超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
申し訳ありません。ほぼ状況説明回です。
ジオン公国から形式的には出奔するという形で、アステロイドベルトにある小惑星アクシズへと向かったアクシズ出向艦隊は、1年強という長い旅程を踏むことになった。
その間にも状況は刻一刻と変化している。
アクシズへの途上であっても、ジオン本国より長距離通信で情報はそれなりに入ってくる。
大方の予想通り、終戦協定はジオン側の敗北という形でまとまった。
連邦にとっても、これ以上の戦争を続けるだけの経済的余裕がほとんどなく、特に官僚たちが「終わらせられるのなら、早く終わらせよう」と勇み足を踏んだことも、速やかな終戦に至った要因としては大きかったのだろう。
キシリア・ザビ少将は軍事裁判を経て有罪となり、非公開で処刑されたらしい。
また、ジオン公国は共和制に移行しジオン共和国となった。
マ・クベ中将、ダルシア・バハロ首相の両名の必死の交渉により、自治権は維持されたらしい。
ジオンの兵器産業を担ってきたジオニック社、ツィマッド社はそれぞれ、社の半分をアナハイム・エレクトロニクスと地球連邦に売却し、規模を大きく縮小することとなった。
ジオン共和国政府は現在、ダルシア首相とガルマ・ザビ
また、各地ではジオン公国残党を名乗る勢力が破壊活動を繰り広げている。
ジオン共和国はこれを『ギレン派』による破壊活動であると宣言し、共和国とジオン残党は一切無関係であると公表した。
実際は繋がりが残っているので、見事な二枚舌である。
彼らが完全にギレン派のみで構成されているのであれば、本当に無関係を貫いても構わなかっただろう。
しかし、連中は1つのグループの中でさえ、ギレン派に加えて、連邦に屈することを良しとしなかったドズル派や、キシリアの復讐を誓うキシリア派までもが混在している。
彼らを見捨てることは、兵の動揺や不満を考えると得策ではない。
首脳部がどれだけ不本意に感じていようとも、ある程度の付き合いはしなくてはならない。
よって秘密裏にではあるが、補給物資や機材のやり取りは続いている。
民間に例えるならば、独立した子会社の社長がいかに気に食わない奴であっても、一般社員同士の大多数で交流が深いのであれば、渋々であっても取引を継続せざるを得ない。
このような状況である。
ちなみに、ジオン共和国を形式上出奔しているという名目上、アクシズ艦隊の所属はジオン公国のままであり、いずれ地球圏に舞い戻るため、臥薪嘗胆の日々を送ることを誓っている――ということになっている。
ドズル中将はいずれ地球圏に帰還したら、ガルマの率いるジオン共和国に合流するつもりであるし、何よりも
アクシズ出向艦隊がアクシズに到着するまでの期間でさえ、ザンジバル級のような速度が出る艦艇がサイド3と艦隊の間を往復し、足りない物資を補給しているほどの蜜月関係だ。
一般の兵たちにまでは完全に事情を説明するわけにはいかないが、ドズル中将の弟であるガルマがジオン共和国に残っているという関係上、『連邦が開戦前のように、スペースノイドに対し横暴にふるまえば、再び喉元に刃を突きつけるための抑止力となる』と、かなりざっくりとした説明がされている――嘘は言っていない。
個人レベルでの変化もあった。
最も大きいのは、シャア・アズナブルとララァ・スンの婚姻だろう。
結婚式はドズル・ザビ中将が仲人を務め、鬱屈しがちな出向艦隊に明るい風を呼び込むこととなった。
同時に、ララァ・スン少尉ことララァ・アズナブル夫人は軍を除隊することとなった。
とはいえ、ニュータイプ関連の研究については、アクシズの一員でもあることから、無理のない範囲で協力を続けるつもりらしい。
そして1年と少しが経ち、宇宙世紀0081、アクシズ出向艦隊はついに小惑星アクシズへと到着する。
同時に俺、エルンスト・ヴァルツァーもアクシズの地に足を踏み入れることになった。
アクシズに以前から駐留していた部隊との話し合いも既に終わっている。
アクシズ出向艦隊の到着とともに、総責任者であるマハラジャ・カーンはその立場をドズル・ザビに移譲し、本人はその補佐へと回った。
軍事におけるドズル中将の補佐役には、コンスコン少将が就任した。
この下に俺、シャア、当然のようにアクシズまでついてきたマツナガ大尉、ガトー大尉と続く。
割と盤石な体制ではないだろうか?
シーマ中佐とその配下の海兵隊は、リリーマルレーンの速度と搭載量を活かし、主にサイド3との物資のやり取りとその護衛を担当している。
彼らの気質を考えると、運送業とか意外と合っているのかもしれない。
そうして、本格的に動き出した新生アクシズの最初の仕事は、大量の居住者を受け入れるための大工事からとなった。
まあ原作と違い、ミナレットまで持ち込んでいる現状である。
そうそう物資に困窮することもないだろう。
万が一足りなくなったとしても、シーマ艦隊に持ってきてもらうことも可能であるし。
そんなアクシズでの俺の仕事は、シャアやマツナガ大尉、ガトー大尉とともにMSのパイロットである――と同時に、ミネバ・ザビの護衛である。
現在のアクシズの最優先すべき課題は2つある。
住居区画の増築と軍事力の強化である。
ジオン共和国もアクシズも、本来の歴史以上に力を温存している。
そのため『若き彗星の肖像』のように、連邦がアクシズに手を出すのはほとんど自殺行為と変わらない。
そもそもあの作品のように、『アクシズの急進派が戦争継続のために、連邦のスパイを放置して連邦軍をおびき出す』という目的自体が、ドズル・ザビが生存しているこの世界では意味をなさない。
だから、連邦がわざわざ軍を派遣してくる可能性は限りなく低いと見ていいだろう。
だがそれでも、こちらの現状が認識できていない連中が、ジャミトフ・ハイマンあたりの口車に乗せられて、艦隊を差し向けてこないとは限らない。
やがて地球圏に戻る時のことを考えても、軍としての強化は必須ではある。
練度の低い兵が日々、俺やマツナガ大尉、ガトー大尉にしごかれて死にそうになっている。
シャアはその出自を上層部が把握していることに加えて、新婚でもあることの配慮からか、割と勤務スケジュールが緩い。
そのため、兵の訓練までは担当していない。
早く子供でも作れ。
今ならハサウェイ・ノアやクェス・パラヤと同年代だぞ。
ハサウェイが生まれるのかは知らんが。
俺は、新型のMSの試作機が回されてくるたび、搭乗しては評価し、改良されたそれに乗ってはさらにダメ出しをしていく。
勤務が終われば、アクシズに建造されたドズル邸へと赴いて、ゼナ様やミネバの側に護衛として侍る。
我ながら、中々に過密なスケジュールを過ごしている。
ドズル中将が邸宅内に俺が使えるように部屋を用意してくれたので、移動時間が必要ないのは正直助かるな。
なお、ゼロ・ジ・アールはこの世界にも存在していた。
ただし、シャア専用としてではなく、俺用に開発されていたらしい。
ドズル中将、何やってんの。
乗ってみた感想であるが……申し訳ないが中途半端だ。
こいつ、要は小型化して火力を控えめにしたかわりに、機動力を少し上げて制限時間をなくしたビグ・ザムである。
俺にビグ・ザム搭乗の経験があるため、扱えないことはない。
だが、ビグ・ザムほどのぶっ飛んだ火力がないため、比較すると決定打に欠けるし、その上、機動性はモビルスーツに劣る。
ビグ・ザムから長所を削って機動性を上げたくせに、近接用兵装がない。
これに乗るぐらいなら、俺はサイド3から持ってきたアクト・ザクに乗る。
移動要塞としての運用を考えていたとか言われても、なら俺が乗る必要がないだろうとしか言えない。
開発担当はがっかりしていたが、せめてこれを叩き台にノイエ・ジールでも頑張って作ってくれ。
ちなみに前提条件を俺がひっくり返しまくったせいだろうか、『機動戦士ガンダムZZ』におけるラスボスこと、ハマーン・カーンとはいまだに遭遇していない。
正直、結構身構えていたんだがなぁ。
どうしても、Zガンダム作中においてのミネバへの仕打ちが頭をよぎってしまうので、隔意を出すことなく接するのに苦労しそうだと思っていただけに、若干の肩透かしである。*1
だがよく考えれば、ドズル中将の下で完全に一枚岩になっているアクシズでは、ハマーンがああなる原因を作り上げたエンツォ・ベルニーニ大佐が暗躍できる余地がない。
たしかハマーンのパイロットとしての活動は、エンツォ大佐が奨めたという設定だったはずだ。
彼が何もできない――そもそもドズル閣下の下でアクシズがまとまっている以上、何かを企むことすらしないであろう――以上、彼女が実機を使ったパイロットとなることはないのかもしれない。
せいぜいシミュレーターで遊ぶぐらいだろう。
ニュータイプ研究には関わるのかもしれないが、そちらの分野はララァが生存している上に俺もいる。
彼女にさほど比重が置かれることはないだろう。
アクシズにいる以上、その内会うこともあるかもしれないが、できるならばただの1人の令嬢として生きてくれればと思っている。
日々のやるべきことに追われつつ、時は進んでいき――。
気が付けばアクシズに到着してから、早くも2年ほどが経過していた。
アクシズは特に連邦からの妨害もなく、順調に稼働している。
そのつもりならアステロイドベルトであっても、普通に永住できそうなレベルで設備は充実しつつある。
娯楽等についても、定期的にサイド3から入ってくる。
少なくとも、生活において不自由さを感じさせることはない。
そんな状況のアクシズから現在、俺はシーマ艦隊のリリーマルレーンに乗ってサイド3へと向かっていた。
彼女たちも、気ままな運送業がすっかり性に合っているようだ。
敗戦から3年と少しが経つ。
デラーズ・フリートは俺の予想通りに、アクシズへと星の屑作戦の発動を通達してきた。
ということは、連邦は原作通り、ガンダム試作2号機を開発しているのだろう。
そのまま10月半ばに強奪されるのかまでは分からないが、時期が前後しようと、デラーズのやることはおそらく変わらないな。
ドズル閣下たち上層部は渋い顔をしていたが、アクシズ内にもデラーズ・フリートを支援すべきだという声は実際多い。
末端の兵士たちの声がほとんどであるが、彼らは裏の事情など知らないがゆえに、普通にデラーズ・フリートを含めた、ジオン残党勢力を『同胞』であると認識している。
彼らの嘆願があまりにも多いために、アクシズとしても支援をしないわけにはいかないという結論に至っていた。
ただ、支援のための艦隊は、準備に時間がかかるため、俺たちよりも少し遅れて発進しているはずだ。
というか、俺たちはデラーズからの通知とは関係なくサイド3に向かう予定だったため、出発の予定時刻の直前にデラーズからの知らせが入ってきた形になる。
俺たちの地球圏への来訪の目的は、ジオン本国との交流に加えて、
どの道、今後、連邦がスペースノイドへの圧力を強めてくる可能性は十分考えられるため、この行動についてはドズル中将たちの許可は取っている。
アクシズ公認でエゥーゴの下準備をしておくようなものと言ってもいいだろう。
そういうわけで、俺の行動自体はデラーズ・フリートとはまったく関係ない。
まあ、連中によって混乱が引き起こされた時は、その混乱は利用させてもらうつもりである。
アナハイム・エレクトロニクスとかへの接触は楽になるかもしれない。
とはいえ、ガトーがいないデラーズ・フリートに、ガンダム試作2号機が強奪できるのかは未知数である。
それでも、連邦がだらけ切っていれば、意外といけそうな気はしている。*2
そしてUC.0083の9月、俺は3年と8か月ぶりにサイド3に帰国した。
成長期に入ると、10歳の頃の記憶と比べて街並みの大きさが違って見えるなぁ。
読んでいただきありがとうございます。
説明主体でアクシズから一気に0083時代へ。
アクシズの状況とか色々。
指揮系統がきっちりドズル・ザビで1本化されているので、『若き彗星の肖像』で起きるほぼすべてのイベントが前提から発動キャンセルですw
エンツォ大佐?
ドズルがいるのに派閥作ろうとか思わないでしょうし、仮に作ろうとしてもコンスコン少将がいるのでまず無理でしょう。
派生して、マハラジャ・カーンも過労にならないので死にませんね。
当然、ドズルがいるので心労がないゼナも死なない。
ナタリーさんは可哀想ですが、相手がもう既婚者なので諦めてもろて(しかも仲人がドズル)
ハマーンに至っては、彼女がリック・ドムに乗ってパイロットやってた理由も、エンツォの計画でしたので、ハマーンが出てくる理由が今のところないという感じ。
普通のマハラジャ・カーンの息女扱いで名家の令嬢。
ニュータイプ研究で数回の面識ぐらいはできてるかも?程度。
多分年齢だけならセラーナの方が近い。
アクシズ自体はもう、このまま木星との交易拠点としてやっていけばいいんじゃないかというレベルで安定してます。
まあお題目が「連邦が暴走したら喉元に刃を突きつける」である以上、ティターンズの横暴が目に余ったら地球圏に戻ってくるのは不可避かな。
あとは、デラーズに支援しなくてはならない世知辛い事情のお話。
「なぜ同胞を見捨てるのですか!」とドズルに直談判して、認められないとその場で自分で腹を掻っ捌きそうな頭薩摩藩がそこそこいる(薩摩に失礼)
ドズルに刃向かいこそしないが、辺りをスプラッタにされるとドズルも困るし、コンスコン少将も頭を抱える。
幸いなことにガトーはその中に入っていない模様(ア・バオア・クー撤退戦で苦労したしね)