超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。

前話より書きやすかった感。


第30話 通常業務(ブラック)に戻りまして

 

 その後、マッドアングラーの整備兵たちとマドロックの状態について話し合ったり、ガンダムとの戦闘データをシャアと共有していたりしている間に時間は過ぎ、俺は無事、ニューヤーク基地に到着することになった。

 

 幸いなことにマドロックは破損箇所が多いものの、フレームとかの根幹にかかわる部分は無事であるそうで、修理さえ行えば元通りになるそうだ。

 とはいえ、マッドアングラーにルナチタニウム合金の装甲材なんて当然積んでいるわけがない。

 修理自体はニューヤーク基地に戻ってから、しかもキャリフォルニアベースで部品を製造してからということになる。

 一応、キャリフォルニアベースにはルナチタニウムの在庫があったはずだが、それでも修理には最短でも2~3週間はかかることになるだろう。

 

 ついでに、ガンダムとの戦闘情報を共有したシャアは苦笑いを浮かべていた。

 きっとガンダムのパイロットの成長ぶりに驚いたんだろう。『黒い三連星』や『白銀()』との戦闘を経験してるわけだしな。

 シャアの知るガンダムと比べると格段に練度が上がっているはずだ。

 決して「なんでこの反応が遅れてる機体で、あれと戦って無事なのお前?」という意味ではないに違いない。

 

 まあ、こうしてガンダムの最新の戦闘データを得られたシャアである。

 原作のこの時期(ジャブロー戦)のように、あっさりと撃退されるというようなこともないはずだ。

 

 

 マッドアングラーから降り、シャアと別れた俺は、そのままニューヤーク基地のガルマのところに戻った。

 俺が意識を失ったという情報はシャアが封鎖していてくれたため、そこまで大騒ぎされずに済むかと思っていたのだが、それは甘かった。

 

 オデッサの撤退戦を本国が喧伝しまくっていたせいで、別の意味で大騒ぎになってしまったのだ。

 なぜか『暁の蜂起』みたいな凱旋パレードに、撤退兵たちと一緒に参加させられた挙句、そのままガルマが主催したパーティーで現地の有力者のお歴々が見守る中――、気が付けば俺は大佐に昇進させられていた。

 

 急展開すぎて本当に意味が分からない。

 

 そりゃ、オデッサでの俺の戦歴を考えるといずれは昇進するとは思っていたが、オデッサの撤退戦が昨日なので、早すぎるなんてもんじゃないだろう。

 

 詳しく話を聞いてみると、ガウでニューヤークに到着した兵たちからガルマが話を聞き、そのまま俺の直属の上官にあたる、ドズル中将に直訴したらしい。

 それで即座に階級が上がるというのも、ザビ家の意向最優先なジオンらしいと言えばらしいのだが、ここまで早いと苦笑するしかない。

 

 ちなみに、いずれ勲章もいっぱいくれるそうだ。

 別にいらないので孤児院への支援を増やしてほしい……とは言っちゃ駄目なのだろう、さすがに。

 

 これで階級がガルマと並んでしまうことになったが、ガルマが先任の大佐である上にザビ家の人間であるため、ガルマ大佐の副官としてエルンスト大佐がついているという形でも問題はないだろう。

 そもそもキシリア少将の配下にマ・クベ中将がいる時点で今更である。

 

 ちなみに、これで俺の階級は現時点では頭打ちだ。

 将官に昇進するには、ジオンだと軍大学に進学した上で卒業する必要がある。

 だが、この戦況で悠長に軍大学で教育を受けている場合じゃないだろう。

 歴史通りに進むと仮定したら、入学した直後ぐらいで戦争が終結してしまう。

 

 だから、俺のこの戦争における階級は大佐が上限だ。

 まぁ、将官になったらMSに乗るのも制限がつきそうなので、上げるつもりも別段ないのではあるが。

 

 そうして大佐になってしまった俺の仕事はというと、オデッサ作戦前と変わらず、ガルマの補佐として、軍事面での書類決裁の代行や補佐である。

 大佐になった分、俺の裁量で終わらせられる仕事が増えたため、いちいちガルマに確認を取りに行く手間が減ったといえば減ったのは、昇進してよかった点と言えるだろう。

 

 ひたすら書類を処理し、オデッサの兵をニューヤークとキャリフォルニアから宇宙へと上げ続ける。

 こいつらは、ほぼ全員が地球侵攻軍の所属なのでキシリア少将の傘下なのだが、突撃機動軍はいきなりこんなに兵が帰還して再編成とか大丈夫なのだろうか?

 ひょっとしたら今頃、マ・クベ中将あたりが眉間にしわを寄せながら書類を処理しているのかもしれない。

 

 そういった書類仕事の合間に、俺はMSに乗って連邦の部隊の迎撃に出る。

 ひっくり返った地球上のパワーバランスからか、連邦の小~中規模なジム部隊が北米にたびたびちょっかいをかけてくるようになったのだ。

 そんな礼儀のなっていない連中を、イフリートを駆ってなます斬りにしていく。

 

 そういった、予定外の残業を数度挟みつつ、20日ほどが経ち――。

 

 北米のオデッサの兵のほぼ全員を宇宙へと送り返せたというタイミングで、ようやく本国から地球侵攻軍の撤退が正式に通達された。

 

 そうなると、順序的にはニューヤーク基地を撤収してから、最後にガルマと俺でキャリフォルニアベースから宇宙に帰還する流れになりそうだ。

 

 ああ、忘れてた。

 ガルマと一緒にイセリナ嬢を()()()()()()()ないとな。*1

 

 

 

 ジオン軍が地上からの撤退を決めた当日の夜、10時過ぎ。

 俺とガルマは軍用の車に乗り、エッシェンバッハ邸の敷地の外側にいた。

 

 エスコート役は俺である。

 潜入してさらってくるのだから、俺1人の方が動きやすい。

 ガルマはここで待機して、花嫁を受け止める王子様の役割だ。

 

「それじゃ、迎えに行ってくる」

 

 車から飛び降りた俺に、ガルマが声をかける。

 

「大丈夫かいエルンスト?

 やはり僕も行った方が……」

 

「2人での潜入はどうしても目立つ。

 イセリナ嬢を伴って脱出するなら3人だ。

 目立ちすぎる」

 

 ガルマの心配そうな声を秒で却下する。

 どっしりと構えていろ、どっしりと。

 

「それじゃ、行ってくる」

 

 さっさと会話を打ち切ると、塀をジャンプで飛び越える。*2

 

 有力者とはいえ、あくまでも元市長の邸宅だ。

 専属の護衛のような大層なものはついておらず、使用人だけなのは事前に調べてある。

 夜間に見張りをするような人間がいるはずもなく、俺はあっさりと鍵を開錠して屋敷へと潜入する。

 薄暗くなった廊下を移動し、イセリナ嬢の部屋の前まで辿り着くと、軽くノックをした。

 

「どなた?」

 

 数秒経って、部屋の中から返事が聞こえた。

 

「失礼します」

 

 俺は軽く返答し、ドアを開けて中へ入る。

 

「あら? あなたはたしか……」

 

 もうすぐ就寝するつもりだったのであろう、ネグリジェを着たイセリナ嬢がベッドに座っていた。

 彼女と俺は、ガルマを通じて知己ではある。

 俺自身の年齢もあるし、意外ではあるだろうが、いきなり不審者扱いはされないだろう。

 

「イセリナ様、お迎えに上がりました」

 

「お迎え?」

 

 不思議そうに尋ねるイセリナに俺は問いかけた。

 

「はい。以前、あなたはおっしゃいました。

 父を裏切ることになっても、ガルマ様のおそばにいる、と。

 その心に今も偽りはありませんか?」

 

「当然です。

 ガルマ様を想う私の心に、嘘偽りなど何ひとつとしてございません」

 

 一瞬のためらいもなく言い切ったよ、この女性(ひと)

 

 普通数秒はためらったりしないものだろうか。

 恋する女性は無敵というのはこういうことなのだろうか?

 

「ならばご説明します。

 本日、ジオン本国が、地球上からの撤退を決断しました」

 

「え? そ、そんな……」

 

「ですので」

 

 ここでうろたえられても困るので、俺はイセリナ嬢の台詞を遮った。

 

「あなたをジオンへ()()()に来ました。敷地の外でガルマ様がお待ちです。

 ガルマ様は北米部隊の撤収作業の指揮がありますので同行はできませんが、イセリナ様には一足先にニューヤーク基地から宇宙に上がっていただくことになるでしょう。

 ガルマ様のために家を捨てる。その覚悟はございますか?」

 

 まあ、ここで残るという決断をするのならば、正直その程度の愛ということになるだろうが、先ほど俺に啖呵を切ったこの女性が、そういう決断をするとは思えない。

 

 イセリナ嬢は数秒ほど目を閉じ、深呼吸をする。

 そして目を開くと、力強いまなざしで言った。

 

「今、覚悟を決めました。

 私をガルマ様のもとへ連れて行ってください」

 

 さすが、原作ではガルマの敵討ちのためにホワイトベースに攻撃を仕掛けた女傑だ。

 正直言って尊敬するわ。

 

「承知いたしました。

 では、参りましょう」

 

 

 

 

「ああ、イセリナ!」

 

「ガルマ様!」

 

 抱き合う2人。

 まだ屋敷の敷地から出たばかりなんだから、離れてからいちゃついてくれませんかね。

 イセリナがいなくなったことがバレたら、それなりに騒ぎになるんだから。

 

「ガルマ様、まずは基地までお急ぎください」

 

 対外向けの言葉遣いでガルマを急かす。

 

「あ……ああ、すまない。

 エルンストも早く乗るといい」

 

「いえ、ガルマ様は先行してください。

 私はまだやるべきことがありますので後で合流します。

 イセリナ様の失踪がバレるのは、遅い方が良いでしょう」

 

 俺の言い方に、ガルマは頷いた。

 多少会話がわざとらしいが、これも予定通りである。

 

「分かった。ならば私たちは基地で待っているとしよう。

 先に行っている」

 

 車のエンジンがかかり、走り去っていく2人――正確に言えば運転手の軍人も含めると3人だが。

 道中で絶対いちゃつくであろう、あの2人の空気に耐えなくてはならない運転手には、俺の権限で特別手当でも出しておいてやるとしよう。

 

 さて……。

 

 俺はホルスターにしまっておいた拳銃を取り出し、弾倉を確認する。

 軍用の自動拳銃の弾は全弾入っているな。

 ポケットからサイレンサーを取り出し、装着する。

 

 これで準備は整った。

 俺は再び、塀を飛び越えるとエッシェンバッハ邸に向かった。

 

 

 

 

 数時間後、屋敷の近くにあらかじめ隠しておいたバイクで基地に戻った俺は、ザンジバルでソロモンへ向けて旅立つイセリナ嬢を見送った。

 

 ソロモンでドズル・ゼナ夫妻と合流したイセリナ嬢はそこに数日滞在してから、地上軍と共に引き上げてきたガルマと合流し、サイド3へと移動する予定になっている。

 

 

 エッシェンバッハ邸の執務室で、ヨーゼフ・エッシェンバッハ氏の射殺された遺体が発見されるのは、もう数時間してからだろう。

 朝になっても施錠されたままの執務室に使用人が違和感を覚え、鍵を開けて踏み込むのは相当に時間が経過した後だ。

 

 遺体の周囲には、エッシェンバッハ氏が反ジオン(連邦)のゲリラに援助している場面を捉えた写真がばらまかれている。

 そしてそのゲリラは、ほぼ全てがジオン――というか、俺によって壊滅させられているのだ。

 

 援助したように見せかけて、情報をジオンに売り渡されたことに怒ったゲリラによる報復、という解釈が十分に成り立つ状況である。

 イセリナ嬢の私室も適度に荒らされており、報復に巻き込まれたと見えるようになっている。

 

 この状況では、イセリナがガルマと駆け落ちした、という想定にはなかなか辿り着かないはずだ。

 いずれは、それを想定する者もいるかもしれないが、その頃にはジオン地上軍は宇宙へと撤退が完了しているだろう。

 

 そして、地方の名士が殺されたニュースなど、宇宙にいるイセリナには届きようがない。

 彼女は、父の死を永遠に――とはいかないまでも、少なくともこの戦争が終わるまでは知ることはない。

 時間が経てば、殺害されたのか、あるいは戦争に巻き込まれて死んだのかも、判別はつきにくくなるだろう。

 

 当然のことだが、今回のことにはキシリア少将も込みで、ガルマの承諾は取っている。

 

 ガルマは俺が手を下すことに若干の難色を示していたものの、俺以上の適任もいないために最後には折れた。

 元々、ゲリラを支援しているという罪状から、見逃す選択肢は俺にもガルマにも、最初から存在してはいなかったしな。

 

 

 まあ、義父の血にまみれた手で花嫁を抱きしめるわけにもいくまい。

 2人の行く末に幸あれ、である。

 

 神の祝福があるかは知らんが、少なくとも俺は祝福するよ。

 

*1
ジオン軍は海賊ではないが。

*2
ガンダムW本編では、ヒイロも数mはある塀をジャンプで越えていた。人間業ではない。




読んでいただきありがとうございます。

大佐に昇進しました。
本人的にも艦隊司令とかになるつもりが基本ないので、階級的にはここで打ち止めになると思います。
デグレチャフ氏のように軍大学行ってる余裕がないのもありますが、宇宙世紀ガンダムだと大佐が上限ってイメージがあるんですよね。
主に赤い奴のせいで。


それとガルマ、末永く爆発しろ。

あと多分、作中の裏でシャアはホワイトベースに嫌がらせのように攻撃したりしてるでしょう。
セイラさんのイライラゲージが溜まっていきますね。



【追記】
あとがきにて、艦長職→艦隊司令に変更しました。
シャアもドレンを任命しなければファルメルの艦長になってましたねそういえば。

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