シン・ライダーにつづけ   作:猫太鼓

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今日から二話づつ更新です


誓い

 

昼過ぎのリビングは、外の陽射しに比べて少しだけ薄暗く、カーテン越しの光が床に柔らかな影を落としていた。アクアはソファに腰を下ろし、肘を膝についたまま、ぼんやりと宙を見つめていた。

 

――ファミレスでの会話が、何度も頭の中で反芻される。

 

彼女は最初こそ軽いノリを装っていたが、話が深まるにつれて、表情は冗談では済まされない色に変わっていった。

 

「自分でもさ、よくわかんないんだけどさ」

 

MEMちょはそう前置きして、自分の過去を語った。

高校の頃、母親が突然倒れ、弟二人を大学に行かせるために、彼女は夢を諦めてバイトを掛け持ちした。眠る時間もなく、毎日を必死に生きた現実。――なのに、同時に、母親が倒れなかった“もう一つの記憶”が、確かに自分の中に存在しているという。

 

「最初はね、現実逃避だと思ったの。都合のいい夢を、頭の中で作ってるだけだって」

 

笑ってそう言ったが、その目は笑っていなかった。

アクアが「お前、本当は何歳だよ」と突っ込んだ時、MEMちょは一瞬だけ視線を逸らし、冗談めかして話題を流した。その仕草が、逆に重く胸に残った。

 

二つの記憶。

現実と、書き換えられた“何か”。

 

怪人が狙う条件がそこにあるのだとしたら。

 

アクアは小さく息を吐いた。ファミレスで別れる前、何かあればすぐ連絡しろとアドレスを交換した。そのときのMEMちょは、冗談めかして「ヒーローの緊急連絡先だね」と言って笑ったが、その笑顔も、どこか覚悟を含んでいたように思える。

 

視線を動かすと、リビングのテーブルでルビーが絵を描いている。いつもと同じ――アイの笑顔。少し首を傾げて、こちらを見ているような表情。何度も描いてきたはずなのに、ルビーは毎回、まるで初めて描いた日のように丁寧に線を重ねる。

 

――ルビーも、二つの記憶を持っている。

それは確実だ。アイが消えた瞬間を、世界が書き換えられたあの日を、ルビーは今も覚えている。ならば、怪人が狙う条件に当てはまらないはずがない。

 

ルビーがふと顔を上げ、アクアに気づいて小さく微笑む。「お兄ちゃん、見て。今日はちょっと上手く描けた気がする」

 

「ああ……そうだな」

 

言葉は短い。それでも、ルビーは満足そうにまた視線を絵に戻した。その横顔は穏やかで、今はただ、静かな午後の一場面にすぎない。

 

だが、アクアの胸の内では、嵐のように思考が渦巻いていた。

 

怪人はどこから来るのか。向こう側とは何だ。アイはなぜ消えたのか。そして、自分はなぜ仮面ライダーとして“残っている”のか。

 

分からないことだらけだ。それでも、一つだけ確かなことがある。

 

――お前は、必ず守る

――そしてアイも。

 

世界が何度書き換えられようと、怪人が何度現れようと関係ない。理由も答えも、後からでいい。今はただ、この日常を守るために戦うだけだ。

 

ルビーの鉛筆が止まり、紙の上でアイの笑顔が完成する。その瞬間、アクアは確信していた。

 

この誓いだけは、どんな世界でも消えない




理由も答えも、後からでいい。
そう思い、勢いだけで書いてます。
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