超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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基本的にジ・オリジン本編に異物が混入しただけで、大筋ではあまり変化ないのも読んでくれる人が飽きるでしょうから、ささっと行きたいところです。



第4話 シャアとガルマをぶつける。腐った意味じゃないぞ

 ここはサイド3のガーディアン・バンチ。

 ジオン自治共和国国防軍士官学校。

 

 入学式より1ヶ月が経った。

 この士官学校は、連邦軍にとって人質(ガルマ)の鳥籠という側面はあれど、ドズル校長の言う「本当の軍人を鍛え上げる」という方針に嘘はないらしく、訓練内容やカリキュラムも基本的にはしっかりしていて不満はない。

 俺の身体が身体なだけに、多少ぬるいと感じる部分はあるが、同期の面々は大抵が疲労困憊で立ってるのがやっとという状況も多々あり、うまく人間の限界を見極めてしごいている方針のようだ。

 

 俺の知る限り、ジ・オリジンで描写された士官学校生活と大差ない状況が続いている。

 シャアはわざとなのか無自覚なのかガルマを煽り、それにガルマが対抗しようと躍起になる例の構図である。

 

 俺?

 

 俺については、まあ、うん。

 はなはだ不本意ではあるが『士官学校のアンタッチャブル(バグ枠)』という評価で落ち着いてしまったらしい。

 

 最初のころは突っかかってくる、挑発的な同期も割といた。

 「特例推薦だ? 下駄を履かされたガキだろう」とか「ザビ家に可愛がられてるだけだろ」

 といった、言葉にしない悪意も、思念として薄く飛んできていた。

 

 で、そういうのに限って、持久走やら小テストやら、分かりやすい場面で勝負を挑んでくるのだが――

 

 持久走で世界記録スレスレのタイムで走ったり*1、物理学の授業で講師から「何か意見を言ってみろ」と言われて、そのまま最先端の論文に関する談議で講師と熱中したり――これは授業ほっぽり出した講師が悪いと思う――とかやっていたら、いつの間にか誰も突っかかってこなくなっていた。

 

 幸い、学友関係の構築はそれほど問題なく、それなりに知己を増やせてはいるので、彼らに聞いたところ、

「特別推薦を受けるには人間を辞めなきゃならんらしい」とか、

「ジオンの作り出した人間兵器の試作機」とか、

「奴の肉体こそが真のニュータイプ」とか、

 散々な言われようをした挙句、

「あいつは別枠」という見方で固定されたらしい。

 

 ニュータイプ(肉体)とか筋肉言語は止めろ。

 若干真実にかすっているから笑うに笑えん。

 

 まあ、そういった印象が強すぎて、孤児院出身であることに誰も触れないのは幸いと言って良いのだろうか。

 孤児院出身ということを卑下するつもりも全くないが、かといって変に同情を向けられても鬱陶しいだけだろうし。

 

 成績と言えば、本来の歴史ではシャアが首席だったとは思うのだが、シャアも俺を見ていて「気にしない方が良い」という決断をしたようで、現状、同期としての最低限の付き合い以外には接触はない。

 

 そういうわけで、肉体の潜在能力に物を言わせて体力と学科面で首位を独走しそうな勢いの俺であるが、一番の得意科目は射撃である。

 

 元々、ヒイロ・ユイも父親(アディン・ロウ)譲りの射撃の才能を持っていたので、俺も訓練を十分に積みさえすれば、静止している的など外すことはまずない。

 

 的に当たることも楽しいと言えば楽しいのだが、的と自分の間に何も無いことから、精神を集中できる良いリフレッシュタイムになっている。

 どうやら、俺は射撃そのものが結構好きなのかもしれない。

 ひょっとしたら、弓道をやっている奴もこういう感覚になるのだろうか?

 余分な雑念や雑音が消えていく感覚は悪くない。

 

 

 原作との違いがあるとすれば、ガルマの取り巻き連中が割と()()()()()ことだろうか。

 まあ、これはガルマが暇があれば俺を構うため、取り巻き連中がイキるタイミングを逃しているんだと思う。

「ガルマさんはなぁ」とか持ち上げようにも、真横にそのガルマの成績をぶっちぎっている俺がいるんじゃ、言いにくいことこの上ないだろう。

 

 なので、「お前ガルマさんにもっと気を使えよ(忖度して手を抜け)」ぐらい言ってくるとは思っていたのだが、ギレン・ドズル連名の推薦という盛り盛りのステータスに、それが悪手だと理解できる程度の分別はあったらしい。

 権力って便利だとつくづく思う。

 

 ちなみに俺の寮室はガルマの隣室である。

 ルームメイトは可もなく不可もない程度の普通の学生だ。当たり障りのない程度の付き合いが構築できている。

 シャアと親友になっていない現状では、ガルマが俺と同室を希望しないはずがないので、同室にならなかったのは、おそらくドズル校長のインターセプトだろうと予想はつく。

 

 まあ、あの態度を見てたら学業に集中できなくなることを危惧されても仕方あるまい。

 とはいえ、隣室ではあるので、基本的に学業の予習復習とかにはよく付き合っている形である。

 

 

 ああ、ガルマが万有引力定数の解答に詰まってシャアが助け舟を出し、ガルマが文句を言いに行くというイベントは無事起きた。

 

 せっかくガルマが挙手してんだから、俺も挙手してガルマの見せ場を奪うのもあれだと思って自重したら、やっぱり計算で詰まったのだ。

 予習で一緒に一回解いたじゃないかその問題。

 

 その後の展開では――俺は少し離れて観察していたのだが――、掴みかかった取巻きを眼力で恐慌状態まで慄かせていたので、シャアにもニュータイプの素養は間違いなくあるのだろう。

 ガンダムファイターじゃあるまいし、殺気だけで人間をあそこまで震え上がらせることなどできるはずがないのだ。

 微量な思念波を至近距離で無意識にたたき込んだように見える。

 

 とはいえ現状は『素養』止まりだ。

 開花するにはジオングのようなサイコミュ兵器に搭乗するか、それともララァ・スンの死か、あるいはそれ以前に戦いの中で自然に開花するのか、それとも予想に反して一切覚醒しないまま終わるのか。

 それは、シャア次第だろう。

 

 

 そういうわけで、何気にシャアの1位を阻止するという快挙を達成しつつ、2年が過ぎて行く。

 学科はともに全教科評価Aだったのだが、実技(射撃)の成績でわずかに差をつけることになったらしい。

 体力に難があるガルマは順当に3位だった。

 

 たまにある休暇には孤児院に帰省したり、ドズル校長に頼み込んで特別訓練を実施してもらったりと、有意義に過ごしている。

 

 特に、特別訓練で教官として出張ってきたランバ・ラル大尉と面識ができたことは正直嬉しい誤算だった。

 初対面の時、こちらの年齢に顔が引きつっていたのは仕方ない。

 これでも、自薦から推薦をもぎ取った形なので勘弁してもらいたい。

 ドズル校長の人脈から実現した講義と訓練だったが、ゲリラ戦や特殊工作員としての基本はしっかり学ばせてもらうことができたと言えるだろう。

 

 そして、そんな戦争兵器(ヒイロ・ユイ)として日々完成していく俺であるが、孤児院には帰るたび、マザーは笑って迎えてくれる。

 兄弟姉妹たちは、ザビ家の庇護のもと、無事に教育も受けられているようで、初等学校に通い始める者も出てきた。

 

 できるならば、全員を高等学校卒業ぐらい(手に職をつけて食っていける)まで勉強させてやりたいものだ。

 

 

 そして運命の重装行軍訓練がやってくる。

 のだが、これも基本的に俺は大筋に関与しない。

 

 ジ・オリジンでは、流れとしては僅差で首位のシャアと2位のガルマがおり、降雨によるビバーク中にガルマがシャアを出し抜こうとして滑落、シャアがそれを助け2人は親友になる、という流れだ。

 

 シャアとガルマが親友になるのを阻止しても、俺には良いことなど何もないだろう。

 2人の友人関係がマイナスに作用するのは、北米にホワイトベースが降下した時だけだ。

 そう判断したため、俺は『自身の評価は下げずに、事態を静観する』ための手っ取り早い策というか、早い話が力技を取ることにした。

 

 彼らのアクシデントが感知できないほどの差をつけて、ぶっちぎり1位でゴールすれば良いだけの話である。

 

 別にシャアが2位でガルマが3位でも話の流れは変わらないし、俺が異様に先行したところで、悲しいかなもう学友の誰も驚かない。

 

 驚いて「こいつ本当に人間か?」みたいな表情で見てくるのは、各チェックポイントにいる軍人さんたちだけだ。

 すまんな。

 もう少し成長すれば、単独、しかもモビルスーツも無しで、敵の補給基地から輸送機の強奪ぐらい軽くできるようになるんだこのボディは*2

 なんならミサイルの自爆だって止めてみせる。*3

 

 妙な考えをしながら、フィジカルに物を言わせて、異様な早さでゴールし、後続を待つ。

 

 一応、ガルマとシャアの行方不明が判明次第、すぐさま動けるように準備だけは整えておく。

 普通に考えて、2位以降にシャアとガルマがいないのは明らかに異常事態だからね。

 

 正直な話、ガルマにとって現状『対等な友人』がいない。

 学友はみな自分を遠目に見ているか、あるいはザビ家の末弟である自分におもねろうとするいわば『格下』しかいない。

 だから、ガルマには己の弱さを吐露できる相手というものが存在しないのだ。

 

 俺は?と思うかもしれないが、俺はガルマにとっては『バグ枠』かつ『保護(弟?)枠』という特殊な立ち位置に収まっているため、『ザビ家の男』であろうとするガルマの葛藤は癒せない。

 外ならぬガルマ自身が、俺に弱音を打ち明けようとしない。

 相談されてもいないのに、強引に悩みに介入してくる奴など、鬱陶しいことこの上ないだろう。

 まあ、仮に打ち明けられても、この世界では孤児院出身である俺には、話を聞いて相槌を打つ以上のことなどできないだろうがね。

 

 

 そして待機すること2時間と少し、2人の不在が判明した瞬間、ゴール地点より飛び出して2人の()()()()()()()に向かって駆け出す。

 事前に意識を集中させていれば、2人の現在地、とりわけ骨折して冷静でいられないガルマの気配は容易に感じ取ることができる。

 ニュータイプ能力の有効活用である。

 

 無事合流すると予想した通り、ガルマはシャアに肩を貸してもらい、歩いてきていた。

 

 だがせっかく合流したのに、俺がガルマの荷物を持とうとしたら断られてしまった。

 いわく、「荷物を預けてゴールしても落伍した扱いになってしまう」とのこと。

 

 足を骨折していて落伍とか気にしている場合でもないとか、そもそもシャアに肩を貸してもらっている時点で今更ではと思うのだが、変な方向に意地が固まってしまっているのだろう。

 骨折してるのに30キロの荷物とか、悪化したらどうするんだと思うが、頑として譲る気配がない。

 

 

 仕方ないので来た道を再び戻り、ドズル校長に彼らの現在位置と状況を報告するだけにとどめたが、「最後までゴールするから手を出すな」との伝言を伝えた際のドズル校長の顔は少し哀れだった。

 

 そうして共にゴールしたガルマとシャアは無事親友となり、ガルマはシャアの同室に引っ越すことになった。

 

 そして俺もその隣室に引っ越すことになった。

 ……なんで?

 

*1
これでも割と自重した

*2
真面目な話、ガンダムWにおいて、ヒイロにとっては輸送機は基本、敵基地から奪うものである

*3
新機動戦記ガンダムW 第8話『トレーズ暗殺』で本当にやった。




読んでいただきありがとうございます。

ヒイロがバケモノという事実陳列罪。
作中で「このパイロットは人間じゃない」とか言われてたのは忘れていない。

あと正直、ガルマの言う『ザビ家の男』像って、『ドズルの勇猛さ+ギレンの知略+キシリアの策謀+前線でも活躍』みたいなものを足して、しかも人数で割っていないフワフワ感が個人的にします。
せめて目指す方向性絞ろうぜ。

とりあえず書き溜めておいたストックはここまで。
一応構想はあるので、なるべく早く出したいと思います。


誤字報告ありがとうございます。
修正しました。
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