シン・ライダーにつづけ   作:猫太鼓

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決戦 ④

 

 攻撃は、通らない。

 骨にまで響く衝撃だけが、一方的に積み重なっていく――少し前までの話だ。

 

 黒と緑の装甲に走る無数の傷を、アクアは一歩引きながら見下ろした。呼吸は荒く、視界の端が白く滲む。それでも、不思議と恐怖はなかった。

 

(……おかしいな)

 

 さっきまで、確実に追い詰められていた。腕は重く、脚は鉛のようで、次に立ち上がれる保証なんてなかったはずだ。

 それなのに。

 

 胸の奥から、じわじわと熱が湧いてくる。

 炎のように激しくはない。だけど消えない、芯のある熱だ。

 

(仮面ライダー魂……それだけじゃない)

 

 耳鳴りの向こう、風に混じって――声が聞こえた。

 

「……がんばれ」

「負けるな」

「立てるだろ」

 

 はっきりとした音じゃない。言葉ですらないかもしれない。

 それでも確かに、“こちらを見ている誰か”の想いが、世界の底から押し上げてくる。

 

 敵ライダーが、一歩下がった。

 

「……なぜだ」

 

 仮面の奥から、苛立ちが滲む。

 さっきまで虫を見るような目をしていたその声に、焦りが混じっている。

 

「なぜ、まだ立てる?」

 

 アクアは答えない。

 代わりに、胸の奥に沈んでいた記憶が浮かび上がる。

 

 ――星野アクアマリンになる前の自分。

 テレビの前で、何度も拳を握りしめた夜。

 どれだけ傷ついても、何度倒れても、最後には立ち上がる“あの背中”。

 

(そうだ……これが、俺の原点だ)

 

 人の想いは、消えない。

 忘れられても、書き換えられても、それでも残る。

 それが積み重なった時、世界さえ変える力になる。

 

 アクアは大きく跳び、敵ライダーの攻撃圏から距離を取った。

 砕けた地面に着地し、ゆっくりと立ち上がる。

 

 そして、宣言する。

 

「……本物を、見せてやる」

 

 風が巻き上がる。

 黒と緑の装甲が、光に包まれていく。

 

「変・身」

 

 重ねられた変身。

 仮面ライダーの“オリジナル”。

 

 現れたのは、無駄のない白と黒のライン、赤いマフラーが風になびく姿――

 原点にして、不屈の象徴。

 

「な、何だ……おまえは……!」

 

 敵ライダーが、初めて明確に動揺した。

 

 アクアは一歩、踏み出す。

 

「守るために、立つ者」

 

 拳を強く握りしめる。

 そこには、世界中から集まった声と、想いと、涙が宿っていた。

 

「――仮面ライダー!!」

 

 渾身の一撃。

 一直線に放たれたライダーパンチが、敵ライダーの胸部を貫く。

 

 光が弾け、エネルギーが暴走し、次の瞬間――

 爆散。

 

 轟音が収まったあと、アクアはその場に立ち尽くし、静かに構えを解かない。

 戦いは終わった。だが、守る意志はまだ燃えている。

 

「……」

 

 そこへ、駆け寄ってくる足音。

 

「アクアぁぁぁぁ!!」

 

 MEMちょだった。

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔、スマホを握った手は震えている。

 

「すご……っ、すごすぎ……っ! ほんとに……仮面ライダー(ヒーロー)じゃん……!」

 

 アクアは振り返り、苦笑いのように目を細めた。

 

「……うるさい」

 

 それだけ言って、彼は再び空を見上げる。

 世界はまだ、完全には変わっていない。

 それでも――確かに、今この瞬間、守れたものがあった。




明けましておめでとうございます
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