超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい   作:正樹

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なんとか書けたので投稿します。


第59話 ガンダム強奪(伝聞)

 

 10月に入り、俺はスペースノイドの少年――デュオ・マックスウェルとして、民間の航路で地球へと降り立っていた。

 さすがにローティーンで1人で航路を使うと目立つので、補佐を兼ねて2名のジオン軍人が同伴している。

 当然ながら、ジオン軍人が民間航路を使って地球に降り立つのは問題視される可能性があるので、彼らの戸籍も捏造済みだ。

 現在の俺たちは、故郷であるコロニーを1年戦争で失った難民の少年が、その遠縁にあたるルナリアンの成人男性2名と旅行している、ということになっている。

 

 降り立った街はニューヤーク――1年戦争における俺の古巣だ。

 ここには、かつてのジオン軍ニューヤーク基地をそのまま再利用した、地球連邦軍ニューヤーク基地がある。

 1年戦争のニューヤーク撤退戦では、基地施設が破壊される前にジオンがとんずらこいたため、基地施設がほぼ無傷だったのだ。

 ここからギャロップで撤退し、途中からガンダム(マドロック)で北米を横断した記憶が少し懐かしい。

 

 その基地から十数キロほど離れた地区で、安ホテルを数部屋契約した俺たちは、そこを臨時の基地として設備を整えていた。

 契約期間は2週間。

 取得したデータによれば、ガンダム試作2号機がトリントン基地に入るのは10月13日――今から10日ほど後だ。

 何かアクシデントが起きた時のために、数日ほど余裕をもって契約している。

 

 俺は到着早々、補佐の2名に、市内の店から必要なジャンクパーツを探してくるように命じた。

 民間航路を利用しての地球降下なので、軍需用の機材は持ち込むことができない。

 部品を組み合わせて、現地で調達するしかないのだ。

 

 その日の深夜から、同時に買ってこさせておいた小型バイクを使って、俺はニューヤーク基地へと潜入する。

 この時期の連邦軍は特に警戒が甘く、見張りもただ勤務時間を消費するためだけにいるといった有様である。

 その上、1年戦争の頃からこの基地は俺の庭だ。

 

 誰にも気づかれることなく、俺はあっさりと基地の演算室へと潜入して、システムに仕掛けを施していく。

 まずはホテルから機密情報にアクセスするためのバックドアを設置した。

 それが終わると、基地のメインコンピューターを経由して、連邦の機密情報へとハッキングを仕掛ける。

 

 数分が経過し、俺は目当ての情報へあっさりとたどり着く。

 連邦の危機管理意識が低すぎる……そりゃ、ガンダムの強奪も成功するわ。

 若干呆れながら、表示された情報を確認していく。

 

 アムロ・レイ中尉、19歳。

 北米シャイアン基地勤務。

 

 お前、この世界線でも軟禁されんのかよ。

 

 いやまあ、1年戦争終結後にTVとかに出演した際も、『悟りの境地』とかそういう言い回しでメディア受けが最悪になっていたようなので、連邦の高官連中なら「言ってることはよく分からないし、怖いので隔離しておく」という選択に走るのも仕方ない――のだろうか?

 

 何せ原作の『逆襲のシャア』でも、シャアがフィフス・ルナ(隕石)を地球に落とした後でさえ、さらにでかい隕石(アクシズ)をシャアに売却して、参謀次長が「アクシズを売った金で、連邦政府の福祉政策が充実する」とか発言してくるレベルだ。

 あれだけは、いまだに何を言っているのか理解できない。

 「さもなければコロニー潰しをする」ってシャアが言ったともあったが、それをした時点でシャアはスペースノイドの代表者面をする資格を失って、ネオ・ジオンは烏合の衆になるだけだろうに……。

 

 そんな原作知識と、それを補強する形で、脇が甘すぎる現状を目の当たりにしたこともあり、俺の連邦高官に対するイメージはアデナウアー・パラヤが基準になっている。

 原作知識を妄信するつもりはないが、連中がこちらの予想の斜め上を行ってくる覚悟はしておくべきだろう。

 

 まあ、アムロの実情は、軟禁というよりは飼い殺しに近いと見るべきだ。

 なにせ、ティターンズがまだ誕生していない。

 怖がられてはいたとしても、危険視まではされていないはずだ。

 いい意味でも悪い意味でも、連邦政府の高官連中にアムロを刺激する勇気はないと俺は思う。

 

 

 ともあれ、アムロの居場所は確認できた。

 次に俺は、連邦軍の人員データにアクセスして、これまでに存在していなかった架空の軍人のデータを潜り込ませる。

 

 顔写真は俺の補佐としてついてきたジオン軍人の1人。

 同時に、架空の人事異動命令書も捏造する。

 バックドアを介して、ホテルからの指令を入力すれば、()()()()()()()()()()()()()()()命令書が有効になるように細工しておく。

 

 ボッシュ・ウェラー少尉、23歳。

 オーストラリア、()()()()()()()()()

 10月10日付で懲罰人事のため、北米シャイアン基地への移動を命ず。

 

 こうしておけば、デラーズの襲撃直前に人事異動で基地を離れることになった、ある意味では幸運な連邦軍人の出来上がりである。

 シャイアン基地という、軍事的な重要性が枯れ果てた基地への赴任も、懲罰人事であるのならば不自然には思われない。

 さらに現状では、ティターンズが存在していないので、連邦には『アムロが脱走する、または奪われる』という観点自体が存在しない。

 

 命令発行者の名前はトリントン基地司令、ホーキンズ・マーネリ准将にしておく。

 彼がデラーズ・フリートの襲撃で戦死すれば、彼が命令を出したかどうかの真偽は永遠に分からない。

 仮に彼が生き残ったのならば、別の高官の戦死者名義の指令に書き換えれば済むことである。

 この後にデラーズによって騒動が起こることも考慮に入れれば、露見するリスクはさらに低いものになるだろう。

 

 ボッシュ自身は1年戦争時代からの俺の知り合いだ。

 直接の部下とかではなかったが、何度か会話したこともある間柄だったこともあり、今回の人選には迷わなかった。

 

 原作において、彼がカラバ時代からのアムロの部下であること。

 それから数十年先のF90の時代において、ラスト(最後の)・ロンド・ベルとなりうる人間であることも知っている。

 アムロの護衛兼友人として配置するにはベストな人材だろう。

 これで、アムロ・レイが少しでも腐らずにいてくれればいいのだが……。

 

 当然ながら、ボッシュ本人の了承も取っている。

 少し意外だが、事前に話した際には本人も乗り気であった。連邦最強のパイロットに興味があったらしい。

 

 これで仕込みの1つは済んだ。

 

 基地から誰にも知られず脱出した俺は、そのままホテルへ戻って数日を機械の組み立てに費やしながら過ごす。

 同時に、1年戦争時代に構築していた伝手が、まだ生きているのかの確認も取っていく。

 せっかくガルマのおかげで友好的な関係を構築していたのだ。

 今後、ティターンズが結成されるような事態になったとき、彼らの協力があればカラバやエゥーゴも活動がしやすくなるだろうからな。

 

 

 

 そして、運命の日がやってきた。

 

 ニューヤークとオーストラリアの時差は16時間、こちらでは前日の朝方である。

 バックドアを介して、大量の情報がこちらのコンピューターへと伝わってくる。

 

 リアルタイムの情報ではないため、襲撃は既に終わった後のようではあるが、ガンダム試作2号機は奪取され、基地司令は戦死したらしい。

 この時点で俺は仕込んでおいた人事異動の偽指令を、アクティブにする。

 数日もすればシャイアン基地の受け入れも整うだろう。元々がひなびた基地だ。

 人員が1人増えたり減ったりするぐらいは完全に誤差だろうからな。

 

 他に情報は――ガンダム試作1号機が小破?

 デラーズにいるガトーの代わりを務めたパイロットが張りきったのだろうか。

 パイロットは軽傷らしい。

 原作通りウラキ少尉が乗ったのかまでは簡易的な報告書では分からないが、まあ死ななかっただけ良かったなとしか言いようがない。

 

 基地の被害規模も想像以上にでかそうだ。

 デラーズ・フリートの戦力が増している分、俺の知っている『0083』と比べても、色々と情勢が混沌としている。

 

 まず、ガンダム試作2号機は奪取されたものの、その行方が分からないらしい。

 コーウェン中将宛てにあげられている報告書を盗み見た情報であるが、デラーズはご丁寧にも数機のコムサイと2隻のユーコンを別々の方向へ撤退させて、2号機が地球に残っているのか、宇宙に持ち去られたのか、判別できないようにしていた。

 

 こんなことが可能になったのも、俺が大量のジオンの軍人を生き残らせたせいでもあるのだが、もう少しその生命は建設的なことに使ってほしかったなぁ。

 

 俺というか、デラーズという個人を知っている身からすれば、2号機は十中八九、宇宙へ持ち出されたと思っている。

 だが、連邦軍からしてみれば『2号機が地球に残っており、ジャブローに核を撃ちこまれる』可能性が否定できない。

 それを最大限に危惧する以上、アルビオンは無為にジオン残党の多いアフリカ地域を探し回らざるを得ないだろう。

 デラーズが宣戦布告をするまで、ひたすら徒労を強いられる未来だ。

 ご愁傷様である。

 

 そのまま読み進めていくと報告書の後半に、強奪したジオンのパイロットが名乗ったことが書いてある。

 ガトー以外にも、わざわざ名乗るような軍人がデラーズの下にいたのか。

 

 デラーズの下に現在いそうなジオンのパイロットとなると、マレット・サンギーヌ大尉辺りだろうか?

 ガトーに比べれば数段落ちるパイロットだと思っているが、それでも原作よりも戦力が多ければ2号機の奪取ぐらいは可能だろう。

 

 そう考えつつ、画面に表示されたページを次へと進めた。

 

 ――実行犯はエリック・マンスフィールドと名乗った。

 

 ……マジかよ。

 

 ムッチャ有名人だわ。

 というか普通に顔見知りだわ。

 ギレン・ザビに面会した時に、その場に居合わせた記憶があるわ。

 

 エリック・マンスフィールド大佐。

 原作においては1年戦争におけるジオン軍撃墜数ランキングベスト4。

 この世界においては、俺とシャアがその上位にいるため、6位に甘んじている。

 それでも、ジオンのエースパイロットを列挙しても、上から数えた方が早いレベルのエースである。

 連邦への知名度も抜群だろう。

 

 1年戦争当時はギレン・ザビ直轄の本国親衛隊のMS部隊隊長で、たしかア・バオア・クー戦にも出陣していたはずだ。

 そう考えれば、この経歴で親衛隊隊長であるデラーズと接点がないわけがないな。

 ア・バオア・クーでは俺たちが戦線を維持していたので、こいつもデラーズの撤退に同行した形になったんだろう。

 

 そりゃ、こいつが手元にいるのならデラーズもこいつを使うわ。

 

 マレットは狂信的と形容するのがふさわしいほどのキシリア信奉者だ。

 ジオン共和国の在り方が受け入れられないという点では、デラーズと歩調を合わせることはできても、ギレンを殺したキシリアの派閥とギレンの派閥とでは根本的な信頼関係の構築など不可能だ。

 

 ついでに、エリック大佐の方がマレット大尉よりも腕は格段に上であるしな。

 原作のようにマレットが薬物を使えば、そこそこいい勝負はできそうだが、結局はその程度だろう。

 エリック大佐は異名こそ付いていないものの、その能力は下手したら原作のガトーの上位互換である。

 

 なお、アクシズに現在いるこの世界線のガトーは、たびたび俺やシャアに模擬戦でしごかれていたので、エリック大佐相手にも優位に立ち回れるほどの技量は身につけてはいると思われる。

 まあ、そうでなかったら俺が更にしごくだけだが。

 

 ともあれ、ジオン撃墜数6位のエースと原作より多くなったモビルスーツ隊に、トリントン基地とアルビオンは襲われたわけか。

 全滅しなかったのは、完全に運が良かっただけだろうな。

 

 エリック大佐と、おまけのマレット君か。

 艦艇もMS数も原作より多いだろうし、これ普通に核攻撃とか成功しそうだよなあ。

 

 




読んでいただきありがとうございます。

何とか0083が始まった感じ。


トリントン基地襲撃のどさくさに紛れて情報の改ざん。
ガバすぎる連邦ならきっと気付かない。
というか、連邦のガバさが改めて考えるとヤバすぎる。

とりあえず、0083編で一番やろうと思っていたのが、アムロへの接触とアムロにラスト・ロンド・ベルを付けることでしたw

ボッシュ、そういうことはしなくていい!

まだ1年戦争から3年ですし、グリプス戦役までに腐る度合いを少しでも緩和出来たらなと。



そしてようやくガンダム強奪。

エリック・マンスフィールド大佐という、MSVとギレン暗殺計画にちょっと出てきただけのほぼフリー素材にご登場いただきました。
撃墜スコアが凄まじいのと親衛隊のMS部隊隊長なので、多分原作ガトーよりも腕はちょっと上かなという扱い。

それはそうと、原作のガトーよりもデラーズとの付き合い長そう。
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