超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。

地獄の撤退戦おかわりです。


第28話 オデッサ作戦 3日目 後編

 

 

「俺が乗れるドムはあるか?」

 

 ギャロップに帰還した俺は、整備兵のまとめ役を担っている男に尋ねた。

 

 現在位置と敵の襲撃ペースを考えた場合、地中海沿岸のユーコンと合流するまでには、少なくともあと1回、下手すると2回は戦闘があるだろう。

 モビルスーツを失った以上、整備不良寸前でも構わないので、ドムに乗る必要がある。

 

「ちゅ、中佐。

 まだ乗るんですか!?」

 

 なんで「本気か」みたいな顔をしているんだよ。

 

「当たり前だろう。

 この作戦の責任者は俺で、客観的に見て、この中で一番腕が立つのも俺だ。

 なら、この作戦の成功率を上げる、最も手っ取り早い方法は、俺がモビルスーツに乗ることだ」

 

 最悪の可能性としてだが、ホワイトベースが追撃に来る可能性もないとは言えないのだ。

 今残っているドムは14機。

 万が一、ホワイトベースを相手することになった場合、俺が乗らなければ3分経たずに全滅(コンスコン)してゲームオーバーになるかもしれない。

 

「……分かりました。

 3番艦のギャロップまでご足労お願いします」

 

「分かった」

 

 3番艦にドムがあるのか?

 比較的マシな稼働状況ならいいのだが。

 

 連絡用に搭載しておいたワッパで3番艦に移動する。

 なぜかハンガーに巨大な布がかかっていた。

 イメージとしては更衣室に近いが、なんでドムを隠す必要があるんだ?

 

「マ・クベ中将より、万が一の保険に……、とお預かりしたものです」

 

 そう言って、整備兵はスイッチを入れる。

 それに連動して布が取り払われた。

 

「は?」

 

 思わず声が出る。

 

「宇宙に送ったんじゃなかったのかよ……」

 

 そこに鎮座していたのは、かつてジャブロー戦で俺が一蹴して鹵獲した機体。

 白銀に塗装された、RX-78-6 ガンダム6号機『マドロック』だった。

 

 

 

 驚きもそこそこに、早速乗り込んだ俺は、矢継ぎ早に機体チェックを済ませていく。

 次の襲撃まで、あと10分もないかもしれない。

 急がねばならない。

 

 マドロックの腕を上げ下げして気付く。

 

「少々、反応が鈍いな?」

 

 少々と言ったが、俺の体感的にはかなり鈍い。

 入力してから実際の動きまで、数瞬の遅れがある。

 機体の反応速度というよりは、操縦してから動き始めるまでの間に、何かが一枚挟まっているような感覚だった。

 

「申し訳ありません。

 中佐の戦闘データは入力済みなのですが、フィールドモーター駆動の制御システムへの最適化までは手が足りず」

 

「ああ、それは仕方がないな。

 というか、よく制御系から違うモビルスーツに、俺の戦闘データなんて入れられたな」

 

 この短期間で、流体パルスシステムのイフリートで取った戦闘データを、フィールドモーター駆動システムのマドロックに入れて、それでいて破綻させないところまで開発してたのか。

 

 そっちの方が感心するわ。

 

 一応は完全整備のモビルスーツであるため、戦力にはなるだろう。

 とはいえ、機体の追従性はブグと同程度だろうか。

 いくらルナチタニウム装甲があるとはいえ、近接戦闘を想定すると相当に辛いものがある。

 

 イフリートやギャンと比べると格段に落ちるが、ないものねだりをしても仕方がない。

 どうせなら、この『未完成型』じゃなくて、『完成型』に乗ってみたかった、というのは贅沢だろう。『最初期型』でないだけマシだ。

 

 武装は……ビームライフルはあるが、撃ち切ったらギャロップでは再度の充填は無理だな。専用の設備がいる。

 ビームサーベルに300mmキャノン、両腕部のグレネードランチャー、頭部のバルカン。

 武装はそこそこ充実している。

 反応に遅れる分は、俺の立ち回りでカバーするしかないか。

 

「足回りはどうなっている?」

 

「ドムのホバーシステムを移植しています。

 連邦の原形機より、移動に関しては快適ですよ」

 

 それは正直助かるな。

 設定としてマドロックのホバーよりも、ドムのホバーの方が優秀だったというのは、知識として知っている。

 

 一度も戦闘していない以上、当然であるがシステムはオールグリーン。

 まあ、ガンダムでも相手にしない限りは、問題はないだろ――

 

「ルッグンより入電。

 敵戦艦、ホワイトベースを確認。

 この速度だと、約10分後に追いつかれます」

 

 ちきしょうめぃ……。

 ガイアとオルテガ、しくじったかぁ。

 

 

 

 とはいえ腐っている暇もなければ、あの2人の冥福を祈ってやる暇もない。

 

 俺たちの目的はガンダムを倒すことではない。

 連中の追撃を振り切ることだ。

 なら、ガンダムの相手より、ホワイトベースの足を止めることを優先する必要がある。

 そして今、俺の手にはその用途にちょうどいい武器があった。

 

 無線を封鎖し、ギャロップとドムを先行させ、俺はマドロックに迷彩を施した布をかぶせて静かに待つ。

 しばらくすると、情報通りにホワイトベースが現れた。

 俺の頭上を通過し、ギャロップたちの方向へと向かっている。

 

 ホワイトベースの後方から、船体後方のエンジン部に300mmキャノンの照準を静かに合わせる。

 

 心は静かに。

 己は機械であると思い込んで、ひたすらに敵意を消す。

 狙撃する瞬間まで、彼らに気取られるわけにはいかない。

 

 静かに狙いをつけ……発射。

 

 トリガーを押す瞬間、わずかに()()()()()という感覚が走った。

 さすがアムロ・レイというべきか。

 『黒い三連星』との戦いが糧になったのか、既にニュータイプへと覚醒し始めているようだ。

 

 だが、射撃と同時に気付いても、戦艦に回避行動など取れはしない。

 マドロックから放たれた300mmの実弾は、ホワイトベースの右舷エンジンに直撃し、大きな爆発を引き起こした。

 高度を下げ始めるホワイトベースに、おまけとばかりにビームライフルを数発撃ち込んで、航行能力をさらに奪う。

 

 通信機に叫ぶ。

 

「無線封鎖解除! エルンストより各員へ伝達。

 ホワイトベースのエンジンの一部破壊に成功!

 合流する!」

 

 俺は偽装をはぎ取ると、ホバーを全開にして逃げ出した。

 

 

 

 

 これで諦めてくれるとありがたかったのだが……残念ながら、後方から気配が追ってきている。

 ホバー走行で逃げつつ、マドロックの首を曲げてモニターを拡大。

 

 やっぱり来るよなぁ。

 

 確認できるのは、ホワイトベースより発進した、Gファイターとコアブースター、そしてその機体の上にそれぞれ乗っているガンダムとジム。

 

 ガンキャノンとガンタンクがいないのは、速度が出ないことに加えて、ほとんど動けないホワイトベースに護衛を残しておかなければならないからだろう。

 その2機がいないだけでもかなりマシであるのだが、結局のところ、ガンダムとの再戦をこの不自由な機体でしなければならない。

 

 というか、『黒い三連星』と戦ったときの報告だと、コアブースターなかったんじゃないのか?

 俺たちの追撃の折に支給されたとかなのだろうか。

 もしそうだとすると、レビルの殺意が窺える。

 

 再度、通信機に向かって叫ぶ。

 

「各員に伝達。ホワイトベースよりモビルスーツと戦闘機が発進した。

 迎撃に入れ!

 ホワイトベースに俺たちを追撃する力はない。相手の攻撃を耐えしのげば俺たちの勝ちだ。

 こんなところで死ぬな。

 全員、宇宙に帰るぞ!」

 

 ガンダムの相手は俺以外にできないだろう。

 不利な要素しか揃っていないが、やるしかない。

 俺は操縦桿を握りしめて、マドロックを反転させる。

 

「まずはそのサブフライトシステム(戦闘機)から降りてもらう!」

 

 300mmキャノンを発射。

 直撃すればいかにルナチタニウム合金であろうと大破は免れない砲撃だ。

 慌ててガンダムはGファイターから飛び降りる。

 続いて、ジムも飛び降りた。

 

 モビルスーツが乗った状態の戦闘機では回避しきれないという判断だろう。

 正しい判断だが、こちらの狙い通りでもある。

 

 これで、MSに先行されて、ギャロップを叩かれることはない。

 

「ドム、2~3機でいい、ギャロップたちの直掩に入れ!

 戦闘機どもを追い払うだけで良い!」

 

 ギャロップには機銃がある上に、ドップもいる。

 さらにドムが掩護につくのであれば、Gファイターとコアブースターだけならギャロップが撃破されることはないだろう。

 

 そうなると、残りの機体で俺の援護とジムの相手ということになるが、ドムもほとんどがボロボロである。

 少しでも無理をさせれば、その瞬間にはガンダムに撃破されるだろう。

 ジム相手でも油断はできない。

 

 俺はビームライフルをガンダムに放った。

 だが、当然のごとく避けられる。

 

 本当に動きが遅れるな。

 他の相手ならともかく、ガンダムには当てられる気がしない。

 

 そして感じる殺気。

 ホバーを全開にし、機体を右へ。

 余裕をもって機体を回避させたつもりでも、割とギリギリの位置をビームが通り過ぎていく。

 

 これは神経を使いそうだ。

 

 ガンダムも、こちらがビームライフルを持っていることを警戒しているのか、しばらくの間は互いに撃っては避けての応酬となる。

 とはいえ、こちらの実情はかなりギリギリである。

 

 ビームライフルの射撃の合間に、腕部のグレネードやバルカンも駆使し、臨機応変にガンダムをかく乱して、狙いを若干ずらす。

 だが、相手はニュータイプに覚醒しつつあるアムロ・レイだ。

 発射までに一瞬、間が空いてしまう、こちらのビームライフルは完全に見切られてしまっている。

 

 気を抜けば次の瞬間には撃破されるであろうビームの応酬に、俺の神経の疲労もピークに近い。

 だが、少なくともガンダムだけは弾切れに追い込まなければ、兵たちが宇宙に戻れない。

 

「今だ!」

 

 アムロの声が聞こえた気がした。

 

 ()()()

 

 隙を突いてこちらに肉薄してきたガンダムのビームサーベルを、なんとか間に合ったマドロックのビームサーベルで受け止めた。

 こちらが接近戦に難があることを悟られてしまったようだ。

 

 数秒のビームサーベル同士の鍔迫り合い。

 動きは遅くとも、パワーは同等であることを悟ったのか、ガンダムは一歩引き、再びビームサーベルを振るう。

 ギリギリで受け止めることに成功するも、左腕の装甲が焼けた。

 

 再度、アムロが剣を振るう。

 左肩の装甲がはじけ飛んだ。

 

 アムロが剣を振るう。

 右腰側の装甲板が切り落とされる。

 

 アムロが剣を振るうごとに、マドロックのどこかにダメージが積み重なっていく。

 

 もはや考えている余裕などはない。

 アムロの殺気を、アムロが身体を動かす前に感じて対応し、それでようやくこの様である。

 

 徐々に削られて、疲労し、あと何分操縦ができるのかすら分からない。

 残された手段は――。

 

「自爆装置か……」

 

 思わず呟いて、苦笑し首を振る。

 なにもそこまでヒイロ・ユイを真似する必要はないだろうに。

 

 そもそもこの身体の疲労だ。

 ジェネレーターのオーバーロードという、実質的な自爆装置を起動して、無事に脱出できるとも思えない。

 そもそもガンダムが、自爆に巻き込むために組み付くことすら許してくれないだろう。

 

 ならば、この機体を破壊されることを覚悟してでも、北米の時のように相手の腕を切り落とすぐらいしか手はないだろう。

 それで俺が死なないように祈るという点では、完全に博打である。

 だが、これ以外に打てる手がない。

 ()()の言った通り、俺にシーブック並の悪運があることを祈るしかないか……。

 

 覚悟を決めて、マドロックにビームサーベルを構えさせる。

 ガンダムもそれに応じて、ビームサーベルを構えて突撃しようとして――。

 

 ()()()()()()()()()()()()()をかわして、後方に飛んだ。

 

 

 

「は?」

 

 何が起こった?

 俺たちの部隊にビーム兵器をドライブできる機体など、マドロック以外は存在しない。

 

 援軍か?

 この近辺に、そんな余裕のある部隊がいるという情報は聞いていないぞ。

 

 計器に映る識別信号を確認、MSM-07。

 ……ズゴックだと?

 

 モニターを拡大。

 視界に映ったのは、()()()()

 俺は思わずつぶやいた。

 

「……参ったな」

 

 最高のタイミングで最高の援軍だよ、赤い彗星。

 

 

 

 

 

 俺は通信のスイッチを入れた。

 

「シャア、助力感謝する。

 ギャロップたちは?」

 

「無事だ。私の部下たちが護衛にあたっている。

 それにしても……つくづく貴様とは縁があるようだな、ガンダム!」

 

 シャアのつぶやきと共に、ズゴックのメガ粒子砲がガンダムに向けて放たれる。

 俺との斬り合いのために、ビームライフルを手放していたガンダムには、回避以外に取れる手段がない。

 

 俺も近くに転がっていた、マドロックのビームライフルを拾い上げて、シャアを掩護する。

 

 さすがのガンダムも、ズゴックとマドロックを同時に相手取りたくなかったのか、そのまま撤退していった。

 他の機体も順次撤退しているようだ。

 

 こちらの被害は――。

 ドムが3機中破した程度で死者は無し。

 

 シャアのおかげで、何とか首の皮一枚繋がったといったところか。

 

 俺は再度、シャアに通信を入れる。

 

「ありがとう、正直かなり助かった。

 ところで、なんでマッドアングラー隊がここに?」

 

「マ・クベ中将からの要請だ。

 キシリア少将がそれを了承し、我々に命令が下ったのさ。

 オデッサ部隊の撤退の支援にあたれ、ということだ」

 

 ああ、そうか。

 

 オデッサからの撤退は、撤退作戦という『作戦行動』である以上、マ・クベ中将は敗走ではなく、()()()()()として宇宙に戻ることができた。

 それならば、敗軍の将としてではなく、地球侵攻軍司令として、正式な作戦への支援要請をキシリア少将に依頼できる。

 だから、シャアに撤退支援の要請ができたということか……。

 

 この撤退作戦を具申したかいがあったということだ。

 

 しかし……。

 援軍の到着で緊張の糸が切れたのだろう。

 いい加減、疲労で意識が限界だ。

 

「シャア、すまんが、しばらく部隊の指揮を……頼んだ」

 

 なんとかそれだけの言葉を言い残すと、俺の意識は闇に沈んでいった。




読んでいただきありがとうございます。


ガンダム(の)リベンジ戦でした。
いやぁ一方的な試合展開でしたね。

マドロックはジオニックフロントにおける初登場の『未完成版』が、ちょっとマシになった程度と思っていただければ。
ただ、マドロックのホバーはドムに比べれば明らかに劣っていたという設定も散見されるので、ドムのシステムを流用した足回りだけは、多分原作よりも改善。

マ・クベ中将は最初はマドロック渡すつもりだったんですが、開発と調整が間に合わなかったのでギャンを渡し(てこっちを予備機として保管して)たという感じです。

実質覚醒し始めている天パ相手にはきついハンデ戦ですね。
ボッコボコです。
まるでリーオーでアルトロン相手にしてるみたいだ。


援軍さえ来なきゃ、レビル君の目論見達成できたでしょう。
ちなみにエルラン君が粘ったことと、レビル君が白銀に拘ったおかげで、個別に脱出した将兵も結構逃げ切れたらしいですよ。
地球に潜伏するジオン残党が増えるね!


なお、連邦は「オデッサ作戦は我々の勝利」と喧伝します。
対してジオンも「既に資源獲得という目的は果たし、マ・クベ中将の指揮のもと速やかに撤退に成功した。既に価値のない土地を、大軍をもって攻めた連邦軍は無能の衆である」とプロパガンダ合戦になる模様。私の想定するギレンならこれぐらい言う。




申し訳ありませんが、次の週末から月曜日にかけて、リアル多忙のため、投降をお休みさせていただきます。
おそらく次話は投稿できると思いますが、そこから2~3日お休みさせていただきます。
ご了承ください。

早ければ月曜日。遅くとも火曜日までには頑張ります。

追記:もうしわけございませんが、次話も来週になりそうです。
地味な会話シーンメインなので、一気に書き上げるのが難しかったです。
本当に申し訳ありません。
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