超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。

長くなってしまったので、場面を分けての前編と後編になりますが、申し訳ありませんが同日投降はちょっと無理でした。
後編は翌日の投稿となる予定です。


第27話 オデッサ作戦 3日目 前編

 

 U.C.0079 11月9日。

 

 長い1日が始まった。

 

 明け方より1時間ほど早く集合した、俺のギャンと志願者で構成されたドム6機は、静かに基地を出立した。

 敵に感知されないギリギリの地域に息を潜め、タイミングを待つ。

 十数分後、明け方直前のタイミングで、周囲から火砲が上がり始める。

 反転攻勢を装った味方の合図である。

 

「定刻通りだ。

 全機、状況を開始!」

 

 俺の指示をもって、飛び出していく6機のドム。

 ほどなくして、ビッグトレー護衛のジムと交戦状態に入ったのを目視で確認する。

 このタイミングだ。

 

 俺はギャンを乗せたドダイYSを浮上させ、超低空飛行でビッグトレーに直進した。

 この作戦の開始をもって、ミノフスキー粒子は戦闘濃度をはるかに超える量を散布済みである。

 俺たちも至近距離でしか無線は使えなくなるが、作戦の手順は全員の頭に叩き込んでいる。

 後は各々がベストを尽くしつつ、目視できる位置に味方がいたら助けてやるぐらいしかできない。

 

 急に濃度が増したミノフスキー粒子と、急襲してきたドム部隊に意識が向いている今が機会とばかりに、全速で飛ばす。

 ようやく、こちらに気付いて機銃で応戦してくるが既に遅い。

 機銃を数発受けつつも、ドダイYSはビッグトレーに到達した。

 俺はギャンでドダイYSから飛び降り、そのままビームサーベルをビッグトレーの指令室に叩きつける。

 ジムどころか、ガンダムと比較しても高出力なビームの刃は、指令室を両断しつつビッグトレーを貫通、接地部まできれいな断面を作る。

 ビッグトレーに突き刺さったドダイYSが炎を上げると同時に、ビッグトレーも爆炎に飲み込まれた。

 

 ビッグトレー(敵北方司令部)の破壊完了。

 後は撤退するのみである。

 

 俺は奇襲成功の意を込めた信号弾を打ち上げ、撤退を開始する。

 幸先がいいというか、ビッグトレーが破壊された動揺を突いて、随伴のドム部隊も、ジムをあらかた蹴散らせたようである。

 撤退する俺に随伴して……ん?

 随伴しているドムが、俺のギャンを2機がかりで抱え上げた。

 両腕を掴んで抱えられている。

 

「お、おおう!?」

 

「中佐。ドムで抱えた方が早いです。このままずらかりますよ!」

 

 接触回線を通して、ドムのパイロットが告げてくる。

 

 確かにスピードは出るだろうが、絵面的にはかなり間抜けじゃないかこれ?

 子供か!?

 ……子供だったわ俺。

 

 まあ、ドダイが破壊された以上、これが一番早いことには変わりはないか。

 了承したと返し、モニターを確認する。

 

 基地の方角より閃光と爆炎が見える。

 俺の信号弾を合図に、HLVとマ・クベ中将を乗せたザンジバルが宇宙に上がっているのだ。

 直後にニューヤークへのガウ、ザンジバルによる航空移送部隊と、アレキサンドリアを目指すユーコン部隊も発進する手はずである。

 

 これより撤退戦の開始である。

 

 

 

 

 基地に戻った俺たちは、そのまま待機させてあるギャロップにMSを詰め込んだ。

 

 既に撤収予定の人員は全て、ギャロップに接続されたカーゴに収容されている。

 かなりすし詰め状態ではあるが、それは勘弁してもらうしかない。

 ギャロップ本体には護衛のモビルスーツと、その部品や弾薬、噴射剤を満載しておかねばならないのだ。

 

 かき集めたギャロップは15機。

 オデッサ中の全ギャロップを集めるわけにもいかず、兵をなるべく多く詰め込みつつも、前線ではギャロップが散見される数という、ギリギリのラインの妥協が入っている。

 全てのギャロップにカーゴを複数接続しているため、見ようによっては芋虫が整列しているようにも見える。

 ギャロップそれぞれの後部には、ドップとルッグンを着陸させてある。

 ある程度の航空支援ならできるだろう。

 

 普通なら目立ちすぎる大船団だが、指揮系統を混乱させた上に、高濃度のミノフスキー粒子を散布させている。それに加えて夜明け前だ。

 俺たちの意図がバレるまでの時間はそれなりに稼げるだろう。

 

 ドムの一部はギャロップに乗り込むが、一部はそのままギャロップに並走を始める。

 常時警戒の意味もあるが、ギャロップには最大でもMSを3機しか搭載できない。

 それに加えて補給物資を積み込むとなると、一部のドムにはローテーションで走ってもらうしかないのである。

 それでもモビルスーツは30機を越えるし、兵員数まで含めると数万の大集団である。

 

 こいつらが無事にジオンに戻れるかが俺にかかっていると考えると、正直胃が痛いがやるしかない。

 この戦団で一番階級が高いのは中佐の俺なのである。

 

 

 ちなみに、ガイアとオルテガはここにはいない。

 撤退作戦のこともきちんと伝えてはおいたのだが――。

 

「そんなことはお前たちで好きにやっておればよい。

 我々はマッシュの敵討ちを果たさねばならん」

 

 と返されてしまった。

 

 いやまあ、首尾一貫してるのは悪いことではないと思うのだが、価値観が鎌倉武士か何かなのだろうかあいつら?

 そういった事情で、『黒い三連星』の2人は現在、直属の部下たちのドム部隊を引き連れて、ホワイトベースを相手に死闘中のはずである。

 

 部下含めて、撤退部隊に加わってくれたらものすごく助かるのに……。

 とはいえ、全部承知の上であいつらが攻勢に出てくれるのなら、俺たちの撤退はさらにバレにくくはなるだろう。

 

 

 そんなことを考えている間に、ギャロップが発進する。

 敵の追手が来た場合、即応しなければならないので俺はギャンに乗ったままであるが、接触回線でギャロップの司令室とは連絡が取れている。

 

「中佐、ギャロップ全機発進を確認。

 全機異常なしです」

 

「よし、連邦の指揮系統が混乱してるうちに、クリミア半島を越える。

 急げよ」

 

 ギャロップの最高速度は時速232kmのホバー走行であるため、カーゴを満載しても200kmは出る。

 オートで、ランダムな砲撃とひたすらミノフスキー粒子をまき散らすようにプログラムされた、ダブデと現地に残しておいたギャロップに敵が気付くのは、連邦の混乱を加味しても1時間はかからないだろう。

 そのタイミングを見計らって、残してきたザクやグフの反応炉を暴走させる*1と同時に、時限信管を設定した気化爆弾で、核爆発に見せかけた基地の自爆も演出する予定である。

 

 それでどれだけ部隊が混乱してくれるか。

 正直、釈然としないがエルランに期待してしまう自分もいる。

 「白銀による斬首戦術の可能性がないと、なぜ言い切れるのです!」ぐらいレビルに言って、せいぜい連邦の足を遅くしてもらえるとありがたい。

 

 ケルチ海峡を渡海し、コーカサス山脈の山陰に入るまで、時間にして4時間といったところだろう。

 そこが第一関門だ。

 

 

 

 

 1時間半ほどが経過し、今のところ部隊は順調に進んでいる。

 30分ほど前に大規模な振動をキャッチしたので、基地の自爆も上手くいったと見ていいだろう。

 現状、連邦軍はパニックに陥っていると思われる。

 レビルは冷静、あるいは冷徹に追撃の指示を出すだろうが、追撃行動に冷静に移れる部隊がいなければ、実行はできない。

 

 今警戒すべきは、偶発的な遭遇戦である。

 

 警戒に先行させていたルッグンが、連邦の小規模部隊を発見したそうだ。

 ジムが数機。

 外にいるドムだけで完勝できると判断し、指示を出す。

 これから何戦あるか分からないので、ギャンは温存できるなら温存しておきたい。

 

 ほどなくして撃滅の報告が上がり、移動が再開された。

 しかし、これで我々の現在地を連邦に知られることになる。

 偶発戦が多ければ多いほど、俺たちの辿る経路が敵に見えてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 数部隊の連邦軍と交戦を重ねつつも、何とか無事にコーカサス山麓に入った俺たちは、予定通り部隊を2つに分けることにした。

 ギャロップを6機東進させ、彼らをバイコヌール宇宙基地へ向かわせる。

 比較的安全なルートとはいっても、護衛のモビルスーツを付けないわけにはいかないので、ドムを10機ほどそちらに同行させる。

 それだけのドムがいれば、このルートなら連邦に襲われる心配もないだろう。

 

 問題は、もう片方の南進する部隊、俺たちである。

 この先、トルコからシリアにかけては完全に連邦の勢力圏内だ。

 オデッサからの追手には早々追いつかれることはないとしても、イラクとトルコからこちらを探してくる連邦軍との戦闘は、避けようがない。

 別ルートに向かった部隊とは違い、俺たちの位置は連邦に丸わかりなのだ。

 しかもトルコには、オデッサのための予備兵力や後詰めのための大部隊がいることだろう。

 

「ルッグンより入電。

 前方に敵部隊を発見。

 モビルスーツ20機、他、戦車を確認」

 

 初戦からいきなり、こちらとほぼ同数のモビルスーツ戦である。

 位置的にオデッサの後詰めとして配置されていた部隊の一部だろうが、これがあと何戦続くか分かったものではない。

 

「全MSに告げる。出撃し敵を殲滅せよ。

 ただし、我々の目的は犠牲なく逃げることだ。

 無理な撃墜は避けろ」

 

 命令を出して、操縦桿を握る。

 消耗を控えめにできればいいのだが……。

 

 

 

 

 数時間後。

 

 俺はコックピットに座ったまま、うんざりした顔で聞いた。

 

「これで何波目だった?」

 

 ギャロップの司令室から即座に通信が返ってくる。

 

「第17波です、中佐殿」

 

 多すぎんだろう連邦。

 波ごとにモビルスーツの数はまちまちではあるのだが、トルコ方面の後詰め部隊を全部、こちらの追撃に回してるのかと聞きたくなるレベルである。

 

 正直に言うと、レビルの執念めいたものを感じる。

 

 そんなに白銀()の存在が目障りか?

 

 ……よく考えたら、目障りなのは当たり前か。

 ルウム、ジャブロー、オデッサと、俺、あいつに苦汁しか舐めさせてなかったわ。

 

 ドムも既に数機が大破、パイロットは無事に脱出していたものの、敵に鹵獲される危険性を考えると、爆破処理するしかなかった。

 ギャンの各部も部品の摩耗が酷く、既に交換パーツも底をついている。

 ドムの方のパーツは、まだギリギリ余裕があるようだ。

 

 甘く見ていたつもりはなかったのだが、乾燥帯における砂の影響の見積もりが、まだ足りなかったな。

 特にギャンのような高性能機の部品は、代えが利かない部分も多い。

 

 付け加えると、人員が山ほど乗っているためにパイロットがローテーションできるドムとは違って、俺は全ての戦いに出ずっぱりだ。

 さすがにこの肉体のポテンシャルが規格外とはいえ、いい加減疲労も無視できないレベルだった。

 『ガンダムパイロット』の宿命として、消耗戦には弱いのである。

 

「敵MS部隊接近。

 繰り返す。

 敵MS部隊接近」

 

 ……第18波が来たようだ。

 この間隔の短さからして、オデッサ作戦に参加した部隊にも、ちらほら追いつかれているのかもしれない。

 位置的にはあと2~3時間でシリアの海岸地帯、事前に示し合わせておいたユーコンとの合流地点である。

 アレキサンドリアからの補給物資も積むように頼んであるので、そこまでたどり着けば一気に楽になるだろう。

 希望が見えている以上、踏ん張らなければならない。

 

 滲む汗をぬぐいつつ、ギャンで迎撃に出る。

 格段に反応が鈍くなっているギャンを何とか動かしつつ、ジムの数機を切り捨てた。

 味方のドムの奮戦もあり、残り数機となったジムの1機にビームサーベルを振り下ろそうとしたとき。

 

 ガキン。

 

 嫌な音とともに、振り下ろしたはずのビームサーベルが止まる。

 コックピット右横の、機体状況を表示するモニターに視線を向け、機体の状況を確認する。

 どうやら、右肘の関節部のパーツが酷使に耐えられず、とうとう逝ったらしい。

 

 一瞬止まったギャンの腕に、別のジムが放ったビームスプレーガンが直撃した。

 ギャンの腕がビームサーベルを掴んだまま、ちぎれ飛ぶ。

 

「中佐っ!」

 

 部下の叫び声が聞こえる。

 ええい、この程度でうろたえてるんじゃない。

 

 俺は揺れる機体を制御しながら跳躍し、ギャンの左腕で()()()()()()()()()()

 そのまま、いまだ消えていないビームサーベルを、右腕ごとジムに叩きつけた。

 残敵確認……敵機なし。

 ギャンの腕をもぎ取ってくれたジムも、味方が撃破しているな。

 

 やれやれだ。

 

 

 

 

 

「まずいな……」

 

 ドムに抱えられ、ギャロップに戻る道中、機体のチェックをしながら俺はうめく。

 

「さっきのでバランサーまでイカれたらしい。

 さすがにこれ以上の戦闘は無理だな」

 

 バランサーもだが、その他の関節部ももう限界寸前である。

 全ての部位で、警告を示す赤いマークが点灯している。

 さすがに18連戦は無謀すぎたようだ。

 

「ど、どうされます中佐!?」

 

 接触回線を通じ、ドムのパイロットが聞いてくる。

 だからうろたえるんじゃないよ。

 

 戦闘データのバックアップは今取った。

 このままデッドウェイト同然のこいつを、ギャロップに乗せていても仕方が無いだろう。

 俺は決断する。

 

「ギャンはこの場で自爆させる。

 脱出したら俺をギャロップまで運んでくれ」

 

「ええっ!?

 い、いいんですか!?」

 

 もったいない、という感情がありありと伝わってくる。

 実質的なワンオフ機であるため、その感覚は一応分からないでもないのだが、この状況ではそんなことも言ってられないだろう。

 

「現状でギャロップにこいつを搭載していてもただの重しにしかならん。

 俺たちにメリットはない。

 少しでもスピードを上げるために置いていくしかないが、敵に鹵獲されて分析されるのも問題だ。

 自爆させるしかない」

 

 そう答えつつ、反応炉をオーバーロードさせて爆発させるためのプログラムを起動させる。

 爆発までの時間は……5分もあればいいだろう。

 

 自爆プログラムが作動したのを確認し、コックピットから外へ出た。

 ドムが差し出してくる手にすかさず飛び移る。

 

 その場に立ったまま、遠くなっていくギャンに、俺は敬礼をした。

 数日のみの付き合いの機体であったが、現状のジオンでは最高の機体の1つに乗せてもらったのはいい経験だったと思う。

 

 彼方で閃光とともに消滅していく機体を見て、俺は思った。

 我が愛機よ、安らかに眠れ、と。

 

 

*1
要は人工的にヅダらせる。




読んでいただきありがとうございます。

ギャン君退場です。
短い間でしたけど撃破記録凄いことになってそう。

モビルスーツは、いざとなれば部下のドムに乗ればいいよねというつもりの主人公。
ちなみにパイロット要員は腐るほどいるので、ドムのパイロットは疲労とは無縁なのです。



レビルの殺意がヤバすぎる件。
これでも多分、エルランが頑張ってくれたので多少はマシかと思います。



【追記】

分かりづらい描写になってしまったようですので若干の補足を。
主人公が撃破したのは、初日に暴れまわっていた北部戦線のビッグトレーです。
レビルが指揮する本隊は北西戦線で、ここが連邦軍が一番厚い箇所になります。
北部司令部を破壊することにより、北西と北東のデータリンクができなくなって、連邦軍が混乱するという想定で書いておりました。
描写が紛らわしくなってしまい申し訳ないです。

ちなみに、エルランはさらに西側の西北西の戦線です。
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