超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

36 / 73
なんとか書けましたので投稿します。

さらばニューヤーク。


第32話 ニューヤーク基地撤退

 

 

 俺たちが先遣隊を全滅させてから1時間ほどが経った。

 

 連邦もまさか強行偵察部隊が数十秒で全滅するとは思っていなかったのだろう。

 一時的に部隊全体の足が止まってくれたのは、こちらにとっても非常にありがたい展開だ。

 さすがにそろそろしびれを切らしたのか、ビッグトレーを中心として部隊全体が1つの陣形を組んで、ゆっくりとこちらに近づいているようだ。

 

 対するこちらは、ガウが順次、準備ができたものからキャリフォルニアベースに向けて飛び立っている。

 あと数分で4番機が飛び立とうとしているところである。

 ガウの周囲は現在、敵第1陣を奇襲したモビルスーツ部隊をそのまま護衛に回している。

 さすがに敵が近づいているのに、防衛のためのMSを1番機~4番機のガウに積み込んで減らすようなことはできない。

 その上で、ガウに積み込めるMSは3機までしかないため、大半は置いていくしかないだろう。

 自爆させている余裕もないが、地上でしか使い道がない機体である。鹵獲されても仕方がないと割り切るしかない。

 

「4番機、離陸します」

 

 ガウ5番機に設置された簡易司令部からの通信が入る。

 モニターに映るのは速度を上げて飛び立っていくガウ。

 マドロックの片手を上げて、4番機の無事を祈る、とジェスチャーをしておく。

 

 後は5番機が飛び立てば無事に撤収である。

 俺は通信機のスイッチを入れた。

 

「こちらエルンスト。

 司令部、敵の動きはどうか?」

 

「こちら司令部。

 敵は微速ながらも前進中、基地まで約5kmと推測されます」

 

 5kmか。

 連邦側が散布したミノフスキー粒子が戦闘濃度のままであるのなら、有効射程とは言いがたい距離である。

 念には念を入れて、こちら側も散布しておけば、有効射程はさらに縮まってくれるだろう。

 

「了解した。

 こちら側もミノフスキー粒子を散布しておいてくれ。

 各員、グフ2機と俺のマドロック(ガンダム)を残し、他の者はモビルスーツから降りてガウに乗り込め。

 全員が乗り込んだ後、我々の機体を収容し、撤収する」

 

 と、基地の敷地内の、はるか離れた場所で爆炎が上がり、地面が少し揺れる。

 威力からしてビッグトレーの主砲だろう。

 

 ミノフスキー粒子の霧の中で俺たちを確認できず、適当に発射した感じに思える。

 近くにモビルスーツの反応もないので、着弾観測すらできないはずだ。

 

 ただ、滑走路に大穴を開けられるとさすがに少し困るので、ガウに搭乗途中の人員たちを少し急がせる。

 ほどなくして、全員の搭乗が完了したと司令部から連絡があった。

 

 グフ2機の後に、マドロックをガウに積み込む。

 機体がロックされたのを確認すると、俺は機体から降り、足早にガウのメインブリッジ――臨時司令部のある場所に向かう。

 到着した時には、離陸作業まで秒読みというタイミングだった。

 

「ガウ5番機、離陸に入ります」

 

 ガウがゆっくりと動き出し、滑走路へと到着する。

 そのまま加速して、もうじき離陸といった瞬間――。

 

 

 背筋に()()()()が走った。

 

 

「総員、対ショック姿勢!」

 

 反射的にそう叫んだ次の瞬間、ガウに轟音が走った。

 離陸のために大地を走っていたガウが左右に大きく揺れた後、若干斜めに傾き、大地震のような振動とともに急制動がかかる。

 同時に鳴り響く各計測器からの警報音。

 

 俺は倒れそうになっているガルマの頭に飛びかかると、床に伏せさせた。

 

 数秒の轟音と振動の後、機械からの警告音を除いてだが、ある程度の静けさが戻る。

 俺の身体には怪我はない。

 様子を見る限り、ガルマも怪我はないようだ。

 

 次に視線をブリッジ全体へと向けた。

 メインブリッジの中央部からでもある程度わかるほどには、各種計器の表示が真っ赤である。

 

 これは……敵の砲撃がラッキーヒットしてしまったか?

 いや、まずは被害状況の確認だろう。

 機体が傾いている以上、飛べるとは思えないが……。

 そう思いつつ、オペレーターへと指示を出す。

 

「総員、状況を報告しろ。

 ガウの状況は!?」

 

「……右翼がエンジンごとちぎれています。

 離陸は不可能かと」

 

 うん。さすがにどう足掻いても飛べないねそれは。

 エンジン不調なんてレベルじゃない……。

 

 ならこのガウに居続ける意味はないな。

 そう判断して、次の指示を出す。

 

「人員の被害状況をチェック!

 急げ!」

 

 オペレーターが確認の作業に入ったところで、ようやくガルマが起き上がった。事態が把握できないといった様子である。

 

「な、何が起こったんだ?」

 

 片翼をエンジンごともぎ取る火力など、ジムの携行火器ではいくらビームと言えども不可能である。

 至近距離からビームサーベルで斬りつければできるかもしれないが、そんな距離にジムがいたらそもそも離陸しようとしていない。

 だとしたら消去法で犯人は1つしかないだろう。

 

「ビッグトレーの主砲だろうな。

 連中のラッキーヒットといったところか」

 

 ガルマは悔しそうに、ガウのコンソールを殴りつけた。

 

「クソっ、ここで運に見放されるのか、僕たちは!」

 

 予定外の出来事に弱く、諦めが早いのは経験の浅さの表れだろう。

 その上、変に思い切りがいい面はあるので、補佐できる人員がいない原作だとガウ特攻(ガルマ死す)とかやってしまったんだろうな。

 

 ただ、この場には俺という補佐もいるし、他に残った人員も優秀なのが揃っている。

 この程度、逆境にも値しない。

 

「何を言っているガルマ?」

 

 声に力を込めながら、ガルマへと向き合う。

 ついでに艦内放送のスイッチをオンにしておく。

 兵たちにも、さっさと方針を示しておきたい。

 

「本当に運に見放されていれば、さっきのが胴体部に直撃して、今頃俺たちは粉々だ。

 オデッサに比べれば、取れる手はまだまだ残っている。

 まだ諦める段階じゃない」

 

「しかし、どうやって脱出すれば……」

 

 俺はサムズアップにした右手で、背中の方向を指し示した。

 

「第3格納庫にギャロップがあるだろう?」

 

 ニューヤークからキャリフォルニアベースまで、敵に読まれないように迂回路を通っても片道約5000km。

 空路での片道数時間の快適な旅が、陸路で片道5日間程度の泥臭い旅に変わるだけである。

 

「エルンスト大佐、人員35名中、骨折と思われる者が5名に頭部からの出血が2名、軽傷が10名。

 あとは無事です!」

 

 と、負傷者の確認が終わったようだ。

 

 命にかかわるほどの重傷者がいなかったのは不幸中の幸いだな。

 ギャロップの医療室で治療できる範疇の怪我を超えた人間がいたら、どうしようもなかったところだ。

 

「軽傷の者は動けるのか?」

 

「支障はないとのことです」

 

 敵にこのラッキーヒットを悟られる前に、行動に移っておかなければならないな。

 そう思った俺は、さっさと指示を出すことにした。

 

「無傷の者から2名を選抜し、グフに乗り込め。

 敵が来るようならモビルスーツで迎撃しつつ、人員を第3格納庫のギャロップへと誘導する。

 敵が来ないようなら移動の補助だ。

 出血している者には止血処置を! 手が空いている者は動けない奴らに手を貸してやれ!

 ガルマ、お前は俺と来い」

 

「どうするつもりだ?」

 

「ギャロップにたどり着くまでの間、マドロックの操縦席の裏にいてもらう。

 多少揺れるが我慢しろ」

 

 ガルマとともに、ブリッジからオペレーターたちも伴って外に出る。

 30度ほど傾いた艦内は歩きづらいが、さすがに移動ができない程ではない。

 ガルマやオペレーターたちが何度か躓きかけたが、数分後、なんとか格納庫へとたどり着く。

 グフは既に起動して船外に出た後なのだろう、姿がない。

 整備担当の兵が1人だけ残っている。

 

 オペレーターたちに外に出るように指示してから、マドロックのコックピットへ滑り込む。

 固定がしっかりしていたおかげか、機体にダメージはない。

 機体を動かして固定器具を破壊し、ガルマをコックピットへと乗せる。

 

 外部スピーカーを起動する。

 

「取り残された者はいないか!?」

 

「いません!

 全員間もなくガウから退避完了です!」

 

 格納庫の床にいた兵が叫び返してくる。

 

「分かった。お前も脱出しろ!

 ギャロップへ急げ!」

 

 そう指示し、マドロックでガウの外へと出る。

 離れた位置から2機のグフが、それぞれ両脇に移動用の車を抱えてこちらに走ってきている。

 たしかに、車が4台もあれば、1回の移動でギャロップまで総員を運べるだろうし、徒歩よりもはるかに早い。

 巧いやり方だ。

 

 ガウの被害状況に目を向けると、見事に右翼が根元のあたりからもげている。

 ビッグトレーの主砲が翼を貫通して、もぎ取ったからこそ本体のダメージが少なかったと見える。

 右翼エンジン部に直撃していたら爆発していただろうし、この程度では済まなかっただろう。

 その意味では、運は悪かったものの、最悪は引かずに済んだとも言える。

 

 だが、()()()()()()()()()だろう。

 

 ガウの左翼の上へと、マドロックをジャンプさせる。

 右翼を失って右に傾いたガウは、そのまま地面に押し付けられたように、左翼を斜め上に突き出した格好で擱座している。

 都合がいいとは言い辛いが、周辺で最も高度が稼げる場所になっていた。

 

 目を閉じて、一番気配の強い場所を探る。

 ……ここか。

 ビッグトレーのいるであろう方角を想定し、そこに向かってメインカメラで最大望遠をかける。

 どこだ。

 カメラをゆっくりと左右へと動かし、敵の巨体を探す。

 ……いた。

 

 モニターは倍率を最大にしたせいで画質が粗い上に、ミノフスキー粒子の濃度が高いせいでノイズが走ってる。

 そんな画面の中に映るビッグトレーに、ゆっくりと照準を合わせた。

 推定距離はおよそ4.5km。

 

 ガルマの慌てたような声が聞こえる。

 

「ちょ、ちょっと待てエルンスト。

 この距離で狙う気か?」

 

「命中するかはともかく、一度は牽制しておかないと、モビルスーツになだれ込まれたらこちらが不利だ。

 こちらからも応射して、敵の足を止めるしかない」

 

「それは、そうなんだが……」

 

 光学系のセンサーにも相当なノイズが走っている。

 並のパイロットにとっては、この状況での狙撃など絵空事でしかないだろう。

 だが――、(ヒイロ)ならば当てられる。

 

 距離と地球の磁場を想定し、角度をやや調整。

 大気圏内のこの距離では、ビームはそれなりに減衰する。

 ビッグトレーに致命打を与えるには足りないだろうが、有効打にはなるだろう。

 脅かせる程度なら十分だ。

 

「ターゲット……ロックオン」

 

 呟いて、静かにビームライフルを3連射。

 

 放たれたビームはそれぞれ、ビッグトレーの下部、上部右側にあるホバー移動用の翼、右のバルジに取り付けられた大型砲へと命中する。

 距離減衰のため撃破とはいかないが、少なくとも移動をためらう程度のダメージにはなっているようだ。

 少なくともモニター上では、バルジ部分から黒煙が上がり、元々微速であったビッグトレーが完全に動きを止めたように見える。

 

 続いて300mmキャノンの照準を合わせる。

 先ほどのビームライフルで距離感は掴めた。

 敵が動きを止めてくれているのもありがたい。

 実体弾なので、先ほどの射撃に重力の補正もかけて照準……発射。

 

 数秒して、ビッグトレーの艦首下部に装着された大型砲が吹き飛んだ。

 これでビッグトレーは完全に動けないだろう。

 ダメージコントロールで指揮どころではないはずだ。

 

 俺は静かに笑みを浮かべる。

 

「ガウの借りは返させてもらったぞ」

 

 ガルマが若干げんなりした様子で笑う。

 

「そういえば君は、士官学校の頃から射撃の成績が断トツだったな」

 

 この肉体の素養が適正なのか、確かに射撃が得意なことは否定しない。

 

 最近はイフリートでヒートサーベルを振り回したり、ギャンでジムを切り刻んだり、マドロックでガンダムと斬り合ったりと、近接戦ばっかりやっていた気もするが、それは仕方ない。

 逆襲のシャア時代のシャアしかり、ハマーンやキンケドゥしかり、この世界での極まったパイロットというものは、どれだけ遠距離に強い機体であっても、突撃して近接戦でガンガン狩って行くものなのである。

 逆襲のシャアでも、アムロだけはシャア戦以外はビームライフルとバズーカでこと足りていた気がするな。

 

 あまり人のことは言えないが、やっぱりあいつおかしいわ。

 

 ガウの翼から飛び降りたマドロックに通信が入る。

 

「大佐!

 ギャロップの準備ができました!」

 

「よし、補給物資は?」

 

 数日の旅だ、食料と水がなければ悲惨なことになるし、万が一のための弾薬の予備も欲しい。

 

「抜かりなく!

 グフでガウの倉庫を引っぺがして積み込んでおきました。

 この人数なら1ヶ月はもちます!」

 

 やはり最後まで基地に残った人員だ、優秀過ぎる。

 

「よし、撤収!」

 

 こうして俺たちは、ニューヤーク基地から陸路で逃げ出すことになった。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

最後まで順調に脱出……できませんでしたってルートです。

撤退戦しかしてないっすね最近。
まあ、北米はいまだジオンの勢力圏ではあるので、場所がバレない限り、オデッサの撤退戦のように敵がぼこじゃが湧いてくるようなことにはならないと思います。

ただひたすら距離が長いだけなので、旅路がダルいだけでしょう。
ギャロップだとロッキー山脈超えるのが、だいぶ面倒くさいイメージ。

ちなみに主人公1人だと、単身潜入した後にミデア強奪して逃げれます。
ガンダムW勢はやっぱおかしい。


時期的なイメージは、12月に入ったか入ってないかってところです。
シローが「アイナと添い遂げる」って叫んでたり、モルモット隊が暴走したBD1号機と戦闘したりしてるあたりだと思います。




また、前話にて指摘を受けました、ガルマの決定に異議を申し立てる権利ですが、まずガルマの決意がとても固い(それでも残る、と言われた時点で再度の異議申し立ては不可能)ことに加えて、説得するにしても時間が足りないこと。
それに加えて、司令部全員がガルマの味方になってしまったので、強引にガルマを(気絶させてでも)脱出させるという選択肢も含めて、実行不可能と判断した、という流れになります。
私の描写が足りずに混乱を招いてしまい、申し訳ありません。




というか指摘を受けた際、「あれ? それ(ガルマぶん殴ってでも止める権利)って私の脳内設定にはある(そもそもガウ特攻ルートに入ってしまった場合の保険として、第1話ぐらいの時点から設定自体はしていた)んだけど、作中で描写したっけ?」みたいになってました_(:3」∠)_
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。