超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投下します。



なんでか知りませんが、書いてる間、脳内に『トップをねらえ! FLY HIGH』が流れてきたんですよねー。







第42話 恐怖!機動ビグ・ザム+エース部隊

 

 俺たちが秘密裏に撤退作戦の準備を始めて十数分後。

 

「敵ソーラ・システム照射予測時間まで、後10、9……」

 

 設置されているスピーカーから、オペレーターのカウントダウンが響く。

 そんな中で、俺は格納庫に集まったパイロットたちの顔を見渡した。

 命知らずの同行希望者、十数名が整列している。

 全員、エースの勲章*1を持つベテランで、ゲルググJを与えられた猛者たちだ。

 

 先頭にいるのは当然というべきか、アナベル・ガトー大尉。

 さすがというべきか、彼がこういった部隊に志願しないわけがなかった。

 

 俺はパイロットたちに説明を始めた。

 

「既に分かっているとは思うが、我々の役割は敵戦力の漸減、並びに陽動だ。

 友軍の撤退が軌道に乗るまで、敵の目を引き付ける必要がある」

 

 カウントダウンがゼロになり、ソロモン全体がかすかに揺れ始める。

 予測通り、ソーラ・システムの第2射が始まったようだ。

 

 あまり時間的な余裕はないな。

 俺は言葉を続けた。

 

「幸いにも、ここにあるビグ・ザムにはビーム兵器を防ぐIフィールド(バリア)が搭載されており、なおかつ火力も戦艦を軽く凌ぐ。

 我々の目的には最適の機体がここにある。

 しかし、こいつは20分以上戦闘行動を行うとオーバーヒートを起こす欠陥品でもある。

 なので、これ1機だけで吶喊し、悪の連邦は滅びました、という展開は残念ながら無理のようだ」

 

 周囲から笑い声が起こるが、ガトーだけは頷いただけでピクリとも笑わない。

 この鉄面皮め。

 

「加えて、Iフィールドが有効なのは遠距離からのビーム兵器に対してのみである。

 これ自体も装甲が厚いとはいえ、ミサイルの集中砲火や、バリア内部からのビームは有効打となりうるだろう。

 よって諸君には、この機体に接近するミサイルやモビルスーツの露払いを担当してもらう」

 

 俺は一旦言葉を区切り、彼ら全員を見渡した。

 

「戦闘開始から10分で正面の戦闘宙域を突っ切ることになる。

 かなり危険な任務だが、構わないんだな?」

 

 全員が拳を突き出して「おう!」と叫んだ。

 こういう時には正直、心強い。

 

「ならば総員、機体に搭乗しろ!」

 

 俺の号令とともに、パイロットたちが散っていく。

 そして、パイロットたちとは逆に俺に近づいてくる人物がいる。

 ビグ・ザム担当の整備兵だ。

 

「何とか間に合わせましたよ。

 もう少し時間があれば、こいつを白銀に塗れたんですがねぇ」

 

 カラカラと笑う整備兵に釣られて、俺も笑う。

 

「このデカブツを塗り直すとか塗料の無駄だから止めろ」

 

 まあ正直、白銀のビグ・ザムとか連邦の兵に過呼吸起こす奴とかいそうではあるがな。

 特にオデッサに参加した奴ら。

 

「頼んでおいた物は?」

 

「それはもう滞りなく。

 正面からは見えませんが、裏側にはしっかりと固定しておきましたよ」

 

 事前に頼んでいたものは、すべて終わらせてくれたらしい。

 やはり宇宙攻撃軍の兵は、整備兵まで含めて優秀な奴らがそろっていると感じる。

 

「すまんな。今度酒保から酒でも送らせてくれ」

 

「大佐の年齢じゃ買えねぇでしょうが」

 

 笑いながら整備兵が去っていった。

 さて、俺も乗り込むとしよう。

 

 

 時間はごくわずかに巻き戻る。

 ソーラ・システムの第2射の照射が終わってすぐ、俺の号令と共にパイロットが機体に搭乗し始めた頃――。

 我々の作戦の第1段階が始まっていた。

 

 まず、左翼からありったけの衛星ミサイルが、ソーラ・システムへ向けて発射される。

 

 同時に、ドズル中将の乗艦する旗艦、グワジン級グワランを中心とするソロモン主力艦隊が右翼へと進出した。

 既に鶴翼の右翼として展開していた艦隊と合流しつつ、その先のティアンム中将率いる本隊と戦闘中のコンスコン艦隊への援軍となる……()()()()()()()()()

 ティアンム艦隊相手にじり貧となりつつあったコンスコン艦隊は、これに乗じて秩序だったまま後退、ドズル艦隊と合流する予定である。

 

 

 続けて、ソロモン正面ゲートより、モビルスーツの大部隊が発進する。

 これはソロモン正面部の乱戦地域への援軍である。

 乱戦の味方を掩護しつつ、ソロモンの右翼部分へと下がって水際防御の姿勢を見せることが目的だ。

 左翼に下がらないのは、ソーラ・システムの照射によって砲台が沈黙し、援護の砲撃が受けられないからである。

 

 そのソーラ・システムを照射された左翼では、防空のためのメガ粒子砲台はほぼ全滅している。

 全体として見ても、ソロモンの全防空砲台の3割が既に消失していた。

 そして、ソーラ・システムの直撃を受けて崩壊したゲートには、既に敵MS部隊が取りついている。

 一部部隊はソロモン内部より応戦しているが、そこにガンダムの侵入を許したこともあり、徐々に押し込まれつつあった。

 

 このタイミングである。

 俺は作戦の第2段階として、通信機に叫んだ。

 

「ビグロ部隊、発進せよ!」

 

 俺の合図とともに、まずは編成されたビグロ部隊がソロモンを飛び出していく。

 なお、ケリィ・レズナー大尉もここにいる。

 

 彼らの狙いは左翼を大きく迂回しての、ソーラ・システムへの強襲だ。

 艦船やモビルスーツでは間に合わなくとも、ビグロの推力ならば余裕で第3射までに到達できる。

 元々、2方面の囮によって成立させていたソーラ・システムの隠蔽作戦である。

 ソーラ・システムの護衛に割いている戦力はごく僅かであり、衛星ミサイルとビグロによる強襲は致命的だろう。

 

 護衛としてソロモン正面の乱戦地帯より戦力を抽出しようにも、そうはさせない。

 そのために、正面にモビルスーツ部隊の大規模な増援を出したのだ。

 そんな余裕はない。

 

 右翼にソロモン主力艦隊、左翼にビグロ部隊が展開し、連邦の部隊連携に焦りが見て取れる。

 この瞬間からが、第3段階となる。

 俺は、作戦の本番を告げた。

 

「オペレーション・トリシューラ、開始せよ!」

 

 ビグ・ザムを先頭にして、十数機のゲルググJが飛び立つ。

 まずは挨拶代わりだ。

 

 俺は大型メガ粒子砲を、前方のマゼラン級戦艦へと向ける。

 

「排除開始……」

 

 ためらいなくトリガーを引く。

 

 放たれた凄まじい出力のメガ粒子砲は、途上にあるMSやボールを飲み込みつつ、マゼランへと突き進み――その船体を消し飛ばした。

 あまりの威力に、連邦の将兵の怯えた感情が伝わってくる。

 

「総員、雑魚には目もくれるな!

 ただ一直線に、敵を食い破るぞ!」

 

 ビグ・ザムのスロットルレバーを、ゲルググJが付いてこられる限界まで押し込む。

 機体を加速させながら、味方を巻き込まないタイミングで胴体部のメガ粒子砲を乱射していく。

 

 敵をソロモンから、こちらへと引き付ける必要がある。

 できるだけ多く。できるだけ遠くへと。

 

 ビームを弾くビグ・ザムに対して、敵艦がミサイルを乱射してくる。

 迎撃しようとメガ粒子砲の照準をつける前に、ミサイルが爆発した。

 

 背後のゲルググがミサイルを狙撃したようだ。

 

「大佐には指一本触れさせはせん!」

 

 俺は一瞬だけ通信を入れた。

 

「いい仕事だ、ガトー大尉」

 

 ビームの効かないビグ・ザムを先頭にした強襲部隊は、恐ろしい勢いで敵の部隊を食い破っていく。

 作戦開始より5分が経過した現在、ソロモン正面の乱戦宙域の7割近くを既に突破していた。

 さすがに無傷とはいかず、2機のゲルググJが撃墜されたものの、その進軍速度はいまだ維持されたままだ。

 

 左方向より信号弾が光るのが確認できた。

 色が告げる内容はこうだ。

 

 "我ら、目標を遂行せり"

 

 ビグロ部隊がソーラ・システムの破壊に成功したようだ。

 

 意識を集中し、ガンダム(アムロ・レイ)の気配を探る。

 まだソロモン内部にいるようだ。

 ソロモン内部に配置した、遅延戦闘部隊が良い仕事をしてくれている。

 

 ここまで距離を離してしまえば、たとえGアーマーになろうとも、俺たちが敵主力艦隊に到達する前に追いつくことはできない。

 

 

 右翼より発進した主力艦隊は第1の囮、かつコンスコン艦隊が後退するための援護部隊である。

 左翼より発進したビグロ部隊は、ソーラ・システムを破壊しつつ、敵の意識を向ける第2の囮を務める。

 そして中央より発進した俺たち強襲部隊が、敵の中央を食い破り、敵主力艦隊に襲い掛かる『本命』を担う。

 

 これがオペレーション・トリシューラ(三叉戟)の概要である。

 シヴァ神の持つ三叉槍というのも、中々に洒落が効いているだろう。

 ビグ・ザムの非常識なまでの戦力ありきの作戦だが、だからこそ連邦の意表を見事に突くことができるといえた。

 

 と、ビグ・ザムのコンソールにデータリンクで情報が送られてくる。

 送信元はコンスコン少将の乗艦であるチベだ。

 ありがたいことに、敵の旗艦タイタンの位置情報である。

 即座に俺は、周辺のゲルググに情報を転送した。

 

「全機、敵旗艦に向かって全速前進。

 ビグ・ザムを盾にして吶喊するぞ!」

 

 幸いなことに、敵は右翼のソロモン主力艦隊が、まだ本命であると思っている。

 ソロモンの全艦隊の半分以上が集結しているため、その判断は本来ならば当然ではあるのだが……。

 

 彼らの不幸は、こちらにビグ・ザムというバケモノMAがいたことだろう。

 

 強襲部隊はその勢いのまま、敵主力艦隊の横っ腹へと食らいつく。

 それと同時に俺は信号弾を上げた。

 内容はこうである。

 "奇襲成功。ソロモン部隊は撤退を開始せよ"

 すぐにでも、ソロモンの後部からムサイたちによる撤退が始まるだろう。

 

 本隊に食らいつかれた以上、ソロモンの正面に展開した連邦の部隊も、悠長にソロモンを攻めている場合ではなくなったはずだ。

 追撃行動などとれないように、今のうちに司令系統をできる限りズタズタにしておかねばならない。

 俺はMSの撃破よりも、艦艇の撃破を優先する。

 MSの撃破は、護衛のゲルググたちの仕事である。

 そのゲルググたちも、ビグ・ザムのIフィールドを巧みに利用しつつ、次々と敵を撃破しているようだ。

 特にガトー大尉の機体の動きが良いのは、さすが『ソロモンの悪夢』といったところだろう。*2

 

 味方とともに、ビグ・ザムのメガ粒子砲をバラまきながらひたすら突き進む。

 ようやく、探していた反応があった。

 旗艦タイタン――ソロモン攻略部隊の総司令官、ティアンム中将の乗っている艦である。

 

 パイロットなら即座に補充され、まだまだ底が見えない連邦であるが、唯一補充が利かない人員がいる。

 それは優秀な将校、大部隊の指揮官だ。

 特にティアンムほどの将官となれば、代わりとなれる人材などなかなかいない。

 

 照準を合わせて、即座に大型メガ粒子砲を発射する。

 特に感慨もなく、あっけないと感じるほど簡単に、タイタンは爆散した。

 

 恨みなどは特にないが、彼に生きていられると最悪の場合、レビル将軍(タカ派のトップ)が前線に出てこない。

 奴は、とにかくザビ家を認めない。

 ギレン相手ならともかくとして、平和を望んで会談を申し出た、デギン公王との約束ですら平気で反故にした人間だ。

 奴に最後まで生きていられると、ガルマ・ザビの首相就任すら認めないだろう。

 

 ソーラ・レイで奴が消滅してくれるのならばそれはそれで構わないが、もし奴が生き残ってくるようならば俺がア・バオア・クーで討たなければならない。

 どちらにしても奴を戦場に引き出す必要がある。

 そのため、ある意味ではとばっちりで申し訳ないが、ティアンム中将には消えてもらうしかない。

 

 旗艦が撃墜され、連邦の指揮系統が完全に混乱している今が好機である。

 今のうちに、削れるだけ削っておかねばならない。

 ビグ・ザムと直掩のゲルググ隊は、時間の許す限り暴れまわった。

 

 

 そして、作戦開始より12分が経過する。

 

 そろそろだな……。

 

 レーダーにわずかな反応と、スラスターの光が見える。

 先ほどまでとは別の信号弾を上げると、その光はどんどん近づいて来た。

 ソーラ・システムを強襲し、そのまま戦場の後方を迂回してきたビグロ部隊である。

 

 通信機のスイッチを入れ、ゲルググ隊に指示を出す。

 

「お前たち、迎えが来たぞ!

 ビグロに掴まって、戦場を離脱しろ!」

 

「ですが大佐、やはり大佐おひとりでは!」

 

 ガトーから通信が入った。

 お前、作戦前に散々説明しただろうに……。

 

「お前たちがいると、ビグ・ザムの本領が発揮できん。

 大丈夫だ、3分ほど暴れたら、俺もオートパイロットにして脱出する。

 さっさと行け!」

 

「ぐ……、ア・バオア・クーでお待ちしております。

 ご武運を!」

 

「ああ、大尉も無事離脱しろよ」

 

 通信が切れる。

 

 戦場に駆け付けたビグロの腕に、ゲルググがしがみ付いてそのまま離脱していく姿はなんとなくシュールではある。

 だが、連邦にとっては、それを笑っている場合ではないだろう。

 周囲に味方がいなくなったビグ・ザムは、性質の悪さだけなら1年戦争で最強クラスである。

 これからの3分間は、地獄にも等しい3分間に違いないのだ。

 

 俺は大口径メガ粒子砲を発射しつつ、機体をゆっくりと回転させる。

 そのまま一回転すると、周辺に爆炎による歪な円が発生した。

 即席のローリングバスターライフルである。

 

 俺は機体を反転させると、敵陣の厚い部分へと向かって機体を進ませた。

 残り2分半。

 まだソロモンに夜明けは来させない。

 

 

 

 

「時間か……」

 

 戦闘開始より15分が経過し、ビグ・ザムのオーバーヒートまでの猶予は残り5分を切った。

 俺が暴れまわった結果、周辺から漂う感情は完全に恐怖一色となっている。

 ビグ・ザムに向けて応戦しようとする艦船よりも、逃げようとする艦船の方が多い有様だ。

 ビグ・ザムの戦果としては十分だろう。

 

 俺はオートパイロットを設定し、指定する空域を、ただひたすらメガ粒子砲を撒き散らしながら突き進むようにする。

 同時に、オーバーヒートを検知すれば、そのまま限界まで反応炉を動かし、自爆するようにも設定した。

 

 ギャンに続いて、またもや機体を自爆させるはめになっているが、ビグ・ザムを連邦に渡すわけにはいかない。

 機体にも、開発部にも許してもらうしかない。

 

 俺は設定を終えると、ビグ・ザムの乗降用ハッチを開く。

 そこは宇宙空間――ではない。

 ハッチの先には小型のコンテナが、ちょうどIフィールドバリアの内側に入るように設置されており、俺が出たのはそのコンテナの中である。

 事前に俺が整備兵に頼んでおいたのだ。

 

 そして、そこに横たわるのは白銀の機体。

 

「さて、とっととズラかるとしようか」

 

 俺は自身のゲルググJに乗り込み、機体を起動させた。

 

 

*1
MS撃破数5で与えられる。

*2
当然ながらまだそう呼ばれてはいない。





読んでいただきありがとうございます。

連邦が2重の囮をしてきたのなら、こちらも2重囮をせねば無作法というもの……。
な、感じの話。


ガトー大尉(とケリィ大尉)、割と活躍したのではないかと思います。
ビグ・ザムが無法すぎたので比較論だと目立ちませんけど、十分に『ソロモンの悪夢』たりえたかなと。

マツナガ大尉はそのままドズル閣下の護衛してます。

ビグロ部隊に掴まったゲルググ部隊は、そのままソロモン主力艦隊と合流して悠々と撤退していったと思います。
ビグロの推力はこういう時ムッチャ便利なイメージ。

ちなみにコンスコン少将のデータリンクは、個人的にはナイスアシストだったのではないかと思ってたり。

最後はまあ、連邦さんの悪夢ちょっと延長。
ビグ・ザムが暴れまわっているのを戦々恐々と見てたら、そこから白銀の機体が飛び出してきたので、次話SANチェックです。




【よもやま話】

前話で言及していた「とある怪獣映画」、感想欄で一人しか言及がなかったので、友人に「これがジェネレーションギャップか……」と言ってたら、「いや、そもそもゴジラ映画自体メジャーじゃないから。見ててシンゴジぐらいじゃね?」とクリティカルヒットをもらいました。
ちょっと言葉のナイフで刺してくるの止めてもらって良いすか?w

個人的にはvsビオランテ大好きなんです。
「人間が作戦で怪物に打ち勝つ」みたいな展開が。


ちなみに前話の後書きに書き忘れてましたが、ドリフターズもリスペクトしてます。
これは気付いた方多かった感じで嬉しい。
あのセリフはドズルなら絶対似合うと思っていたので、凄く言わせたかったw
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