超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けたので投稿します。

結構な難産でした。


第47話 時代が早すぎない?

 月の裏側にて、キシリア艦隊と連邦軍の艦隊との戦いが開始された。

 

 キシリア少将の率いる艦隊が敵の主力艦隊と砲撃戦に入る中、シャアの率いるザンジバル艦隊は横合いから敵陣中央へ突撃し、そのまま突破する。

 既にエルメスとブラウ・ブロ、並びにゲルググやリック・ドムからなるMS隊は出撃している。

 俺とシャアのゲルググJは、ザンジバルが敵陣を突っ切った後、状況に応じて出撃する手筈になっている。

 

 轟音と振動の中、敵陣の突破が終了した。

 こちらは4隻のうち2隻を失い、連邦も2隻沈んでいる。痛み分けだ。

 その結果として連邦軍の艦隊連携が乱れたので、キシリアの本隊が少しは楽になるだろう。

 

 こちら側でもモビルスーツ同士の戦闘が始まっている。

 

「エルメスとブラウ・ブロは?」

 

 シャアがオペレーターに尋ねる。

 

「敵艦隊を攻撃中で……。

 いや、待ってください。

 ガンダム……ガンダムと交戦に入りました」

 

 エルメスやブラウ・ブロの攻撃力は、対艦戦において最も発揮される。

 つまり、ガンダムという強力な個の相手をする場合、その攻撃力は最大には発揮できない。

 連邦の指揮官の判断というよりは、アムロ・レイの個人的な判断だろうが、正しい一手といえるだろう。

 

 だが、問題はそこだけではない。

 

「シャア、この戦闘でガンダムが出撃しているということは――」

 

「承知している。

 先日の戦いでは、ガンダムの挙動に少々違和感を覚えていたが、その不調が解消された可能性が高い。

 そう言いたいのだろう?」

 

 まあ、外部から観戦していた俺ですら気付いたんだ。

 実際に戦っていたシャアが気付かない道理はないな。

 

「ああ、おそらくだが……()()()()()()()不調だろう」

 

 ガンダムの戦いにおいて、シャアも機体反応の限界に到達していた。

 その意味が、今のシャアになら理解できるだろう。

 

「ガンダムの反応速度が上がっていると?」

 

「そう考えておいた方が、いざという時に戸惑わなくて済むだろう」

 

 原作知識の通りだとすると、パワーアップってレベルではなかった気もするけどな。

 そんなことを考えていると、オペレーターから報告が入った。

 

「エルメス、ガンダムによりビットの半数が撃墜。

 ブラウ・ブロもメガ粒子砲を2門喪失!」

 

 これは間違いなくマグネット・コーティング済みだろう。

 俺はシャアに告げた。

 

「行こう。

 あいつらだけに任せるには荷が重い」

 

「そうだな。

 シャア、エルンスト両機は出撃する。

 エルメスとブラウ・ブロには我々が到着するまで防御に徹しろと通達しろ。

 以後、艦隊の指揮は艦長に任せる」

 

 

 

 

 俺とシャアが到着した時、エルメスのビットは残り数機、ブラウ・ブロに至っては残りのメガ粒子砲が1門という、詰みの一歩手前といってもいい状況だった。

 なんとかもっているのは、ガンダムを含めた3機がニュータイプとしての共鳴現象を起こしているからだろう。

 戦いながらも互いの攻撃はほぼかわしていく。結果として、演武をしながらコミュニケーションを取っているという感覚に近いのだろう。

 ニュータイプの素質的に一歩劣っているはずのシャリア・ブルもそこに入っているのは、ララァとアムロに巻き込まれたような形だからだろう。

 

 その様子を確認してシャアが訝しんだ。

 

「ガンダムと()れているのか、あれは?」

 

「だがそのおかげで、2機が持った形だろうさ」

 

 ガンダムがララァ相手に本気の殺意を込めていれば、俺たちが到着する前にエルメスは沈んでいただろう。

 そういう意味では、敵と戯れてくれて助かったと言える。

 

 俺とシャアが同時に射撃し、ガンダムがそれを回避する。

 同時に、共鳴も収まった。

 

 アムロの思念が聞こえる。

 

"シャアにエルンストか!?"

 

 返答代わりに俺は叫ぶ。

 

「抑えさせてもらうぞ、ガンダム!」

 

 機体を全速で機動させつつ、ガンダムと交差した。

 

 とはいえ、ゲルググJとガンダムとの反応限界の差は大きい。

 機体のスペックは勝っているとはいえ、決して楽な戦いではないだろう。

 

 俺を掩護しつつ、シャアも叫ぶ。

 

「エルメスとブラウ・ブロは下がれ。

 ガンダムは私とエルンストが引き受ける」

 

 だが、エルメスもブラウ・ブロも引くつもりはないらしい。

 

「いいえ大佐、まだエルメスのビットは残っています。

 援護だけでもさせてください」

 

「ブラウ・ブロもまだメガ粒子砲は残っています。

 お供しましょう」

 

 冷静に分析しても、今のガンダムが相手だとシャアと俺の2人がかりでようやく互角になるだろうから、援護があるのは正直ありがたい。

 それぐらいガンダムの反応速度がヤバい。

 というか正直キモいな、ガンダムの動き。

 

「シムス中尉!

 ガンダムの戦闘データを取っておいてくれ!」

 

 そう言い放って、ガンダムとの交戦を続ける。

 

 マグネット・コーティング処置が施されたガンダムは異様に早い。

 速いのではなく早い。

 これまでは大きく推力を使って回避していたものが、身体を少し捻り、姿勢制御用ブースターを一瞬吹かせるだけで、こちらの攻撃をギリギリで回避していく。

 先読みして攻撃を当てようと、俺もシャアも機体の限界を考えつつも本気で戦っているのだが、それすらもガンダムの回避が間に合っている。

 回避した先に置いたはずの攻撃を、後出しのはずなのに回避している。

 一般の兵ならばわけがわからないだろうが、全力を発揮できる機体に乗ったニュータイプとはこういうものである。

 

 これでは射撃武器を当てるのは至難の業だ。

 分が悪いことには変わりがないのだが、まだマシである近接戦を主体にする。

 ガンダムはビームライフルを投げ捨てると、ビームサーベルを二刀流にして、俺とシャアの斬撃をいなしていく。

 

 しかもそこに、コア・ブースターまで乱入してきた。

 この状況で迷わず戦域に突入してこれるのは、セイラ・マスに他ならないだろう。

 シャアも彼女の存在に気付いているため、攻撃の手を緩めざるを得ない。

 

 エルメスとブラウ・ブロの援護があるから、首の皮一枚で均衡が成立している。

 もっと集中力を高めないと、連中を撃退することすらおぼつかない。

 

 そう考えて、集中力をさらに高めた。

 その瞬間だった。

 

 周辺が一瞬モノクロになったかと思った次の瞬間、エルメスを中心に強烈な力場が発生した。

 機体がまともに動かせなくなるのと同時に、意識が飲み込まれそうなほどの大きな奔流が知覚できる。

 

「な、なんだこれは!?」

 

 シャリアの絶叫が聞こえる。

 

「意識が際限なく高まっていく」

 

 シャアも似たような状況のようだ。

 

「知覚と意識が際限なく増大していく……」

 

 ララァが呆然と呟く。

 反射的に呟いたようで、自我がこもっていない。

 

"と、刻が見える"

 

"これが、ニュータイプというものの世界なの!?"

 

 アムロとセイラの声も感じられる。

 どうやら、ニュータイプ能力が高い人間ほど、より意識を引きずられているようだ。

 俺の意識が無事なのは、俺がニュータイプ能力を自己の中で定義した上で、自我を保持しようとしているからだろう。

 

 とはいえ、自意識を保つこと自体が、相当にきつい状況だ。

 

 全員の意識が混在し、巨大な渦を形成しながら溶け合っていくような感覚が、絶えず襲ってくる。

 いや、溶け合っているというのは表現が易しすぎる。

 巨大な竜巻に、自我が削り取られていくような喪失感と、削り取られた先で自我が訴える万能感が同居している。

 それでいて自身の中の力とでも言うべきものが際限なく高まり、それが意識の渦をさらに強めていく。

 

 敢えて言うとすれば……オーラ力のハイパー化に近い。

 直感が告げてくる。

 このままでは全員の機体が耐えきれずに爆発するだろう。

 

「ふっ……ざけんじゃねぇぇ!」

 

 声を絞り出して、ゲルググの操縦レバーを握りしめた。

 

 この現象の起点は、まず間違いなくエルメスのサイコミュである。

 力場がエルメスを中心としているように感じるのもあるが、ゲルググとガンダム、コア・ブースターにはサイコミュは搭載されていないし、ブラウ・ブロのサイコミュは有線での使用を前提としたものであり、暴走の起点になることはまずない。

 

 そう感じた俺は、金縛りに近いゲルググを無理矢理動かして、近くにあったエルメスのビットを掴んだ。

 エルメスはミノフスキー粒子を介した思念波の通信によって、ビットと相互に通信し、制御している。

 

 ならば――。

 

 頭に浮かべるのは、ビットからエルメスへの回路を逆走して、エルメスのサイコミュに干渉するイメージ。

 原始的なサイコミュ・ジャックである。

 サイコミュ・ジャックは本来、こちらもサイコミュを搭載した上で、暗号化したミノフスキー通信を突破しなければ不可能だ。

 だが、一番最初の無線型サイコミュ兵器であるエルメスのビット相手ならば――。

 

 掴んだ、という感覚が脳裏に走った。

 

 強引に力場の主導権をこちらに寄せる。

 すべての主導権は奪えないが構いやしない。

 

 頭痛がする。

 痛みを意志の力で強引に抑え込みながら、すべての思念を強引に、自身の機体に集めるイメージを送り込む。

 

 無茶苦茶な手法であるが、おそらくやらなければ全員が死ぬ。

 

 大丈夫。

 やれるはずだ。

 俺がカミーユ・ビダンに匹敵する(宇宙世紀最高の)ニュータイプであるなら、やれるはずだ。

 

 呑まれそうになる意識の中で、力の奔流を強引にこちらへと引きずり込む。

 膨大な力の流れをゲルググの腕、それが掴んでいるビームマシンガンに集中――。

 機体の各所からスパークが上がるが、それどころではない。

 

 ゲルググにビームマシンガンを構えさせる。

 狙いを付ける必要はない。

 というか、つけている余裕なんてない。

 味方の艦隊の方に向けて発射しないようにするので精いっぱいだ。

 

 その力を可能な限り溜めた後、放出するイメージとともに俺は静かに引き金を引いた。

 

 ビームマシンガンから、その仕様上、有り得ない量のビームが放出される。

 ゲルググから発したオーラによって、ビームマシンガン自体も覆われているが、それでも想定をはるかに超える出力に、銃身が数秒で融解し爆発する。

 ゲルググの腕もついでにもげてしまったが、機体が爆散しなかっただけでも良しとするしかない。

 

 数秒しかできなかったわけだが、それでも周囲の力場の高まりは停止し、徐々に弱まっていく。

 なんとか、最悪の状況からは脱したと言っていいだろう。

 

 俺がやったことは単純だ。

 端的に言ってしまえば、ZZガンダムのハイメガキャノン・フルパワーの真似である。

 

 ただ、俺はそれを、エルメスのサイコミュをジャックした上で、サイコミュの搭載されていない自身の機体で行った。

 自分で言っておいてなんだが、頭がおかしい所業である。

 

 やれと言われても、二度とできる気がしない。

 

「きゃあ!」

 

 通信機越しに悲鳴が上がった。

 声からしてララァのエルメスか。

 

 視線を向けると、エルメスから煙が上がっている。

 おそらくは、サイコミュの制御装置がオーバーロードした結果、破損したのだろう。

 

 俺の機体も、コンソール系が完全にスパークしている。

 何とか帰還はできるだろうが、戦闘行動は無理だ。

 

 とはいえ、巻き込まれた機体はすべて、似たり寄ったりのようである。

 ガンダムとコア・ブースターを含めて。

 

 俺は頭痛をこらえつつ、通信機のスイッチを入れた。

 

「ララァ少尉、脱出してシャアのゲルググに乗れ!

 ブラウ・ブロ! エルメスを曳航できるか?」

 

 エルメスのサイコミュ制御が破損した以上、機体管制をサイコミュ頼みにしていたエルメスは自力では動くことができない。

 ブラウ・ブロの推力で引っ張っていく以外に回収する方法がないのだ。

 

「なんとか、やってみます」

 

 ブラウ・ブロがエルメスの回収に入った後で、俺はガンダムに思念を送った。

 

"互いに戦闘不能だろう。

 早く帰れ"

 

 こんな状況で戦闘を続けられたらたまらない。

 アムロ本人も助けられたことぐらいは分かっている。

 思念が飛んできた。

 

"分かった。

 助けてくれたこと、ありがとう"

 

 ここで礼を言える辺り、テム・レイは息子をしっかり教育してきたんだなという感じがするな。

 見えないだろうが、俺はガンダムに向けて「あっちにいけ」と手を振った。

 

"お前を助けたわけじゃないから気にするな。

 次、会ったときに手加減なんて期待するなよ"

 

"分かったよ。

 また会おう、エルンスト"

 

 おぼつかない機動で、ガンダムがゆっくりと離れていく。

 なんとか命拾いできたな。

 

 シャアはシャアで、セイラ・マスと感応していたようだ。

 コア・ブースターとシャアのゲルググがゆっくりと離れていく。

 

 俺はシャアに通信を入れる。

 

「シャア、ララァを連れて戻れるか?」

 

「なんとかな。

 しかしこれ以上の戦闘は無理だ。

 速やかに撤退しよう」

 

 シャアの機体が一番マシであるが、それでも機体の各部からスパークが上がっていた。

 これでは新兵の乗るジム相手でも中々きついだろう。

 さっさと退散するにこしたことはない。

 

 しかし、せっかくのドリームチームが予期せぬ事故でボロボロだなぁ。

 

 

 

 

「何が起こったというのです?」

 

 キシリア少将が尋ねた。

 何とかザンジバルに帰還した俺たちは、そのままキシリアの本隊に合流する形で戦場を離脱していた。

 キシリアの本隊も相応に損害が出ており、ギレンに対するポーズ以上に手痛いことになったようだ。

 敵の艦隊の数が予想以上に多かったな。

 

 回収したエルメスを調査して戻ってきたフラナガン博士が、グワジンのブリッジでキシリアに説明する。

 その場に俺たちも同席していた。

 

「おそらくは、強いニュータイプが敵味方入り乱れた際に、エルメスのサイコミュが周囲を巻き込んでオーバーフロウを起こしたものと思われます。

 非常に強いニュータイプが複数名、敵味方に分かれて戦ったデータがありませんでしたので、断言はできませんが」

 

 まあ、俺にシャア、ララァにアムロ、そこから一歩引いたとしてもシャリアにセイラ。

 6人のニュータイプが、最初期型のサイコミュがある戦場で相対したがゆえの、不幸な事故だったということなのだろう。

 そりゃ、状況を再現できんわ。

 

「ガンダムのパイロットがニュータイプとして圧倒的ということですか」

 

 キシリアがフラナガンに問う。

 

「はい。おそらくはエルンスト大佐とも比肩するかと……」

 

 比較対象がララァではなくて俺なのか。

 

 フラナガン機関としては、ララァを物差しにすべきではないかと思う。

 まあ、この時期のアムロは極まっているので、比較としては実際間違ってはいないので、わざわざ訂正する必要はない。

 

「そこまでですか……。

 エルメスとブラウ・ブロの修理はどうか?」

 

「難しいですね。

 サイコミュの制御装置が完全に焼き付いています。

 特にエルメスは機体を新造した方が早いでしょう」

 

 バイオセンサーですらない初期型のサイコミュである。

 そうなるのも当然というか、よくあんな現象を引き起こすまで持ったなと正直感心するレベルだ。

 

 しかし、そうなるとエルメスは完全にスクラップだな。

 その情報を受けて、シャアがキシリアに言った。

 

「ならば、ララァ少尉をア・バオア・クーに回すのは難しいでしょう。

 少尉はニュータイプ能力こそ高いものの、パイロットとしての技量は訓練からまだ1ヶ月ほどの新兵にすぎません」

 

「そのようだな……」

 

 キシリアは数秒黙考すると――。

 

「ララァ少尉はサイド3へと後送することにしよう。

 シャリア・ブル大尉も同様だ。

 乗れる機体が無いのではいかんともしがたい」

 

 ああ、シャリア・ブルもア・バオア・クー不参加なのね。

 まあ、モビルスーツの操縦経験自体は現状だと浅いわけで、それは仕方のないことだろう。

 木星から戻ってきたのもごく最近なわけだからな。

 

 シャアが続けてキシリアに聞く。

 

「キシリア閣下、私が乗れる機体はあるでしょうか?」

 

 キシリアがそれを受けて悩み始めた。

 

「ゲルググJですら貴様には役不足となったからな……。

 エルンスト大佐に回す機体がもう1機あればよかったのだが……」

 

 俺の機体、一体何なんだろうか?

 まあ、それはそれとして――。

 

「一つよろしいでしょうかキシリア閣下?」

 

「言ってみよ、エルンスト大佐」

 

 意見具申の許可をもらったので、言ってしまおう。

 

「シャアの機体ですが、一つ心当たりが」

 

「ほう?」

 

「エルメスの開発スタッフに聞きました。

 エルメスの開発が本格的になったために、ブラウ・ブロの流れを汲む開発中の機体が1機、ア・バオア・クーに移動になったと……」

 

 これは本当に聞いた話である。

 開発スタッフや整備士と仲良くなっておくと、思わぬところで情報が聞けるのがありがたい。

 しかも、エルメスの開発スタッフには、元々ジオングの開発スタッフであった人間も結構いる。

 なので、彼らとの雑談を介して、俺がジオングの存在を知っていることは不自然ではない。

 

「ジオングか……確かに今のシャア大佐になら扱えるだろう」

 

 その名前を聞いて、シャアが聞き返した。

 

「ジオング、ですか?」

 

「開発中ではあるが、9割がた完成していたはずだ。

 ゲルググよりは貴様の力になろう」

 

 ん?

 原作よりちょっとだけ開発進んでる?

 確か原作だと8割だったような記憶があるんだが。

 

 まあ、あのガンダムと戦うことを考えると、それでも若干心もとないぐらいではあるし、性能が上がる分には別に構わないだろう。

 

 

 

 ……時期的にそろそろだろうか?

 俺が何となく思っていると、グワジンのオペレーターが報告を上げてきた。

 

「キシリア様、ア・バオア・クーのギレン総帥より特命であります。

 連邦軍主力艦隊はア・バオア・クーに侵攻しつつあり、ソーラ・レイのルート上のジオン艦隊はすべて退避。

 作戦タイム、2105」

 

「ソーラ・レイを……30分後に使うというのか!?」

 

 キシリア少将が驚いているな。

 まあ、数日前に突貫工事で仕上げたものを急遽使うというのは、確かに急ぎ過ぎだろう。

 ここまで急ぐということは、まあ十中八九、デギン公王を囮に主力を消滅させる算段だと思う。

 

「ソーラ・レイ……あ、あれを」

 

 シャアもさすがに引いている。

 まあ、自分たちの故郷であるコロニーを巨大な砲身にするという発想が、まず狂気の沙汰であることは間違いない。

 知識として既に知っている俺ですら「マジでやりやがったよ」って感覚である。

 

 そう考えると、本当にシーマ様がお労しい展開だな。

 

「急ぎ過ぎるな……ギレンめ、何を企むのか」

 

 キシリア少将が訝しんでいる。

 まあ、狙いは想像がついているが、さすがにそれをこのタイミングでキシリアに言うわけにもいかないだろう。

 言ったところで、何をしようとまず間に合わないしなぁ。

 

 これでおそらくデギン公王は、座乗艦であるグレート・デギン諸共消滅する。

 レビルが巻き込まれるかは正直運であるが、個人的には共に消え去ってくれるとありがたい。

 あのおっさん、多分ジオン軍人相手の中では、俺を一番殺したがっていると思うほどに殺意が高い上に、その殺意の湿度が高い。

 まあ、仮に生き残っていても、ア・バオア・クーで俺が最優先で始末したい人間になるだけなのだが、戦場で奴を探すのはかなりの手間である。

 なので、諸共に焼かれて欲しいというのが正直な感想だ。

 

 

 一応の可能性として、デギンがガルマを連れていた場合は最悪の展開になるが、それはまずないだろう。

 

 まず、デギンはガルマに和平の話を漏らしていない。

 キシリア曰く、本人から現段階での和平を否定された場合、デギン自身が立ち直れないからだ。

 

 そしてもう一つ、和平会談の場にガルマを連れていった場合、まず間違いなくガルマが人質として機能してしまう。

 ガルマの身の安全のために和平を模索し始めたデギン公王にとって、それは本末転倒だ。

 

 最後に、ガルマを連れ出そうとすると、ドズル中将が黙っていないだろう。

 完全にデギン公王とダルシア・バハロ首相の2人だけの独断による和平案を、ドズル中将が認めるはずがない。

 ダルシア・バハロ首相の議会工作すらタイミング的にまだ終わっていない。

 形式としては、完全に公王の乱心と捉えられても不思議ではないレベルの独断専行だ。

 絶対にドズル閣下は認めない。

 なのでドズル閣下にバレないように行動するためにも、デギン公王はこの件においてはガルマに接触できない。

 

 よって、俺はガルマがグレート・デギンに乗っている可能性はないと判断する。

 

 

 デギン公王本人に俺としては思うところはないのであるが、実際に暗殺したのかはさて置くとしても、ジオン・ダイクンの死を利用して成り上がり、ザビ家独裁体制を構築したのは事実である。

 その点においては、完全にギレンの共犯なのだ。

 

 シャアの留飲を下げるためにも、派手に散ってもらえるとありがたい。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ニュータイプ共鳴空間多重事故。

無線型サイコミュ最初期のエルメスがいて、これだけニュータイプ集まればワンチャン起こるかなと。
イメージはトッドに引きずられて(?)ハイパーになりかけたショウ(作品が違う)

「これが良い夢でたまるかよ!」

ア・バオア・クー戦にエルメスを出さないギミックとしては割と初期に考えていたネタでした。
シャリア・ブルさんは巻き込まれ事故です(何)

ただ、主人公の対応策が完全に頭おかしいです。
なんでお前、個人でこれやってんの?




ジオングさんは完成度がちょっと上がった。
多分、主人公とマ・クベ中将のせい。
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