超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。




第55話 「行ってきます」

 

 やるべきことがすべて決まった以上、ジオンの行動は早かった。

 

 俺は解散した後、まずは最優先事項であると、シャアにパロ・スペシャルを仕掛けておいた。

 最初はシャイニング・ウィザードを決めてやろうかと思ったが、後でガルマと一緒にキャスバルとして写真を撮るという予定が入ってしまったので、顔面だけは勘弁してやった。

 しばらくモビルスーツの操縦ができないぐらいにはダメージを受けるがいい。

 

 ドズル中将とコンスコン少将は、サイド3に集結している残存ジオン艦隊の再編成に入った。

 今のところの概算であるが、おそらくジオン兵力の4割程度がアクシズに赴任することを希望することになりそうだ。

 俺やシャアのような、サイド3に居続けるのが難しい人間は別としても、連邦に頭を下げるのは嫌だった人員が4割もいるのはさすがジオンと言うべきだろうか。

 また、半分ほどは終戦を受け入れ、共和国体制に戻るであろうジオンの復興へと従事することを希望している。

 終戦となってガルマが呼びかければ、敢えて地上に残ったという物好きな兵たちの中にも、引き上げてくる奴も出るだろう。

 

 ただ、1割ほどの兵が徹底抗戦を主張し、サイド3を離れ始めたのは少し気にはなる。

 それほどギレンのシンパが多かったということなのではあろう。

 こいつらが、将来的にカラバになるような反連邦レジスタンス組織へと合流してくれるのならまだいいのだが、実際は結構な割合がデラーズ・フリートに合流することになるだろう。

 3年後がどうなっているのか分からないな。

 

 

 キシリア少将はグラナダの撤収準備を進めており、マ・クベ中将とダルシア首相はそれぞれの人脈から終戦交渉の準備に多忙である。

 

 既に停戦命令は出されており、ジオンと連邦の戦闘自体は、表向き終結している。

 たまにジオンに恨み骨髄の一部の連邦軍部隊が、復讐とばかりに攻撃を仕掛けてくることもある。

 そういう時は、一度停戦命令が出ていることを告知し、それでも止まらない場合は容赦なく反撃する方針を、軍全体として取っている。

 証拠となる記録を残しておけば、多少なりとも終戦協定の援護射撃になるだろうという算段だ。

 

 さすがにすべてそのままとはいかないだろうが、ジオニックやツィマッドは会社組織全体の半分程度の売却で済むかもしれない。

 その辺りはマ・クベ中将とダルシア首相の手腕に期待といったところだろう。

 

 グラナダの撤収についてだが、キシリアの首を連邦に引き渡すという条件に、狂信的なキシリア派がごねにごねたようだ。

 キシリア本人が説得にあたっていたため、反乱を起こすような事態にまでは至らなかったのだが、グラナダ特戦隊をはじめとしたいくつかの部隊が消息を絶ったそうだ。

 その中にはマレット・サンギーヌといったキシリアの狂信者だけではなく、局地戦戦技研究特別部隊(マッチモニード)や屍食鬼隊といった、戦争犯罪者となるのがほぼ確定な連中も含まれているらしい。

 

 ずっと月にいたマレットはともかく、他はなんで生きてるんだよと思わなくもない。

 おそらくだがオデッサの撤退戦以降、俺が戦況の内実を変えまくったので、こいつらが死亡するような展開が起こらなかったのだろう。

 

 『コロニーの落ちた地で…』の争点となるはずだった、キャリフォルニアベースのアスタロスは俺とガルマが焼却したしな。

 というか、マッチモニードも屍食鬼隊も、俺の目の届くところでは妙に大人しかったのだ。

 オデッサの撤退戦の折とかのタイミングで原作通りに、「敵前逃亡は処刑」とかやろうとしていたなら問答無用で処断できていたのだが……。

 連中も「俺ならそれをやる」と警戒していたということなのだろうか。

 逆に言うと、俺がいないところでは割と好き勝手していた様子は記録からは見て取れた。

  

 そんなわけで、突撃機動軍の問題児どもはこぞって宇宙に拡散してしまった。

 トップのキシリアの言うことですら聞かないあたり、最高に質の悪いクソガキどもという感じがする――俺の方が年下だが。

 

 幸いと言うべきか、キシリア傘下で最も有名であろう部隊、キマイラ隊こと特別編成大隊は終戦を受け入れてくれた。

 巨大プラント船であるミナレットはそのままアクシズ部隊に合流し、一緒にアクシズに向かうようだ。

 人員については大半がジオン本国、というかガルマ・ザビの下に身を寄せる意向であるらしい。

 キシリアが、ガルマを頼むとでも言ったのかもしれない。

 ミナレットに搭載されているかもしれない『ザビ家の復讐装置』については、出航後、ドズル中将と一緒にゆっくりと対処すればいいだろう。

 

 

 『終戦交渉を始めようとしていたら、離反した残存兵力がアクシズに勝手に行ってしまった』という建前を通すためには、終戦交渉の第1回目までにはアクシズ赴任艦隊は出航している必要がある。

 そのため、ジオン本国では官民問わず、慌ただしい情勢が続いている。

 官についてはドズル中将とコンスコン少将が大忙しであることは既に述べたが、実は民――ジオン国内の一般世論も非常に慌ただしい。

 

 キャスバル・レム・ダイクンがガルマ・ザビを正式にジオンの後継者として認めた。

 

 世間はそのニュースでもちきりである。

 本来ならば、単なる悪質なゴシップとしか受け取られないだろうが、ガルマとキャスバルが笑顔で握手をする写真と、その写真がキャスバル本人であると断定するランバ・ラル中佐の証言がセットになってしまえば話は別だ。

 ザビ派閥内の穏健派とダイクン派が手を取り合った結果、ザビ派閥内のタカ派というかギレン派の勢力がすっかりと衰えてしまった。

 まあ一番の求心力であったギレン・ザビが死亡しているのも大きいのだろう。

 

 そんなこともあって、敗戦前とは思えないほど、市井の雰囲気は明るい。

 

 たまにガルマファンクラブとキャスバルファンクラブなるものがぶつかっているらしいが、そんなものは知らん。*1

 

 

 なお、ジオン本国とアクシズは、秘密裏にだが定期的に、物資の補給を兼ねた連絡船をやり取りする手筈になっている。

 直接にやり取りするわけにはいかないので、デブリ地帯に中継地点をひそかに築き、そこでやり取りをする形らしい。

 そうなると、アクシズの環境自体も原作と比べてかなり良くなることを期待してもいいのかもしれない。

 

 

 アクシズ出向艦隊が編成されるまでの1週間――。

 

 俺は手伝おうとしたのだが、ドズル中将につまみ出されてしまった。

 いいから孤児院の家族と過ごしてこい、とのことだ。

 コンスコン少将もうんうん頷いていたため、俺はこの1週間、孤児院でゆっくり過ごすことにした。

 

 兄弟姉妹たちの遊び相手となり、勉強を教え、ともに食事をとり、マザーと他愛もない話に興じて――、特に意味がない1週間を過ごす。

 この無為な時間が、今後の人生の中で俺を支える1週間となってくれるのだろうと思えた。

 

 そして1週間が経ち、アクシズ艦隊が出航する日がやってきた。

 俺はジオンの軍服に袖を通し、最低限の荷物が入っただけのブリーフケースを手に取った。

 必要な物は事前に、すべてグワランに送られている。

 

 そう、アクシズに向かう俺が乗る船は、ドズル中将の座乗艦であるグワジン級のグワランである。

 俺は別にそこらのムサイでも、なんなら海兵隊のリリーマルレーンでも別に構わなかったのだが、コンスコン少将が頑として譲らなかった。*2

 まあ年齢を考えると、ミネバの遊び相手になれそうな人間が俺しかいないし、そう考えるとグワランに搭乗した方が便利と言えば便利である。

 

「では、行ってまいります」

 

 そう言って、マザーへと頭を下げる。

 交易を通じて、たまにビデオメッセージをやりとりする約束もしている。

 なんなら3年ぐらいで一度戻ってくるつもりである。

 今生の別れとならない以上は、これぐらいあっさりしていた方がいいだろう。

 

 と思ってはいたのだが――。

 

 マザーは黙って俺に近寄ると、俺を抱きしめてこう言った。

 かすかに手が震えているのが感じられる。

 

「身体には気を付けてね。

 ――行ってらっしゃい」

 

 ――これは参った。

 色々な感情が俺の中で渦を巻いて、何と表現していいのか分からない。

 表情は何とか保てたものの、自分の目から、一筋の涙がこぼれ落ちるのを感じる。

 

 ただ、自分の中で整理できない感情の中から、一番はっきりと感じられるものがある。

 その感情――感謝を言葉に乗せて、俺は答えた。

 

「行ってきます――()()()

 

 

 

 そして、俺にとっての1年戦争という舞台は幕を閉じた。

 

 

*1
掛け算の順序? あーあー聞こえなーい。

*2
「名誉が回復されたとはいえ、あんなチンピラどもと関わってエルンスト君が不良になってしまったらどうするんだ」と供述しており――。




読んでいただきありがとうございます。
また、投稿開始から1年戦争終戦までという長期間、拙作にお付き合いくださり、本当に感謝しております。


あっさり目ですが1年戦争編最終話となりました。
やるべきことを前話までで、大体終わらせてしまっていたがゆえの弊害ですね。

まあ、あっさり0083編に入るんですがね(余韻台無し)
ジオンがどうなったとかは次話で語れればいいなぁと。


実母とかそんなもんどうでもいいんですよ。
エルンストにとっての母親は1人しかいねぇんだ、的な〆。
あまり感情描写しすぎると蛇足になりそうだなぁと悩みながら、これぐらいが自分の限界でした。

しかし義理とはいえ、基本的に母親ガチャが失敗する運命の宇宙世紀ガンダムにおいて、こいつ実は中々の当たりを引いていたのでは?

多分、一番マシなのがシーブックで、後は大体ハズレですよね?
個人的に一番ひでぇなと思ってるのがアムロの母親……いやウッソも大概だったわ。
息子への愛情がある分、カミーユの方がまだマシでしょう(なお末路)
ハサウェイに関してはノーコメントというか、むしろミライさんの方がお労しい。



0083編は本編の戦闘にほとんど絡む予定が今のところありませんので、Zへの準備期間といった感じで、こちらもあっさり目に進んでいくことになるのではないかと思います。
さすがに戦闘が皆無になるとは思っていませんが、3年しか経っていないのに『白銀』が暴れたら連邦軍が過呼吸起こしちゃう(キースとか気絶しそうだし、バスクは憤死しそう)



今後の投稿についてですが、とにかく1年戦争を終わらせようと頑張ってきましたので、多少、投下の間隔が開くことになるかもしれません。
(Z編のラストとかは考えているけど、それまでの道中が完全ノープランのため、どれだけ早く思いつけるかにかかっていますw)
申し訳ありませんが、ご容赦ください。


よろしければ、今後とも本作をよろしくお願いいたします。
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