超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けたので投稿します。


おかしい。
スケジュール的にきついので4000字ぐらいで終わらせようと思ってたのに……。


第20話 紫ババァが来た(言い過ぎ)

 

 シャアとの取引成立から数日が経ち――。

 北米、キャリフォルニアベース。

 

「遠路はるばるお疲れ様でした、姉上」

 

「ああ、お前も壮健なようで何よりだガルマ」

 

 報告を受けて、地球へと降下したキシリア・ザビ少将を、弟のガルマ・ザビ大佐が出迎えていた。

 ちなみに、俺ことエルンスト・ヴァルツァー中佐とシャア・アズナブル少佐もその場にいる。

 

 マ・クベ中将を除けばジオン地球侵攻軍のトップ揃い踏みだな。

 俺とシャアは出向の身分だけど。

 

「報告は聞かせてもらった。

 ジャブロー開口部の位置が判明することは実に喜ばしい。

 大儀である、エルンスト、シャア」

 

「ありがとうございます」

 

「もったいないお言葉です」

 

 シャアと俺が、それぞれ返す。

 

「そんなお前たちにだが、良ければ私のもとに来る気はないか?

 貴様らのような有能な士官なら、私のところで活躍して欲しい」

 

 この人の性格だから言ってくるとは思っていたが、本当に人材マニアだよなぁキシリア少将。

 正直、キマイラ隊だけでも十分だろうにとは思う。

 そいつらの数人でも地球に降ろしてくれれば、俺のブラック労働はなくなったんじゃないだろうか?

 

 まあ、それはそれとして俺としてはこのオファーは受ける必要がない。

 ドズル中将の下から離れる気はない。

 その理由を別にしたとしても……。

 マッチモニード*1とか、屍食鬼(グール)*2とか、グラナダ特戦隊*3とか、ヤバい連中の存在を知っていると、そいつらと同僚になるとか、個人的には絶対に勘弁して欲しい。

 遭遇したら、味方であっても殴らない自信がない。

 

「ありがたい話ですが、私にはドズル中将に返し切れない恩がございます。

 ですので私はこのまま、ドズル閣下のもとでご奉公させていただきたく思います。

 申し訳ございません」

 

 固辞する俺。

 対してシャアは――。

 

「私としては、願ってもないことです。

 閣下さえよろしいのでありましたら、ぜひお受けしたい」

 

 先日の話し合いの通り、キシリアの軍に移籍することを申し出た。

 

「ほう。エルンスト中佐がそう言うだろうとはまあ予想はしていたが……。

 シャア、どうしてこの話を受ける気になった?」

 

 なら、なんで俺にもオファーを振った。

 駄目元って奴かよ。

 

「私としてもドズル中将には恩がございますが……。

 結果としてV作戦の奪取任務に失敗した私には、ドズル閣下に合わせる顔がございません。

 キシリア閣下のもとで汚名を返上する機会をいただければと」

 

 上手い言い方を考えたもんだな。

 ガルマからの報告を聞き、俺の報告書に目を通している以上、ガンダムの奪取・破壊任務の失敗に関しては、シャアの実力が無いという判断には繋がらない。

 むしろ、ザクでルナチタニウム装甲のモビルスーツを相手取って、北米に降下させただけで十分な実力の証明である。

 

 その上で「合わせる顔がない」というのは移籍する上手い口実だ。

 キシリア少将も納得したという様子だ。

 まあ表情は覆面で隠れているので、俺の感覚による判断だが。

 

「よかろう。シャア、貴様には私が持参した新型の試作機を預ける。

 次の戦いにおいては、1つの隊を任せよう。

 存分に働いて見せよ」

 

「はっ!」

 

 多分この時期の試作機となると、予想通りズゴックかな?

 ゴッグやアッガイは既にロールアウトしているから、他に試作機となると思いつかない。

 あれ以外なら、無理してでもキャリフォルニアベースからドム試作型を持ってきて回してやろう。

 

 ゲルググだったら笑うが、俺がガンダムのビームライフルを回収して数日しか経っていない。

 それで完成しているのは、さすがにありえないだろう。

 

 いいから機体だけでも回せよ。

 ゲルググの機体はそろそろ完成してるのに、ビームライフルが開発できないからって、これから2ヶ月寝かせられるのは知ってるんだぞ。

 内部事情をなんでそんなに知ってるんだ、となるからさすがに言えないが。

 

 キシリア少将が話し出した。

 

「それでは次の作戦、ジャブロー攻撃作戦についてだが……。

 我々はジャブローの攻略を目標とはしない」

 

 まあ、そりゃそうだろうな、という顔の俺とシャアと、それに対して意外そうなガルマ。

 対照的だな。

 こっちのガルマは軍務面を俺がかなり肩代わりしているので、下手したら原作よりも軍事の面では疎いのかもしれない。

 かわりに政務的な経験値は積み上がっている気がするが。

 

「な、何故ですか姉上?

 ジャブローの位置が割れた以上、連邦の頭を叩き潰すことこそっ!」

 

「ガルマよ、冷静に考えてみなさい。

 ジャブローを本気で攻略しようと思うのなら、北・南米の全てのモビルスーツをかき集める必要がある。

 お前はこの作戦のために、北・南米全ての戦線を放棄するつもりか?」

 

 実際はそれでも攻略に必要なギリギリってところだろう。

 

「な、ならヨーロッパ戦線から援軍を」

 

「連邦がオデッサを攻める大規模な作戦を計画中だ。

 オデッサから戦力は外せん。

 よって、この作戦の目的は、連邦軍のモビルスーツ製造プラントの破壊を第1目的とする」

 

 妥当な判断だとは思う。

 

 この人、こういう時の判断力はあてになるんだとは思うが、すぐ政争に走って暗躍し始めるから見ていて安心はできない。

 なんで原作でも、よりにもよってあのタイミングでギレン撃ち殺したんだろうか。

 勝ちがほぼ確定してからでもよかっただろうに。

 

 それはそれとして、もうひとつのテコ入れぐらいはしても許されるだろう。

 

「閣下、ひとつ意見を具申することをお許しいただきたい」

 

「何だ? 言ってみよ」

 

「開口部の場所が判明するとはいえ、ジャブローの防空網は強力。

 普通に降下作戦を展開すると、こちらの被害も甚大なものとなるでしょう」

 

 アニメ版で大量のザク、グフ、ドムが対空砲火で沈んでいく様子を見ていた当時の俺は、あれは戦力の無駄遣い以外の何物でもないなとつくづく思っていた。

 マスドライバーからの砲撃で対空防御網を先に潰すとか、南極条約でそれができないなら、モビルスーツなんだからせめて徒歩で行けとは思っていたものだ。

 

「そうだな、で?」

 

「開口部の場所が1つでは、敵はそこに全戦力を集中し、強固な防衛ラインを構築するでしょう」

 

 アニメ版ではホワイトベースの入った開口部の近くにもう一つの侵入口を運よく見つけ出せていた。

 ジ・オリジン版では、シャアが地球に滞在していた頃の人脈から、侵入できる箇所の目星をつけていた。

 複数の侵入できる場所の選定は必須と言えるだろう。

 

 それができるであろう部隊に、俺は心当たりがある。

 キャリフォルニアベース攻略作戦で戦場を同じくした部隊が。

 

「よって、本作戦の準備段階として……。

 閣下のフェンリル隊をお出しいただければと」

 

 闇夜のフェンリル隊。

 ミノフスキー粒子下でのレーダーの使用に制限がかかった状況下で、複数の種類のレーダーを使い分けることにより隠密行動・索敵行動に特化したキシリア配下の特殊部隊。

 ゲーム版では隠れていたホワイトベースの場所を探り当てた部隊だ。

 ジャブローの侵入箇所を調べるにあたって、これほど適任な部隊は存在しないと思っている。

 

 身も蓋もないことを言ってしまえば、俺が単身で潜入し、ジャブロー内部で破壊工作を行うと同時に、開口部を全開にしてしまえば済んでしまう。

 だが、俺は自身の工作員としての能力をこんなところで開示する気はない。

 俺のその能力を知っているのは、現状ではラル大尉とドズル中将ぐらいであるが、他の人間に教えるつもりもない。

 

「なるほど……。

 判明した開口部を起点とし、他の出入り口を見つけ出して、同時侵攻するということか。

 いいだろう。貴様の案を採用してやろう」

 

「ありがとうございます」

 

 キシリアはその視線を俺から外さずに言った。

 

「それで、まだ何か案がありそうだな?」

 

 ついでにプレゼンさせてくれるのか。

 それなら今のうちに言えることは言ってしまっておこう。

 

「はっ! それでは僭越ながら……。

 前述の通り、ジャブローの対空迎撃網は強力です。

 ガウからの降下作戦は、空中でモビルスーツが相当数撃破されると思われ、効率的ではありません」

 

「うむ」

 

 それはそうだ。

 グリプス戦役(Zガンダム)の時代ならいざ知らず、この時代のモビルスーツに空中機動を柔軟に行えるような性能はない。

 実際、作中ではシャアと共に降下した2機のズゴックの内、1機が対空砲火で降下中に撃破され、もう1機も着水直後に魚雷で沈んでいる。

 もったいなさすぎて泣けてくる。

 

「ですので、ジャブロー迎撃網の外縁ギリギリに、移動基地としてダブデとギャロップを展開。

 ガウによる空爆、ならびに迎撃に上がってきた戦闘機をガウより発進したドップで迎撃しつつ――」

 

 ガウはある程度の高度を保っていれば、対空砲火で沈む危険性は少ない。

 爆撃と航空迎撃機の発進だけに使用するならば、リスクはかなり減らせるだろう。

 

「先行隊となるモビルスーツ隊は、水陸両用MSによる河川からの侵攻と同時に、徒歩にてジャブローに接近し、侵入口を確保後――。

 ドダイYSによるモビルスーツ本隊で、低空飛行による本格侵攻を行います」

 

 これが俺の思っていたことである。

 熱帯雨林の中とはいえ、モビルスーツには足があるのだ。

 対空砲で沈むぐらいなら、低空飛行で侵入するか、いっそのこと歩いて行けばいいのだ。

 

「ホワイトベースとガンダムはどうするつもりだ?」

 

 冷静な様子を保ったまま、キシリアが聞いてくる。

 これは、考慮に値すると思ってくれたと捉えてもいいだろう。

 

「連邦はまだ、ホワイトベースが()()()として成立すると誤認しています。

 ですので、ジャブロー内で奴らを発見した場合、数機のモビルスーツで遠巻きに取り囲み、散発的に攻撃を加えてホワイトベースが主目標であると思わせるのが効果的でしょう。

 依然として、ガンダムは強力な機体です。

 ホワイトベース近辺にくぎ付けにすることによって、奴に遊撃をさせないことが肝要かと」

 

 俺ならばまだ片手間に処理できる相手だろうが、他のパイロットにとっては文字通りの死神である。

 奴がジャブローを縦横無尽に動き回った場合、かなりの被害が出てしまうだろう。

 ならば、基本的にはその場を動かずに、ホワイトベースを護衛していてもらうのが、一番手間が少ない。

 

 キシリアが聞いてくる。

 

「仮にそれを突破されて、ガンダムが出てきたらどうする?」

 

 その場合はホワイトベースに攻撃を集中させて呼び戻すのも手ではある。

 だが、こちらの意図が読まれてしまった場合には、それでもMS製造区画に突撃してくる危険性は残るか……。

 

「その時は、私かシャアが相手をします。

 ザクやグフの携行火器では、ルナチタニウム装甲は貫けません。

 私にはイフリートがありますし、シャアも新型である以上、奴に後れを取ることはないかと」

 

 それで多分大丈夫である。多分。

 

 原作のテレビ版なら、オデッサ作戦を含めた、様々な戦場を経験したアムロに、ズゴックのシャアはほとんどダメージを与えられず、命からがら撤退するしかなかった。

 強敵ムーブして出てくる割には、アムロにあっさり片腕を切り落とされて撤退。アムロには「逃げたか」とまで言われる始末。

 前世で映像を見たとき、宇宙猫になった記憶がある。

 

 逆説的に言うと、あの時点でアムロが成長期に入りかけており、既にヤバいレベルになっていたという証拠でもあるのだが。

 

 だが、ここのアムロは原作における数々の激戦をまだ経験していない。

 ガルマが死んでいないため、地球に降りてこないラル大尉とは戦う理由がないし、オデッサ作戦が始まっていないので黒い三連星との戦いも経験していない。

 原作に加えて経験しているのは、俺との戦闘ぐらいだろうが、それが前述の2戦の経験値を上回るとは思えない。

 良くてラル大尉のグフとの戦闘の代替だろうが、それでも総合的に見れば、ラル大尉ほどの影響を与えたとは思っていない。

 生身での接触が一切なかったからな。

 

 だから、シャアが相手することになり、ガンダムとズゴックの性能差にまだ開きがあると仮定しても、いいところまではいくだろう。

 結局のところ、まだ試作機段階であるズゴックのメガ粒子砲がどれだけ出力を出せるかにかかっているとは思う。

 

 まあ現在の状況のアムロが、ジ・オリジン版のようにジムで迎撃に出た場合、戦闘経験値が足りなくてシャアにあっさりとやられてしまう可能性はある。

 だが、その時はその時で仕方ないだろうと俺は考えている。

 

 俺には、特にアムロを殺す理由はないのだが、だからといって、無理をしてまで生かすメリットもないのである。

 俺が三味線を弾いてまで相手をするぐらいなら、連邦の戦力を減らして、オデッサ作戦での負け具合を少しでもマシにしたい。

 言ってしまえば、アムロ・レイという存在は、俺の優先順位の外側の存在なのだ。

 

 たしかに、アムロが死亡してしまった場合、後のティターンズへの対応を考えると戦力的には辛くなるとは思う。

 その時は俺がアムロの代わりをするしかないだろう。

 

 何故、今の時点でティターンズの話をするのか、と思われるかもしれない。

 正直に言ってしまうと、俺はティターンズが生まれることは防げないと思っているからだ。

 

 ティターンズは、あの禿親父(デラーズ)の率いるジオン残党部隊、デラーズ・フリートが行った、『星の屑作戦』への対抗措置として誕生する組織だ。逆に言えば、デラーズ・フリートの結成が阻止できるならば、作中のティターンズは生まれないともいえる。

 だが、デラーズを事前に排除できるかというと、ほぼ不可能である。

 階級が上であり、面識すらもないデラーズを、自然に接触・排除する手段が俺にはない。

 ア・バオア・クー戦の時点で、わざわざ奴の乗艦であるグワデンを探すのなら、他に優先すべきことが山ほどあるだろう。

 

 仮にガルマをジオンのトップに据えることができたとしても、ガルマやドズル中将の指示にあいつが従うとは思えないので、デラーズ・フリートが誕生することは、もう既定路線として考えておいた方が気が楽である。

 

 なら、『星の屑』の情報を事前に連邦に渡す?

 その選択肢を取ろうにも「何でお前がそんなこと知ってんの?」となってしまう。信用してもらえるとも思えない。

 作中でのシーマ艦隊のような『内部に入っていた部隊による、利潤を求めての裏切り』ではないのだ。

 普通に欺瞞工作の一環だと思われるのが落ちだろう。

 だから俺は、デラーズ・フリートとティターンズの双方が()()()()のは、できるのであれば回避したいが、おそらく不可避である事象として捉えていた。

 

 話を戻そう。

 まああのアムロ・レイが、小説版以外でそうそう死ぬとは思えないし、多分大丈夫だと思っておけばいい。

 死んだら死んだで、()()()()()だ。

 

 黙考していたキシリア少将が答えを出したようだ。

 

「ふむ……。

 よかろう。エルンスト中佐、貴様の案を採用してやる。

 今作戦の総指揮は私が取る。

 ガルマ、お前も私と共にダブデに同乗なさい」

 

「は、はい!」

 

 さて、原作とは違い、作戦的には割とガチ目のジャブロー戦だ。

 俺たちは戦力をどれだけ削れるだろうかな。

 媒体によって違うが、オデッサ作戦の戦力比8:1なんて事態は回避したいものだ。

*1
キシリアの私兵部隊。自分たちの都合のために味方であるジオン兵にすら銃口を向ける。狂犬。

*2
キシリアの私兵部隊。味方を皆殺しにして最新MSを強奪した。狂犬。

*3
キシリアの直属部隊。部隊全員がおかしいわけではないが、隊長のマレット・サンギーヌが狂犬なため。誰も止められない。




読んでいただきありがとうございます。

ジャブロー戦の前段階のお話。
多分これだけやってもオデッサで負ける。
なんなの連邦?

この話書くにあたってテレビ版のジャブロー戦と哀・戦士編の該当部分を見直したんですけど、シャアお前あれだけ格好よく登場(ジムのどてっ腹ぶち抜き)しておいて、マジに何しに来たんだよ、ってなりました。

戦車とジム1機とウッディ大尉しか撃破してなかった……。

物凄い大激戦のイメージあったんですけどねぇ。






そもそも日刊がきつくなってきたので、もし間に合わなかったとしても、生暖かい目で見てやってください_(:3 」∠)_
これ書きあがったのも投稿10分前だったりしますw
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