超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けました。

なんでまだ戦闘始まってないんです?



第23話 オデッサ到着

 

 U.C.0079 10月30日。

 

 

 ザンジバルでオデッサ基地に到着した俺を出迎えたのは、基地司令のマ・クベ中将本人だった。

 防衛体制の構築で忙しいだろうに、頭が下がる。

 敬礼して、到着の挨拶をする。

 

「エルンスト・ヴァルツァー中佐、要請に応じ、オデッサ基地に到着いたしました。

 基地司令自らのお出迎えとは、恐れ入ります」

 

「構わんよ。中佐には色々と伝達することもある。

 既に予想しているとは思うが、激戦となる。

 存分に働いてもらうぞ?」

 

 何度か傭兵と雇用主のような関係を続けてきたのもあって、話が早い。

 とはいえ、基地司令である以上、時間に余裕があるわけではあるまい。

 こちらのためにわざわざ時間を割いてくれた形なのだ。

 話は早めに終わらせてしまいたい。

 

「それは承知しております。

 私の搭乗機は、そちらでご用意いただけるとのことでしたが?」

 

 なので俺のイフリートはニューヤーク基地の格納庫で眠ったままである。

 

「よかろう。先にそちらについて片付けよう。

 ついてきたまえ」

 

 歩き出すマ・クベ中将の後に俺も続いた。

 

 数分ほど歩き、格納庫の1つにたどり着いた俺たちは、ひとつのモビルスーツの前に立っていた。

 なんだか若干誇らしげに、マ・クベ中将が機体の紹介を始める。

 

「YMS-15 ギャン。

 次期主力量産モビルスーツ……の候補だった機体だ。

 残念ながらコンペには落ちたがね」

 

 そこには、既に白銀へと塗装されたギャンが立っていた。

 

 やっぱりギャンかよ!

 ジ・オリジンではオデッサ作戦の時点で登場していたから、もしかしたらあるかもとは思ってはいた。

 だが、本当にオデッサにあったらあったでビックリする。

 

 そもそもギャンは――特に視聴者目線から見た場合だが、「ビームライフルの使用ができないため、ゲルググに負けて当然だ」という評価がよくされている機体ではある。

 しかし現時点ではビームサーベル装備というだけでも、ジオンの現行MSの中で攻撃力がぶっちぎっている機体であることは間違いない。

 なんせコンペに勝ったはずのゲルググ君は、ビームライフルの完成までスヤスヤとお休み中なのだ。

 

 そして、技術の系譜を考えると、イフリートより機体の追従性も上だろう。

 TVアニメ版では、初心者であるはずのマ・クベ(大佐)が乗ったギャンで、宇宙に出たアムロともある程度戦えたという、謎な強さを秘めている機体だ。*1

 オデッサ戦において俺が乗る分には、問題は特にない機体と言える。

 

「元は私がキシリア様より賜ったものだが、貴様を乗せるお許しはいただいている。

 私は全体の指揮がある。動くことができん」

 

 ああ、キシリア少将とも折衝済みなのね。

 

 まあそれはそうである。

 オデッサ地域全体は非常に広い。

 そこで大軍相手に、戦況を踏まえた全体の指示をしながらモビルスーツで戦うとか、ゼロシステムでもない限りは無理だ。

 

「ゆえに貴様に預けよう。

 試作機ではあるが、それでも現行のモビルスーツとは一線を画す性能がある。

 使いこなしてみせろ。これが仕様書だ」

 

 そう言いながら、紙の書類の束を渡してきた。

 後で頭に入れておかないといけないな。

 まあ、機体に関しては素直に性能が上がる分、文句はない。

 武装は弄りたいが……。

 

「閣下、2つほど質問よろしいでしょうか?」

 

「何かね?

 言ってみたまえ」

 

「敵の作戦はいつからと見込まれておられますか?」

 

「スパイの報告によると、おおよそ1週間後だな。

 それぐらいの時間があれば、貴様のこのMSへのフィッティングも十分だろう?」

 

 大体原作と同じぐらいの時期かな?

 俺やシャアの嫌がらせでだいぶ消耗しているはずなのに、連邦も強気の姿勢を崩さないな。

 時間を与えてジオンに戦力を整えられることを一番危惧している、ということだろうか。

 

 そしてスパイ(エルラン)はやはりいるらしい。

 ホワイトベースの動きがTV版と変わった現状、彼の裏切りは露呈しないで済むのだろうか?

 ジ・オリジンだと元々疑われていたらしいから、アムロが絡まなくてもあっさり露見する可能性も否定できない。

 というか、エルラン配下の軍団が丸々寝返るようなミラクルでも起こさない限り、エルラン1人が寝返ったところで戦況が覆るわけでもないだろう。

 その辺りはマ・クベ中将も考えているとは思う。

 思いたい。

 

「分かりました。

 では、2つ目を。

 このモビルスーツ、私専用にカスタマイズしても構わないでしょうか?」

 

 さすがにマ・クベ中将専用機といってもいい機体を、そのまま運用する気にはならない。

 使うことはできるだろうが、時間がある以上、ある程度俺に合わせておきたいところではある。

 

「構わんよ。

 元より貴様にくれてやるつもりだった機体だ。

 好きに使うがいい。

 ただし、やるならば1週間以内に済ませたまえ」

 

 そう言って、マ・クベ中将は足早に去っていった。

 やっぱ忙しい中で、わざわざギャンの引き継ぎに来てくれたみたいだな。

 

 中将が去った後で、そそくさと渡された資料に目を通す。

 流体パルスアクセラレーターという新技術が使われている……そういえばそんな設定があったな。

 この技術が、流体パルスシステムにおけるマグネットコーティングのようなものだった場合、俺がある程度本気で動かしても壊れないかもしれない。

 もしそうなら非常にありがたいが、原作世界では最終的に流体パルスシステムそのものが、フィールドモーターシステムに取って代わられている。正確に言うと、折衝案を模索しつつも、フィールドモーター技術の系譜に取り込まれている。

 あまり過剰な期待は持たず、いざという時には本気でぶん回すという選択肢ができた、程度に考えておく方が良いだろう。

 本気で操縦した結果、序盤も序盤で部品が摩耗して動かない、とか間抜けにも程があるしな。

 

 ともあれ、仕様は理解した。

 こっちも遊んでいる時間はあまり無い。

 

「整備兵!」

 

 ギャン専用の整備が割り当てられていたのか、すぐに数名の整備兵が飛んできた。

 まあ元は中将の専用モビルスーツだしね。

 

「このMSを俺用にカスタムする。

 まずシールドだが、グフ・カスタムの物に変更してくれ」

 

 敵の大軍を相手にする可能性を考えると、ミサイルや機雷内蔵のシールドは安定性に不安がある。

 防御力に不安というよりは、そんな複雑な発射機構を備えた試験的兵装を、こんな大一番で使いたくない。

 1対1の対モビルスーツ戦ならともかく、大量の敵をさばき続けることを想定した場合には動作不良が怖い。

 

「同時に、盾の内側にヒートロッドを装備しておいてくれ」

 

「その武装はジオニック規格なので、ツィマッドのこれとは相性が微妙ですが……なんとかやってみます」

 

「頼んだ」

 

 俺のイフリートで、3連装ガトリング砲が装備されている部分である。

 中距離での敵の物量に対抗する場合、弾切れを気にしなくていい分、こちらの方が使いやすい。

 おそらくは、溶断機能にのみ絞って使うことになるだろう。

 ビームサーベルとの干渉や、距離に応じての使い分けを考えた結果、左手に仕込んでおくのが都合がいい。

 

「ギャンは、ザクマシンガンなどの携行火器は使えるのか?」

 

「問題なく使えます」

 

「ならば一応、予備弾倉も含めて腰に携行できるようにしておいてくれ」

 

 ビームサーベルによる近距離攻撃と、ヒートロッドでの中距離攻撃。

 ジムのビームスプレーガンは射程が短い。

 ジャブロー戦での経験から考えても、この2つで十分に対応が可能だ。

 

 ただ、敵のMSはともかく、61式戦車や戦闘機、攻撃ヘリまで、ビームサーベルやヒートロッドで破壊するのは時間がかかりすぎるだろう。

 この機体はあくまでギャンでありギャンキャノン(射撃用改修機)ではない以上、射撃特化の機体と比べるのはさすがに酷だと思うが、ザクマシンガンでも露払い程度になら使えるだろう。

 シールドを換装しておけば、場合によってはガトリングを装着することもできる。

 長期戦を見越した場合、無駄にはなるまい。

 

「どれぐらいで作業は終わりそうだ?」

 

「一応、明後日までにはなんとか」

 

 それだけ残るなら十分だ。

 その間に地形と敵布陣データを頭に叩き込んでおけばいいだろう。

 その後は慣らすだけである。

 

 そんな見積もりを考えていると、整備兵の1人が控えめに声をかけてきた。

 

「あの……中佐」

 

「何だ?」

 

 何やら言い出しづらそうな雰囲気をしているが、成人男性のそういう仕草は絶妙に似合わない。

 いいからはよ言え。

 

「この機体のコードなんですが……YMS-15のままだと分かりづらいと思うんです。

 色自体は中佐の白銀で目立ちますし、何かコードのようなものを付けた方が良いと思うのですが……」

 

 非常にどうでもいいことが飛び出した。

 

 何だろう?

 マ・クベ機から俺に移譲された以上、()()()をつけておきたいとかそんな感じなのだろうか?

 試作機の整備兵の感覚はそういったものなのだろうか?

 いまいち分からない。

 

「コードねぇ……」

 

 イフリートに乗っているときは、イフリートのままだったからな。

 あれ自体が数機しか存在しない、特注といっていいレベルの試作型機体だったから、それで問題はなかったんだよなぁ。

 こいつは嫌がりそうだが、もうギャンのままで良くないか?

 

 いや、でもギャンは既に量産機コンペで負けた機体だったな。

 ならギャンのコードのままで下手に働きすぎると、「やっぱりゲルググの採用見直し」とかなったらマズいのか?

 

 ア・バオ・ア・クーで大量に宇宙を駆けるギャン……。

 駄目だな、熟練兵ならともかく新兵だと、接近戦を挑む前に撃ち落とされる。

 

 とはいっても何を付けるべきか……。

 俺の『白銀』は見てそのままだから、識別コードに使うには安直だろう。

 機体の特性から何かつけられないか?

 近接戦主体で、武装は大出力のビームサーベルと、俺が外付けしたヒートロッド……。

 

 ん?

 

 射撃武器を後付けしてしまっているけど、どうせ撃ち切ったらパージするよな……。

 

 

 原典のコンセプトを考えると、若干苦しい言い訳のようにも聞こえなくもないが、どのみち原典を知っているのはこの世界で俺しかいない。

 名前を一時的に借りるだけならば、別に構わないだろう。

 

「決めた。コードは『エピオン(その次)』だ」

 

 ギャン試作型、エルンスト・ヴァルツァーカスタム、エピオン。

 頭の中で誰かが言った気がする。

 

『この機体に乗って勝者となってはならない』*2

 

 そうだな。

 ()()()()()()()()()()さ。

 オデッサ作戦(確定した負け戦)に臨むには、皮肉が利いているだろう?

 

 

*1
なお、マ・クベ戦の後、アムロの乗ったガンダムはシャアの乗ったゲルググと連戦して、これをあっさりと撃退している。

*2
『君が敗者として帰還することを望む』




読んでいただきありがとうございます。

まあ安定のギャンとなります。
この時期に明確にオデッサにあってもおかしくなく、イフリートより明確に性能が上な機体となると、こいつかなと。
ジ・オリジンで普通に自爆するまで無双してましたしね。

魔改造についても、基本的にあるもので代用する形になりました。
当然、変形もしませんし、()()()()()()も付いていません。
ガンダニュウム合金すらこの世界には無いw

ので、ネーミングについては主人公の遊び心と思っていただければ。
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