シン・ライダーにつづけ   作:猫太鼓

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本日、二話目


決戦 ③

 

瓦礫と粉塵が舞う採掘場跡地。昼の光は強いはずなのに、そこだけが薄暗く、空気が重かった。

黒と緑の装甲が地面に膝をつく。何度目かの転倒だ。立ち上がるたび、金属が軋むような音がして、仮面の奥で息が乱れる。

 

――まだだ。

 

少し離れた岩陰。スマホを握る手が震えている。

MEMちょは逃げなかった

アクアの為に何かをやりたかった。

興味でも、アクセス数でもない。ただ悔しかった。

誰かを守るために立ち上がる姿が、世界に残らないことが。無かったことにされることが。

 

「……立った。立ちました……」

 

声が裏返る。実況なんて慣れているはずなのに、喉が締めつけられて言葉が途切れる。

画面の向こうでは、敵ライダーが肩をすくめ、余裕の動きで距離を詰める。

 

《敵つよすぎ》《これ主役どっち?》《勝ってる方だろ》

 

コメントが流れる。胸が痛む。

それでも、目を逸らさない。

 

黒と緑のライダーが前に出る。足取りは重いが、拳は下がっていない。

敵の一撃が頬をかすめ、火花が散る。衝撃で身体が浮き、地面を転がる。それでも、すぐに起き上がる。

 

「……また、立ちました……」

 

MEMちょは叫びたいのを必死で堪える。

実況しかできない。それでも、声を止めたら、アクアが消えてしまう気がした。

 

《あいつ、何回立つんだ》《黒と緑のやつ、根性あるな》

 

少しずつ、流れが変わる。

敵ライダーは苛立ったように舌打ちし、強引に距離を詰めて連打を叩き込む。ガードの隙間から衝撃が通り、仮面の奥で息が詰まる。

 

――守る

 

その一語だけが、身体を動かしている。

 

「……攻撃、あたりました……でも、下がってない……!」

 

MEMちょの声が震える。涙が視界を滲ませる。それでもカメラは向け続ける。

黒と緑のライダーが、よろめきながらも踏み込む。パンチ、キック。効かない。それでも止めない。

 

《何あいつ》《仮面ライダーだろ》《MEMちょが言ってたやつ》

 

応援の文字が増え始める。

胸が熱くなる。

 

敵ライダーが嘲るように笑い、強烈な一撃で吹き飛ばす。崖壁に叩きつけられ、砂煙が上がる。

沈黙。

一瞬、世界が止まったように感じた。

 

「……立って……」

 

MEMちょは祈るように呟く。

砂煙の中、黒と緑が動く。ゆっくりと、確かに立ち上がる。

 

《まだやるのか》《かっこいい》《負けるな》

 

MEMちょの(こころ)が裂けそうになる。

怖い。敵がこちらを見れば、次は自分かもしれない。それでも――。

 

「仮面ライダーは……」

 

声が震える。涙が落ちる。

 

「仮面ライダーは、負けない!!」

 

叫んだ瞬間、画面の向こうで黒と緑のライダーが前に出た。

世界がどうであれ、忘れられようと、消されようと。

いま、この瞬間だけは、確かに――ここにいる。

 

MEMちょは泣きながら、実況を続けた。

それが、彼を世界に繋ぎ止める、唯一の方法だったから。




それでは良いお年をー
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