超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。




第40話 ソロモン攻防戦開始

 現状でできることは全てやった。

 後は連邦軍の出方次第である。

 

 ドズル中将も無事にソロモンに到着し、厳戒態勢を敷くこと数日。

 索敵レーダーに反応があった、との知らせを受けて、俺はソロモンの司令室へと走った。

 

「見間違いではないのだな?」

 

 ドズル中将がオペレーターに聞いている。

 

「はい、連邦の部隊は第3戦闘距離に布陣。

 サイド4の残骸に紛れて接近中であります」

 

「申し訳ありません。遅くなりました」

 

 そう言って、ドズル中将のそばに立つ。

 

「構わん。

 敵の数はどうなっているか?」

 

「はっ、現在、画像処理中であります。

 出ます」

 

 連邦の艦隊を最大望遠で撮影した上で、CGで補正されてある程度鮮明になったものが、司令室のモニターへと映し出される。

 そこには7隻ほどの艦艇が横並びとなり、その前方には多数のパブリク突撃艇が見て取れる。ホワイトベースの姿も確認できた。

 さらにその背後には、同数ほどのコロンブス級宇宙輸送艦が列をなしている。

 

 次の瞬間、司令室が嘲笑の渦に包まれた。

 

「や、奴ら……ついに戦艦を作る金もなくなったのか?」

 

「わ、笑っちゃいけねぇよ。

 敵さんも必死なんだよ……ぷっ」

 

 この場で笑っていないのは、俺とドズル中将のみだった。

 ドズル中将に視線をやると、彼は目を閉じて頷いた。

 

 俺は息を吸い込むと、叫んだ。

 

「静粛にッ!」

 

 瞬間、司令室が静まり返る。

 気が緩んでいたとはいえ、それでも訓練を受けた軍人たちではある。

 

 静まり返った中で、俺はドズル中将に言った。

 

「閣下、憂慮すべき事態であると具申します。

 連邦が外聞よりも実を取ってきたと私には見えます」

 

「うむ、俺もそう思う。

 情報分析官、あのコロンブス級すべてにMSが搭載されていた場合、それはどの程度の数になるか?」

 

 指示を受けたオペレーターが慌ててコンソールに指を走らせる。

 

「コロンブス級の内部構造と積載能力を計算に入れると……。

 限界まで詰め込んだ場合は、最大で……ご、50機程度と思われます。

 モビルスーツ運用艦として使用した場合は、多少は減少するかと……」

 

 司令室の空気が変わった。

 さすがに補給基地としても使用するだろうから、50機フルで積んでいることはないとは思う。

 だが、それでもコロンブス級の搭載機に加え、軍艦に搭載されている機体まで計算に入れると、あの部隊だけでも300機近くのモビルスーツがいると見ていい。

 初手で舐めてかかっていい相手ではない。

 

 緊張感が戻った司令室に、ドズル中将が告げる。

 

「連邦は艦船を揃えるための力を、モビルスーツの製造に回した。

 同時に、連中にはソーラ・システムという切り札もある。

 あの部隊ですら陽動であろう。

 全将兵に告げよ。舐めてかかれる相手ではないぞ!」

 

 少なくとも俺には、連邦が慢心を捨てたようにしか見えなかった。

 きっとドズル中将も同じ気持ちだろう。

 

 ティアンム提督が、連邦宇宙艦隊の再建よりも、モビルスーツの数を揃えることを優先した。

 この世界では、俺しか知ることのない知識であるが、原作においてティアンム提督は、『ビンソン計画』によって宇宙艦隊の再建を主導した人物である。

 艦隊再建における情熱は並のものではなかったはずだ。

 

 だが、それよりもMSの配備を彼は優先し、この時点で大々的にコロンブス級をMSの母艦として運用しだした。

 つまり、『今、必要なものを、必要なところに迅速に送る』という決断をしたのだ。

 これが地球連邦の最大の長所なのだろうと俺は思っている。

 

 たとえば未完成であっても、現場が必要としているのであれば、欠陥を抱えた前期生産型(A型)ジムでも生産する。

 機体が完成していたのに、ビームライフルが完成するまでゲルググを寝かせておくようなジオンには、真似ができない強さである。

 

 本当にこの時期の地球連邦は手強い……。

 

 パブリク突撃艇が前進を始めたようだ。

 続いて、連邦の軍艦からの砲撃が始まった。

 

 ソロモン攻防戦の開始である。

 

「ビーム攻撃入りました」

 

「ようし、仕留めよ」

 

 いくつかのパブリクが撃墜されるが、奴らの発射したミサイルが周辺にビーム攪乱幕を形成していく。

 次第にソロモンからの砲撃が敵に届かなくなっていく。

 俺はドズル中将に告げる。

 

「敵は強力なビーム攪乱幕を張ったようですね。

 じきにモビルスーツ隊が来るかと」

 

 ドズル中将はそれを受けて、さらに指示を飛ばした。

 

「見え透いた時間稼ぎだ。実弾攻撃に切り換えろ。

 ゲルググ、リックドムの部隊は敵の侵攻に備えよ。

 ビルマ艦隊、左翼に展開しろ。

 

 他の艦隊は持ち場を動くな。ティアンムの本隊は別の方角から来るぞ。

 索敵を厳にせよ。時間は奴らの味方だと思え!」

 

 俺の出撃は、ソーラ・システムの現在地が判明してからになるため、現状の仕事はドズル中将のサポートである。

 モビルスーツ隊への大まかな指示は俺の担当であるため、俺もそれに応じて指示を出していく。

 

「各モビルスーツ隊、艦船やソロモンの援護を受けつつ、引き込んで戦え。

 敵にはガンダムがいるが、無理に倒そうとしなくても構わん。

 あくまで連中は囮だ。本命が来る前に無為に死ぬな!」

 

 この宇宙要塞ソロモンの周辺には、2つの壊滅したコロニー群が存在する。

 サイド1ザーンとサイド4ムーアである。

 

 敵の囮部隊は、サイド4の残骸に紛れて接近してきた。

 

 ならば現時点で最も可能性が高いのは、本隊であるティアンム艦隊がサイド1の残骸に隠れてソーラ・システムを展開する線だろう。

 それは奇しくも、原作通りの展開だ。

 だが、原作の知識を妄信はできない。確認する必要がある。

 

「分析官、サイド1の残骸の陰に敵本隊がいる可能性は?」

 

 俺が聞くと――

 

「敵のソーラ・システムが最も効力を発揮する場所を推定するなら、そこが一番有力かと思われます」

 

 その報告に、ドズル中将は即座に命令を出した。

 

「よし、偵察をサイド1方面に出せ。

 敵本隊が確認でき次第、敵本隊を中心とした鶴翼の陣を形成する」

 

 鶴翼の陣とは、八の字に部隊を展開する陣形であり、防衛に適した陣形である。

 なおかつ、この戦場においては広く展開している分、仮にソーラ・システムを発射された場合にも『艦艇が根こそぎ撃沈される』という事態を防ぎ、なおかつ空いた穴を修復できるという利点がある。

 間違いなく、この戦場において最適の陣形の1つだろう。

 

 懸念は敵の数の多さである。

 陽動部隊と目される連中ですら、笑いたくなるほどのモビルスーツの数だ。

 

 本隊がそれより少ないはずがないので、おそらく敵のMSの数だけで考えても、こちら側のMS数の3倍はあるだろう。

 たしか、原作だと1.5倍程度の戦力比であったはずなので、格差が倍に開いている。

 こちらにも援軍が届いている中でこれなのだから、連邦の生産力が恐ろしい。

 

 敵との戦力比を考えた場合、ソロモンの防空システムを最大限に発揮しても勝率は五分といったところだろう。

 城攻めには3倍の数が必要とはよく言ったものだ。

 ソーラ・システムを一度撃たれるだけでも、勝率はかなり下がる。

 2発目を撃たれた場合には、まず勝ちの目はない。

 

「陣形形成後、コンスコン艦隊を中心としたゲルググ部隊によって強襲をかけて、敵ソーラ・システムを破壊する」

 

 ドズル中将の指示が飛ぶ。

 そう、俺たちの勝ち筋があるとすれば、ソーラ・システムを撃たせない、これしかない。

 

「敵本隊と思われる艦隊、サイド1方面に確認しました!」

 

「ようし、陣形転換!

 衛星ミサイル*1の発射と同時に、コンスコン艦隊は出撃せよ!」

 

 

 

 おかしい。

 

 数分が経過し、戦況を眺める俺の頭の中には、困惑が満ちていた。

 

 衛星ミサイルが先行した後、コンスコン艦隊とMS隊がティアンム艦隊へと襲い掛かり、現場は大混戦の様相を呈している。

 こうなってしまった場合、おいそれとソーラ・システムも撃てないはずなのであるが――。

 

「ソーラ・システムはまだ見つからんのか!?」

 

 ドズル中将の苛立った声が響く。

 

「申し訳ありません。

 ティアンム艦隊の旗艦、タイタンは確認できたのですが、展開されたミラーが見つかりません」

 

 ソーラ・システムが存在しない?

 いや、そんな都合のいい展開はないはずだ。

 そもそもこれはスパイ(エルラン)からの情報である。

 潜伏がバレてわざと誤情報をつかまされたという可能性が一瞬頭を横切るが、秒で否定する。

 『秘密の攻城兵器がある』という誤情報を敵に流す意味がない。

 

 ならば、何かを見逃しているのか?

 

 ティアンムの旗艦があそこにいて、なおかつソーラ・システムがそこにない場合、考えられるのは……。

 

 俺ははっとして、オペレーターに叫んだ。

 

「最初の敵が展開していた、サイド4方面の拡大画像を出せ!」

 

 数秒して、最初に囮艦隊が襲来してきた方面の拡大画像が表示される。

 俺は黙ったまま、視線を走らせる。

 ある一点で目が止まった。

 宇宙にしては僅かではあるが、だが確実に無視できない数個の輝きが見える。

 

 やられた。

 

「ソーラ・システムはサイド4の陰だ!」

 

 敵は2段構えの囮作戦を取ったのだ。

 

 まず、ホワイトベースを含むワッケイン艦隊(推定)が囮として発進。

 本命が他にいるという先入観をこちらに与える。

 

 俺たちは()()()()()()に本命がいると索敵し、旗艦を発見した途端「そこにソーラ・システムがある」という先入観にとらわれ、見事に時間を浪費させられた。

 

 ティアンムの本隊こそが囮部隊だった。

 

「展開中の部隊で、ソーラ・システムの迎撃に間に合う艦隊はおるか!?」

 

 ドズル中将が叫ぶ。

 

「む、無理です!

 とても間に合いません!」

 

 オペレーターが無情に返す。

 

 第1射はやむを得ないか……。

 

 俺は戦局図を凝視した。

 鶴翼陣形を取っている友軍の左翼は、敵主力を包むためにサイド4方向へ張り出している。

 ソーラ・システムがサイド4方面にあるということはつまり――。

 左翼の艦隊の大部分が攻撃範囲内に入る。

 

 まずい。

 

 俺は通信機に向かって叫んだ。

 

「左翼に展開している全艦艇、全MSは中央部へ、敵の懐に飛び込め!

 乱戦になるが、あれに焼かれるよりはマシだ!」

 

 厳密に言えば、艦隊への指示は俺の権限を越えているが、そんなことを言っている場合ではない。

 ドズル中将に視線を向けるが、中将は頷いてくれたので事後承諾で良しとするしかない。

 

 俺の指示によって、左翼に展開した友軍が、中央部の敵軍に雪崩れ込む。

 その瞬間。

 

 強烈な閃光がソロモンを貫いた。

 

 

 

*1
宇宙の岩塊に推進ロケットを取り付けたもの。原始的であるが、原作中でなんでと思うほど戦果を挙げた。




読んでいただきありがとうございます。

ソロモン戦の開始です。

ジオンサイドもソーラ・システムをバリバリに警戒していたのですが、主力艦隊を囮にまで使った連邦軍が一枚上手だったという感じ。
原作だとティアンムの艦のそばにソーラ・システムが配置されていたのですが、本作では連邦側がオリ主を警戒したとかそんな理由だと思います。

ちなみに、TV版のソロモン戦を見直しているのですが、普通にドズル中将が指揮官として結構有能で困りましたw
キシリアへの援軍要請の提案を「これしきのことで物笑いの種になるわ」ってはねのけた部分と、最後のビグ・ザム特攻さえなければなぁ……w




感想につきましては、全て読ませていただいております。
たくさんの感想、本当にありがとうございます。

その感想においてですが、前話の描写において、「連邦がなりふり構わなくなる展開はまずない」というご指摘を良くいただきます。
一応、主人公もそれはまず無い(あったとしても徐々に段階を踏む)というした上で、「有り得ないと断じて、起こった場合を想定していないのもまずい」という認識でいるというイメージで執筆させてもらっております。

主人公にとっては『アニメの世界』ではなく、やり直しの効かない現実と認識しているが故の警戒心である、とご理解いただければ幸いです。

私の描写が至らず、申し訳ありません。
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