超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。



第29話 オデッサ作戦 終幕

 

 何時間経ったのだろうか。

 俺の意識がゆっくりと覚醒する。

 

 目をゆっくりと開け、身体を動かさず、視線だけで周囲を探る。

 俺が寝かされたベッドに、壁にセットされたモニターとコンソール。

 たしかあれは医療用のものだった記憶がある。

 だとしたら、ここは医務室なのだろう。

 部屋の狭さから、移動する艦船内の設備だろうと見当をつける。

 

 手首、腕、胴部と意識を巡らせる。

 身体が拘束されている様子はない。

 ならばここは、少なくとも連邦軍の施設ではない。

 ジオンの――ガウ攻撃空母やユーコン級潜水艦、ギャロップの医務室はこういった内装ではない。

 ならば消去法で――。

 

「マッドアングラーの医務室……か」*1

 

「正解だ」

 

 確認のために呟いた言葉に思わぬ返しがあった俺は、その声の主へと視線を向けた。

 赤い士官服に、正体を隠すための仮面。

 今となっては命の恩人ともいうべき男である。

 

「シャア……」

 

 シャアはあきれた様子で、首を振った。

 

「様子を見に来たんだが、もう目が覚めているとはね」

 

 心なしか「お前本当に人間か」と言われているような気がする。

 感謝すべきかと思ったが、感謝しなくてもいいかもしれない。

 借りとしておいて、そのうち返す程度でいいだろう。

 

 だが、そういう言い方をするということは、そんなに時間が経過していないのだろうか?

 

「俺はどれぐらい寝ていた?」

 

「4時間と少しといったところだな。

 軍医の診療では、極度の肉体と神経の疲労ということだ。

 もう少し寝ておくといい」

 

 4時間か。

 休息時間としては微妙だが、作戦中であることを考えると一刻も早く復帰しないといけない程度には長い時間だ。

 

 横になったまま、全身に意識を巡らせる。

 疲労は問題なし。十分に回復している。

 意識もクリアである。

 意識を失う前の不調はほぼ全て回復していると見ていい。

 

 外傷がなかったとはいえ、この肉体の回復力には本当に驚かされる。

 

「いや、もう大丈夫だ」

 

 俺は起き上がった。

 まずは状況の確認が先だろう。

 

「あの後、部隊はどうなった?」

 

「つい1時間ほど前に、無事に全部隊がアレキサンドリアに到着した。

 我々が合流してからは、連邦軍の追撃もなかった」

 

 拍子抜けしたと言いたげな様子でシャアが告げる。

 

「まあ、俺が意識を失ってたことがバレずに、『赤い彗星』が合流したのならそうなるか」

 

 撤退軍の護衛に『白銀』と『赤い彗星』がそろって付いている。

 そんな状況は、連邦軍にとってはルウムの悪夢の再演でしかない。

 虎の子であろうホワイトベースが行動不能になっている現状で、誰がそんな罰ゲームともいえる状況に部隊を送りたいというのか。

 

「続けるぞ。アレキサンドリアに着いた部隊は、4手に分散させた。

 キリマンジャロとアデンに向かう部隊は、そのままギャロップで向かわせたが、アレキサンドリアでドムとグフを補充させた。

 元より我々の勢力圏内だ。問題なく到着するだろう」

 

 俺は頷く。

 元よりオデッサに、ほぼ全力をつぎ込んできた連邦軍だ。

 

 トルコにいた予備兵力は俺たち相手にかなりすり減らしただろうし、無理な追撃指示も祟って、指揮系統はかなり混乱しているだろう。

 指揮系統に依存せず行動できるであろうホワイトベースは、修理するまで移動できない。

 あれだけ派手にエンジンの一基を破壊した以上、現地にて大規模な修理を行わないと、浮上することさえ難しいだろう。

 

 現時点の連邦軍に、ジオンの勢力圏を移動する撤退部隊にちょっかいを掛けるような余裕はない。

 

「残りはガウとザンジバルで、ニューヤークとキャリフォルニアベースに移動中だ。

 こちらもドップが護衛についている。心配はあるまい」

 

 そちらも心配はないか。

 

 大西洋の上空でドップとガウ、ザンジバル相手に空戦で有利を取ろうとするなら、Gファイターやコアブースターといったレベルの機体が必要になってくる。

 だが、Gファイターはガンダム専用の支援機だし、コアブースターは元々が非常に高価なコアファイターに、ブースターユニットを装着したものだ。

 ジャブローの空域とかならいざ知らず、大西洋上でそれらと偶然出くわす可能性はまずない。

 

 あと残る撤退している兵力となると……俺だな。

 

「この艦は今どこへ?」

 

「大西洋をニューヤークに向けて潜航中だ。

 君と君のガンダムをニューヤークへ送り届けた後、我々は大西洋北東部に向かい、連邦軍施設への破壊工作を担当する」

 

 ああ、マドロック積んでくれてるのか。

 とはいえ、ニューヤークにあれを持って行っても、俺にイフリートがある以上、使うかは微妙な気がするな。

 せめて完全版なら何とでもなるんだが、参考機体として解析のために宇宙に送るぐらいしか使い道が思い浮かばない。

 

 まあ、こんな緊急事態でない限り、そうそう使うことはないだろう。

 

 それはともかくとして、シャアが向かうのは大西洋の北東か。

 たしかにその一帯には連邦軍の港湾施設が集中している。

 オデッサ作戦で損傷した艦艇の修復をする連邦への嫌がらせには最適だろう。

 

 でも、シャアがマッドアングラーであの地域に行くとなると――ひょっとしたらベルファストとかに行くかもしれないな。

 ちょうど、俺がホワイトベースのエンジンを景気よくぶっ壊したので、ホワイトベースもドック入りが必要になってくるはずだ。

 

 そうなると、この世界でミハルが死ぬ展開になった場合、きっかけは俺になるのだろうか?

 

 どうなるのかは知らんが、まだ見ぬミハル・ラトキエ嬢に心の中で合掌しておく。

 ここまで展開が変わっている以上、『大西洋を血に染め』るのかは知らんが。*2

 

 冷たいようだが、俺にも優先順位がある以上、会ってすらいない人物の運命にまで責任は持てない。

 それを気にするよりは、俺の撤退戦に付き合ってくれた、兵士たちの去就の方が優先される。

 そして、彼らが無事に宇宙に帰れる以上、俺のオデッサでの仕事は全て終わったと言っていいだろう。

 

 なんか撤退軍の指揮官までやってた気がするが、俺の所属は元々、北米担当のガルマの護衛兼副官なのだ。

 

「なら――、これでオデッサの撤退戦は終了か……」

 

 撤退開始から丸一日も経っていないというのに、延々と戦っていた気がする。

 実際、敵の追撃に次ぐ追撃であったので、一般兵が半年やそこらで経験する戦闘の数を軽く超えていると言ってもいい経験だとは思うが。

 

「ああ、お疲れさまと言っておこう。

 ちなみに連邦もジオンも面白い反応をしているぞ」

 

「面白い?」

 

 シャアは心底愉快そうに笑った。

 

「双方ともに、『この戦いは我々の勝利だ』と必死に喧伝しているのさ。

 まあ、分からんでもないがね」

 

 あー。

 確かに連邦は、勝利を大々的に喧伝するだろうな。

 

 オデッサ基地を落としたのは事実だというのもある。

 だが、ここで被害の大きさからレビルの責任を追及すれば、レビルを総大将にした連邦政府の責任問題にも波及してしまうだろう。

 そうなれば最悪、レビルの主導したV作戦が『ジムを量産する』という最終段階まで行っておきながら停滞する、ということにもなりかねない。

 ゴップ提督としてはそんな事態は避けたいだろうし、連邦政府首脳陣もレビルの任命責任なんて取るつもりもないだろう。

 

 連邦としては、戦争が終わるまではレビルを責任者から外すわけにはいかないだろうし、大勝利とうたうしかない。

 実に大本営発表である。

 

 

 対するジオンは……、まあギレン総帥ならやるだろう。

 俺とマ・クベ中将が大量の将兵を脱出させたのもあるが、多分あの人はそれが無くても言いそうだ。

 嬉々として連邦を煽り返している姿が容易に想像できる。

 

 そりゃあ、連邦とザビ家の煽り合いショーは、シャアからしてみれば面白い見せ物に映るだろう。

 

「エルンスト、この戦いはこれからどう流れると見る?」

 

 シャアが聞いてくる。

 割と唐突だな。

 

「遠くないうちに宇宙に主軸が移るだろう。

 オデッサから撤退した以上、各戦線を維持する難度はこれまでの比じゃない。

 余裕のあるうちに地球からの順次撤退指令が出るだろう」

 

 予想だが、撤収命令が出ても地上に残って抗戦し続ける連中はいるだろう。

 伊達に後の時代まで延々と続くジオン軍残党ではない。

 意地と根性が頑固すぎるのは、ジオンの国民性かなにかなのだろうか。

 

 おそらくだが、俺と共にオデッサを脱出した連中の幾人かも残るんだろうなぁ。

 

「私も同じ予想をしていた。

 なら私は、次の任務が終わったら宇宙に上がれるように、キシリア殿に打診しておくべきだな」

 

 確か原作ではこいつ、ホワイトベース追って勝手に宇宙に上がって、キシリアにキレられていた気がする。

 事前に申請出しておくだけでも、だいぶマシになったと言ってもいいのだろうか。

 いや、あれは原作のシャアが酷すぎただけか?

 

「良いんじゃないか?」

 

 俺はそう返す。

 おそらく、遠くないうちに俺やガルマにも撤収指示が来るだろう。

 ニューヤークに戻ったら、久しぶりに書類と格闘する日々が始まりそうだ。

 

 

*1
『連合の南JAP地区、連合軍第三医療機関50階、特別治療室』ではない。あれ、どうしてわかったんでしょうかね?

*2
場面外で染めます。




読んでいただきありがとうございます。

これにてオデッサ作戦は無事終了となります。
大体予定調和の事後報告みたいな感じで内容が薄くて申し訳ない。
主人公が倒れたので、意識回復シーンどうしても入れなきゃって感じでした。


主人公がホワイトベースのエンジンぶっ壊したので、大西洋はミハルの血で染まる。
カイさんが覚醒するよ!

次回からニューヤークに戻りますが、ガルマ死んでないのでオリジナル展開になりますかね。
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