超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
なお、本作品においてのオデッサ作戦での連邦軍のMS数ですが、投入された人員数の設定とジ・オリジン設定とのごった煮という部分を考え合わせて、おそらく最低でも500機、多分1000機は行かないんじゃないかなぁ、程度でイメージして書いております。
全てが最新のジムというわけでもなく、最初期型よりは多少はマシになった程度のガンキャノン、ガンタンクも入っていると思います。
陸ジムと陸戦型ガンダムはどうかなぁ?
陸軍が回してくれなさそうな気が……。
また、主人公の戦闘能力についてですが
『1年戦争終盤のアムロ・レイ + フィジカル - 機体の限界』
というイメージをしておりますので、ざっくり言うと「でもこれ天パ(最終形態)なら普通にできるよね?」と思いながら書いています。
U.C.0079 11月8日。
ジオンにとって、戦況は芳しいとは言えない。
もちろん、まだまだ余裕はあるし、士気も高い。
原作のように戦線が理不尽に崩壊することもない。
しかし、それ以前の問題が、純然たる兵力差である。
いくら俺が奮闘したといっても、個人で戦線そのものを押し上げることなどできるはずもない。
ゲリラ的に出没し敵を潰しているので、どうしても噴射剤の消耗が多くなる。
不意を打って敵を潰しているとはいえ、各部の摩耗は避けられない。
ビームサーベルのメンテナンスや、ヒートロッドの交換も必要になってくる。
そういった整備や補給に戻っている間や、仮眠や食事を取っている間に、他と比べればマシとはいえ、ゆっくりと押し込まれつつある。
オデッサ作戦が始まって丸1日が経過した現在、全体的にじりじりと押されてきているのが現状だ。
そんな状況の中、この日、数回目の補給に戻った俺は、マ・クベ中将から呼び出しを受けた。
ギャンを酷使しまくっていたこともあり、「その間に軽くでいいので全系統の点検をしたい」と整備兵から言われた俺は、MSを整備兵たちに預けて、総司令部のダブデを訪ねていた。
指揮所に入ると、各所への伝達や情報をまとめるために、走り回る兵たちがあわただしい。
なかなかに戦況の激しさを物語っている。
「よく来たな中佐。まあ座り給え」
マ・クベ中将は、戦況の割には落ち着いているように見える。
戦況が予定通りなのか、それともいざという時は核兵器があると考えているからなのか、そこまでは分からない。
用意してくれた椅子に座る。
「マ・クベ中将、全体の戦況はいかがでしょうか?」
「連邦の戦力が減らぬな。
全体的に押され始めている」
まあ人員差8倍とかだしね。
俺が50機や100機程度落としたところで、戦況を覆すほどになるはずもないか。
それでも、崩壊した戦線が存在しないのは、エルランの裏切りがバレていないということなのだろうか。
そうだとしたら、史実よりはだいぶ状況はマシであると判断できるのか?
「さて、中佐。貴様を呼んだのは時間を潰すためではない。
貴様の意見も聞いてみようと思ってな。
この戦い、
そういう聞き方をしてくる以上、徐々に押し込まれつつあるのだろう。
普通に勝てるのならば、そんなことをわざわざ聞いてくる必要はないはずだ。
しかし、この場で俺に意見具申を許すと来たか。
これは……、上手くいけば、核の使用を思いとどまらせることができるかもしれない。
レビルに引く気が全くないことを知っている俺にとって、水爆ミサイルは正直、ジオンに利益が全くない行為でしかない。
仮に核攻撃に成功したとしたら最後、怒り狂った連邦による敗残兵の虐殺が起こるだろう。
なにせ、条約を破ったのはこちら側からなのだ。
投降など認めるとは思えない。
どちらにしてもジオンにとって良い結果にならないだろう。
恫喝でレビルが退くのなら悪くない手なんだがな。
退かなかった場合、舐められているのと同じことなので、軍の司令官としては撃たねばならなくなるというのがまさに地獄である。
「1つ、質問をお許しください。
オデッサ基地の鉱物資源は、現状でどれ程宇宙に供給されたのでしょう?」
「莫大だ、としか言いようがないな。
鉱物資源に限れば、ジオンはあと10年は戦えるだろう」
そこは原作通りか。
でも、鉱物資源は10年もっても、人的資源がもたないのがジオンなんだよな。
なら、提案してみる価値はあるか……。
「ならば現状、ジオンにとってこの地域は
防衛戦を繰り広げている最中に言う台詞ではないな。
そう自分でも思う。
「ほう……貴様、言うに事欠いて、この基地を捨てろ、と私に言うのかね?」
マ・クベの視線が俺を射る。
しかし、発言してしまった以上、ここで引くわけにもいかないだろう。
「この地区がジオンにとって何よりも重要であった理由は、大量の鉱物資源でした。
その移送を終えている現状、この地区の維持よりも
「ふむ……それは何かね?」
「ベテランのパイロットたちの存在です」
俺は間髪入れずに言い切った。
「彼らのモビルスーツの総搭乗時間は、1000時間を超えるものも珍しくはないでしょう。
この1年間、地上に降りて、モビルスーツで戦い続けた彼らの経験と操縦技術は、ジオンにとって黄金に等しいと考えます。
宇宙ではルウム以降、大規模な実戦が起きていません。
ジオン全体を見ても、現在この戦線で戦っている兵士たち以上のベテランはほとんどいないでしょう」
オデッサの敗退により、大量の将兵が捕虜となるかジオン残党として潜伏したため、パイロットの数が足りなくなり、結果的に学徒動員なんてことを実行する羽目になったのだ。
学徒動員された新米パイロット10人よりも、今ここで戦っているパイロット1人の方がよっぽど戦力になるだろう。
「なるほど。一理ある。
ならばどうするかね?
この際だ。貴様の意見を全て聞かせてもらおう」
興味深いといった笑みを浮かべているが、俺は知っているぞ。
採用に値しなかったら核ミサイルなんだろう?
「やることは至極オーソドックスです。
組織だった撤退戦を行います」
司令だけさっさと撤退というTV版も、司令が部隊を率いて陽動に出て、最後には自爆というジ・オリジン版も
マ・クベ中将が横に控えていたウラガン少尉に目配せをする。
即座にウラガンが、モニターに戦況図を映してくれた。
仕事が早いと助かるな。
「まずはゆっくりと戦線を後退。敵に押し込まれている
モニターの連邦軍が、ジオンの部隊を押し込んでいく。
芸が細かいな。
「同時に、HLVと『黒い三連星』が降下に使用したザンジバルにブースターを装着。
戦線縮小に伴って、余剰人員となる兵士たち、それと護衛用のモビルスーツを数機搭載します。
「ある。グフが生産され始めてからは、陸戦型への改修よりもそちらを優先したからな」
よし。
それなら少なくとも、
グフもドムも陸戦型だ。
HLVに搭載する意味はない。
陸戦型に改造していないザクが最適解と言えるだろう。
「ならばそちらで。
ザンジバルには閣下もご搭乗ください」
脱出方法はTV版通りだが、これだけでもだいぶ違うはずだ。
「それはいいとして、依然として残された味方は膨大だぞ。
どうするのだね?」
「残っているガウ、並びに私の乗ってきたザンジバルにも兵たちを乗せ、ニューヤーク基地まで搬送します。
これは対空攻撃さえ凌げればいいので、モビルスーツを搭載する必要はないでしょう。ドップだけで十分です。
その分、兵を乗せます」
俺はそのまま、地図上でオデッサの隣に広がる黒海を示す。
「黒海に展開しているユーコン級も同様にして、兵員を我が軍の勢力圏内であるアレキサンドリアへと移送します。
本来ならばピストン輸送を行いたいところですが、黒海は水深が浅い。
連邦の対潜哨戒機が飛び回るようになるとリスクが跳ね上がります。
黒海から運ぶのは一度きりにした方が良いでしょう」
「まだまだ兵士は残されているな?」
マ・クベ中将、なんだか試験官みたいだな。
採点されているような気分だ。
「はい。ですので、残りは地上経由の撤退となります。
まずは残ったギャロップをあるだけかき集めて、それを移動手段とします。
ダブデは火力はありますが足が遅い。撤退行動には不向きでしょう」
連邦のビッグトレーはホバー走行なので速いのだが、同系統の陸戦艇であるジオンのダブデはキャタピラ走行なので、速度差はいかんともしがたいのである。
撤退戦に使うとなると、ホバー走行ができるギャロップ以外に選択肢がないだろう。
マ・クベ中将は頷いた。
「撤退開始のタイミングですが……。
閣下がザンジバルで脱出する直前に、私のギャン、それとドム数機で構成された部隊が北部方面へ一点突破を図ります」
俺はオデッサから、北にある連邦軍部隊へと指を動かす。
もしこの時に『黒い三連星』がいるのならば、同行してもらえるととてもありがたいのだが、「マッシュの敵討ち」に躍起になってしまっている以上、あの2人がガンダムに撃破されることを前提に動いておくしかないだろう。
「同時に、後退した戦線は陽動のため、一時的に反転攻勢を仕掛けます。
陽動に応じ、我々が北部戦線の暫定司令部であろうビッグトレーを攻撃、可能なら撃破します。
昨日1日かけて散々連中の恐怖を煽ってやりましたので、敵指揮系統への混乱はそれなりに見込めるでしょう」
北部担当のビッグトレーに損害を与えられれば、北西部と北東部の連携にも影響が出る。
ミノフスキー粒子が散布されている以上、データリンクは中継拠点が失われると、途端に困難になるのだ。
加えて、
「敵の指揮系統が混乱したのち、部隊を反転し、撤退します。
ザクとグフは相当数を置いていくことになりますが、速攻にも迅速な後退にもドムが最適である以上、仕方ないでしょう」
冗談みたいな数値であるが、ドムの最高時速は驚きの381kmである。
こういった作戦にドムを使わないことはあり得ない。
「その後、ギャロップに道中の護衛を担うドムを中核としたMS隊と私のギャンを搭載し、クリミア半島からクリチ海峡を抜け、ジョージアへと脱出します。
ギャロップにカーゴを数機連結すれば、大半の人員は収容できるでしょう。
シリアあたりで一度ユーコンに迎えに来てもらえれば、カーゴを外せるのでより移動を迅速に行えます」
ギャロップはホバー走行なので、ごく短い海峡ならば渡海が可能である。
ジョージアには東西にコーカサス山脈がそびえ立っているため、連邦も山陰に隠れている『かもしれない』我々の迎撃を警戒しながらでは、それなりに足が鈍るだろう。
そのためには実際に一度、ドム部隊で追撃部隊の頭を叩いて足を止める必要はあるが。
とはいえ、カーゴを連結したとしても、さすがに全員の収容は難しいだろう。
残った兵には敵の混乱に応じて、各個に撤退してもらうしかない。
最悪、投降も許可せざるを得ないだろう。
さすがに全員を無事に脱出させるなんて神業は俺には不可能だ。
熟練兵を優先させてもらうしかない。
「それでも敵の追撃は激しいぞ?
どう逃げる?」
「ジョージアでさらに部隊を2つに分けます。
半分はそのまま東進し、バイコヌール宇宙基地より宇宙に帰還させます。
このルートは連邦の勢力が確立していない地域を通ることになるので、距離は長くなりますが比較的安全でしょう」
ジョージアからカスピ海の南岸を経由して、イラン・トルクメニスタン・ウズベキスタンと経路を示す。
ラサにギニアス・サハリン少将の基地がある以上、多少離れていても未だ連邦はその辺りには展開しづらいのだ。
ギニアス少将には迷惑かもしれないが、基地に押し掛けるよりはマシだと我慢してもらうしかないだろう。
まあ、あの基地に撤退させても、
「もう半分はどうするのかね?」
「トルコからシリア、イスラエルを経由し、アレキサンドリアへと向かいます。
アレキサンドリアにはあらかじめ、ニューヤークに向かったザンジバルを折り返し向かわせます。
アレキサンドリアに着いた将兵は、ザンジバルとユーコンでニューヤークに向かうか、あるいは陸路にてキリマンジャロ宇宙港、アデン宇宙港経由で宇宙に帰還させます」
「そちらは激戦になるな……」
その通りである。
いくつか連邦の勢力圏内を突っ切る形となるため、どう回避しても数回は連邦の追撃部隊との戦闘になるだろう。
「ええ、ですのでそちらには私が残ります。
バイコヌール宇宙基地だけでは全ての将兵は帰還させられません。
どうしても分担する必要があります」
かなりしんどい展開になるだろうが、それでも『TV版のホワイトベース』よりはマシである。
なんで北米から地球一周してジャブローってルート通ったんだろうかあれ?
まあ俺たちの撤退ルートは、少なくとも塩が足りなくなるような距離ではない。
マ・クベ中将はしばらく考えたのち、うむ、と頷いた。
どうやら試験官の採点的には合格ラインのようだ。
「確かに現実的と言えるな……。よかろう、貴様の案を採用しよう。
総員に告ぐ、地球侵攻軍、総司令官命令である。
翌日――11月9日より撤退戦を開始する。一部の部隊に撤退戦の準備を開始させよ。
とはいえ、本日中はあくまで防衛戦である。
各員奮起せよ」
俺を含め、司令部にいる全員が敬礼をした。
さて、明日に備えて、もうひと暴れしてこなくてはならないな。
読んでいただきありがとうございます。
戦闘描写がなくオデッサ2日目が終わってしまいましたが、大体やっていることは1日目と同じなので。
敵が物凄く集まったので、1回潰すごとに補給に戻ったりしないといけないかもしれませんが、それぐらい。
核攻撃はキャンセルです。
あれやってもジオンにメリットないですしね。
撤退ルート考えるの正直楽しかった。