超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
結局、ギレンの指示によって放たれたソーラ・レイは、連邦の主力艦隊の約半数を消し飛ばした。
戦力を損耗した連邦艦隊は、直前まで視野に入れていたであろうサイド3への直接侵攻という選択肢を捨てて、ア・バオア・クー攻めを最終決定としたようだ。
そして、連邦艦隊と合流しようとしていたと思しき、グレート・デギンの識別信号も消失した。
デギンを若干哀れに思わなくもないが、実際、このタイミングの和平交渉は最悪であった以上、擁護もできない。
和平が成立したとしても、連邦が兵を退くはずがない。
レビル将軍なら、そのまま大義名分を得たとばかりに、解放軍を名乗ってサイド3に進軍してもおかしくはなかったと思う。
ア・バオア・クーへと移動中のザンジバルのブリッジで、俺とシャアは通信機から流れてくるギレン総帥の演説を冷ややかに聞いていた。
ララァとシャリア、それとシムス中尉は既にサイド3へと出発しており、この場にはいない。
「我が忠勇なるジオン軍兵士たちよ。
今や地球連邦軍艦隊の半数が、我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。
この輝きこそ我らジオンの正義の証である」
正義の証って言われても、
その上、こっちは国民を強制疎開させて、その故郷を兵器として運用しているので、ソーラ・レイの威力云々を抜きにしても、どこが正義なんだろうか。
ギレンの演説はさらに続く。
「決定的打撃を受けた地球連邦軍に、いかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。
あえて言おう、カスであると。
それら軟弱の集団が、このア・バオア・クーを抜くことはできないと、私は断言する」
その形骸が、数だけでこっちの数倍いそうなのがきついんだよなぁ。
とはいえ、俺やシャアとしても、この戦いにてギレン・ザビには退場してもらわないといけないわけで、その意味では連邦軍には踏ん張ってもらいたい。
普通に連邦軍に負けて敗死という可能性もなくはないだろうが、不確定要素が大きすぎる。
それよりはキシリアに期待した方が良い。
デギンが死んだ以上、キシリアは確実にギレンを暗殺しようとするだろう。
そのチャンスが訪れる時――つまり、激戦の末に勝利が見えて、ギレンが気を抜く――その程度には拮抗した戦いになってもらう必要がある。
その上で、俺にとっては大きな問題がひとつある。
どうも、ソーラ・レイでレビルが死んでいないっぽい。
確証はないのだが、ずっと俺にまとわりついている、じめっとした殺意が消えていない。
俺を何としても倒さなくてはならないという意思。
そんな傍迷惑な決意を秘めた連邦軍将校など、消去法で1人しかいない。
他人任せにしていないで、自分の手でケリを付けろと言われているような気がする。
よって、ア・バオア・クーでの俺の予定は、大幅に修正されることになった。
レビルの乗艦である連邦宇宙軍旗艦フェーベを探し出して、それを撃沈するのが俺の最優先任務になる。
キシリアがギレンを暗殺するまで、高見の見物ができると思っていたんだがなぁ。
ギレンの演説が終わった後、大量のミノフスキー粒子の散布命令が出されて、通信はほぼ壊滅状態になった。
戦闘開始寸前だからということもあるだろうが、ギレンからすればレビルが死んだか分からない以上、対抗演説でデギンの暗殺を暴露されることを警戒したのだろう。
実際、俺の感覚ではレビルが生きているので、その選択は正解だ。
「俺はレビルを探して撃沈することを最優先する。
シャアはどうする?」
俺は小声でシャアに聞いた。
「そうだな……。
私としても、この戦いでジオンが完勝してしまうのは面白くない。
程々に手を抜くとしても……個人的には、ガンダムと決着をつけたい」
この前、あんな目に遭ったばかりだというのに――。
こいつ本当にぶれないな。
ただ原作と違って、ララァが死んでいない以上、シャアにはアムロ個人に対する妄執が生まれる要素はない。
いや、部下を数名殺されてはいるんだったか?
でもそれは、戦争だから、で飲み込める範囲だろう。
だからこいつのこだわりは、「あいつに勝ちたい」という純粋な対抗心なんだとは思う。
アムロにとっては傍迷惑だろうが……。
俺は嘆息した。
「分かった。
俺が先にガンダムと接触した場合は、お前が来るまで足止めしておく。
お前が来たら、お前に任せて俺はレビルを探す。
これでいいな?」
俺がガンダムに遭遇した場合、足止めすることにはそれなりに意味がある。
ガンダム単体でも結構な戦力であり、放置しておくと友軍の被害が増えるという面もあるにはある。
だがそれ以上に、もしガンダムがア・バオア・クーに取りついて内部に侵入した場合、シャアのジオングでは、サイズ差のせいで後が追えない可能性があるという切実な理由である。
「助かる。
君とガンダムが戦闘を始めれば、私も君たちの位置が感じられるはずだ」
シャアとしては、この戦いの趨勢が決まるまでは特にやることがないため、ガンダムと遊んでいればいいわけだ。
気楽すぎて尻を蹴っ飛ばしたくなる。
一発ぐらいならララァも許してくれるかもしれない。
連邦軍とジオン軍との戦端が開かれる中、俺たちは戦場となっていないEフィールドからア・バオア・クーへと入航する。
ちなみに戦場はSフィールドとNフィールドであり、ア・バオア・クーの両面で同時に展開されている。
俺とシャアは案内役の兵に先導され、格納庫へと移動した。
まずはジオングの格納庫に案内されたようだ。
俺の眼前に、知識としては知ってはいるが、実際には初見となるおなじみのあの機体がある。
とはいえ、俺の知識とは細部が若干違っている。
足がないことには変わりがないが、腰部スカートの後方に、機動補助のためのバーニアが追加されている。
うん?
俺の知る
ひょっとしたら、これは高機動型ジオング(未完成)というものなのでは?
「90%? 冗談じゃありません。現状でジオングの性能は100%発揮できます!」
シャアに説明していた、開発担当スタッフが力強く断言する。
「足の代わりにバーニアが付いているようだが、運用はモビルアーマー的なものを想定しているのか?」
横から俺が口を出す。
この機体は本当に、モビルスーツなのかモビルアーマーなのか、判断に困る。
「その通りです!
バーニアとスラスターによって、足によるAMBAC以上の機動性が出せるんです!
足なんて飾りですよ! 偉い人にはそれが分からんのですよ!」
若干違うが、名言が飛び出したなぁ。
シャアも性能には納得したようだ。
「とりあえず、私に合わせてのサイコミュの調整だな。
どれぐらい時間がかかる?」
シャアが尋ねた。
ジオングに対しては満更でもないようだ。
「30分あれば最低限の調整なら……」
「20分だ。戦況は待ってくれん。
エルンスト、私は調整に入る。後で会おう」
シャアはそう言うと、ジオングのコックピットへと飛んだ。
俺の機体は隣の区画にあるらしいので、俺も隣のブロックへと移動する。
隣のブロックの格納庫へと移動すると――。
「よく来たな大佐」
見知った顔が俺を待っていた。
俺は即座に敬礼する。
「マ・クベ中将。
……お待たせしてしまったようで申し訳ありません」
「構わんよ。勝手に待っていたのは私だ。
それより見たまえ、これが貴様の新しい機体だ」
中将が指し示す方向へと俺は目を向ける。
そこには白銀色に塗装された、シャープなフォルムのザク系列の機体があった。
マ・クベ中将が意気揚々と解説をする。
「MS-11 アクト・ザク。
連邦系のフィールド・モーターシステムを採用し、関節部に
残念ながら、突撃機動軍には使いこなせるパイロットは皆無であった。
だが、貴様なら使いこなせよう」
やっぱりこれがアクト・ザクか。
たしかにマグネット・コーティングが施されているこの機体なら、俺の全力の操縦に耐えられるだろう。
んーー?
何か、少し違和感がある。
ブレードアンテナが装備されているのはいいとして、なんか、俺の知るアクト・ザクと形状が違うような……。
見覚えがある形の盾も装備しているし、胴体部分の形状にも何か見覚えがある。
「マ・クベ中将、この機体はひょっとして……」
マ・クベ中将はにやりと笑みを浮かべた。
「気付いたかね。この機体はただのアクト・ザクではない。
反応炉も改良型に差し替えて、バーニアも増設してある。
頭部ユニットの換装はさすがに間に合わなかったがね」
うわぁ……。
強いて言うならばアクト・ザク改。
いや、アクト・ザク・ガンダマイズド・カスタム。
……長いな、アクト・ザク・カスタムでいいか。
頭部ユニットの換装が間に合わなかったって言ってたけど、仮に間に合っていたら、それはもうアクト・ザクではなくてガンダムなのではないだろうか?
しかし、ガンダムの技術を用いてアクト・ザクを改良した機体ってすごいの来ちゃったなあ。
これ、テストパイロットの人とか、匙を投げたのではないだろうか。
ともあれ、先ほどの説明通りならばジェネレーターが改良されているので、高機動戦闘を行いながらビーム兵器の使用も可能ということだろう。
ならば、あのマグネット・コーティングが施されたガンダムとも、互角以上に戦えるはずである。
「時間がない。
大佐、早速だが機体の調整に取りかかりたまえ」
わざわざ機体を用意してくれたマ・クベ中将に、俺は感謝の気持ちとともに再度敬礼した。
「ハッ!
エルンスト・ヴァルツァー大佐、アクト・ザク・カスタムを確かに受領いたしました。
機体の調整を終わらせ次第、出撃します!」
「なるほど。
これは悪くないな」
アクト・ザク・カスタムに搭乗した俺は、軽く機体の腕や足を振り回してみる。
俺の反応にちゃんと追随してくれるし、各部のパラメーターを確認しても機体への負荷がまったくかかっていない。
マグネット・コーティングってやっぱりすげぇな。
出力も推力も原形機のアクト・ザクよりも上がっている。
プロペラントの容量が同じ分、最大稼働時間は短くなっているはずだが、マグネット・コーティング処理が施されている以上、従来のように大仰な回避行動は必要ない。
最小限の回避にとどめれば、従来よりも戦闘可能時間はむしろ伸びるはずだ。
武装はゲルググJで使っていたビームマシンガンを携帯。
マドロックと似た形状のシールドの裏には、これまたマドロックで使っていたのと同タイプのビーム・ライフルが、予備として備え付けられている。
腰横には左右に2本のビーム・サーベル、腰の後ろのマウントラックにはアクト・ザク専用装備の4連装マシンガンであるブルパップ・ガン。
過剰とも言える重武装だ。
ひたすら敵を落としてこいという無言の圧力に思える。
ともあれ、機体の調子は万全だ。
ア・バオア・クーのMS部隊も連邦の部隊と交戦に入ったようだし、シャアのサイコミュの微調整が終わるまでの間、しっかりと戦線を支えることにしよう。
「各部微調整終了。
いつでも発進可能だ」
俺の報告に対し、管制から通信が入る。
「エルンスト大佐。
現在、Sフィールドにて新たな敵艦隊を発見しました。
ドロワのMS部隊と連携し、これを迎撃されたし」
Sフィールドか。
宇宙攻撃軍所属のドロワが配備されているということは、俺が知っているパイロットも多い。
連携もしやすいだろう。
ただ、レビルらしき気配はNフィールドの方向から感じるため、途中で移動する必要がある。
幸いと言っていいのか、ホワイトベースらしき気配はSフィールド側から感じるため、Sフィールドでガンダムの相手をしつつ、シャアが来たら後を任せて、俺はNフィールドに移動すればいい。
「了解した。
エルンスト・ヴァルツァー、アクト・ザク・カスタム、発進する!」
読んでいただきありがとうございます。
アクト・ザクとジオングのそれぞれちょっと強化バージョンです。
高機動型ジオングってマイナー過ぎましたかね。
ギレンの野望の新作出てくれないかなぁ。
ただ、高機動型ジオングをそのまま出してしまうと強すぎるので、未完成品としました。
さすがに開発が加速したとはいえ、エルメスに人員も予算も取られてしまうと完成させるのは無理ゲーでしょう。
ちなみにですが、ジオングの未完成品というのは足がないということではないというのは、複数の媒体で言及されているようで、パーフェクトジオングというのは、パーフェクトガンダムのような機体改修案の1つであったと私は認識しています。
足の部分に思いっきりスラスターついてるので、最初からあの仕様だったんだと思っています。
「あれで正解なんだ」ってエリク・ブランケ少佐も言っていましたし(何)
主人公の1年戦争における最終機体はアクト・ザクとなりました。
ガルバルディαとギリギリまで迷っていたのですが、特性を考えるとこちらの方が合っているかなと。
ただ、さすがにマドロック鹵獲(ガンダムのデータ確保)しておいて、原形機のまま出すのも不自然かなと思い、ガンダマイズド・カスタムという、後付け強化案によるごり押しとなりました。
クロークドカスタムに本当はしたかった(無理)
多分、もう薬物使ってもマレット君だと乗れないと思います。
レビルは本来ならソーラ・レイで蒸発させるつもりだったんですが、アムロとシャアが戦うとなると、主人公にとってのラスボス不在となってしまうために、どうしようか迷った末にしぶとく生き延びることになりました。
多分、部隊を直前まで分散して配備していたとかで直撃受けなかったんだと思います。
そうなると、連邦艦隊のソーラ・レイのダメージも若干軽くなってるイメージががが。
【追記】
ソーラ・システムとソーラ・レイは別物の兵器というご指摘を受けましたが、ガンダム作中において、この2つは同じ類の兵器扱いとなっております。
詳細につきましては↓の活動報告にて。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=336640&uid=14458
私は基本的に原作TV版における設定を最優先としておりますので、ご了承ください。