超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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今回、字数が1万字を越えてしまったため、前後編に分割して投稿します。
こちらは前編となります。


第18話前編 まだシロー着任前なんだよね

 ホワイトベースとの戦いから数時間後。

 ニューヤーク基地に帰還し、シャワーと食事を済ませた俺は、ジオンの士官服に着替えて基地の会議室にいた。

 会議室にいるのは北米方面軍を管轄するガルマ大佐と、シャア少佐。

 中佐である俺を含めて、北米方面軍の上層部が揃い踏みである。

 

「さて、説明してもらえるかな」

 

 ガルマが口火を切る。

 

「まず最初の疑問だが、なぜ白いモビルスーツ――ガンダムだったか、を撃墜しなかったのかね?

 君のイフリートは終始、あれを圧倒していたように見えた。

 腕まで切り落とせたのだから、そのまま破壊はたやすかったろう?」

 

 まあ、当然の疑問ではある。

 この機会に、俺の方針をガルマとシャアにきっちりと伝えておく必要があるだろう。

 

「まず、その質問にはイエスだ。

 俺があのモビルスーツ、ガンダムを破壊しようと思えば可能だった。

 だがそれは()()()()()と判断した」

 

 俺はハッキリと言い切る。

 シャアの気配が変わった。

 有体に言ってしまえば、癇に障ったというところか。

 

「意味が無い……だと!?」

 

 そういう反応をされるのは予想がついている。

 大事な部下を数名失っている任務を『意味が無い』と評されれば、憤るのも無理はない。

 俺は冷静に言葉を紡ぐ。

 

「焦るなシャア。君の任務を貶めているわけではない。

 ただ、前提となる状況が相当変わってきている。

 その整理がまず必要だ」

 

 こういう言い方ならば、シャアにも部下の死を侮辱されたわけではないことが伝わるだろう。

 怒りを鎮めた様子で、俺の言う内容に興味があるといった表情で椅子に座り直した。

 ここからは俺のプレゼン力が試される時間だろうな。

 

「まず質問だ。

 あのガンダムはどこで作られた?」

 

 ガルマが答える。

 

「それは連邦だろう?」

 

 うむ、と頷いてさらに問いを重ねる。

 

「連邦の()()でだ?

 もっと正確に言おう。

 組み立てたのはサイド7として、その()()はどこで作られた?

 あの僻地のコロニーで、反応炉から全て自作したと思うか?」

 

 ガルマは少し考える。

 まだこちらの意図を掴みかねているようだ。

 

「それはもちろん……。

 連邦軍総司令部(ジャブロー)だと思うが」

 

 その通りだろう。

 でなければ『余剰パーツを使って陸戦型ガンダムを制作する』ことなどできはしない。

 余剰パーツが全部サイド7にあったら、取りに行くだけでも大仕事になってしまう。

 

「状況からの推測ではあるが、おそらくその予想は正しい。

 その前提で話すぞ。

 ならば、何故あいつらは、わざわざ宇宙に上がってきた?」

 

「む……」

 

「宙間戦闘におけるデータ集めか?」

 

 考え込んだガルマを尻目に、シャアが答えた。

 まあ、V作戦をずっと追ってきたのはシャアだ。

 一日の長がある以上、ガルマよりも鋭いのは当然か。

 

「その通りだ。

 奴らは新型モビルスーツの宇宙における実働・戦闘データの収集を目的として結成された部隊だと考えられる。

 その上で敢えて聞くが……。

 奴らはサイド7から()()()()()()()()()()()か?」

 

「いや、奴らは一度ルナツーに……ッ!?」

 

 シャアの声色が変わった。

 気付いたようだ。

 

「そう。

 奴らの戦闘データは、ルナツーで一度回収されているのではないか?

 我々は降下する木馬しか見ておらず、ルナツーは実質的なフリーハンドを与えられていた。

 データだけを送るのであれば、軌道衛星上からのレーザー回線でも事足りる。

 既にジャブローに送られていると見るべきだ」

 

 ここで俺はあえて、状況証拠だけを並べてのミスリードを誘う。

 

 実際にはそんなことはないだろう。

 原作では、ルナツーに到着したホワイトベースのクルーたちは、軍事機密漏洩の罪を着せられて拘束されていたし、ルナツー司令官のワッケインはガンダムをわざわざ封印してから、軍の管轄に戻そうとしていた。

 なんでわざわざ封印してたんだろうな? 正直、意味が分からない。

 そんな状況で、機体データのバックアップを悠長に取っている暇なんてありはしない。

 

 だが、『ルナツーがホワイトベースに完全に塩対応だったこと』など、原作知識のない人間の誰が知り得るというのか。

 俺でなければ知りようがない。

 ルナツーに潜入したシャアですら分からないだろう。

 そもそもシャアがやったのは、港湾部の入り口付近での爆破・破壊工作までなので、ホワイトベースに近づいたわけでもないのである。

 

「だ、だが、宇宙の戦闘に対してのデータが既に連邦に送られているとしても、地上戦のデータはまだなのだろう?

 ならば、奴を撃破することにも意味はあるはずだ」

 

 ガルマがうろたえながらも疑問を口に出す。

 至極もっともな疑問だ。

 今連邦がモビルスーツを欲するとしたら、今まさに攻め込まれている地上用なのだから。

 

 だが、それを聞かれることも想定済みである。

 

「その点を踏まえて、これを見て欲しい」

 

 俺は会議室に持ってきた封筒をシャアとガルマの間に投げた。

 2人は封筒を開け、中に入っていた書類と、数枚の写真を取り出して――。

 

「こ、これは!?」

 

 2人同時に絶句する。

 

 当然だろう。

 そこの写真には地上において戦う、RX-79[G] 陸戦型ガンダムと、RGM-79[G] 陸戦型ジムが映っているのだから。

 

 俺の覚えている、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』の設定によると、この2つの機体は、U.C.0079の7月には実戦配備されている。

 2ヶ月も前の話である。

 よく考えると早いなおい。

 

 08MS小隊の知識がある俺は、東南アジア戦線にこれらが存在している可能性が高いと、最初から注視していた。

 そのため、この時点において俺は、これらが既に稼働しているという情報を既に掴めている。

 

 ドズル中将の命により宇宙を捜索していたシャアや、あくまで北米戦線の司令官であるため、地球全土の情報が入ってこないガルマが知らないのは仕方が無いだろう。

 というか、俺だってこいつらの存在しているという情報を確定させたのは、つい先日である。

 つくづくジオン軍は、縦のつながりは強い反面、戦線同士のつながりが希薄である。

 

 それはともかくとして――。

 

 

 ガンダムが複数ある。

 

 

 それは彼らにとっては悪夢に等しい宣告だろう。

 1機でもあれだけ厄介なのだ。

 複数が既に存在しているなど、冗談ではないと思うのも無理はない。

 

 実態は、ガンダムの部品の規格外品を寄せ集めて作った機体であり、出力が機体ごとにまちまちで、軍隊運用のためにわざわざリミッターをかけて出力を揃えているという、ガンダムより格段に性能が劣る機体であるが、そんな内情を知っているのはジオン軍でも俺しかいない。

 そもそも、ルナチタニウムの装甲とビーム兵器だけでも十分脅威なのだ。

 

 言葉も出ない様子の2人に聞く。

 

「どうだ?

 俺たちが戦った機体に似ているだろう?」

 

「こ、これはどこで確認されたのだ?」

 

 シャアが震える声で聞いてくる。

 そりゃ、ガンダム(あれ)が群れをなして襲ってくる様子なんて考えたら、めまいがするのも当然だよな。

 

「マ・クベ中将経由で得た情報だが、東南アジア戦線。

 ギニアス・サハリン少将の管轄する地域で撮影されたものだ」

 

 これは事実である。

 

 政治的な活動を基本的にメインとしているガルマにかわり、軍務的な作業を担当する俺はマ・クベ中将との会議もそれなりの頻度で行っている。

 ジオンの目の届きにくい、東南アジアや東アジア近郊で、連邦のモビルスーツが確認されれば教えて欲しい。

 事前にそう言っていたら、東南アジア戦線基地司令代理のノリス・パッカード大佐を通じて、この報告が送られてきたそうだ。

 

 北米戦線と東南アジア戦線には直接的なつながりが無いため、地球侵攻軍総司令のマ・クベ中将を通さないといけないのは手間と言えば手間だった。

 

「報告によると、これらが複数機存在しているらしい。

 さすがに我々が戦った、あのガンダム程の性能は無いと思いたいが、陸上戦闘におけるデータが連邦にはないと見るのは、希望的観測が過ぎると思わないか?」

 

 こちらは真実ではない。少なくとも俺の主観では。

 

 連邦宇宙軍出身であるレビル将軍が発動した、本来は極秘作戦であるV作戦と、連邦陸軍が主体となって開発された陸戦型ガンダムは、データの共有はおそらくなされていない。

 実際には共有はされているのかもしれないが、正直、それに関してはどちらでもいい。

 この場合、ジオンにとっては『共有されている前提』で動くしかないからだ。

 

「さらにだ」

 

 俺は続ける。

 

「俺との戦闘で回収されたビームライフルとガンダムの腕、そしてビームサーベルは、今晩にでもキャリフォルニアベースに輸送し、俺との戦闘データも含めて、徹底的に解析・検証させる。

 じきに、奴の全性能と、それを支える技術のほとんどが暴かれるだろう。

 よって、奴を鹵獲することによって得られるはずのメリットは、ほぼ消失したと言っていい」

 

 実際、これ以上の技術的な解析を求めるとなると、ガンダムの頭部センサーやバランサー、コックピットの類になってくるだろうが、ジオンが脅威として見ているのは、主にガンダムの装甲(ルナチタニウム)火力(ビーム兵器)パワーと運動性(フィールドモーター)だ。

 それは全部、さっきの戦いで俺が奪ってきた。

 V作戦の調査任務において、ジオンが欲しいものは既に全部揃っている。

 少なくとも、上はそう判断するだろう。

 

 もっとも、俺からしてみれば、学習型コンピューターこそがガンダムの一番の特徴であるが、それを言うつもりはない。

 言った所で俺にメリットが無いのもあるが、そもそも「何で知っているんだ?」と言われるのが落ちである。

 

「確かに……。

 これらの情報を見る限り、既に木馬は新型モビルスーツの実戦データ収集という任務は終えている。

 ガンダムも、()()()()()()()()()()()()の1機でしかない。

 

 さらに言えば……。

 任務を完遂した木馬自体が、既に連邦軍にとっては、モビルスーツの量産から目をそらすための()()()である可能性すら考えねばなるまい。

 考えたくはないことだが……」

 

 シャアがうめく。

 そう誘導したのは俺であるが、シャアの視点から振り返って見れば、ホワイトベースをルナツーに入港させてしまった時点で任務失敗なのだ。

 そして、『ザクが数機程度でルナツーへの避難を阻止できるのであれば、そもそも苦労はしていない』という戦闘データの裏付けは、今回のデータで完璧に揃うだろう。

 最初の段階で既に無理ゲーなのだ。

 元も子もないことを言ってしまえば、初手で大量の援軍を送らなかったドズル中将の責任である。

 

 開始時点で、既にほぼ不可能と言ってもいい任務を押し付けられた形となるシャアの責任とはならない。

 

 少なくとも、キシリア少将あたりならそう考えるだろうし、キシリアからのシャアの評価が維持されるのであれば、じきに次の展望も見えてくるだろう。

 

「敵のゴール地点は、我々の想像よりもはるかに()()にあったということだ。

 連邦のV作戦は既に完遂されている。

 ドズル中将も納得されるだろうと思う」

 

 俺はそう締めくくった。

 それを受けて、ガルマが立ち上がる。

 

「ならば、奴らをこのままむざむざと逃がしてやると言うのか!?

 奴らは、我らジオンの将兵を散々討ちとってきたというのに!」

 

 ガルマとしては、ホワイトベースをこのまま逃がすのは屈辱だろうな。

 ならば、その屈辱を打ち消すだけのリターンを提示すればいい。

 

「いいや、無条件で逃がしてやるつもりなどない」

 

 俺は冷静に否定する。

 ガルマが「何だと!?」と続きを促してくる。

 シャアも黙ってはいるが、視線が「早く言え」と急かしてくる。

 

 ここがおそらくキーポイントとなる。

 俺は慎重に言葉を選んだ。

 

「戦略的なメリットが無いので、奴らは落とす意味がない。

 ならば――奴らを『落とさないこと』に戦略上の利点を作ってやればいい」

 

「メリットを……作る?」

 

 意味が分からないという表情のガルマ。

 

「ならばエルンスト、君ならば彼らにどういうメリットを持たせるというのだ?」

 

 冷静にその内容を聞いてくるシャア。

 対照的な2人の様子を前に、俺はにやりと表情を曲げた。

 

「そうだな……。

 ()()()()()()()()()()()()()なんてどうだ?」

 

 全部支払ってもお釣りがくると思うぞ。




読んでいただきありがとうございます。
続けて、後編もよろしくお願いします。

本格的にガルマ生存の方向性へと舵を切りました。
原典知識を持っていない、ジオンの一般的視点から状況を見たらこうなるだろうなぁという思考実験な感じ。

状況証拠と新情報を大量に叩きつけて、混乱した相手に誤認させる。
なんか詐欺師みたいですね。
いや実際ジオン相手にやってるのは、凄く大掛かりな詐欺行為だとは思いますが。

まぁシャア視点でも、地上に降りてきた直後のタイミングで(陸戦型)ガンダムが大量に映っている写真見たら、卒倒してもおかしくはないと思います。






なお、入れるタイミングがなかったので、そのうち描写する予定ですが、
ガルマとイセリナ嬢の関係は、
「家族の恋愛と結婚に手柄もくそもないだろ。手柄とか気にしてる時点で不義理なんだから、まずはドズルにでも真摯に話をして味方に付けろ。大丈夫、ドズルはお前の同期を嫁にした男だ」
と尻を蹴っ飛ばしたので、ここのガルマ君は別段焦ってません。

戦争パートの合間に家族パートって、すごく入れづらいのですw
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