超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
普段より文量が多くなってしまいましたが、分割できそうな箇所がなかったのでこのまま行きます。
海兵隊をタクシーにするというある意味禁じ手によって、無事にサイド3に辿り着いた俺は、アクト・ザクを海兵隊に預けたまま公王庁へと向かった。
海兵隊所有のザンジバル級機動巡洋艦、リリーマルレーンはサイド3の宙域で待機するとのことだ。
俺の機体を預かっている以上、海兵隊に「その宙域から去れ」といった、無理な要求をする命知らずはいないだろう。
いたとすれば、その喧嘩は俺に売られたものになるからな。
ちなみにサイド3宙域は現在、ア・バオア・クーを離脱した艦艇の半分以上がひしめき合っている、超過密宙域と化している。
きちんと再編成しない限りはまともに動けないだろう。
各々が好き勝手に動くと重大事故につながりかねない。
ただ、これでもそれなりの数の艦が行方不明となっている。
何隻かは撃沈されたのであろうが、主な原因は多分違う。
というか、そのうちの数隻の艦のことを知っているので、ここに来ていない理由も大体察しがつく。
この場にいない艦の数隻は親衛隊や、熱狂的なギレンのシンパたちの艦だ。
そいつらの艦が、ギレン総帥のいないジオン公国に正当性はない、と言わんばかりに姿をくらましていた。
お前らが無事に離脱できたのは、キシリア少将が撤退判断を下してくれたおかげでもあるんだがなぁ。
おそらく原作では、こいつらの大半が宇宙の藻屑になっていたはずだ。
こういう奴らが集まって、いずれデラーズ・フリートになっていくのだろうか。
公王庁に到着した俺は足早に中に入っていく。
警備の兵がノーチェックで通してくれるところを見るに、話は通っているのだろう。
入ってしばらく廊下を進む。
会議室の前にある広間に、見知った顔が並んでいた。
コンスコン少将にマ・クベ中将、シャアはまあ当然として、ダルシア・バハロ首相にランバ・ラル
ラル中佐は元々、開戦時の戦果によって中佐に昇進していたが、ブリティッシュ作戦への従事の拒否によって、大尉に降格の上に予備役に編入されていたのだ。
それを考えると、ようやく階級が元に戻った形だ。
ガルマの護衛をすることを考えると、佐官の方が都合が良かったのだろう。
それはそうと、ガルマが既に既婚者であり、本人も中佐に昇進したのだからそろそろ年貢の納め時ではないだろうか。
しかし、ここに俺が合流するとなると、キシリア派、ドズル派、ガルマ派の重鎮が思いっきりそろった形になるな。
ダルシア首相は一応ガルマ派に換算して構わないだろう。
丁度2人ずついる形でバランスが良い。
案の定と言うべきか、ギレン派の筆頭であるエギーユ・デラーズ大佐はこの場にいなかった。
いたらいたで、俺が一発殴る権利ぐらいはあるだろうから、いても別に構わなかったのではあるが。
「エルンスト君、よく無事で戻ってくれた!」
俺の姿を確認したコンスコン少将が俺に駆け寄ってくる。
本当にこの人は、俺に対して『気のいいおじさん』として接してくれるんだよな。
だがまあ一応とはいえ、他の派閥の人間の目がある。
礼儀と形式はきちんとしておかないといけない。
俺は敬礼の姿勢を取って、帰参の報告をする。
「エルンスト・ヴァルツァー大佐。
ア・バオア・クー撤退部隊の護衛任務を完了し、帰還いたしました」
この命令はキシリア少将から出されたものだったからか、マ・クベ中将が俺にねぎらいの言葉をかける。
「ご苦労であった大佐」
「ありがとうございます。
突撃機動軍の海兵隊にも助けられました」
コンスコン
リアクションが完全に、親戚の子供にチンピラが近づいたってノリなんだよ……。
「か、海兵隊!?
あんなならず者たちに?」
俺は苦笑しつつ答える。
「コンスコン閣下、言動は荒っぽいですが彼らは頼れる戦友でしたよ。
私は
ラル中佐とマ・クベ中将が「誰のことか分かった」みたいな顔をしている。
本当にあいつらは全方位に迷惑かけていたんだなぁ。
同派閥のマ・クベ中将にすら迷惑をかけていたのは、本当にどうかと思う。
まあそれはともかく――。
「それで、今はどのような状況ですか?」
俺の質問にマ・クベ中将が答えた。
「キシリア様、ドズル閣下、ガルマ様による会議の最中だ。
我々は会議の結論が出るまで待機している」
会議に悠長な時間をかけていると思われるかもしれないが、実際に時間的な猶予はそれなりにあると推測できる。
敗北したとはいえ、ア・バオア・クーの戦いは互いの戦力のほとんどを投入する激戦であった。
こちらの被害も大きいが、連邦軍の被害も馬鹿にならない。
こちらの主戦力がゲルググとリック・ドム主体であった以上、モビルスーツの損害は原作よりかなり大きいだろう。
まずはその戦力を、どうにかして埋めなくてはならない。
しかもソロモンの戦いではティアンム中将、ア・バオア・クーの戦いではレビルと、宇宙軍を統括できる人材を短期間で2名も失っている――まあその主犯は俺なのであるが。
連邦軍はア・バオア・クーの最低限の機能を回復させて、残存戦力を再編成するだけでも、少なく見積もって10日は要するだろう。
サイド3やグラナダを攻める戦力を集めるとなると、半月でも厳しいのではないだろうか。
そんなことを考えていると、マ・クベ中将へコンスコン少将が言葉をかけた。
「マ・クベ中将殿。
貴殿の所感で構わないので聞かせてほしいのだが、我々はまだ戦えると思うか?」
「私としては難しいと考えています、コンスコン少将。
ア・バオア・クーが落ちた今、グラナダ単体ではサイド3の防壁として機能しない」
まあ、それはそうだ。
グラナダとア・バオア・クーによる防衛線がサイド3への防波堤だった以上、連邦軍はグラナダを相手にする必要がもうない。
グラナダを無視してサイド3を攻めればいいだけだ。
そして、本土決戦となると、大量の市民の犠牲が出る可能性が大きい。
そうなると、強制的に疎開をさせないとならないのではあるが、悲しいことにジオンにとっては疎開先がない。
中立のサイド6に送ろうにも受け入れ容量にも輸送力にも限度がある。
そもそも住民の強制疎開などガルマが許すはずがないだろう。
そのまま、軍事的な話をし始めた2人から、俺はそっと離れた。
混ざっても良かったのではあるが、これは実質的なキシリア閥とドズル閥のナンバー2同士の会談でもある。
邪魔しない方が良いだろう。
俺は今度は、シャアとラル中佐の所へと近づいた。
「やあ、大変だったな」
何の気なしに、笑いながら言ってくるシャアに対し、軽いローキックをお見舞いする。
本当にこいつは……。
「何をするのかね」
「やかましいわ。お前がマ・クベ中将のアサルムに乗ってたことは分かってるんだよ。
ゲルググでもいいから手伝ってくれれば、もう少し楽だったんだ」
あの場にシャアがいれば、海兵隊の出番すら必要なかったぐらいには楽ができただろうに。
「残念ながら、アサルムにモビルスーツが残ってなかったのだよ」
シャアは爽やかに笑いながら言う。
本当に腹立つなこいつ。
こちらが完全に怒らないラインを見極めてきている辺り、世界一くだらないニュータイプ能力の活用法をしているんじゃないだろうな。
まあ、これがこの世界のシャアだ。
原作での、ガルマを殺してしまった結果、お労しいことになったシャアよりは数倍マシだろう。
俺は話を切り替えた。
ある意味こちらの方が本題だ。
「で、ガンダムのパイロットとは、満足のいく結果になったのか?」
シャアは本当に満足がいったという表情で返した。
「ああ、機体は相討ちになってしまったが、その後で言葉を交わした。
……アルテイシアともきちんと話せたよ」
ああ、剣で斬り合わなかったのか。
ならこの世界のシャアは額に傷もないわけか。
本当に、ガルマが死ななかったことがきっかけで、別人のようなスタンスで人生送ってるよなこいつ。
「そうか、ならばいい」
アムロは、まあ無事だろう。
腕に傷を負っていた満身創痍でも原作では生還できたのだ。
シャアと斬り合っていない以上、原作において『ニュータイプ能力が最も高まっていた時期』であるアムロが死ぬとは考えられない。*1
シャアが妹とも和解できた以上、これ以上の結果は望めないだろう。
セイラ・マスについては俺は本当に関わることがなかったんだけど。
ホワイトベース組の今後の運命は、彼ら自身と地球連邦次第だろう。
俺が彼らにできることは、少なくとも
何か彼らにプラスとなるようなことをしてやった覚えがない?
そう言われると否定できない。
ガンダムの腕を切り落としたり、消耗させてジャブローの場所を発見する囮に使ったり、オデッサでエンジンをぶち抜いたり……思い返してみると、あいつらにろくなことしてないな俺。
そんなことを考えていると、横からラル中佐が割り込んできた。
「今、アルテイシアと言いましたかな、シャア大佐?」
……そういえば、原作と違ってラル中佐、アルテイシアに――というかホワイトベース自体に一切関わってなかったな。
思いっきりシャアの失言である。
どうするんだこいつ?
横目でシャアを見てみるが、奴は余裕の微笑を崩していない。
ラル中佐にバレるのはそれはそれで構わない、ということなのだろう。
たしかにラル中佐ならば、ダイクンの遺児であるシャアに対しては無条件の味方となる。
そもそも幼少時のシャアとセイラのサイド3脱出も、この人の奮闘の結果だったはずだ。
色々と迂闊だったリノには申し訳ないが、彼とラル中佐とではそもそもの信頼度が違うということだろう。*2
シャアがラル中佐に返す。
「それについては後で説明しよう。
少し待っていただけるかな、ラル中佐?」
公王庁の内部でする会話でもないからな。
ラル中佐もそれは分かっているのだろう。
あっさりと引き下がった。
「何か理由があるということだな。
分かった。
だが、必ず説明してもらうぞ」
多分だが、ラル中佐はシャアのことを『ダイクン派の重臣の息子』あたりだと勘違いしているな。
いやまあ、10数年前に自分が命懸けでサイド3を脱出させた、ジオン・ダイクンの息子がジオン公国でエースパイロットの大佐をやっているとか、普通は想像つかないだろうし仕方がない。
それはそうと、ごめんなさいラル中佐。
俺も知ってて黙っているので、そこの赤いのとある意味同罪なんですよ。
公私問わず、散々お世話になっているのに、本当に申し訳ない。
シャアとの約束なので仕方ないんです。
そう心の中で謝っていると、会議室の扉が開いていく。
どうやら会議が終わったようだ。
開いた扉から、ザビ家の面々が出てくるが、それぞれの表情が対照的だ。
やり遂げたという顔のキシリアに、悔しそうな表情のドズル、悲しそうな顔のガルマと様々だ。
会議が荒れに荒れたというのが一目瞭然だ。
当たり前ではあるが、ゼナやイセリナは参加していない。
彼女たちはザビ家の奥方ではあっても、ザビ家当人ではないからね。
ザビ家の3人の中から、キシリア少将が一歩前に出た。
おや、年長者で階級が上のドズル中将ではなく、キシリア少将が通達するのか。
まあ、ドズル中将は現在、名目上謹慎中ではあるから、そういうこともあるのだろう。
「今より、戦死されたギレン総帥にかわり、ザビ家の総意による総帥代行としての指令を下す」
俺を含めた、ザビ家以外の全員が背筋を正した。
「まずダルシア首相にマ・クベ中将。
お前たちは協力し、それぞれのルートを最大限に生かして、連邦に終戦協定の締結を打診せよ」
やはり、これ以上の継戦は不可能という結論に達したのか。
マ・クベ中将やコンスコン少将も同じ見解であったため、さほど驚きはない。
ダルシア首相がまず了承の意を示した。
「分かりました」
まあ、この人はデギン公王の指示で、元から和平ルートの模索に当たっていた人だ。
この指示はこれまでの行動の追認でしかないだろう。
マ・クベ中将に同じ命が下るのも納得できる。
中将はこの面子の中で一番の地球通であり、南極条約締結の交渉をまとめたという実績もある。
しかも、この世界において彼は、オデッサで核恫喝をしていないので連邦のヘイトも溜まっていない上に、エルラン中将という強力なパイプが維持されたままだ。
正直、彼以上の適任はいないと思う。
「かしこまりました。
条件はどのような?」
マ・クベ中将が聞く。
キシリア少将は、それに間髪入れずに返答した。
「私の首まではかけてよろしい」
「なっ!?」
マ・クベ中将が絶句する。
いや、既に知っていたであろうザビ家を除いた、俺たち全員が絶句している。
正直俺も混乱している。
このキシリアは偽物だと、頭の中の山岡さんが言っている。
誰だよ山岡さん。
ドズル中将が、恐る恐るといった様子で、キシリアに口を出した。
「な、なあ、キシリアよ。
戦争の責任というのならばやはり俺が……」
キシリア少将はそれをピシャリと一喝する。
「ドズル兄には終戦を受け入れられぬ兵たちをまとめる仕事があります!
業腹ではありますが、私が旗頭となってもギレンに付いていた連中は納得しないでしょう。
何度も申し上げたはずです」
ドズル中将はうめくことしかできない。
本当に誰だこいつ?
原作で兵を置き去りにして、秘密裏にア・バオア・クーから1人撤退しようとした人間と、とてもじゃないが同一人物と思えない。
ガルマとドズルが生きているからなのだろうか?
キシリア少将は続ける。
「ドズル中将には、終戦を受け入れられそうにない兵たちを招集し、アクシズに向かっていただく。
コンスコン少将はその補佐をしてもらおう」
コンスコン少将は黙って敬礼をした。
彼も混乱しているだろうが、ドズル中将の補佐は彼の本来の仕事だ。
文句はないのだろう。
「アクシズ?
アステロイドベルトにある小惑星のあれか?」
シャアが呟く。
そうだな。お前にとっては本来なら物凄く因縁の地になるところだよ。
今のお前がそうなることは、絶対なさそうだけどな。
キシリア少将の話はまだ続く。
「また、終戦交渉において、ガルマ・ザビの身の安全は最優先とする。
ガルマに手を出せば、ジオンの国民は文字通り最後の1人になるまで戦い抜くやもしれぬ、そう脅しつけてやるがいい」
終戦を受け入れられないジオン軍の大半が連邦軍の手が届かないアクシズに退避するということは、「ガルマ・ザビに手を出せば、いずれ戻って来てそいつらが牙をむくぞ」という脅しにもなる。
巧い手ではあるが、自身が犠牲になるという覚悟がない限りは打てない手だな。
『連邦の留飲を「キシリア・ザビの首」で、ある程度下げさせる』という前提がないと、連邦も受け入れることが難しいだろう。
しかし不思議な光景である。
この中で一番冷静沈着という言葉が似合うであろう、マ・クベ中将がいまだうろたえている。
「し、しかし、なにもキシリア様ご自身を人身御供にされなくとも……」
そう言うマ・クベ中将に、キシリアは首を振った。
「私はギレン・ザビを射殺した」
衝撃の告白に、俺とザビ家以外の空気が凍った。
既に知らされていたザビ家の2人は辛そうな顔をして聞いている。
父を殺した兄、その兄を殺したキシリア。
そのキシリアが、既に自らに始末をつけるつもりでいるという事実。
ドズル中将もガルマも、そんな事情を簡単に飲み干せるほど器用な人間ではない。
俺は知識として既に知っていることではあったが、正直、ここで告白してしまうとは思っていなかったので、そのことで驚いている。
「ギレンはソーラ・レイを使い、公王デギン・ザビもろとも連邦軍を消滅させた。
奴は父殺しの男だ。それを誅したことに、私は何の後悔も持ち合わせてはおらぬ」
キシリアの独白は続いていく。
「ただ、それによってア・バオア・クーでの敗戦の一因となったことへの責任は負わねばならん。
何よりも、私にも『兄殺しの女』という罪がある以上、私にこれからのジオンを率いることはできん。
なるほど、と俺は腑に落ちた。
キシリア本人は既に詰んでいたのだ。
ア・バオア・クーの司令室でギレン・ザビを射殺したことは、司令室にいた多くの兵たちの目に触れている。
多くの将兵が脱出した現状では、誰がその事実を知っているのかすらも、もう把握できないだろう。
サスロ・ザビを暗殺した*3時は、その罪をジンバ・ラルにうまくかぶせられたが、今回においてはそうはいかない。
ザビ家の生き残りがキシリアしかいなかったとしたら、話は別であったのだろうが、ガルマとドズルがいる以上、キシリアの政治生命は既に死んでいる。
そして、既に死んでいるからこそ、自らの生命でさえもジオンのために有効活用しなくてはならないと考えたのか。
恐ろしい人である。
謀略と暗躍の人物ではあったが、その覚悟だけは敬意に値すると俺は思う。
「ガルマには国内の動揺を抑えてもらう。
ラル中佐にはその護衛を任せる」
ガルマは渋々といった感じで頷き、ラル中佐は淡々と受けた。
「……分かりました」
「承りましょう」
そして、キシリア少将の目がこちらへと向けられた。
俺の番である。
「で、エルンスト大佐であるが……」
俺は淡々と答える。
正直、この戦争が始まった時点から、最も可能性が高い選択肢として考えていたことだ。
「ドズル閣下と共に、アクシズに行く以外にないでしょうね」
必要があったこととはいえ、俺は1年戦争で暴れ過ぎた。
正確な数は確認していないが、艦艇撃破数もMS撃破数もジオンの中でぶっちぎりの1位だ。
下手をすれば、2位と比較してもトリプルスコアがあり得る――さすがにクアドラプルスコアはないだろうが。
そこの赤い奴がもう少し頑張ってくれていれば、そこまで突出しなかったのかもしれない。
だが、こいつはこいつでV作戦の調査という隠密作戦の責任者をずっとやってきたからなぁ。
ルウム戦役からサイド7での戦いまで、まともな戦果をあげられなかったのは地味に大きい。
終戦協定において、連邦はまず間違いなく俺の身柄を要求してくるだろう。
自分で言うのもなんだが、歩く大量破壊兵器みたいなものだ。
俺が連邦側の立場なら、確実にそうする。
とはいえ、素直に俺の身柄を引き渡してしまうと、今度は国民の怒りが爆発しかねない。
己惚れているつもりはないが、ギレンが散々俺を宣材に使ったせいで、俺はジオン国内での知名度はかなり高い。*4
俺が年齢的には子どもであることを考えると、俺を連邦に売り渡すことをジオン国民はおそらく承服しないだろう。
連邦とジオン国民の双方の落としどころとしては、交渉が開始した時点で『勝手にアクシズに行ってしまいました』とするのが一番後腐れがない。
連邦も終戦交渉にあたって、ジオン国民をさらに激怒させるリスクを踏んでまでそこを追及する余裕はないだろう。
俺がアクシズに渡るとなると、家族をサイド3に残していくことになってしまうのであるが――。
ガルマが援助は続けてくれるだろうし、これまでの俺の給金の大半を、金塊に変えてガルマへと渡してある。
最初はマザーに渡しておこうと思っていたのだが、受け取ってくれないので仕方ない。
兄弟姉妹が高校を――希望すれば大学まででも、卒業するには十分な資金のはずである。
連邦が孤児院にちょっかいをかけることについても、考えなくてもいいだろう。
まず、ラル中佐がそれを許さない。
ジオン軍の過半がアクシズに渡ったとしても、原作に比較すればかなりの戦力がジオンに残っている。
連邦軍の一部であろうが、無法を働ける余地はない。
というか、『無法を働いたら、いずれ帰ってきたアクシズが何をするか分からないぞ』というのに、俺が加味されて交渉材料となるのだろう。
連邦側の不満も、キシリアを戦争犯罪人として裁くことで、ある程度抑えることができる。
キシリア少将、ひょっとしたらそこまで考えてのことなのだろうか。
ドズル中将は、自分が生きて落ち延びねばならないということの必要性は理解していても、感情を納得させるのに苦労しているのだろう。
渋面を作りながら、こちらに尋ねてくる。
「しかし、よいのかエルンスト?
お前1人ならば……」
おっと、それは無しだよドズル閣下。
「たしかに、私1人ならば姿をくらますこともできるでしょう。
ですが――」
俺は笑みを浮かべつつも、しっかりとドズル閣下の眼を見て答える。
「ドズル閣下もガルマも、ここからが正念場というときに、私だけ一抜けたはあまりにも格好がつきません。
孤児院の兄弟たちにも、情けない姿は見せたくありません。
お供させてください」
正直、味方を放り出して、俺1人だけ名前を変えて潜伏は、本当に孤児院の兄弟たちに顔向けができない。
この世界が今後どうなっていくにせよ、「最後までできることはちゃんとやったよ」と言える、誇れる兄や弟でいたいのだ。
ドズル閣下もその辺りは分かっているのか、渋々ながらも頷いてくれた。
「……分かった」
これで、こちらの話はまとまった。
キシリア少将は次に、シャアへと向き直る。
「シャア、貴様はどうする?
私としては、貴様もアクシズに赴くのが最善かと考えているが」
まあそれはそうだろうな。
さすがに『
こいつ、マッド・アングラーでフリーハンドを与えられている間に、ホワイトベースにちょっかいをかけつつも、連邦の小~中規模な基地を荒らしに荒らしまわっていたのだ。
10月頭ぐらいから本格的に対MS戦に参入したくせに、たしか150機以上のスコアがある。*5
宇宙に上がってからも暴れ過ぎだ。
さすがに地球圏に居続けるのは難しいだろう。
連邦が
「そのつもりではあります……。
ですが……」
ん?
何かやり残したこととか、あっただろうか?
「キシリア閣下がここまで覚悟をお見せになった以上、私も
ん?
え?
おい。
ちょっと待て。
焦る俺の心情をよそに、シャアはゆっくりとその仮面を外した。
バイザーもはぎ取って、その素顔を曝け出す。
「私はシャア・アズナブルではありません。
私の本当の名はキャスバル・レム・ダイクン。
ジオン・ズム・ダイクンの息子です」
周辺の空気が完全に固まった。
そりゃ、そうなるよ。
読んでいただきありがとうございます。
生き残ったザビ家のオールスター会議。
ついでにコンスコンとマ・クベというナンバー2同士の会話。
この2人が会話しているのは中々想像がつかない。
ついでにキシリアのオンステージ。
原作でのキシリアの所業は「他にもうザビ家がいない」という前提なら無理矢理飲み込むことができたけど、今作の状況ではあのハゲ以外にもキシリアについていけない連中はいっぱいいて、それをキシリアも自覚してる。
まあ、マ・クベが生きている上に、エルランっていう巨大すぎるパイプが残っているので、原作よりも終戦交渉ははるかに楽でしょう。
ジオンにも兵力が残っている以上、連邦も無茶ぶりはあまりしたくない。
グローブ事件も起こりようがないかと。
(まあ元々、グローブ事件については私はパラレル世界の出来事派なのですけど、それは置いといても)
そして艦隊行方不明。
ア・バオア・クーではギレン派の艦隊もいっぱい脱出しているので、ハゲはそいつらまとめてすたこらさっさ。
残されたザビ家の面々はこんなに苦労してるのによぉw
こんなのでも、本来の歴史ではア・バオア・クーで散っていたはずのギレン狂信派をまとめて吸収しているので、0083時点だとデラーズ・フリートは原作よりも規模が大きい。
「貴様ら(主人公)の頑張りすぎだ!」って別世界線の誰かが言ってる。
主人公の進路確定。
それなりに予想されておられた方も多いでしょうがアクシズ行きです。
というか、他に選択肢がないよねって感じ。
まあ大丈夫。
3年もすれば一度顔見せに戻ってくる。
そこに便利なタクシーがおるじゃろ?
そして最後に爆弾投下。
本当にこいつのオリチャーはよお!
今作において、シャアはザビ家を誰1人として殺していない。
復讐対象がすべて勝手に自滅してくれたので、正体明かしても特に問題ないとオリチャー発動。
対外的にはどう考えても『父親の名を冠した国のために、名を隠してまで殉じようとした忠義の戦士』(真実を知っている主人公が凄い表情で見ている)
まあ多分、あとで主人公にシャイニングウィザードされる。