超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けましたので投稿します。


第57話 再会と会談と

 

 サイド3、ジオン共和国首都ズム・シティのスペースポートに到着した俺は、入国手続きをすっ飛ばして入国していた。

 ジオン共和国の上層部に話は通っているのだが、早い話が密入国である。

 

 現在の俺の身分はジオン公国軍残党である。

 そのため、正規の手続きでの入国ができないのだ。

 

 スペースポートから出た俺は、玄関口に用意されていた車に乗り込む。

 行き先はジオン共和国首相府――旧総帥府だ。

 

 車で十数分走り、何事もなく到着する。

 ちなみにあのデザインセンスがエキセントリックすぎる公王庁は解体されず、セレモニーホールとして市民に開放されているそうだ。

 あの悪のジオン星人の城としか見えない建物、まだ残っていたのかよ……。

 

 首相府に入った俺は、待機していた受付の人間に案内されて、会議室の1つへと通される。

 総帥府時代に数度、会議で足を運んだ覚えがある――たしか、一番機密レベルが高い部屋だったはずだ。

 そんな会議室に足を踏み入れた俺に、声をかけてくる者がいた。

 

「ようこそジオン共和国へ。

 3年半ぶりだね、エルンスト」

 

「久しぶりだなガルマ。

 いや、ガルマ・ザビ()()()()()()()、とお呼びすべきか?」

 

 俺とガルマは3年半ぶりの挨拶をかわした。

 

 そう。

 1年ほど前に行われた選挙によって、ガルマ・ザビは圧倒的な支持を受けて、ジオン共和国首相へと就任したのだ。

 それまで首相を務めていたダルシア・バハロは副首相となって、経験の浅いガルマのサポートを務めている。

 ちなみに、軍の最高責任者は大将へと昇進したマ・クベ元中将が務めている。

 

「公国軍時代と同じガルマでいいさ。

 結構背が伸びたかい?」

 

 ガルマが聞いてくる。

 現在俺は13歳。もう2ヶ月ほどすれば14歳である。

 最近身長も伸びてきており、すでに150cmも半ばなので、この肉体素養の元ネタ(ヒイロ・ユイ)のように小柄ではなくなりそうで一安心である。

 

「まあ、成長期に入ったからな。

 この前まではノーマルスーツが頻繁に合わなくなって困っていたが、とうとう小柄な成人男性向き*1のものなら流用できるようになったぞ」

 

 ガルマが笑った。

 1年戦争の時の俺のノーマルスーツは完全特注だったからな。

 それを思い出しているのだろう。

 

 それと、ガルマには言っておくべきことがあった――というか、()()()()()()

 

「スペースポートのテレビでニュースを見たぞ。

 奥方のご懐妊、おめでとう」

 

 俺がスペースポートに降り立った時、サイド3のニュース番組でちょうど、イセリナの妊娠が報道されていたのだ。

 俺が首相府に向かう道中で見た街も、祭日にでもなったようなお祭り騒ぎであった。

 

「ありがとう。

 彼女たちのためにも、私はこのジオンを守り抜いていくつもりだ」

 

 守るものができたガルマを、もうお坊ちゃんと呼ぶものはいないだろう。

 というか、圧倒的支持率で当選したジオン共和国首相をそう呼ぶ人間がいたら、そいつは中々のチャレンジャーである。*2

 

 軽い挨拶と歓談が終わったところで、俺はドズル中将からのビデオレターが入った記録媒体を渡す。

 入っているのはドズルから兄としてのメッセージのみで、機密情報はこれには入っていない。

 自宅でゆっくりと見るといいだろう。

 

 機密情報のやり取りはここからだ。

 ガルマと俺は、現状のジオンについての情報と、アクシズの情報とを共有していく。

 長距離の暗号通信や定期的な密航船の就航によって、情報のやり取り自体は行っているのだが、やはり高レベルの機密情報は信頼できる人間同士で直に行うのが安全なのだ。

 

 その途中で聞いたのであるが、キシリア少将には恩赦なしの永久冷凍刑が執行されたそうだ。

 そして連邦は、それをもって事実上の処刑扱いとしたらしい。

 

 下手に殺してしまうと、キシリア派の残党の勢いが活発になるからだろうな。

 場所も非公開である以上、残党が奪還に動くことも難しい上に、正規の手順を踏んで解凍しない限りはそのままあの世行きだ。

 牽制としては上手い手だと考えたのだろう。

 

 それはそうと、冷凍刑っていつからここはGガンダムの世界になったのだ。

 

 

 ちなみにジオン国民のキシリアへの反応だが、そう悪くはない。

 たしかに戦場のど真ん中で、指揮を執っているギレン総帥を射殺したのは大問題であるのだが、そのギレン・ザビ自身がその直前に父親のデギン公王をソーラ・レイで殺害している。

 だから、形としては父親の敵討ちとなるため、国民は納得しやすい。*3

 

 たしかにキシリアは戦況自体を混乱させて敗戦の主要因の1つとなった。

 だが、ア・バオア・クー戦では撤退を指示してから、撤退部隊と行動を共にして将としての最低限の責任は果たしたし、最後には自身の命を交渉材料に連邦との停戦を成し遂げた。

 

 功罪相殺とまでは行かないが、現在のジオンにおけるキシリアの評価は「父親への情に厚いがゆえに、ギレンへの報復のタイミングを見誤った女」という評価が一般的なようだ。

 俺の心の中の五飛が何か言いたそうにしている。*4

 

 

 

 ある程度の情報共有が終わった段階で、ガルマの表情が若干曇った。

 

「さて、お互い現状の把握はこれぐらいでいいだろう。

 ――少々、面倒な話になるが、いいだろうか?」

 

 面倒な話とはなんだろうか?

 

「なんだ改まって?」

 

 ガルマは苦笑を浮かべると、懐から1本のディスクを取り出した。

 俺が先ほどガルマに渡した、ドズル中将からのビデオメッセージを込めたものと同型のものである。

 

「彼方よりの()()()だ。

 無論、君へだ」

 

 なんだろう……。

 物凄く見たくない。

 

 

 映像を再生して数分。

 俺とガルマは引きつった笑いを浮かべつつ、会議室のモニターに映し出された人物が話すのを聞いていた。

 

 スキンヘッドに見事なヒゲ、そして声だけなら圧倒的なカリスマを感じさせると言ってもいい声質――。*5

 デラーズ・フリート指導者、エギーユ・デラーズだ。

 

 一応、数度ではあるが、俺はこいつと面識がある。

 そのせいか知らないが、画面の中のデラーズはこちらに親しげに語りかけてきていた。

 

「ついに我々ジオン公国が再起すべき時が到来したのです。

 ついてはエルンスト・ヴァルツァー大佐にも、我らが戦列に加わっていただきたい。

 すでに我々の下には、多くの英雄たちが集まりつつあります。

 その上で、エルンスト大佐のような一騎当千の英雄の助力を得れば、我らが『星の屑』の成功は、約束されたも同然となるでしょう」

 

 内容は、つまり俺に『星の屑作戦』に参加しないかという勧誘だ。

 

 俺がサイド3に向かうという情報をどこからか仕入れてきていたのだろう。

 口調が丁寧語なのは、1年戦争当時だと俺と奴は大佐同士で階級が一緒だったからだろうか。

 

 というか、こいつが今は中将と名乗っていることの方が不思議である。

 自分を勝手に昇進させたのだろうか?

 それにしても、特に戦果も上げていないのに、3年で3階級特進は盛りすぎではないだろうか。*6

 

 デラーズの話は続く。

 

「そしてその時こそ、スペースノイドは真の自立を達成し、売国奴どもの傀儡となっておられるガルマ様を解放することにもつながるのです!」

 

 傀儡?

 一瞬考えてから、「ああ、そうか」と俺は納得した。

 キシリア・ドズル・ガルマのラインが、それぞれがっちりと繋がっていることを知らなければ、ギレン派から見たらそう映っても仕方がないのか。

 

 ドズル中将がアクシズに行ったのは、『ジオン公国の軍勢が、連邦に対する再起を図ってのこと』である。

 少なくとも、外向きの理由がそうなっている以上、残されたガルマの背後にはキシリア――正確に言えばキシリアの意を継いだ人間の、息がかかっていると見えてしまうのは、理解できる。

 なにせ、今のジオン共和国の軍のトップはキシリアの部下であったマ・クベ大将だ。

 状況証拠だけなら真っ黒に見える。

 

 そしてその大本のキシリアは、ギレンを殺害して指揮権を奪った人間であることも事実だ。

 ドズル中将が『ジオンから出奔してアクシズに向かった』という体を取っているため、ギレン派には余計に、ガルマが哀れな傀儡にしか見えないのかもしれない。

 

「良き返事が戻ることを期待しております。

 我がジオンが誇る『白銀』、エルンスト・ヴァルツァー大佐へ。

 エギーユ・デラーズ。

 

 そして、事前にこれをご覧になっておられるガルマ様。

 万が一、この映像がダルシアやマ・クベに露見しそうなときは、遠慮なく破壊していただきますようお願いいたします。

 それでは、失礼いたします」

 

 そして映像は終わった。

 

 露骨にダルシア副首相やマ・クベ大将を警戒していたな。

 先ほどの予想は、どうやら当たっていると見てもいいだろう。

 

 再生用の機材からディスクを回収しながら、ガルマが聞いてくる。

 

「……で、どうする?

 参加するかい?」

 

「するわけねぇだろ」

 

 即答である。

 なにが悲しくてあのハゲの手伝いなんぞしなきゃならんのだ。

 

「だよねぇ」

 

 ガルマが笑う。

 

 ありえない話ではあるが、仮に俺が参加したとしたら、俺が2号機奪取係に任命されそうで洒落にならない。*7

 そうなったら、あのハゲは大々的に俺が戻ってきたことを公表するだろう。

 アクシズで3年もほとぼりを冷ました意味が無くなってしまう。

 

 冗談ではない。

 

「最初から参加する気もないが、俺は俺でやることがあるから地球圏に戻ってきてるんだ。

 連中のお祭りに参加している暇はない」

 

 ガルマは「そうだねー」と笑っている。

 最初から俺が参加しないと分かりきっていた反応だ。

 

 まあ、わざわざディスクを届けに来たデラーズへの義理として、俺に見せたのだろう。

 

「君ならそう言うと思ったよ。

 こちらの調べたところだと、結構な数の公国軍の残党が集まっているらしいし、君が参加しなくても彼らは勝手にやるだろう」

 

 結構な数が集まっているのか。

 俺が1年戦争において、ジオン側の被害を減らしまくったのもあるし、これはシーマやガトーがいなくても、デラーズ・フリートは結構な戦力にはなっているのかもしれない。

 

 

 意外な話だが、キシリア同様、デラーズの評判も旧ジオン公国軍の関係者の間では悪くないのが現状だ。*8

 なぜかというと、客観的に見た場合、デラーズの行動自体にはそこまで致命的な粗がないのだ。

 

 前世を思い出すと、ア・バオア・クー戦におけるデラーズ艦隊の撤退が、敵前逃亡であると言われていた記憶があるが、これは事実ではない。

 もっと正確に言うと、この世界のようなデラーズが親衛隊などの総帥直轄の人間である世界線では、明確に「敵前逃亡ではない」と言える。

 

 なぜなら親衛隊の命令権は総帥のみが持っているものであり、連中には総帥以外の命令に従う義務がそもそもない。

 総帥死亡の報を受けた時点でそれを指揮権の喪失と認定し、そこからの自己判断による撤退行動も、奴の権限の範疇なのである。

 

 しかも、キシリアがギレンを射殺して指揮権を奪ったことは、軍関係者の中で公然の秘密となっているほどには知られている。

 そのため、キシリアに従わず撤退したデラーズの行動は、裏を知らない連中からすれば『主君への忠義を貫いた』として、潔い行動に見えてしまうのだ。

 

 アクシズが渋々ながら連中を支援しなくてはならない理由もこれである。

 

 それはそれとして、撤退戦でデスマーチに放り込まれた俺やドロワ隊の面々は「もう少しタイミング考えろよ馬鹿野郎」と思ってはいるし、俺個人としてもあのギレン狂いは度し難いと思っている。

 なので『星の屑』への参加など断固拒否だ。

 

「『エルンスト大佐は現在、アクシズの密命を受けての作戦行動中であるため参加できない』とでも言っておいてくれ」

 

 俺はガルマに告げた。

 

 別に嘘は言っていないので、これで問題はないだろう。

 

 

 

*1
なお、ハヤト・コバヤシは身長150cmである。

*2
でもシャアなら言いそう。

*3
特に、こういう話にジオン国民は弱い。

*4
「女か……だから甘い」

*5
声:小林清志

*6
原作でも割と謎である。

*7
そして、そうなったら強奪と同時に1号機とアルビオンをビームサーベルで破壊するだろう。なんて面白くない作品だ。

*8
ドズル中将やマ・クベ大将といった、事情を知ってるものは除く。




読んでいただきありがとうございます。


ガルマとの会話(ついでにハゲ)で1話丸々飛んでしまいましたw


主人公、成長期に突入。年齢的に男子の成長期はこのぐらいかららしいですね。

余談ですが、エルンストの実年齢はすでに公表されています。
2話にて『士官学校卒業までは実年齢に3歳足した形で過ごすように』と書いておりました。
私も「多分書いたよね?」と不安になって見直しましたw

ちなみに誕生したのがU.C.0069。
生まれ月は遅めの11月~12月のイメージで書いているので、U.C.0079の1年戦争で9~10歳。
0083の開始時点(ガンダム強奪が10月)で13歳かな。
星の屑が終わったあたりで14歳になります。



デラーズに対するフォローを少々入れました。

デラーズに対して「敵前逃亡である」と指摘する感想をいくつかいただいておりますが、私は個人的にはそれは正確ではないと認識しております。(あくまで私個人の認識です)

作中でも書かせてもらいましたが、親衛隊のデラーズにはキシリアの命令を聞く義務はありません。
総帥の死亡をもって指揮権喪失と判断し、自己判断で撤退することは命令無視には当たらないと認識しております。

あくまでタイミングが、主人公たちからすれば最悪だった、というだけです。(原作でもタイミング最悪だったとは思っていますが)
本当に敵前逃亡であったのであれば、0083本編におけるアクシズからの支援すらなかったと思います。


こういった事情のため、ジオンの兵からしてみればデラーズ・フリートは「方向性が違う(主にギレン派の)兄弟組織」という認識が大半となっています。

ちなみにこれだけフォローしておいてなんですが、私はあのハゲが個人的には大っ嫌いです




また、同じく感想において「アクシズが『星の屑』の中止命令出せないのか」という声もいくつかございましたので、こちらにて説明させていただきます。

まず、デラーズは『星の屑』の詳細情報は、アクシズには知らせておりません。
原作において、ガトーの脱出に多大な貢献をしたノイエン・ビッター少将にすら、ガトーは詳細を話さなかったことを考慮すると、アクシズへの遠距離通信は(盗聴を警戒してという面も含めて)「連邦の驕りに釘をさすための、乾坤一擲の反抗作戦」ぐらいにしか伝えていないと思います。

それをアクシズから、強権をもってして中止させるには理由が足りないと思います。

原作でシーマは詳細を知っていたため、『デラーズ・フリートに参加した部隊の指揮官クラス』ぐらいには知らされているレベルの情報だと思います。


また、「エルンストが『星の屑』の内情を話せばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、基本的に本作の主人公は、原作知識の『裏を取れていない』情報は誰にも漏らしません。

主人公は原作知識に全ベットして動くと、それが違ってた場合に詰むと考えていますので、裏取りしない限りは原作知識先行で動くことはまずないです。

例えば星の屑作戦だと、『コロニー同士を激突させて月に落とす』まで行った際に、「これ、推進剤に途中で点火すれば地球に落とせるね」とようやく言えます。

更に言いますと、「映像版とジ・オリジン要素、その他諸々が混じったごった煮世界」で、原作通りって何が原作通りなのか、主人公の主観では分からないのもあります。
『何が起こっても良いように警戒しつつ、できる範囲で動くことしかできない』という制限で、私は書いております。

その辺り、ご了承いただけますと幸いです。




そして申し訳ありません。
リアルが少々多忙なため、次の更新がまた数日の猶予をいただく形となると思います。
お待ちいただけますと幸いです。
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