サヴァイヴ〜ドルトムント財閥〜   作:一塔

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苦悩

 ペルシアとカイエがキャリーケースを転がしながら、十班のブリーフィングルームへ向かう。

 

 通路の床は艶のある白で、天井のライン照明がすいっと伸びている。ガラス越しに見えるコロニー外壁の向こうは、深い宙。人工重力が当たり前みたいに効いているこの場所でも、窓の先だけは「落ちたら終わり」の黒が口を開けていた。

 

「今頃、リュウジ達は宙の上かぁ」

 

 ペルシアが軽い口調で言いながら、バッグの持ち手をくるりと回す。

 

「大丈夫ですかね……」

 

 カイエが眉を寄せる。言葉は小さいのに、胸の奥にある不安が声に混ざるタイプの人間だ。ペルシアの耳には、それがよく分かる。――“大丈夫ですかね”の最後の母音が、ほんの少しだけ沈んでいる。

 

「大丈夫でしょ。エリンがいるし」

 

 ペルシアはあっさり言った。

 

「ペルシアさん、そればっかりですね」

 

「だってエリンは凄いじゃない」

 

「それはそうですが……」

 

「エリンが本気出せば、なんの心配もいらないわ」

 

 ペルシアの言い切りは、カイエの胸の中にある不安を、軽く押し下げる“手つき”をしている。根拠があるわけじゃない。でも、ペルシアは根拠の代わりに“エリンという現実”を持っている。

 

 エリンは、船内の“状態”を整える。整えていることが見えないほど自然に、でも確実に。乗客の空気、乗務員の動き、備品の位置、声の調子、緊張の浮き沈み――それを全部、静かに均す。

 

 だから、ペルシアは言うのだ。エリンがいるなら大丈夫。

 

「……それよりもよ」

 

 ペルシアが吐息を落とした。

 

 カイエが同じタイミングで、つられるように息を吐く。

 

「よりによっても十班なんて……」

 

 カイエの声が、ほんの少しだけ固くなる。頭の中に、以前の出来事がよぎったのだろう。――十班のチーフパーサーに、ペルシアが噛みついたあの日。

 

 ペルシアは、あのときの自分を思い出して、舌先で唇の裏を軽く触った。悪いとは思っていない。言われた側が“痛かった”のは事実だろうけど、言わなければククルが潰れていた。十四班の仲間を守るのは、彼女にとって当たり前だった。

 

「でもチーフパーサーはいないですから、今日はペルシアさんがチーフです」

 

 カイエが言うと、ペルシアは肩をすくめる。

 

「代理だけどね」

 

「それでも、現場の指揮はペルシアさんです」

 

「……今日は優しいね、カイエ」

 

 ペルシアがニヤニヤしながら言うと、カイエは目を逸らして、少し照れた。

 

「本音です」

 

「ふーん」

 

 ペルシアは笑いながらも、耳で拾う。カイエの“本音です”は、声の揺れが少ない。迷いがない。――言葉が本当に本音のときの、まっすぐな音。

 

 そんなやり取りをしているうちに、ブリーフィングルームの前へ着いた。

 

 扉のプレートには「10th Cabin Crew Briefing」と書かれている。

 

 ペルシアが、ドアノブに手をかける前に一度だけ深呼吸をした。

 

(……よし。まずは、様子見)

 

 そして扉を開ける。

 

 中には十班の乗務員たちがいた。

 

 ――いた、のだけれど。

 

 ペルシアは一瞬、目を瞬いた。

 

 空気が、軽い。

 

 軽いというより、浮いている。ブリーフィングルーム特有の、ほんの少し張りつめた糸みたいなものがない。椅子は適当に引かれ、テーブルの上には端末が置かれっぱなし。制服の襟がきちんと整っていない者もいる。誰かが笑っていて、別の誰かが菓子袋を開ける音がした。

 

 声が重ならない。緊張も重ならない。――そして、意識も重なっていない。

 

 カイエも、足を止める。

 

 ペルシアは、耳で拾う。

 

 ・「今日って短い便だっけ?」

 ・「まあ定期便なら平気っしょ」

 ・「チーフいないって気楽〜」

 ・「やべ、昨日寝てない」

 ・「乗客の数、そこまで多くないよね?」

 

 その中に、油断という名の音が混ざっている。ほんの薄い膜みたいに、部屋全体を覆っている。

 

 ペルシアは笑顔を作ったまま、目だけで全体を見渡した。

 

 自分が入ってきたのに、起立しない。挨拶が遅れる。視線がバラバラ。

 

 ……なるほど。

 

 これが十班の“通常”なのだ。

 

「おはよー」

 

 ペルシアは、まず明るく言った。声を強くしない。ここで強くすると、反発が起きる。反発が起きると、その反発の音が“対立”として船内に持ち込まれる。そうなると後で面倒だ。

 

 十班の乗務員たちが、遅れて「おはようございます」と返す。

 

 カイエは一礼する。丁寧な所作が、逆にこの部屋で浮いた。

 

 ペルシアは、すぐ隣の席に座っていた若い乗務員に、さらりと聞いた。

 

「ねえ、ブリーフィングっていつもこうなの?」

 

 乗務員は悪びれもせずに、肩をすくめた。

 

「定期便の時は、ほとんどやりませんよ。だって、いつも同じですし」

 

 ペルシアは、頭を抱えたくなった。

 

 いや、実際、片手で額を押さえた。

 

「……はぁ。そう」

 

 カイエが小声で、「大丈夫ですか」と耳打ちする。

 

「大丈夫じゃない」

 

 ペルシアが即答した。

 

 その即答の速さに、周りの乗務員が少しだけ姿勢を正す。“大丈夫じゃない”の声には、冗談の余地がなかったからだ。

 

 ペルシアは立った。

 

 立って、笑った。――笑顔のまま、声を落とす。

 

「じゃあ、今日から変えるね」

 

 部屋が、静かになる。

 

 ペルシアは続けた。

 

「今日、チーフがいない。だから代理で私が指揮を取る。……代理だけど、指示は本番。いい?」

 

 返事が遅れる。

 

 ペルシアは、その“間”を逃さない。返事が遅れるのは、軽く見ているか、理解していないか、どっちかだ。

 

「返事」

 

 笑顔のまま、短く言うと――

 

「はい」

 

「はい!」

 

「はい、すみません」

 

 ばらつきながら返る。

 

 ペルシアは頷いた。

 

「よし。まず確認ね。今日の便、定期便だからって舐めてる人、手を挙げて」

 

 ざわり、と空気が揺れる。誰も挙げない。

 

「賢いじゃん」

 

 ペルシアは褒めるように言って、次の言葉を落とした。

 

「じゃあ、舐めてない証拠見せて。――“定期便”が一番事故が起きる理由、言ってみて」

 

 誰も答えない。

 

 カイエが一歩前に出ようとしたが、ペルシアが目線で制した。今はカイエが出ると、十班の面子が潰れる。潰れた面子は反発に変わる。

 

 ペルシアは、部屋の“沈黙の質”を聞き分けた。分からない沈黙だ。考えている沈黙じゃない。

 

「答えはね」

 

 ペルシアは淡々と言う。

 

「慣れるから。油断するから。確認を飛ばすから。声掛けを省略するから。勝手に『大丈夫』だと思うから。――“定期便”って言葉は、安全の保証じゃない。安全の敵になりやすいラベルなの」

 

 誰かが喉を鳴らした。

 

 ペルシアは続ける。

 

「十四班が特別便しかやらないのは、偉いからじゃない。現場の条件が違うから。

 でもね、条件が違っても、私たちの仕事は同じ。

 お客様の命を守る。――それだけ」

 

 カイエが小さく頷いた。

 

 ペルシアは、端末を開く。

 

「よし。今日のブリーフィング、やるよ。『ほとんどやらない』は今日で終わり。短く、でも必要なことだけ。全員、端末開いて」

 

 乗務員たちが慌てて端末を操作する。何人かは、パスコードに手間取っている。ペルシアは、そこも耳で拾う。慣れていない。つまり、普段ブリーフィングで端末を開いていない証拠。

 

(……ほんと、すごいな。逆に)

 

 ペルシアは内心で毒づきながら、外では笑顔のまま進める。

 

「航路、所要、搭乗人数、座席配置。医療対応者は誰?AED位置、酸素マスク位置。

 それから今日、家族連れが多い。子どもの動線、トイレの混雑、迷子リスク。ここは事前に潰す」

 

 十班の誰かが「そこまで必要ですか」と言いかける。

 

 ペルシアはその声の“トーン”を聞いた。反発ではない。単純な疑問。――なら、潰せる。

 

「必要。子どもが走って転んだら、親が怒る。親が怒ると周りがざわつく。ざわつくと、別のお客様が不安になる。不安は連鎖する。連鎖すると、声が大きくなる。声が大きくなると、クレームになる。クレームになると、現場が削られる。削られると、事故が起きる」

 

 ペルシアは一息で言った。

 

「だから最初に潰す。現場はね、未来の火種を消す仕事なの。火が出てから走るのは遅い」

 

 十班の乗務員たちの目が、少しだけ変わった。

 “言い方は軽いのに、内容が重い”。それがペルシアの怖さだ。

 

 カイエが、ペルシアの隣に立ち、補足するように言う。

 

「ペルシアさんの言う通りです。今日の便も、通常運航でも、揺れや酔い、急病、迷子、荷物の紛失、そういう小さな事が重なると一気に大きな事になります。最初に線を引きましょう」

 

 カイエの声は柔らかい。けれど芯がある。

 その声が、十班の乗務員の背中を少し押した。

 

 ペルシアは頷き、さらに続けた。

 

「次。役割分担。

 前方担当、中央担当、後方担当。ギャレー責任者。キッズ対応のサブ。医療連携係。

 『誰でもいい』は禁止。誰でもいいって言う時点で、誰も責任取らないから」

 

 ざわり、とした空気がようやく“仕事のざわめき”に変わる。端末を叩く音が増える。椅子の軋みが揃う。視線が、ペルシアに集まり始めた。

 

(やっと、船内の空気になってきた)

 

 ペルシアは耳を澄ませる。

 今のざわめきには、焦りが混ざっている。焦りは悪くない。焦りは“自覚”だからだ。問題は焦りを放置してパニックにすること。

 

 ペルシアは、わざと口調を少し軽くした。

 

「大丈夫。今から整えればいい。誰も最初から完璧じゃないし。――エリンだって、最初は私の後ろで転びそうになってたんだから」

 

「え、エリンさんが?」

 

 誰かが驚く。

 

「そうよ。信じらんないでしょ。でもね、転びそうになったからこそ、転ばないように“仕組み”を作る。エリンはそれが上手い」

 

 ペルシアは、エリンの名前を出すときだけ、声の柔らかさが少し増える。

 カイエはそれに気づいて、心の中で小さく笑った。

 

 そしてペルシアは、最後に釘を刺す。

 

「今日、私がここにいる理由はひとつ。

 “現場を守るため”。十四班が宙の上で無茶してるから、こっちはこっちで崩せない。

 だから十班も、今日だけは十四班だと思って動いて。いい?」

 

 十班の乗務員たちが、今度はしっかり返事をした。

 

「はい!」

 

 ペルシアは頷く。

 その返事の音に、揺れが少ない。さっきよりずっと、揃っている。

 

 だが――ペルシアは安心しない。

 

 耳が拾う。

 返事の中に、まだ薄い“面倒くささ”の糸が混じっている。完全には消えない。それは人間だ。だから、仕組みで支える。

 

「よし。じゃあミニ訓練」

 

 ペルシアが言うと、十班の空気が固まった。

 

「え、今ですか?」

 

「今。出発前の三分が、一番安い」

 

 ペルシアは笑顔で言い切る。

 

「想定。子どもが走って転倒。親がパニック。周りがざわつく。誰が最初に声を掛ける?誰が他のお客様を落ち着かせる?誰が医療確認?誰が報告?誰が通路確保?」

 

 質問を、矢継ぎ早に投げる。

 

 十班の乗務員が口を開きかけるが、言葉が詰まる。

 

 ペルシアは、その“詰まり”を責めない。詰まりは、今まで考えたことがない証拠。なら、今作る。

 

「いい。じゃあ決める。

 最初の声掛けは前方担当。通路確保は中央。医療確認は医療係。報告はカイエが受ける。私は全体の音を拾って、指示を飛ばす」

 

 カイエが一瞬驚いた顔をする。だがすぐ頷いた。

 ペルシアは彼女の能力を理解している。カイエは感情の波が少ない。報告の受け口に向いている。

 

「カイエ、声の温度は低めでいい。パニックは熱が伝染するから」

 

「分かりました」

 

「よし。次。急病。呼吸苦。高齢者。座席は中央。誰が酸素?誰が家族対応?誰が他のお客様の視線を切る?」

 

 十班の乗務員たちが、ようやく“考える顔”になっていく。

 ペルシアはその変化を聞き取る。声が少しだけ低くなる。呼吸が揃い始める。雑談の音が消える。

 

 これだ。

 

 ようやく、ブリーフィングルームが“宙を守る場所”になった。

 

 ペルシアは、最後に全員の顔を見渡して言った。

 

「ねえ。私、怒ってるわけじゃないの。

 ただ、守りたいだけ。――あなた達も、守りたいでしょ?」

 

 十班の乗務員の一人が、小さく頷いた。

 

「……守りたいです」

 

 その声は、嘘じゃない。

 ペルシアは耳で分かる。迷いの音が消えている。

 

「よし」

 

 ペルシアは軽く笑った。

 

「じゃあ、今日だけは私がチーフで、あなた達は十四班みたいに動く。

 終わったら……まあ、ドーナツ奢ってあげてもいい」

 

「えっ」

 

 空気がふっと緩む。

 緊張の糸が切れない程度に、呼吸ができる程度に。

 

 ペルシアは、その緩み方を選ぶのが上手い。

 エリンとは違うやり方で、同じ目的を達成する。

 

 カイエが、ペルシアの横顔を見て思う。

 

(やっぱり、ペルシアさんも凄い)

 

 エリンが“状態を整える役”なら、ペルシアは“音から崩れを拾って、先に塞ぐ役”だ。

 目に見えないひび割れを、誰より先に聞きつけて、手を当てる。

 

 ペルシアが端末を閉じる。

 

「じゃあ行くよ。搭乗開始まで、あと十五分。

 全員、持ち場確認。声掛けの言葉、頭に入れて。

 ――今日、誰も泣かせない。誰も怪我させない。誰も不安にさせない。分かった?」

 

「はい!」

 

 返事が揃った。

 

 ペルシアはその音を聞いて、ようやく胸の奥の苛立ちが少し薄くなるのを感じた。

 

 そして、心のどこかで、宙の上にいる十四班に向けて小さく毒づく。

 

(……そっちが無茶してるんだから、こっちは無茶できないのよ)

 

 でも同時に、思う。

 

(エリンがいる。リュウジがいる。タツヤ班長が、必死に時間を作った。

 だから……大丈夫。大丈夫なように、私がここを整える)

 

 ペルシアはキャリーケースの取っ手を握り直し、扉を開けた。

 

 軽かった十班の空気が、今はちゃんと重い。

 責任の重さ。守る重さ。宙に対する重さ。

 

 その重さを、ペルシアは嫌いじゃなかった。

 

ーーーー

 

 乗務員の空気が変わったからといって、現場で即、魔法みたいに動けるわけじゃない。

 

 日々の訓練の積み重ねがあって、ようやく“手”が勝手に動く。頭で考える前に身体が先に反応する。それが、宙の上で人を守る仕事の最低条件だ。

 

 ――だからペルシアは分かっていた。

 

 あのブリーフィングルームで、十班の空気を“重く”した。責任の重さを感じさせた。やる気の火もつけた。けれど、現場は別物だ。現場は、容赦なく本性を剥がす。

 

 出発は無事だった。

 

 搭乗も、離陸も、形式としては問題ない。

 

 しかし、宇宙船の中は――想像よりも酷かった。

 

 コロニーの外へ抜ける瞬間、機体が軽く震え、客室の照明が一瞬だけ揺らぐ。その“わずか”な揺れに、何人もの乗客が過剰に反応した。手すりに掴まる。息を止める。小さな悲鳴が漏れる。それをなだめるべき乗務員が、別のところで手一杯になっている。

 

 ペルシアが担当しているブロック――中央寄りのエリアでさえ、酷い。

 

 ドリンクカートが止まるべき場所に止まれていない。通路の中央で立ち往生している。

 席を立つ客を誘導できず、人がぶつかり、イライラの音が増える。

 子どもが走る。親が叱る。叱り声がさらに周囲の不安を煽る。

 “よくある光景”なのに、誰も整理できていない。

 

(……これ、他のブロックも同じね)

 

 耳が拾う。遠くの方から、同じ種類のざわめきが幾つも重なっている。大声、泣き声、怒り声。

 「すみません!」が連続しているのは、対応が追いついていない証拠だ。

 

 ペルシアは、無線機を口元に寄せた。

 

「カイエ、そっちは大丈夫?」

 

 返事はすぐ返ってきた。

 

『こっちは大丈夫です!』

 

 ――早い。早いが、声が強張っている。

 

 いつもより高く、息が短い。語尾に余計な力が入っている。“大丈夫”の言い方が、真逆の意味を持つときの音だ。

 

(手一杯ね)

 

 ペルシアはそれだけで理解した。理解して、次の手を考える。

 誰が悪い、と言っている余裕はない。現場では、悪いのはいつだって“準備不足”だ。準備不足は、責めても解決しない。埋めるしかない。

 

 ペルシアは自分のブロックを一度、ぐるりと見渡す。

 視線だけで足りない分は、耳で補う。テーブルを叩く音。荷物の落ちる音。呼吸の荒さ。小さなすすり泣き。笑い声の種類。怒声の方向。

 

 優先順位を即座に切り替える。

 

(まずは危険の芽。次に不安の火。最後にサービス)

 

 通路の端で、背もたれにしがみつくように座っている若い女性がいた。顔色が白い。指先が震えている。

 隣の男性が「大丈夫?」と声を掛けているが、余計に怖がらせている。言葉が増えるほど、頭の中の恐怖が膨らむタイプの人だ。

 

 ペルシアは、そこへすっと近づいた。

 

「こんにちは。大丈夫、落ち着いて。揺れは“危ない揺れ”じゃないわ」

 

 声を低く、柔らかく。短く。言葉の数を減らす。

 

「……でも、怖い……」

 

 女性の声がかすれる。

 

「うん、怖いよね。でもね、怖いって言えてるなら大丈夫。呼吸、一緒に。吸って、吐いて」

 

 ペルシアは、指でゆっくりリズムを刻む。

 その横で、十班の乗務員が慌てて「酔い止めを」と言いかけた。

 

 ペルシアは振り向かずに言った。

 

「今は薬じゃない。毛布持ってきて。あと、水。小さいコップで」

 

「は、はい!」

 

 焦り声が返る。

 

 焦り声は気にしない。焦りは正常だ。ただ、焦りに飲まれるな。

 

 ペルシアは女性の目線を、窓の外へ誘導した。怖いとき、人は内側へ落ちる。だから外へ引っ張る。

 

「ほら、あそこ。光が一筋、見えるでしょ。あれ見て。名前つけていいよ。自分だけの目印」

 

 女性は震えながらも窓へ目を向け、少しだけ呼吸が戻った。

 

 次。

 

 今度は、楽しそうに大声で騒ぐ集団。酒が入っている。笑い声が大きく、椅子を蹴る音が混じっている。

 周囲の乗客が嫌な顔をしている。嫌悪は、不安と同じくらい空気を悪くする。

 

 十班の乗務員が「静かにしてください」と言うが、言い方が硬い。硬い言い方は、相手の反発を生む。

 

 ペルシアはそこへ歩き、笑顔で割って入った。

 

「わあ、楽しそう。いいね。――でもね、ここは“船の中”なの。声のボリューム、半分にしてくれる?そしたら私、乾き物、サービスする」

 

「え、マジ?」

 

 男が酔った目で笑う。

 

「マジ。だって、私、気分良く帰ってほしいもん。ね、約束」

 

 約束、という言葉は効く。酔っている人間は“ゲーム”が好きだ。ルールを与えると従う。

 

 集団の声が少し落ちた。

 

 ペルシアは振り返らず、後ろにいる乗務員へ小声で言った。

 

「今のうちに、周りの席に“ご迷惑おかけしました”の一言。声は低く。短く。よろしく」

 

「……はい」

 

 乗務員の声が震える。

 でも、震えてもいい。やるべきことをやれば、次から震えなくなる。

 

 次。

 

 走り回る子ども。

 

 十四班なら、ククルが飛び込む。カイエが動線を切る。エマが親へ声を掛ける。エリンなら“走らなくても済む環境”に整える。

 だが今、十班は誰も動けない。動けないというより、動く習慣がない。走っている子どもを見て、誰かが“誰かが止めるだろう”と心の中で思っている。

 

(止めるわよ。私が)

 

 ペルシアは子どもの目線にしゃがみ込む。

 追いかけない。追いかけるとゲームになる。子どもは追いかけられると速くなる。

 

「ねえ、あなた。ここ、鬼ごっこ禁止ゾーン」

 

「えー!」

 

 子どもが口を尖らせる。

 

「じゃあ、代わりに“秘密の任務”あげる。今から私の助手。あそこに座ってるおばあちゃんに、これ届けて。『大丈夫ですか?』って言うの。できる?」

 

 子どもの目が輝く。

 “役割”を与えれば、走る理由が変わる。走りたい衝動は消えない。なら、向け先を変える。

 

「できる!」

 

 子どもが小走りで向かう。

 

 ペルシアは立ち上がり、親を探す。

 親は、疲れた顔で荷物を抱えていた。目が合う。

 

「すみません。お子さん、元気だったもので、今、任務出しました。危ないから、次は席の周りで遊べるやつにしましょう」

 

 責めない。お願いでもない。提案。

 親は肩の力を抜いて、頷いた。

 

「……ありがとうございます」

 

 その声は、泣きそうだった。

 

 ペルシアは一瞬だけ、胸の奥がきゅっとなる。

 こういう親が、一番危ない。疲れ切っている人は、ちょっとしたことで崩れる。崩れると、子どもも崩れる。

 

(守る。ここも守る)

 

 ペルシアは無線を取る。

 

「全員、聞こえる?今から指示出す」

 

 返事はまばらだが、構わない。指示は“聞こえた人”から動かす。

 

「前方ブロック、通路、カート止めて。動線確保。中央ブロック、子ども走り対策、席周りでできる遊び用意。後方ブロック、酔い止めと毛布、先に配れるだけ配って。迷ってる暇ない。優先は“安全”」

 

 十班の乗務員が、ぱっと動く者と、戸惑う者に分かれた。

 戸惑いは予想通り。訓練がない人間の“戸惑い”は、反射神経じゃなく、経験値の不足だ。

 

 ペルシアは、戸惑っている者へ直接行く。

 

「あなた、名前」

 

「え、えっと……」

 

「名前はいいわ。ここ、持って。ここから先、通路、絶対空ける。分かった?」

 

「は、はい!」

 

「よし。次。あなた、ドリンクのリザーブ遅れてる。だけど今はドリンクより毛布。分かる?」

 

「……はい、分かります」

 

「分かるなら動ける。行って」

 

 命令口調ではない。決める口調。

 現場では“決める声”が必要だ。迷いが混ざると迷いが伝染する。

 

 ペルシアは、耳で拾う。

 

 ・「どうしよう」

 ・「私だけじゃ無理」

 ・「誰か助けて」

 ・「これ、いつもこうなの?」

 

 その声が、部屋ではなく客室で出ている。危険だ。

 乗務員が“怖い”と感じ始めたら、乗客はもっと怖い。

 

「カイエ」

 

 ペルシアは無線に口を寄せた。

 

「そっち、嘘つかないで。大丈夫じゃないでしょ」

 

 一拍。

 

『……はい。正直、きついです』

 

 カイエが小さく言った。

 その正直さが、ペルシアの中の苛立ちを少し溶かす。

 

「よし。じゃあ、今から“二分だけ”作る。後方の一人を中央へ回す。あなたは一回、深呼吸して水飲んで。倒れたら終わり」

 

『……分かりました』

 

 カイエの声が少し落ち着いた。

 “許可”があると、人は呼吸できる。休めと言われても休めない人間に必要なのは、休んでいいという許可だ。

 

 ペルシアは、十班の乗務員の一人を捕まえる。

 

「あなた、後方担当でしょ。二分だけ中央。カイエの補助。お客様の声掛け、短く、優しく。『大丈夫ですか』『お手伝いします』これだけ」

 

「はい……!」

 

 動いた。

 動き始めたら、次が生まれる。

 

 ペルシアは自分のブロックへ戻りながら、手を止めない。

 毛布を渡す。酔い止めの説明を短くする。水を小さなコップで配る。

 大声の集団を再度見て、音量が上がっていたら目だけで“下げろ”と合図する。

 子どもには“任務”を増やす。紙とペンを渡して“乗務員のお手伝い日記”を書かせる。親には“助かった”と言って自己効力感を作る。

 

 ――そうやって船内の“状態”を整える。

 

 ペルシアはふと、息を吐いた。

 

(エリンは、いつもこれを一人でやってるんだよな)

 

 エリンがここにいれば、もっと静かに、もっと滑らかに整っていく。

 でも今は、いない。

 だから自分がやる。

 

 焦りがない乗務員の表情を見て、ペルシアは理解した。

 

(これが通常運転……だから、改善されないのよ)

 

 “慣れ”は恐ろしい。

 慣れは、限界を限界と思わせなくする。

 限界を限界と思わなければ、訓練しようという意識が生まれない。

 

 ペルシアは、歯を噛みしめる。

 

 それでも、今は説教している場合じゃない。

 この便を、無事に終わらせる。それが先だ。

 

 遠くのブロックから、赤ん坊の泣き声が聞こえる。

 泣き声の質が変わった。空腹の泣き声ではない。驚きと不安の泣き声だ。

 

 ペルシアは無線を入れる。

 

「前方ブロック、赤ちゃん泣いてる。母親、声が震えてる。誰か行って。『大丈夫』じゃなくて『一緒にやりましょう』って言ってあげて」

 

 返事が遅れる。

 ペルシアは一瞬、目を細めた。遅れは致命傷になる。

 

 だが次の瞬間、『行きます!』と声が返った。

 十班の若い乗務員の声だ。震えているが、行くと決めた声。

 

「よし。ありがとう」

 

 ありがとう、を言う。

 現場で一番効く燃料は、評価だ。

 評価は、やる気を起こす。やる気は、行動を起こす。行動が積み重なると、訓練になる。

 

 ペルシアは、自分の腕時計を見る。

 まだ、序盤だ。まだ、航路は長い。

 

 そして、宙の上では今頃、リュウジが無茶な航路を操縦している。エリンが乗客を守っている。

 彼らも、同じように戦っている。

 

(だったら、私も戦うしかない)

 

 ペルシアは無線を握り直した。

 

「全員、聞いて。これ、今日だけの“事故未遂”だと思わないで。今日のこの感じ、次に持ち越したら本当に事故になる。

 だから今のうちに整える。――私が整える。ついてきて」

 

 声は軽い。

 だが、その奥には重さがある。

 

 十班の乗務員たちが、少しずつ動き方を変え始めた。

 通路が空き始める。声掛けが増える。お客様の表情がほんの少し緩む。泣き声が減る。怒声が減る。

 

 完全じゃない。まだぎこちない。

 でも、ゼロよりは確実に前へ進んだ。

 

 ペルシアは、誰にも見えないところで小さく拳を握った。

 

(……よし。いける。いけるよ。エリンとリュウジが頑張ってるんだから、私も頑張らないと)

 

 ため息は飲み込んだ。

 代わりに、笑ってみせた。

 

 宙の上で人を守る仕事は、格好いいだけじゃない。

 地味で、泥臭くて、頭が痛くなるほど面倒だ。

 

 ――それでも、守る。

 

 ペルシアは次の呼び出し音を聞き取り、無線に口を寄せた。

 

「はい、ペルシア。どうした?」

 

ーーーー

 

 一方――リュウジとエリンが乗る船は、冥王星へ向けて滑るように宙を進んでいた。

 

 窓の外は、青い闇。星々の光が散り、航路標識の微かな点滅が遠くで呼吸している。

 機体は揺れない。エンジンの低い唸りも、一定の鼓動に整えられている。客室に漂うのは、離陸直後のざわめきがほどけたあと特有の――“落ち着き始めた空気”だった。

 

 エリンは、その空気の変化を目で見ない。耳と肌で拾う。

 

 座席のスプリングが軋む音の間隔。

 スプーンがカップに触れる軽い音。

 小さな咳が、緊張の咳から、乾燥の咳に変わっていく。

 会話の声量が、上擦った音から、平たい音へ落ちる。

 

(……うん。大丈夫。ここは整った)

 

 もちろん“何もない”わけじゃない。宙の上では、何もないことの方が珍しい。

 ただ、今の客室は、エリンの手を離しても維持できる状態になった。維持できる状態になれば、次は“守りの運用”に移れる。

 

 エリンは、後方ブロックで忙しそうに動いているククルに近づいた。

 

 ククルは、先ほどまでの慌てた雰囲気が少し薄れている。声掛けのテンポが良い。目線が上がっている。

 床に落ちた紙ナプキンを拾うときの動作も滑らかだった。余裕が戻ってきた証拠だ。

 

「ククル」

 

「は、はい!エリンさん!」

 

 ククルは背筋を伸ばし、はっとした顔で振り向いた。

 その顔がもう“泣きそうな顔”じゃないことに、エリンは胸の奥で小さく息を吐く。

 

「ここ、落ち着いてきたわね。今の状態、維持して。任せたわよ」

 

 “任せたわよ”は、責任の言葉だけじゃない。信頼の言葉だ。

 ククルは一瞬、目をぱちりと瞬かせて、それから大きく頷いた。

 

「……はい!任せてください!」

 

 声が明るい。

 それでいい。船内は、明るさで救われる瞬間がある。特に、宙の上では。

 

 エリンは頷き返し、客室用のカウンターへ向かった。

 そこに置かれた備品の棚を開ける。カップ、スティックシュガー、ミルク、小袋のチョコ。飴玉。

 それを手早く、しかし音を立てないように整えてトレーに乗せる。熱いコーヒーは、自分の分と操縦室用。香りで集中を切らさないために。

 

(……ここで香りが役に立つの、ずるいわよね)

 

 エリンは内心で苦笑しながら、操縦室へ向かった。

 

 通路を歩く音すら抑える。足先から着地し、床に触れる時間を短くする。

 客室の“落ち着き”を崩したくない。

 それと同じくらい、操縦室の集中を崩したくない。

 

 操縦室の扉が近づくにつれ、空気が変わる。

 客室が“人の空気”なら、操縦室は“機械の空気”だ。乾いた金属の匂い。計器の微かな熱。

 そして、真ん中にいる男の――静かな緊張。

 

 エリンはノックを一回だけ、小さく。

 返事を待たず、扉を開ける。

 

「失礼します」

 

 操縦室の中に入ると、リュウジの背中があった。

 座席に深く沈まず、背筋を立てた姿勢。肩は力んでいないが、指先が正確に動いている。

 

 エリンは距離を測った。

 近すぎれば邪魔になる。遠すぎれば、持ってきたものの意図が伝わらない。

 “手を差し出せるけれど、触れない距離”。

 

 そこに、そっとコーヒーのカップを置く。

 置く音を消すために、まずトレーを触れさせてから、カップを滑らせるように置いた。

 同じように、チョコと飴玉を横に並べる。チョコは溶けないように小袋のまま。飴玉は二つ。ひとつは、喉用。ひとつは、気分転換用。

 

 リュウジは正面を見たまま、低く呟いた。

 

「……これから自動操縦にします」

 

「分かったわ」

 

 エリンも同じように、短く答える。

 

 リュウジの手がパネルを操作し、切り替えの音が小さく鳴る。

 操縦桿の反応が変わり、計器の表示が滑らかに変化する。

 その瞬間、操縦室の空気がほんの僅かに緩んだ。張り詰めていた糸が、少しだけたわむ。

 

 リュウジが小さく息を吐いて、言った。

 

「……ありがとうございます」

 

 礼の言葉は、コーヒーに対してだけじゃない。

 エリンはそう受け取って、微笑んだ。

 

「いいのよ」

 

 エリンはコーヒーの香りが強くなりすぎない位置に座った。

 座った、というより“腰を置いた”だけ。いつでも立てるように。

 

「客室は落ち着いているわ。だいぶ整った」

 

 リュウジは横目で一瞬だけ頷く。

 

「ありがとうございます」

 

 そしてすぐに、リュウジは“自分の領分”を越えない形で言った。

 

「……客室で何かあったら、いつでも言ってください」

 

 自分が操縦しているから言うのではない。

 “一緒に守る”と言っている。

 

 エリンはその言葉が嬉しくて、でも顔には出しすぎないように、軽く頷いた。

 

「ええ。ありがとう」

 

 短い会話の間にも、リュウジの目は計器を追い続けている。

 それが彼の礼儀で、彼の優しさだ。

 

 ふと、リュウジが言った。

 

「ペルシアも飛んでますね」

 

「ええ。でもあの子なら大丈夫よ」

 

 エリンは即答した。

 “信頼”の言葉は、迷いがないほど強い。

 

 リュウジはそれでも、納得していないというより、心配が残っている顔をした。

 心配を隠すのが下手ではない。だが、隠さない。隠さないのは、責任感があるからだ。

 

「分かってます」

 

 リュウジは言って、少しだけ言葉を選ぶように間を置く。

 

「……ただ。チーフパーサーの代理なんて、初めてですよね」

 

 “初めて”という言葉には重みがある。

 宙の上での初めては、運が悪ければ致命傷になる。

 

 エリンは微笑みを深くした。

 

「ええ。でもね、大丈夫よ」

 

 リュウジが視線だけで問い返す。

 エリンは思い出したように、苦笑した。

 

「ペルシアは元々、チーフパーサーになる筈だったんだから」

 

 リュウジの眉が、ほんの少し上がる。

 

「ペルシアが……ですか?」

 

 エリンは頷く。

 

「ええ。ペルシアがチーフパーサーで、私が副パーサー」

 

 リュウジが思わず言葉を漏らした。

 

「……意外ですね」

 

 エリンは軽く笑う。だが笑い方は、からかいではない。

 

「リュウジだって、ペルシアの実力は分かってるでしょ?」

 

「いえ」

 

 リュウジは即座に首を振り――次の言葉で、エリンの胸を少しだけ温かくした。

 

「ペルシアじゃなくて。エリンさんが副パーサーなのが、です」

 

 エリンは目を瞬かせて、それからふふっと声を漏らす。

 

「そんな事はないわよ」

 

 謙遜、というより、受け流し。

 でも、内心は少しだけ照れていた。

 

「なんでペルシアはチーフパーサーにならなかったんですか?」

 

 リュウジが聞く。

 エリンは一瞬だけ目を遠くにやって、思い出す。

 

 当時のペルシアの顔。

 真面目な顔をしているのに、次の瞬間ふざける口調になる、あの子の癖。

 

「それがね」

 

 エリンは苦笑して、言った。

 

「『私には柄じゃない』って」

 

 言いながら、エリンはペルシアの声色を少しだけ真似る。

 わざとらしくない程度に、あの子っぽい軽い鼻息を混ぜて。

 

「『ずっと背筋伸ばして、“お客様〜”って笑ってるの、性に合わないのよ』ってね」

 

 リュウジが小さく笑った。

 声を出さない笑い。肩だけが少し揺れる。

 

「……ペルシアらしいですね」

 

「でしょう?」

 

 エリンは肩をすくめる。

 

「だから、ペルシアがいくら代理でも大丈夫よ。立場が変わっても、あの子はあの子のやり方で整える」

 

 リュウジは頷いた。

 だが、その頷き方は“諦め”ではない。納得だ。

 

「そうですね」

 

 そしてリュウジは、ふっと真剣な声になる。

 

「乗客は頼みます」

 

 頼む、という言葉の中に、信頼がある。

 信頼があるから、エリンも動ける。

 

「ええ」

 

 エリンは短く答え、立ち上がろうとした。

 

 そのとき、エリンの耳元の無線が、小さく震える。

 

『エリンさん、どこにいますか?』

 

 ククルの声だった。

 焦りはないが、呼吸が少し早い。客室で何かが動き始めた音。

 

「すぐ行くわ」

 

 エリンは無線へ短く返し、操縦室の空気を崩さないように身を引く。

 

「それじゃあ、また来るわね」

 

 扉へ向かって歩き出しながら、振り返る。

 

 リュウジはコーヒーに手を伸ばさず、まず計器を見てから、ようやく小さく頷いた。

 その几帳面さが、逆に安心をくれる。

 

「はい、お願いします」

 

 エリンは扉を静かに閉めた。

 

 ――そして客室へ戻る。

 

 操縦室で交わした“短い言葉”が、胸の奥で支えになっているのを感じながら。

 この船の安全は、操縦だけで守られているわけじゃない。

 客室だけで守られているわけでもない。

 

 互いが互いを信じて、互いの仕事を預け合って――

 だからこの船は、冥王星へ向かって真っ直ぐ進める。

 

 エリンは通路の先で、ククルが小さく手を上げているのを見つけた。

 

 その横で、誰かの声が震えていた。

 次の“整えるべき波”が、もう始まっている。

 

(行くわよ)

 

 エリンは歩幅を一つだけ速めた。

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