超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。





第36話 ゲルググを受け取りまして

 ラル大尉との再会の後、ザンジバルに搭載されているリックドムとムサイに搭載されているゲルググの移動が行われた。

 ザンジバルに搭載されているリックドム5機のうち4機がムサイへ、ムサイに搭載されていた4機のゲルググすべてがザンジバルへと移ることになった。

 

 なお、マドロックはそのままザンジバルに置かれている。現状が陸戦仕様であるため、どう考えてもでかい荷物にしかなっていないのは物悲しい。

 

 しかし、配備されたばかりのゲルググをいきなり4機も回してくれるとか、ドズル中将の弟への溺愛ぶりがうかがえる。

 原作と違い、生きているガルマの護衛だから、キシリアやギレンも横槍を入れるつもりもなかったのだろう。

 というか、それをやってしまった場合、デギン公王がガチギレしかねないか……。

 

 それにしても――白銀に塗装された俺の機体と青に塗装されたラル大尉の機体、なんか残り2機のゲルググとちょっと細部違わない?

 

 頭部の形状が若干違うし、スラスターの形状や数も違っている。

 背部に大型のプロペラントタンクらしきものがある。

 

 ……これ、ゲルググ(イェーガー)じゃね?

 

「貴様と俺の機体は、指揮官用の特別機だそうだ」

 

 ラル大尉がこちらに歩いてきてそう言った。

 俺は機体を眺めながら返事をする。

 

「量産機と比べると相当推力がありそうですね」

 

「姿勢制御バーニアの数も比べ物にならんが、その分、扱い辛さも比べ物にならん。

 少数のエースや指揮官に配備するのが関の山だろう」

 

 やっぱりゲルググJっぽいなこれ。

 正式名称が俺の知る、本来のままなのかは分からないが。

 

 統合整備計画、ひょっとしたらマ・クベ中将がオデッサで発言権を得たせいで、思ったよりも前倒しになってるのだろうか?

 

 まあ、指揮官やエース用に限定するのは分からなくもない。

 なんせこのゲルググJ(多分)、馬鹿推力すぎてプロペラント(推進剤)の消費が半端ない。数値だけで言うと、ゲルググの3倍近くあるのだ。

 まだソロモンもグラナダも落ちてはいないので、ジオン本国も末期戦には程遠い。

 そんな中、消耗が凄まじいゲルググJを一般兵にまで回していられないというのは、理に適っている。

 

 ん?

 これひょっとしたらシャアにも渡っているのか。

 大丈夫か?

 ノリノリでホワイトベースにちょっかいかけてないだろうなあいつ?

 コアブースターごと妹をさらってきましたとか止めてくれよ?

 

 ただまあ、シャアがちょっかいかけていなくても、現在の宇宙には、俺が地上から帰還させた大量のジオンのベテランパイロットがいる。

 現在宇宙の戦局は、連邦がバンバン打ち上げてくるジム部隊と、宇宙に戻って水を得た魚のようになったオデッサ帰還組とがかち合って、あちこちで小規模なMS戦闘が頻発しているらしい。

 そんな帰還組がゲルググやリックドムを駆って、ホワイトベースとやり合っていても何もおかしくはないだろう。

 

 コンスコン少将がソロモンにいる以上、コンスコン艦隊と衝突する可能性は少なくともソロモン戦まではないだろうが、だからといってホワイトベースが楽ができるかというとそうでもないのかもしれない。

 

 次にアムロ・レイ(あの天パ)と遭遇するとき、どれぐらいレベルアップしているのかを考えると、結構面倒くさい。

 

 今の段階の奴相手でも、個人で相対して無事にいられるのは俺かシャア、後は――シャアが拾っていればだが、ララァ・スンぐらいだろう。

 部隊を指揮すればラル大尉も無事だとは思うが、ラル大尉が単体で相手取るならそろそろきついと見ておいていい。

 そもそもとして、ラル大尉はつい先日までモビルスーツから離れていたのだ。

 リハビリも必要だろう。

 

「ラル大尉は既にこの機体に?」

 

「受領した時に乗りはしたが、如何せん、ブグと比べると違いすぎてな。

 まだ慣れん」

 

 あーー、そうか。

 ラル大尉はルウム前に予備役になっていたから、ゲルググの前に乗っていたMSがブグということになるのか。

 そりゃ、性能差が凄すぎて感覚が風邪をひくわ。

 

「よろしければ、俺の機体の慣らしも兼ねて一緒にどうですか?」

 

 ラル大尉はにやりと笑った。

 

「よかろう。

 あの小僧がどこまで腕を上げたか、存分に見せてもらおうか」

 

 

 

 

 俺とラル大尉はノーマルスーツに着替えると、自身のゲルググを駆ってザンジバルの外へと出た。

 

 俺は宇宙の感覚を取り戻すため、ラル大尉はモビルスーツの感覚を取り戻すために、それぞれが好きに機動を取ったり、僚機としての戦術機動を取ったりした後、模擬戦へと移行する。

 

 さすがはラル大尉といったところか、数度模擬戦をしただけで、完全に以前の勘を取り戻したような感じがする。

 これゲルググに乗っていればワンチャン、ドムに乗った『黒い三連星』全員を相手に勝てるんじゃないだろうか?

 

「さすがは『青い巨星』です。

 勘を取り戻すどころか、既に()()()よりも強くなっていると思います」

 

 模擬戦用に出力を極限まで落としたビームサーベルを、ラル機のビームサーベルに叩きつけながら言う。

 

 ちなみにビームサーベルはゲルググ特有のナギナタタイプではなく、ごく一般的な形状のビームサーベルである。

 出力はギャンの方が高いのだが形状は同じなので、俺としてはこっちの方が使いやすい。

 

「ここまで、翻弄されて、貴様ッ、褒め言葉のつもりか!」

 

 割といっぱいいっぱいといった様子で、ラル大尉が怒鳴り返してきた。

 そうは言われても、俺はモビルスーツ戦闘の経験だけなら、地球圏でも屈指な自負があるので、経験の差はどうしても出てくる。

 

 俺はビームサーベルをいなすと、体勢が崩れた相手の腕をひねって、ラル大尉の機体をほうり投げた。

 ついでに軽く背中を蹴って勢いをつけておくと、ラル大尉の機体は回転しながら離れていく。

 

 ラル大尉はサブスラスターを駆使して、即座に体勢を立て直したが、俺はその間にメインブースターを最大にして逆側へと回り込んだ。

 結果、こちらを見失ったラル大尉は、背後から首筋にビームサーベルを突きつけられて、模擬戦の勝敗が決まる。

 

「……この1年でどれほど成長したのかと思っていたが、言葉が見つからんな」

 

 ラル大尉から通信が入る。

 モニターに映った顔はだいぶ汗だくだ。相当神経をすり減らしたと見える。

 だが肉体的な疲労の面ではまだまだ大丈夫そうに見えるのは、腐らずに鍛えていたということなのだろう。

 

「それは褒め言葉と受け取っても?」

 

 対して俺はまだまだ余裕がある。

 まあ、比較対象が悪いが、マドロックでガンダム相手に斬り合いした時に比べると……なぁ。

 

 ちなみにゲルググJを操縦した感覚であるが、接近戦においては流体パルスアクセラレーターが導入されている分、ギャンにやや劣るが、ビーム射撃兵器がある分、全体的な使いやすさはやや上といったところだ。

 イフリートとかと比べても、やはり機体の追従性自体は徐々に改善されている。

 

 それでも全力でぶん回すと、やはりコンソールが放電しそうな気がする。

 マグネットコーティングが施されたガンダムとやり合うのなら、時間稼ぎが精々といったところだろう。

 負けない戦いはできるだろうが、倒せる自信はあまりない。

 

「実際、褒めてるんだ。腕が立つに越したことはない。

 俺みたいな老兵よりも先に死ぬのは許さんからな」

 

「ラル大尉だってまだ若いじゃないですか」

 

 そう言って互いに笑う。

 

 たしかまだ35歳とかだったよな……35歳の貫禄かこれ?

 いや、ガンダム世界はやけに老け顔が多いとは思ってはいるのだが。

 バニング大尉が39歳とか、ね。

 どう見ても50代半ばでしょあの顔。

 

 そうやって会話していると、ザンジバルから通信が入った。

 

「大佐、遠方ですが連邦の反応を検知しました。

 ラル大尉と共にザンジバルに帰還してください」

 

 計器に目を走らせる。

 プロペラントは7割ほど残っているので戦闘行動に支障はないが、まあ一度補給しておくに越したことはないか。

 ラル機はもうちょっと減っているだろうしな。

 

「了解した。

 連邦との接敵時間は分かるか?」

 

「少し待ってください……。

 連邦の速度が変わらなければ、20分後に接敵予定です」

 

 20分ならラル大尉も少しは休めるな。

 

「すぐ帰還する。

 俺たちへの機体の補給の準備を頼む」

 

 

 

 

「どう思う?」

 

 ザンジバルに着艦し、ノーマルスーツのままザンジバルのブリッジに着いたラル大尉は、計器に表示された連邦の戦力分析を前にして、こちらに聞いてきた。

 

「明らかに小競り合いをする規模じゃないですね。

 どこのどいつかまでは分かりませんが、まあ()と見ていいのでは?」

 

 戦力分析によると、敵はこちらの進行方向を遮るようにマゼラン級戦艦1隻とサラミス級巡洋艦が2隻、後方からサラミス級巡洋艦が2隻追ってきている。時期的に考えればジムやボールも搭載しているだろう。

 明らかに何らかの目的があって編成されている。()()()()()()()()()で済まされる戦力ではない。

 それも、『ジオンの軍艦2隻』を撃破するのであればここまでの数は本来必要ない。

 十中八九、ガルマ・ザビの拿捕を目的とした部隊だろう。

 

 つまり、ギレン派かキシリア派かは知らないが、連邦にガルマ・ザビの帰還ルートを流した連中がいるということだ。

 連邦との戦いでガルマが戦死すればよし。

 連邦に拿捕された場合は、連邦の部隊を横から殲滅し「連邦にガルマ様が殺された」という体にする。

 そんなところだろう。

 

 ここからは根拠の薄い、つまりは勘でしかないが、連邦の部隊は主流派、つまりレビルの息のかかった連中ではおそらくない。

 レビルならばガルマの護衛に、(白銀)が付いていることなどは承知のはずだ。

 奴ならば()()()()()()で攻めてくることはないだろう。

 攻守がジオン・連邦と入れ替わっているが、テレビ版におけるコンスコン艦隊の顛末と同じである。

 いや、『青い巨星』までいるのだ。下手したらあれよりも酷いことになるか。

 

「ならば戦闘は避けられんな。

 何か案はあるか?」

 

 ラル大尉が面白そうにこちらに聞いてくる。

 正直、ラル大尉が指揮すれば、ゲルググとリックドムで構成された部隊なので危なげなく勝てるとは思う。

 ラル大尉の指揮する集団としての強み以外だと――。

 

「ひとつ、試してみたいことがあります」

 

 ゲルググJなんてものがあると、ついつい余計なことを考えても仕方ないよな。

 

 

 

 

 やることとしては単純である。

 まず、ミノフスキー粒子の散布と同時に、俺が先行してゲルググで船外に出る。

 そのまま、弧を描くような形で迂回して前方の連邦軍部隊に向かい、敵味方双方が戦闘態勢に入った時点で、敵部隊の真上から奇襲する。

 要は、原作でアムロがドレンの艦隊に対して使った手である。

 

 遠回りして接敵するため、射程距離に入った時点で敵のMSは出撃した後ではあったが、それは仕方がないだろう。

 

 ラル大尉の指揮するMS部隊が交戦に入ったのを確認して、俺はゲルググの大型ビームマシンガンをマゼラン級の船体に叩き込む。

 さすがビームというべきか、マゼラン級の装甲を抵抗もなく貫き、船体を穴だらけにしていく。

 完全に沈黙したマゼランは、数秒の後に各部から誘爆を繰り返して爆散した。

 

 いきなり指揮をとっている艦が爆発したからか、敵のMSの連携がかなり乱れている。

 敵はMSだけでも全部で30機ほどありそうだが、ラル大尉の指揮する部隊には有効打が与えられず、混乱に乗じて徐々に撃墜され始めている。

 

 俺はマゼランが沈黙したのを確認すると、ビームサーベルを引き抜く。

 そのまま、サラミス級の1隻のブリッジ部分にビームサーベルを叩きつけると、切り裂きながら船体の下部へ抜け、そのまま両断した。

 

 あっという間に2隻が沈黙したせいで、連邦部隊の混乱はピークに達している。

 

 オデッサでも経験したが、連邦は『自分が攻め手だと思っている時に奇襲を受ける』という状況に非常に弱い。

 官僚主義の弊害なのか、思考のスイッチの切り替えが遅いと言い換えてもいい。

 さらにそのタイミングで指揮が喪失すれば、前線のパイロットすら混乱して、割と意味不明な行動を取ることがある。

 対峙しているラル隊に背を向けてまで、こちらに戻ってくるジムやボールが数機いるが、完全に無防備である。

 というか、援護が主目的のボールが、艦船の護衛に戻って何をするというのだろうか。

 

 現場主義のジオンなら、こういうことがあっても『目の前の敵を倒してから考える』という将兵が割といるので、こういうことは起きづらい。

 よく言えば臨機応変と言えるのだが、逆の視点では『思考が戦闘民族』とも言えるので、連邦とどっちが優れているかは一長一短である。

 

 俺は前方の部隊では1隻だけ残ったサラミス級の砲を、ビームサーベルで破壊しながら、ビームマシンガンでジムやボールを撃墜していく。

 撃沈していないのは、残しておいた方が敵がこっちによってきてくれるからだ。

 ザンジバルの護衛部隊に背を向けてくれる形になるので、彼らへのアシストにもなるだろう。

 

 そうして数分、ラル隊の戦闘能力もなかなかに高く、既に連邦のMS部隊は全滅。艦船も、俺がとどめを刺さなかったサラミス1隻だけである。

 そのサラミスもビーム砲やミサイル射出管は破壊されて、ボロボロである。

 後方にいた2隻のサラミス級は、ザンジバルのビーム砲とリックドムのバズーカで轟沈したようだ。

 

 最後の1隻も破壊しても良かったのだが、ガルマが「残しておけば、勝手に救助活動をしてくれるのでは?」と言い出した。

 俺とラル大尉も、戦闘能力を完全に失った艦を敢えて撃沈する必要性も感じなかったので、残して救助活動に専念してもらうことになった。

 ガルマが政治の道に入る場合、こういったことが後々生きてくる可能性も否定できないしな。

 

 まあ、それでも特攻してくるようなことがあれば、即座に蜂の巣にするつもりでビームマシンガンは構えていたが。

 

 こちらの被害はリックドムが2機、足がもげた機体が1機、腕がもげた機体が1機ある程度の損害なので、実質的に完勝である。

 ここまで圧勝すれば、どこかで眺めているであろう連中も、こちらにちょっかいをかけることを諦めるはずだ。

 

 俺らが去った後にサラミス級に手でも出してくれたら、『誰が今回の一件を企んでいたか』が分かるかもしれないのだが、そこまで短絡的な行動には出ないだろう。

 人道的な判断を下した、ガルマの面子に泥を塗る行為なので、やってくれたら完全にザビ家への敵対行為と認定できるんだけどなぁ……。

 




読んでいただきありがとうございます。

ゲルググが配備が始まったと思ったらイェーガーだった。
な、何を言っているのかわからねーと思うが(以下略)
はい筆が滑りました。


とりあえず、超遠距離で潜伏しつつ、漁夫の利を狙っていたであろう連中は、あまりの圧勝ぶりに引いて帰ったと思います。

ラルさんは個人の操縦技術も凄まじいですが、本領発揮は部隊指揮だと思っている私。
テレビ版のドレン艦隊とコンスコン艦隊のエピソードを同時に、攻守逆にしてやった感じですかね。
30機のジムが5分もたずに全滅です。
相手がラル隊なので、本当にもう相手が悪かったとしか……。



ちなみに、改めてZZ見直しているんですが(現在4話)、序盤の空気感に風邪引きそうですw
一度見たはずなのになぁ。ここまでノリ軽かったっけ?w
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