シン・ライダーにつづけ   作:猫太鼓

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決戦 ②

 

昼の採掘場跡地には、乾いた風が吹いていた。

崖を囲む岩肌には、つい先ほどまで暴れていた再生適応体たちの残骸が転がっている。砕け、崩れ、黒い影となって霧散していくそれらを背に、アクアは膝に手をつき、大きく息を吐いた。

 

――強かった。

以前の再生体とは比べものにならない。攻撃の間合い、反応速度、力配分。すべてがこちらに最適化されていた。

それでも、倒した。

倒せたのは、負けられない理由があったからだ。

 

崖上に立つ“敵ライダー”が、ゆっくりと拍手をした。乾いた音が、だだっ広い採掘場に反響する。

 

素晴らしい。なかなかやるじゃないか」

 

その声は落ち着いていて、どこか愉快そうだった。

黒と白を基調にした洗練された装甲。アクアと同じ“仮面ライダー”の姿をしていながら、決定的に違う気配を放っている。

 

「……チッ。再生体が弱いのはお約束だろ」

アクアは強がるように吐き捨てる。

 

「……約束だったな」

アクアは立ち上がり、真正面から敵ライダーを睨む。

「教えろ。全部だ

 

敵ライダーは肩をすくめ、ゆっくりと語り始めた。

 

「おまえは、勘違いしている。

 この世界には――もともと仮面ライダーなど存在しない」

 

その言葉は、重く、冷たく、一直線に胸を貫いた。

 

「おまえが“仮面ライダー”という概念を持ったまま生まれたことで、世界は歪んだ。我々――怪人、適応体とは、その歪みを修正するための免疫反応だ」

 

アクアの指先が、わずかに震える。

 

「世界を壊しているのは……おまえ自身だ」

 

視界の端で、ルビーの笑顔がよぎる。

アイが、リビングで笑っていたあの日の光景が、胸を締めつける。

 

「……じゃあ、アイが消えたのも……」

 

敵ライダーは、あっさりと肯定した。

 

「そうだ。本来なら、あの女はおまえの目の前で刺されて死ぬ。それが“正しいシナリオ”だ。悲劇があり、絶望があり、それを消費する者がいる。完璧なエンターテイメントだった」

 

語気が、次第に熱を帯びていく。

 

「それを台無しにしたのがおまえだ。

 だが、あの女は修正の際に願った。――おまえたちを守ってほしい、と。

 その想いが、おまえの中の“ナニカ”に反応した。

 だからおまえは、この世界で仮面ライダーになれた」

 

アクアは俯いたまま、肩を震わせていた。

怒りか、悲しみか、それとも――後悔か。

 

「……誰かの幸せを願って、何が悪い」

 

低く、絞り出すような声。

 

「アイが刺されて死ぬのが“娯楽”だって?

 それを守ろうとした俺が……世界の敵?」

 

拳が、固く握りしめられる。

黒と緑の装甲の奥で、仮面ライダー魂が燃え上がるのを、アクアは確かに感じた。

 

「――ふざけるな」

 

顔を上げたアクアの目は、もはや迷いを失っていた。

 

「お前は仮面ライダーじゃない。

 世界を守る者でもない」

 

一歩、前に出る。

 

「お前は、悲劇を食い物にする“敵”だ」

 

敵ライダーは、薄く笑った。

 

「理解したか。それでいい。

 さあ、続けよう――世界の修正を」

 

風が、強く吹き抜ける。

採掘場跡地の空に、二人の仮面ライダーが向かい合う影が伸びた。

 

アクアは、確信していた。

この先に待つのが、どれほど過酷な戦いであろうと。

 

――それでも俺は戦う。

――ルビーと、アイが笑い合える世界を取り戻すために。

 

仮面ライダーは、世界の悲劇を許さない

最終決戦の火蓋は、すでに切られていた。

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