超人スペックで転生させられた俺はせめて正しい敗北を選びたい 作:正樹
現在8歳。
この年齢で
そしてそれがマリーメイア誕生につながりました。
ホント何なんでしょうねあいつ?
結局、俺という異物が入ってはいるものの、基本的には俺の知る
3回生終了前の地球連邦駐屯軍との模擬戦も、シャアが左翼から白兵戦による奇襲で敵陣地を攻略したと同時に、俺が率いる小隊が右翼から別の陣地を攻略して、本編よりも連邦軍の優位が崩れるのが早まった程度だし、その後の講評で連邦軍を非難したシャアが殴られてクレームの大合唱になった際も、俺が肘で小突いて、ガルマが少し早めに謝罪を要求したぐらいだった。
というか、間近で見ていて思うんだが、あの軍監、圧倒的有利な立ち位置から始まったはずの連邦軍がボロ負けしているのに――なぜ煽るような講評してきたのだろうか?
本気で理解できない。
一年戦争前なのだから、連邦にもそれなりに優秀な人材は残っているだろうに。
ジオンに回されるような連邦軍人にはろくなのがいないのか。
それともそれなりに優秀でも心底からジオンを格下だと思っていて、プライドが邪魔をして現状認識ができていないのか。
あるいはその両方なのか。
個人的には両方だと思っている。
でなけれは
そう思いながら、げんなりした表情で掃海艇の操縦桿を握る。
起こらなければいいなと思ってはいたのだが、案の定というか、
結果、軍艦は爆発四散し、事故を起こした奴らは全員死亡である。
ジオンに来ている連邦軍人はアホしかいないのか。
なにがジオンに兵無しだよ。
連邦に
というか、今回のは明らかに連邦側に非があるんだからさっさと謝罪しとけよ。
下げるべき頭も下げられないから、ジオン国民のヘイトが溜まる一方なんだぞ?
確かこれから、独立を求めるデモ隊に連邦軍が実弾発砲して大騒ぎになるんだったか。
あるいは既になっているのか。
まあ、そういった理由で、四散した農業ブロックの破片があまりにも多いため、士官学校の3回生も駆り出されてのデブリ回収業務中である。
ちなみに乗員は3名、操舵手が俺、キャプテンがガルマ、通信並びにレーダー手がシャアだ。
まあ俺が一番運転の成績が良いからな。
デュオ・マックスウェルがこの世界にいない以上、早々負けてはいられない。
デュオにはさすがに勝てないというか、あいつの操縦技術は頭おかしいレベル*1だから仕方ない。
「ガルマ、あれはなんだ?」
シャアが回収作業に当たっていたモビルワーカーに気付いた。
「ああ、あれ? モビルワーカーだ」
ガルマがインカムを外した。
確かここでモビルスーツの存在が仄めかされる展開だったはずなので、一応俺も会話に参加しておく。
「モビルワーカーと言うと資源採掘用の重機だったか?」
「そうだ。本来は月資源採掘のための物なんだけど、こんなことにも使える」
説明してくれるのは良いがガルマ、どさくさで頭撫でるな。
ここで「よくできましたー」とでも言おうものなら俺は蹴りを入れていただろう。
手は残念ながら空いていないので、パンチは無理だ。
「ドズル兄さんが開発の最高責任者なんだ」
本当に身内には口が軽いよなガルマ。
「シャア、エル。
これはトップシークレットだ。
君たちだけに言おう」
そんなんだからお坊ちゃん扱いされるんだぞガルマ。
俺はドズル校長ともそれなりに長い付き合いになるが、ドズル校長が俺に軍事機密漏らしたことは一度たりともないんだぞ。
「……モビルワーカーは軍事に転用が可能だ。
だから、ドズル兄さんは開発にご執心なんだ。
それももう最終段階だ。
ドクターミノフスキーの理論によって、融合炉ドライブの小型化が成功した。
その名も、モビルスーツ」
記憶にある原典通りのセリフだけど凄いよなガルマ。
俺が
操縦桿を握る手に少し力が入った。
ようやく、俺の知る『ガンダム』の最大の舞台装置が出来上がろうとしているのだ。
「モビルスーツか……」
「モビルスーツね……」
ほぼ同時に発した、俺とシャアの発言は、語尾だけが違うが、内面に含まれる感情は別のものだ。
片方は興味。
片方は安堵。
そして数秒の沈黙。
若干ガルマは誇らしげなのがどうかと思う。
シャアはモビルスーツの戦略的展望でも考えているのだろう。
ただしあれは
ミノフスキー粒子の存在を、現時点では知らないシャアがモビルスーツの展望を考えるということは、「ドズル校長が推進しているのだから、解決策の目途はおそらくついている」という信頼ゆえなのだろうか?
2人が考えに耽っていたがゆえの沈黙は、シャアの担当するレーダーからのアラートで破られた。
「外洋より大型艦が接近しているな」
それに慌てたのはガルマだ。
「駄目だ止めろ。まだ作業中だ」
「交信不能。連邦コード以外受け付けないな」
「このぉ!」
そうこう言っている間に、相手の艦船が視認できる距離まで近づいた。
白く、大きすぎる機影。
自身の邪魔をすることなど許さないと言いたげな尊大な航路。
「強襲揚陸艦だな。かなり大型だな」
俺の独り言にシャアが続く。
「ズムシティの鎮圧に向かうのだろう」
俺は答えを知っている側だが、それを抜きにしても状況を考えれば、まあその回答しか出てこないよな。
「おそらくな」
唯一予想していなかったであろうガルマが声を上げる。
「鎮圧?」
「治安部隊が発砲したらしい」
「発砲!?」
シャアとガルマの会話の間にも揚陸艇が近づいている。
こいつら、さっき同じ連邦の軍艦が、無茶苦茶な運転したせいで事故ってこんな目にあっているの分かっているのだろうか?
「回避行動をとるぞ」
俺は掃海艇を移動させ、揚陸艦のギリギリ横を通り過ぎる。
俺としては余裕のある回避だったのだが、ガルマにとっては近すぎる回避だったか、少し後ろに下がろうとし――
だが、何とか踏みとどまって船を睨みつけた。
「くそぅ、屈辱だ。誰のためにこんなことになっているというんだ!」
涙を流すガルマに、シャアが見えないようにほくそ笑んだ。
気付いてはいたが、今回は見逃す。
これからの展開は、ジオンの立場を考えて、俺も
まあ、今後の展開以前に、鎮圧部隊の暴挙が孤児院に及ばないとは断言できないのもある。
と、内心は賛成しているとはいえ、ガルマが軽挙に走ろうとした場合、俺は立場上ガルマを止めなければならない。
シャアもそれは承知しているだろう。
ならば俺がいない隙を見繕うだろうし、今回はそれに乗ってやる。
「掃海艇の燃料が残り少ない。そろそろ帰還する。
ガルマとシャアは、先に寮に戻って休んでいてくれ。
俺は、船の返却手続きを済ませてから合流する」
返却手続きと燃料補給、軽いメンテナンスチェックで大体30分といったところか。
まあ、シャアならその間にガルマを言いくるめた上で作戦を立案、3回生全員に話を通すぐらいのことはやってくれるだろう。
――いよいよ『
案の定というか、期待通りというか、俺が戻ったときにはガルマが既に檄を飛ばし、3回生全員がやる気に満ち溢れているタイミングだった。
こうなると、俺が何か言ったところで止めようがない。
そして、止められないのなら俺は、ガルマの副官候補ということもあり、同行しないわけにはいかない。
建前というのは大切なのだ。
一応、「確認しますが本気なんですね?」とガルマにはたずねておく。
ガルマは即座に頷いた。もう決心は固まっているらしい。
下手なアリバイ工作ではあるが、直接ガルマがやると断言した以上、ガルマが戦死でもしない限りは俺に責任はない。
そしてガルマの担当は後方の自走迫撃砲部隊の指揮なので、戦死の危険性など、シャアの率いる突撃部隊が壊滅でもしない限りは限りなく0に近いだろう。
正直、身も蓋もない話をしてしまえば、俺1人で連邦軍基地に潜入し、宿舎と主要施設を全て爆破する、というのは実現可能である。
相手側の武器庫から武器と爆薬を頂戴すれば、証拠すら残らないだろう。
だが、それでは後に続かない。
ズムシティの混乱が続くだけである。
却下である。
ドズル校長の抑え役には晴れてゼナ・ミア嬢が選出された。
まあ、俺だと恩義があってドズル校長を止められないし、妥当な人選だろう。
そもそも俺の個人戦闘力は、3回生ほぼ全員に知られているため、多くの学生が頼りにしているだろうし、俺が参加するとしないとでは戦意に明確な差が出てしまうだろう。
皆が準備している現在、さっさと準備を終えた俺には、やることが一つあった。
現在、俺は気配を殺し、寮の階段の陰に身を潜めている。
本気で気配を消した俺の存在に気付ける奴など、少なくともこの基地にはいない。
「帰って来てくれたんだね、キャスバル!」
そう。リノ・フェルナンデスの独演会だ。
こいつ寮の階段とか、それなりに声が響くところでマジかと正直思う。
原作で誰にも聞かれていなかったのが幸運ってレベルではないし、シャアも無茶苦茶焦っている様子が、思念越しに伝わってくる。
まず焦り。
次に軽挙への怒り。
そして、決断に至った殺意。
すぐ近くに潜んでいることもあり、シャアの思念が鮮烈に伝わってくる。
これは謀殺も致し方なしだろう。
まあ、今回は俺が聞いてしまっているんだが。
そしてしっかりと録音しているわけなんだがな。
録音モードに設定したままの、指でつまんだ小さな録音デバイスを見つめる。
これはある意味切り札だ。
もし、歴史通りに戦争が進み、ホワイトベースが北米に降下し、シャアがその気を見せたときの。
ゆえに、その時まで誰にも漏らすことはないし、それまで誰にも漏らさなかったという実績こそが、シャアを止める一助となってくれると信じたい。
リノがバイザーをシャアに渡した。
そろそろこの会話も終了のはずだ。
さて、これが終わったらリノのヘルメットに盗聴器を仕込んでおかなくては。
いきなりの爆弾発言をするリノに動揺しても、さすがはシャア・アズナブルというべきか。
シャアはこの会話では、
ゆえにこの盗聴データだけでは、シャアをキャスバルと断定できない。
実際は、このデータをキシリアやギレンに渡してしまえば、追加調査であっさりバレるだろうが、一応、対外的にはこれは決定打になりえない。
だからどうしても、
そうして始まった『暁の蜂起』だが、驚くほどあっさりと終わりを告げた。
シャアが縦横無尽の活躍をして、ガルマの指揮する迫撃砲が有効だったのもあるが、俺がスナイパーライフルで狙撃をしまくったからだ。
雑な言い方になってしまうが、リノは予定通りに
土壇場になってもキャスバルと連呼するのは、申し訳ないが「だから殺されるんだよ」という苦笑めいた感覚を覚えてしまう。
シャアからしたら殺す以外の選択肢がないじゃないか。
そして俺の担当は部隊唯一のスナイパーだ。
射撃の成績がダントツだからとシャアに割り当てられていた。
まあその判断は正しい。
敵の位置は感知で大体読めるため、味方と鉢合わせそうな部隊に対し掩護狙撃を繰り返していく。
味方にとっても接敵した瞬間、敵の頭が順に吹っ飛んで行くのは頼もしさを感じるだろう反面、絵面はホラーだろうなと思う。
狙撃手が俺であることは全員に周知してはいるので、何が起こっているのかは分かるだろう。
トラウマにならなければいいのだが。
感じる。撃つ。
「ヒット」
リロード。撃つ。
「ヒット」
リロード。探す。感じる。撃つ。
「ヒット」
リロード。
ひたすら精密狙撃を繰り返す。
おそらく学生側に出る本来の犠牲は、半分以上減らせたんじゃないかとは思う。
連邦軍の犠牲者にはご愁傷様であるが、放置しておけばお前たちもズムシティの民間人に重火器を向けて発砲していたのだろうから、理不尽と思わないで欲しい。
そして――さすがに持ち込んだライフル用の弾丸が尽きた。
俺1人が狙撃手のため、そこまで大量の弾薬を持ってこられなかったし仕方あるまい。
まあ、仕事は十分以上にこなしたと、狙撃銃の弾薬の枯渇を無線で伝えた後、ガルマの護衛に戻る。
それから間もなく、シャアが司令部を落とし、『暁の蜂起』は士官学校3回生の勝利という形で終了した。
「双方撃ち方やめー! これは命令だー!」
戦闘車両に乗ったドズル校長が叫びながら接近してくる。
ようやく終わったか。
精神的疲労でフラフラであるはずのガルマが、無理して目を見開いているのは近くに俺がいるからなんだろうな。
無理しなくてもいいとは思うんだがと思いつつ、俺はガルマのそばに静かに
さて――
駆け付けたドズル校長にぶん殴られることぐらいは覚悟しておかないとな。
読んでいただき、ありがとうございます。
基本的には原作沿いが続いて申し訳ない。
次からはシャアが地球で土方バカンス楽しんでいる間に、軍人として実績を積んでいく……はず。
年齢設定を筆頭に割と無茶苦茶やっている自覚はあるんですが、ガンダムWという作品が作中設定という事実でぶん殴ってくるんです。
信じてください。
追記
誤字報告ありがとうございます。
修正しました。