が入る。
ならば、そろそろこの
何度目かになる、ガンダムと鍔迫り合いになったのを見計らって、通信のスイッチを入れる。
連邦との通信は基本的に互換性は無いが、こういった、機体同士を触れ合わせての接触回線でなら、音声は届く。
「連邦のモビルスーツのパイロット、聞こえるか?」
「え、通信?
こ、子ども!?」
この特徴的な声から判断して、やはりアムロ・レイだろう。
俺のニュータイプとしての直感もそう囁いている。
だが、共鳴を起こすような気配は無いので、まだまだニュータイプとしての素質は未開花のようだ。
たしか、実戦に出ることになってまだ5日ぐらいだったかと思う。
それで覚醒しないと失望するのは、さすがに酷だろう。
「一応聞いておきたくてな。
そのモビルスーツの名は?」
今後もずっと「白い奴」とか言うのも面倒だからな。
聞けるなら聞いておきたい。
と思って問いかけてみたが、俺の声がよほど衝撃的だったのか、戸惑いの感情しか感じない。
声変わりしていなくて悪かったな。
「子どもが、子どもがこのガンダム相手に……」
意図しない発言だろうが、言ってくれた。
正直、会話自体は全く成立していないが、まあいいだろう。
「ガンダムというのだな。
それはともかくとしてだ……」
レバーを踏み込む。
イフリートのパワーがさらに増した。
ガンダムが完全に押される。
「子どもだと思って気を抜くようならば、つまらん兵士に成り下がるぞ!」
ビームサーベルごと、ガンダムの腕を跳ね上げる。
完全に無防備になったガンダムの肩をめがけて、俺はヒートサーベルを振り下ろした。
これ以上ないと言えるほどの角度で関節部に入ったヒートサーベルは、ルナチタニウムの装甲による硬さも感じさせず、綺麗にガンダムの腕を切り落とす。
エネルギー供給が途絶え、落ちた腕が握りしめたままのビームサーベルの刃が消えた。
同時に、俺は機体を回転させ、後ろ回し蹴りの要領で、ガンダムをガンタンクの方向へと蹴り飛ばした。
「うわぁぁぁぁっっ!!」
接触回線は切れたはずだが、感覚を通じてアムロの絶叫が聞こえる。
ガンタンクが何とかガンダムを受け止めるも、その衝撃で盛大にバランスを崩した。
潮時だな。
俺は撤退の信号弾を上げ、ガンダムの腕を拾い上げた。
これは戦利品として持ち帰らせてもらう。
補給がない現状、ガンダムのパーツは替えがきかない。
仮にホワイトベースに、後にG3ガンダムに改造されるガンダムのパーツ機が存在していたとしても、腕は左右1回ずつしか修理できないのだ。
当然ながら、ジオンにとってもメリットがある。
装甲材の組成、ビームサーベル、それにエネルギーを供給する電動システム、肘部にあるフィールドモーター駆動システム。
先に回収したビームライフルを含めると、大量の情報が分析によって得られるだろう。
俺は撤退しながら、味方へと通信を入れる。
「
高高度から24時間態勢で奴らを監視しろ。
奴らは補給のために、なんとしても
ドップもスクランブル態勢を維持しておけ」
後は散発的に攻撃をしつつ、進路を
補給に飢えて飢えて、正常な判断力を失ってくれればありがたい。
願わくば、毒餌を平らげた後にすら気付かないぐらいにまで。
読んでいただきありがとうございます。
今のエルンストは阿修羅すら凌駕する存在だ~(棒読み)
普通にTV的な見どころが無さすぎる。
まあ開始1話で量産機に海に叩き落されたガンダムもいるので、これぐらい誤差誤差。
前話からのホワイトベースへの対応について、感想を読ませていただきましたが、概ね好評なようで嬉しく思います。
もうしばらく、ホワイトベースには北米に滞在してもらおうと思います。
(北米で)ゆっくりしていってね!