次の日も、エリンの“優しい訓練”は続いた。
優しい――それは、言葉の響きだけなら柔らかい。だが十四班の乗務員がその単語を口にするとき、そこには別の意味が混ざる。
優しさとは、逃げ道を塞がれた上で、確実に成長させられることだ。
訓練室の床はいつもより少し冷たく感じた。冷たいのは床だけじゃない。空気も、光も、そして背筋に貼りつく緊張も。
ミラは端の列に立ち、両手を太ももの横に揃えたまま、目だけでエリンの動きを追っていた。
背筋は伸びている。声も出ている。だが、目が泳ぐ。
カイエの指導で“形”は整ってきた。
しかしエリンの訓練は“形”を壊してから、もう一段上に作り直す。
ミラはまだ、その壊され方に慣れていない。
「――じゃあ、ここからは“同時進行”ね」
エリンが言う。声は穏やかで、笑みも柔らかい。
それだけに、訓練室の温度が一段下がったように感じる。
「ククル、今の位置から“お客様が転びそうな場面”を作って。ミラはそれを拾って、エマはフォロー。カイエは全体を見て、必要なら介入」
「は、はいっ!」
ククルが勢いよく返事をした。
その勢いが、危ういとエリンは知っている。だからわざと“ククルに主役”を振る。
ミラの前方で、ククルがわざと一歩足を滑らせる真似をした。転ぶ寸前の体勢。
訓練用のマットの上。安全は確保されている。
でもミラの呼吸は乱れた。
現場と同じだ。頭が真っ白になる速度だけは、本番と変わらない。
「――お、お客様!」
ミラが一歩踏み出しかけ、止まる。
何を優先すべきか――“声かけ”か、“身体を支える”か、“周囲の安全確保”か。
全部やろうとして、結局、動けない。
その一瞬、エリンの視線がミラの足元に落ちた。
ミラの踵がほんの少し浮き、重心が前に崩れている。
「ミラ」
エリンの声は柔らかい。
なのに、刃みたいに届く。
「足、床に預けて。まず、自分が転ばないこと」
「……っ、はい!」
ミラは大きく息を吸って、両足の裏全体を床に押しつける。
重心が戻る。目の焦点が合う。
そこからミラはようやく動けた。
「お客様、大丈夫ですか? こちら、危ないので……」
言葉はまだ硬い。
でも“止まらない”だけで、十分な成長だった。
エマが自然に横に入り、ククルを支える真似をして場を整える。
カイエは全体を見ながら、必要最低限だけ指示を飛ばした。
「ミラ、通路の人の動線、先に止めて。エマ、後方の乗客役、声かけ。ククル、表情、痛そうにしすぎ。リアルだけど、お客様が不安になる」
「ご、ごめんなさい……!」
「謝らなくていい、修正して」
カイエの声は以前ほど尖っていない。
“真面目さ”が“鋭さ”に変わる寸前を、どこかで踏みとどまっている。
その様子を見て、エリンは内心で頷いた。
ペルシアがいなくなって、カイエは必死だ。
でも必死なままだと折れる。
だから“必死の形”を変えさせる必要がある。
訓練はテンポを変えながら続いた。
飲み物カートの操作。
揺れのある通路での歩行。
子どもの興奮と、高齢者の不安への同時対応。
そして最後に、“無線が重なる状況”の整理。
エリンは声を荒げない。
ただ、淡々と“正解に近い手順”を積み上げる。
優しい訓練――それは、逃げる暇を与えない静かな圧だった。
やがて、訓練室の壁にかけられた時計が、決められた終了時刻を指した。
エリンが手を叩く。
「はい、おしまい。」
その瞬間、椅子が一斉に鳴った。
誰もが“崩れる許可”をもらったみたいに、どさりと腰を下ろす。
ククルは両手を太ももに置いたまま、肩を上下させた。
エマは机に肘をつきかけて、慌てて姿勢を正す。
カイエは無意識に周囲を見回し、全員が座ったのを確認してからようやく息を吐いた。
ミラだけは、座る動作すらぎこちない。
緊張が抜けると同時に、足が震える。
エリンは皆の前に立ち、優しい笑みを浮かべた。
「みんな、大丈夫?」
声の温度が、さっきまでと違う。
訓練の時の“優しさ”ではなく、仲間への“優しさ”だ。
ククルが、反射で手を挙げそうになってから、口だけで返事をした。
「だ、大丈夫です!」
言い切った瞬間、エリンの眉がほんの僅かに上がる。
ククルはそれを見逃さない。
「あら。大丈夫なら、続きをやりましょうか」
エリンがあっさり言った。
「え……」
ククルの脳が止まった。
固まる。背筋が勝手に伸びる。
椅子から立ち上がりそうになる。
周りの乗務員たち――特にミラが、恐る恐るククルを見た。
「これが噂の……」という顔だ。
エマが、顔を引きつらせながら呟く。
「……心臓に、悪いです」
エリンは、くすりと笑った。
「ふふっ。冗談よ」
その“冗談”が冗談に聞こえないのが、エリンの恐ろしさだ。
「ごめんね」
エリンは本当に申し訳なさそうに言いながら、全員の表情を確かめる。
その目は、“冗談”の皮を被った“観察”だった。
ククルは胸を押さえ、エマは大げさにため息をついた。
カイエは苦笑し、ミラは「え、えっと……」と混乱したままだ。
訓練室に、ようやく人間の温度が戻り始めた。
エリンは軽く咳払いをして、空気を整える。
「さて。それよりも――今日は終わりにしましょう」
柔らかく言う。
しかし、カイエが即座に疑いの目を向けた。
「……本当に終わりなんですか?」
言い方が半分、本気。半分、警戒。
それを聞いて、エマが吹き出しそうになり、ククルが必死に笑いを堪える。
エリンは肩をすくめる。
「ええ。本当に終わり。今日は他にやることがあるでしょう」
「やること……ですか?」
カイエが眉を寄せる。
ミラが、ぽつりと呟いた。
「……引き継ぎ、でしょうか……?」
ミラの声は小さい。
まだ自分が“場の中心になる”ことに慣れていない。
エリンはミラの方へ向き直り、目を細めて笑う。
「違うわ。ミラの歓迎会よ」
「え!?」
ミラが椅子の上で跳ねるように驚いた。
周囲の視線が一斉にミラに集まる。
「わ、私の、ですか?」
「ええ」
エリンが頷くと、ミラは顔を赤くして視線を泳がせた。
嬉しい、でも怖い。そんな混ざった表情。
ククルがぱっと顔を上げる。
「歓迎会……!?」
エマも嬉しそうに目を輝かせる。
「いいですね! 久しぶりに“ちゃんとした”集まり!」
カイエは、ほんの少しだけ表情を柔らかくした。
“仕事以外”という単語が、今の班には必要だ。
そして――その次に来る言葉が、皆をさらに驚かせた。
「今回は、リュウジが幹事で張り切ってるから」
エリンがさらっと言った。
「え!? リュウジさんが!?」
ククルの声が裏返る。
ミラも、信じられないという顔で口を開けたまま固まった。
「え、え……リュウジさんが……?」
カイエが珍しく感心したように言う。
「そういうことも出来るんだ」
エマが手を叩きそうになって、すんでのところで抑えた。
「楽しみです!」
その言葉が、訓練室の空気を軽く押し上げた。
高揚感が、じわっと広がる。
“何か楽しみにしていいんだ”という許可。
エリンは、その変化を見て、内心で息を吐いた。
ギリギリで保っている。
だからこそ、こういう小さな祭りが、支えになる。
エリンは手を叩く。
「そういうことだから、早く他の業務を終わらせましょう」
「はい!」
返事が揃う。
さっきまでの疲労の声ではない。
少しだけ弾む声だ。
ミラだけがまだ戸惑っていたが、ククルがすぐに近づき、耳打ちする。
「大丈夫だよ。歓迎会って言っても、怖くないから」
「……ほ、本当ですか?」
「うん。たぶん……」
「たぶん?」
「たぶん、エリンが“優しく”してくれるから」
ククルが言った瞬間、背後から声が落ちた。
「ククル?」
エリンの声。
柔らかい。柔らかいのに、背筋が冷える。
ククルはぴしっと背筋を伸ばした。
「は、はいっ! 何でもありません!」
エリンはにこにこしている。
「そう。じゃあ、今の“たぶん”は何かしら?」
「……っ」
エマが笑いを噛み殺し、カイエが額に手を当てた。
ミラは目を丸くして、ククルを見つめる。
ククルは真っ赤になって叫んだ。
「ぜ、絶対、優しいです!!」
その必死さに、訓練室のあちこちから小さな笑い声が漏れた。
笑い声は、久しぶりに“仕事の外側”にある笑いだった。
エリンは満足そうに頷く。
「よろしい」
そして、少しだけ真面目な顔に戻る。
「ミラ。今日は歓迎会。だからって気を抜くんじゃなくて――“楽しむ”っていう仕事をしなさい」
「……た、楽しむ……?」
ミラが不安そうに聞き返す。
エリンは頷いた。
「そう。楽しむ。今の十四班には、それが必要なの」
その言葉の裏に、全員が一瞬だけペルシアを思い出した。
あの笑い声。
あの雑さ。
あの、息継ぎの作り方。
沈黙が落ちかけた瞬間、エリンがぱん、ともう一度手を叩いた。
「さ。行くわよ。今日の業務、終わらせて――夜は歓迎会」
高揚感が、今度ははっきりと広がる。
疲れているのに、足が軽い。
心が少しだけ前に進む。
ミラはまだ戸惑ったままだったが、カイエが立ち上がり、ミラの肩に軽く手を置いた。
「大丈夫。今日は、ちゃんと“息継ぎ”しよう」
ミラはその言葉の意味をまだ分からない。
でも、頷いた。
「……はい」
訓練室から人が出ていく。
廊下の灯りは同じなのに、空気は少し変わっている。
ギリギリで保っている。
でも、その“ギリギリ”に――今夜、ひとつ支えが増える。
歓迎会。
それはミラのためだけじゃない。
残された十四班が、崩れないための小さな宴だ。
そして、その幹事が――リュウジ。
エリンは、誰にも見えないように小さく笑った。
高揚感は、胸の奥で静かに燃えていた。
⸻
暖簾をくぐると、店の熱が肌にまとわりついた。炭火の匂い、揚げ物の香り、笑い声が交じるざわめき。奥の座敷に通される途中、すでに何組もの卓が乾杯を始めていて、グラスの澄んだ音が何度も弾けていた。
案内されたのは半個室の座敷だった。襖を開けた先には、すでに人がいる。十四班の顔ぶれだけではない。別の班の乗務員が数人、パイロットも混じっている。肩章の色も、ネクタイの柄もまちまちだ。仕事の現場では交わらない笑い声が、ここでは同じ輪の中で跳ねていた。
ミラは一歩入ったところで固まった。
人数。距離。視線。
それらが一気に押し寄せて、背中がぎゅっと強張る。
「ミラ、こっち」
エリンが柔らかく手招きする。ミラは慌てて小さく頭を下げ、畳の縁を踏まないように歩いた。
「お疲れ様です……!」
返事がいくつも返る。「お疲れ」「ようこそ」「座れ座れ」――軽い声が重なるだけで、胸の奥の緊張が少しだけほどけた。
卓の端に座ると、ククルがさりげなく座布団を引き寄せてくれる。
「ミラ、そこ座りやすいよ。背もたれある」
「あ、ありがとうございます……!」
ミラは反射で姿勢を正し、膝の上で手を揃えた。
エマがそれを見て、にやっと笑う。
「今日も背筋ピンだね。ミラ、楽にしていいよ」
「は、はい……すみません、癖で……」
「謝らない。真面目なのは悪いことじゃないし」
カイエが短く言い、ミラの肩が少しだけ落ちる。
救われた気がしたのに、次の瞬間、ククルが顔を覗き込んでくる。
「でも今日は歓迎会だよ。仕事モードは半分くらい置いてきて」
「半分……」
「うん。置けるところからでいい」
ミラは小さく頷いた。
テーブルの上には、すでに小鉢が並び始めている。枝豆、冷奴、塩昆布キャベツ。取り皿も箸も、足りない分を見越したように追加で置かれていて、場が自然に回る準備ができていた。
リュウジは席に着くなり、周囲の様子を一度だけ見回して、店員が通りかかる瞬間に視線で合図を送る。呼び鈴もいらない。店員がすぐに気づいて近づいてきた。
「お飲み物からお伺いします」
「ミラ、何にする?」
エリンが言う。
ミラは一瞬、喉が鳴った。酒を頼むべきか。頼まないべきか。迷いが顔に出たのだろう、エマが先に言葉を置いてくれる。
「無理しなくていいよ。ジュースでも全然」
ククルもすぐ頷く。
「そうそう。飲める人だけ飲む」
ミラは息を吐いて、ようやく笑みを作った。
「……では、ジンジャーエールでお願いします」
「了解」
リュウジが淡々と続ける。
「ジンジャーエール一つ。俺はウーロン。エリンさんは?」
「私もウーロンで」
「私も」
カイエが言う。
「私もウーロン!」
ククルが元気よく手を挙げる。
「私はオレンジ」
エマが言うと、店員が「かしこまりました」と下がっていった。
ミラは、胸の中の固い塊がもう一段ほど軽くなるのを感じた。
誰も、無理をさせない。
その当たり前が、いまの自分にはありがたかった。
料理が運ばれてくる。焼き鳥の匂いが立ち上り、卓の向こうで誰かが「うまそう」と声を上げる。別の席ではパイロットが豪快に笑って、背中を叩き合っている。普段の勤務中には見ない表情ばかりだ。
エリンがグラスを手に取った。
「じゃあ、乾杯しよう。ミラ、ようこそ」
ミラは慌ててグラスを持つ。手が少し震えて、炭酸の泡が揺れた。
「……本日は、ありがとうございます……!」
「堅い堅い」
エマが笑う。
「でも可愛い」
ククルも笑う。
「ミラ、普通でいいよ。普通で」
カイエが、少しだけ声を落として言う。
「嬉しいなら、嬉しいって言えばいい」
ミラの喉が詰まった。
嬉しい。
それは、言っていいんだろうか。
でも――ここでは、言っていい気がした。
「……嬉しいです。ここで、頑張りたいです」
ミラが言うと、エリンが頷いた。
「うん、それで十分」
「乾杯」
「乾杯!」
グラスが触れ合う。澄んだ音が鳴って、周囲の笑い声の中に溶けていった。
ミラがジンジャーエールを口に含むと、炭酸が喉をくすぐる。
その刺激が、心まで洗ってくれるようだった。
最初は遠慮がちだった箸が、少しずつ動き出す。焼き鳥、から揚げ、だし巻き。どれも温かい。味が濃い。咀嚼するたび、体の奥がほっとする。
「ミラ、味どう?」
ククルが尋ねる。
「すごく……美味しいです……!」
「よし。なら食べよ。遠慮しなくていい」
カイエが言う。
厳しい声に聞こえるのに、意地悪さがない。むしろ、背中を押す感じがある。
エマが皿を回しながら、冗談めかして言った。
「ミラ、から揚げは逃げないよ。むしろ私が逃がさない」
「え……?」
「今のうちに確保」
「確保……!」
ミラが真面目に頷いてしまい、ククルが吹き出す。
「ミラ、真面目すぎ!」
「す、すみません……!」
「また謝った」
エマが指を立てて、軽く注意する。
「今日は謝らないってルール追加ね」
「……はい。気をつけます」
ミラがそう言うと、また笑いが起きた。
笑われた、ではなく、笑ってもらえた、という感覚だった。
その時、襖ががらりと開く。
「遅れたー」
タツヤが顔を出した。私服に近いラフな格好で、目の下に少しだけ疲れが残っている。けれど声はいつも通り軽い。
「生一つね」
店員に言い、空気を一瞬で持っていく。
別の卓からも「班長きた」「お疲れ!」と声が飛び、タツヤは手を上げて返した。
「ユイは?」
エリンが聞く。
「お泊まり保育。今日はいない。だから俺は遠慮なく飲める」
タツヤが笑って、ミラに視線を向ける。
「ミラ、ようこそ。緊張してる?」
「は、はい……! すみません……」
「謝るなって」
タツヤが即座に言い、ミラが目を丸くする。
そのやり取りを見て、エリンが微笑んだ。
「ミラ、ここはそういうチーム。間違えたら直す。無理はさせない。でも伸ばす」
「……はい!」
ミラが頷くと、ククルが嬉しそうに拍手を一つ。
「いい返事!」
カイエが淡々と付け足す。
「返事だけじゃなくて、実力もつけてこ」
「はい……!」
「今のはいい。謝ってない」
「……!」
ミラがハッとして、エマが笑いながら頷いた。
「そうそう、その調子」
そこへタツヤの生が届き、タツヤが一口飲む。
その瞬間、場の温度がさらに上がる。乾杯の輪が他の卓にも広がっていき、笑い声が何度も波のように押し寄せてくる。
ミラは、その波に飲まれながらも、不思議と怖くなかった。
怖さの代わりに、胸の奥に小さな高揚が灯っている。
ここにいる。
ここに迎えられている。
それだけで、明日の訓練が少しだけ楽しみになるなんて――自分でも信じられない。
エリンが箸を置き、場を見回す。
「今日はミラが主役。食べて、笑って、覚えて。ここにいる人たちの顔、ちゃんと覚えて帰りなさい」
「はい……!」
ミラは答えながら、ふと卓の端を見た。
リュウジは静かにグラスを持ち、騒ぎに飲まれすぎない距離を保っている。けれど、その視線は確かに場を守っていた。誰かが困ればすぐ気づくような、あの目だ。
その視線と一瞬だけ目が合い、ミラは慌てて頭を下げた。
「……あ、ありがとうございます……!」
「食え」
短い一言。
それだけでミラは、胸の奥が熱くなって、今度こそ「すみません」と言わずに頷いた。
「はい!」
笑い声がまた弾ける。
居酒屋の夜は、少しずつ、十四班の新しい日常の始まりだった。
しばらくして、卓の上の皿がいい具合に空になってきた頃、タツヤが肘をついて、ミラに身を乗り出した。
「ところでさ。ミラ、何か聞きたいことある?」
ミラは一瞬、呼吸が止まった。
聞きたいこと。
山ほどある。訓練のこと、先輩の癖、失敗した時の立て直し――でも。
でも、胸の奥にずっと引っかかっていた“別の疑問”が、ここで急に膨らんだ。
しかも、店の賑わいと炭酸と笑い声が、勇気を増幅させる。
ミラは、ごくりと喉を鳴らしてから、意を決して口を開いた。
「え、えっと……! あの……!」
全員の視線が集まる。
ククルは箸を止め、エマはニヤつき、カイエは「ん?」という顔で首を傾げる。
エリンとリュウジはウーロン茶を飲みながらミラの言葉を待っている。
――今だ。逃げたら一生聞けない気がする。
「エリンさんとリュウジさんは……っ」
ミラは息を吸い込んだ。
「本当に、付き合っているんですか!?」
その瞬間――
ぶふっ!!
同時だった。
エリンとリュウジが、ほぼ同時にウーロン茶を吹き出した。
「げほっ……!」「ごほっ……!」
咽せる音が二重奏になって、卓の上に置かれた取り皿が小さく震える。
ククルが目を丸くし、エマが腹を抱えて笑い始め、カイエが慌ててティッシュを差し出した。
「ちょ、ちょっと……! 大丈夫ですか、エリンさん!」
「ミラ、今の爆弾だよ!」
「す、すみません……! あ、今日謝らないって……!」
ミラが混乱して言葉を詰まらせる。
エリンは涙目で口元を押さえ、リュウジは咳き込みながらティッシュでテーブルを拭いた。
「……っ、な、何でそんな噂が出てるのかしら……!」
エリンが咳の合間に言う。声は怒っているようで、でも頬がほんのり赤い。
そして、その“ほんのり”が、なぜか、絶妙に満更でもなさそうに見えてしまうのがタチが悪い。
「……噂ですか……」
リュウジがまだ咳き込みながら、低く呟く。
「え、だって……! 皆さん、そう言ってて……!」
ミラが慌てて両手をぶんぶん振る。
エマが楽しそうに身を乗り出した。
「ほらほら、エリンさん、否定しないと」
「……否定は、するわよ」
エリンが言う。
言うのに、妙に間がある。
その間が、ククルの目をさらにキラキラさせる。
「えっ、じゃあ……違うんですか!?」
「違う……!」
エリンが言い切ろうとした、その直後。
ミラが、思い出したようにバッグを探り、端末を取り出した。
その顔が、急に真剣になる。
「あっ、でも……」
ミラが言う。
「ペルシアさんから、メールが来てましたよ」
その一言で、空気が一段、変わる。
“ペルシア”という名前は、店の喧騒の中でも、妙に輪郭がはっきりしていた。
笑いの温度を、ほんの少しだけ――別の方向に揺らす名前。
「……ペルシアから?」
エリンの目が細くなる。
リュウジも咳を止め、ティッシュを握ったままミラを見る。
「……何て?」
ククルが身を乗り出した。
エマは、もう笑っている。笑いの“種類”が変わっている。
ミラは端末を見つめ、読み上げる前に一度だけ息を整えた。
「えっと……」
そして、悪気ゼロの声音で言った。
「“リュウジさんとエリンさんが付き合ってるって、みんなに言っといて!”って……」
一拍。
それから――
「……」
エリンの顔が固まる。
リュウジの目が細くなる。
ククルが「うわぁ……」と小さく呟く。
エマが声を殺して肩を震わせ、カイエが静かに天井を見上げた。
原因が分かった瞬間だった。
「……あの子……!」
エリンが、湯気みたいな怒りを吐き出す。
「……ペルシア……」
リュウジが、静かに噛みしめるように言う。
――そして、遅れて。
タツヤが、腹を抱えて笑い始めた。
「ははははは! やっぱり犯人あいつか!」
「班長!」
ククルが「班長やめてくださいよ!」と止めに入るが、タツヤの笑いは止まらない。
ミラは、やっと状況を理解して、顔を真っ赤にした。
「す、すみません……! 私、余計なことを……!」
「ミラ、今日謝らないルール」
エマが腹を抱えたまま言う。
「……っ、あ……はい……!」
「でも、いい質問だったよ」
カイエが優しく言い、ミラの肩が少し落ち着く。
エリンはティッシュで口元を拭いながら、目を細めた。
「……ペルシア、ほんとに……」
その声は怒っているのに、どこか寂しさが混じる。
たぶん皆、同じことを思った。
こういう“余計なこと”を笑いに変えてくれるのも、あの子だった。
リュウジは咳払いを一つして、表情を戻す努力をした。
「……どうしますか、あいつ」
エリンは一瞬だけ黙って、次の瞬間、ふっと笑った。
笑ってしまったことに気づいて、少しだけ悔しそうに眉を寄せる。
「……どうもしない。……今は歓迎会よ」
そして、ミラに向き直る。
「ミラ、質問の答え。――付き合ってない」
「は、はい……!」
「でも、噂を広めたのはペルシア。これは確定」
「確定だね」
エマが嬉しそうに言う。
「確定です」
ククルも頷く。
「……はい」
カイエは短く頷いて、ミラのグラスに視線を落とした。
「ミラ、ジンジャーエール、もう少し飲む? 追加しようか」
「あっ、はい……! ありがとうございます!」
タツヤが、笑いながら生を飲み干して言った。
「よし。じゃあ、歓迎会、二回戦いくか」
「班長、まだ早い」
ククルが即座に突っ込む。
「早い?」
「早いです!」
「でも今日は歓迎会だろ?」
「歓迎会でも早いです!」
また笑いが起きる。
グラスが鳴る。
皿が回る。
ミラの緊張は、さっきよりずっと軽い。
そして――原因がペルシアだと分かってしまった以上、もうこの噂は、止めるより先に、笑いとして膨らむ未来しか見えなかった
ーーーー
歓迎会の空気が、ひとつ段を上げたのは、タツヤの五杯目が届いてからだった。
「生、もう一つ!」
声がやけに通る。店員が「はいよ!」と返し、ジョッキが置かれる音が卓に響いた瞬間、タツヤの肩から“仕事”が完全に落ちたのが分かった。
タツヤは喉を鳴らして飲む。飲むほど顔色が良くなるタイプだ。頬が赤くなるのではなく、妙に表情が明るくなっていく。
「いやぁ、こういうの大事だよな。ミラ、歓迎会だぞ。歓迎会!」
「は、はい……! ありがとうございます……!」
ミラは背筋を伸ばしたまま答えてしまい、エマがケラケラ笑う。
「ミラ、可愛い。ずっと敬語なの最高」
「えっ……あ、はい……! すみません……!」
「ほら、謝らないルール」
「……っ、はい……!」
ミラが頬を赤くしている間に、卓の一角が“いつもの十四班”になっていく。
ククルはいつの間にか席を立っていて、別の席へ顔を出しては「お疲れさまですー!」と明るい声を撒き散らしている。今夜のククルは、歓迎会の名にふさわしい回遊魚だった。
エマは早くもスイーツを確保していた。居酒屋のくせに、なぜかデザートのメニューが豊富な店だ。プリン、白玉、アイス。エマは真顔でプリンをすくい、口に運ぶ。
「……うん、これ、正解」
「早すぎない?」
カイエが言う。柔らかい声だが、視線はスイーツに吸われている。
「早くない。デザートは“先に確保”が正解」
エマは揺るがない。
そして、カイエは――いつの間にか携帯ゲームに没頭していた。
さっきまでミラの指導の話をしていたのに、今は指先だけが別世界の速度で動いている。画面を覗けば、カラフルな何かが連鎖して爆発していた。
「カイエさん、それ何?」
ミラが恐る恐る尋ねる。
「ん? これ? ……落ち着くやつ」
カイエがふわっと笑って、また画面に戻る。
エリンはその様子を眺め、グラスを口に運びながら、ぽつりと言った。
「……個性的なメンバーでしょ」
言い方は軽いのに、どこか誇らしげだった。
“私の班”という響きが、そこに滲む。
タツヤが、ジョッキを持ったままうんうんと頷く。
「いや、ほんとそれ。よくまとめてるよな、エリン。すげぇよ」
「まとめてない。勝手にまとまってるだけです」
「いや、まとめてるって。まとまってるように見せてるのがすごいんだよ」
タツヤは笑いながら、隣にいるリュウジへ視線を向けた。
「……でさ、リュウジ。お前には勿体無いくらいだよな」
卓の空気が、ふっと跳ねた。
ミラの目が丸くなる。
エマはスプーンを止め、口元に含み笑いを溜める。
カイエはゲームの手を止めない。止めないが、耳は完全にこちらに向いている。
空気だけが、わずかに熱を帯びる。
「班長、飲みすぎです」
エリンが淡々と告げる。
でも、声色はきつくない。むしろ、いつもより少しだけ柔らかい。
それが逆に危ない、とミラは直感で感じた。
エリンの“柔らかい”は、余裕がある時のやつだ。
余裕がある時のエリンは、追い詰め方が上手い。
タツヤは全く気にしていない。
ここからはタツヤの独壇場だった。
「だってさぁ、周りももう言ってんだろ? 付き合っちゃえばいいのにって」
「班長」
エリンが一段低い声で呼ぶ。
だがタツヤは止まらない。止まれない。
「だってお前ら、噂になってんだよ? ミラが聞いてきたくらいだぞ? なぁ?」
タツヤが周囲に振ると、別の席から「ヒューヒュー!」が飛んできた。さらに「そうだそうだ!」が混ざり、笑いが波みたいに広がる。
「班長、やめてください」
リュウジが言う。敬語は崩さない。エリンに向ける敬意も、タツヤに向ける距離も、きっちり線の上を歩くみたいに丁寧だ。
「俺はいいが、エリンさんに失礼です」
その言葉が、妙に真面目で、妙に“らしくて”、逆に場を盛り上げた。
「うわ、真面目!」
「やば、正論で刺してくる!」
「でもそれがいい!」
ヒューヒューがまた増える。
エリンは、口元にグラスを当てたまま目だけ細めた。
怒っているのか、笑っているのか分からない。
けれど、その目がほんの少しだけ柔らかいことに、ミラは気づいた。
エリンがグラスを置いて、わざとらしく肩をすくめる。
「私はいいですけど、リュウジに失礼です」
言い方がさらりとしているのに、選ぶ言葉が絶妙に同じ形で返っている。
完全なカウンターだ。
それを聞いてタツヤが腹を抱えて笑う。
「ほら! お互いにいいならいいじゃん!」
卓が沸く。
「いいじゃーん!」
「付き合えー!」
「結婚しろー!」
どこかで誰かが言った。
さすがにそれにはエリンが一瞬だけ咳払いをしたが、すぐに顔を戻した。
リュウジは耳まで赤くならない。
ならないが、喉仏が一度大きく上下した。
それだけで、周りは“おっ”と察して、さらに煽りの熱を上げる。
「リュウジ、照れてる!」
「照れてない」
「照れてる!」
「照れてない」
エマがプリンを食べながら楽しそうに言う。
「照れてないって言う人ほど照れてる」
「エマ、黙ってデザート食べてろ」
リュウジが淡々と言うと、エマが目を丸くして、それから爆笑した。
「うわ、言い方が優しいのに刺さる!」
カイエはゲームをしながら、ぽつり。
「……でも、リュウジさんがそういうの言うの、ちょっと意外で面白いかも」
「カイエ、聞いてないふりして聞いてるでしょ」
エリンが言う。
カイエは画面から目を離さず、柔らかく笑った。
「……ばれましたか」
ミラは、心臓が忙しい。
笑いたい。
でも、笑っていいのか分からない。
けれど、ここにいる全員が笑っている。だから、笑っていいのだ。
ミラが小さく笑うと、タツヤが勢いに乗った。
「なぁ、エリン。正直どうなんだ?」
「何が?」
エリンの返しが早い。
「リュウジのこと。嫌いじゃないんだろ?」
「班長」
エリンの声がやけに優しい。
それが逆に怖い。
リュウジは、さっとエリンを見る。
目線だけ。
“これは止めた方がいい”という合図。
エリンも、その目線を受け取って、ほんの少しだけ頷いた。
ほんの少しだけ。
でも確かに。
それが見えた瞬間、ミラの中で“噂”が“確信”になりかけた。
――やばい、これ、本当に……?
タツヤは気づかない。気づけない。酔っているからだ。
「なぁなぁ、リュウジもさ、エリンのことどう思ってんの?」
周りがまたヒューヒューと言う。
空気がどんどん熱くなる。
ただの冗談のはずなのに、冗談だけじゃ済まない温度が混じり始める。
リュウジは、言葉を探すように一拍置いてから、真っ直ぐ言った。
「……エリンさんは、班を守ってます。いつも」
その言い方が、告白のそれじゃないのに、やけに真剣で、やけに胸に刺さる。
ミラは思わず息を呑んだ。
周りの“ヒューヒュー”が一瞬だけ小さくなる。
エリンの指先が、グラスの縁をなぞった。
ほんの僅かな仕草なのに、普段なら見逃すはずなのに、今夜の空気はそれを見逃してくれない。
「……ありがとう」
エリンが言う。
短い。
いつものエリンより、少しだけ素が出ている。
タツヤは、そこを逃さない。
「ほらー! もう付き合えよ!」
ヒューヒューがまた戻る。
今度はさらに大きい。
勢いが止まらない。
リュウジは、呆れたように息を吐いて、エリンにアイコンタクトを送った。
“終わらせますか”という合図だ。
エリンは頷いた。
そして。
エリンはウーロン茶を飲み干した。
飲み干して――
ガタン!
音を立ててテーブルに置いた。
その音は大きくない。
大きくないのに、空気が一斉に固まった。
さっきまでの熱が、すっと引いていく。
ざわめきが波なら、その波が“引いた”感じだ。
店の別の席の笑い声は聞こえるのに、この卓だけが小さな真空になったみたいに静かになる。
エリンが、にこっと笑った。
優しい笑み。
いつもの笑み。
でも、目が笑っていない。
「ふふっ。そんなに酔っ払ってるなら、何飲んでも同じですよね」
言葉は柔らかい。
声も柔らかい。
なのに背筋が凍る。
ミラは反射で姿勢を正してしまった。
エマはスプーンを口に運ぶ手を止めた。
カイエはゲーム画面を暗くした。
タツヤだけが、まだ笑い顔のまま固まった。
エリンはゆっくりと続ける。
「酔っ払いの皆さん」
にこにこ。
優しい。
優しいのに、刃がある。
「これ以上あんまり騒ぐと――泡立てたウーロン茶以外、頼ませないですよ」
“優しく”言う。
それが一番怖い。
周りの席から「うわ……」と小声が漏れ、誰かが「やべぇ、エリンだ」と笑いを引っ込める気配がした。
タツヤが、やっと言葉を見つけたみたいに笑った。
「……え、泡立てたウーロン茶って何」
「班長、知らない方がいい」
エマが真顔で言う。
ククルがちょうど戻ってきて、状況を察して、ぴたりと動きを止めた。
「……あ、あれ? なんか静か……?」
「今、エリンさんの“優しい警告”が出た」
カイエが小声で教える。
「えっ……それ、やばいやつ?」
「うん、やばいやつ」
ククルがごくりと唾を飲み込む。
エリンは静かに視線を動かして、タツヤを見た。
「班長」
その呼び方だけで、タツヤは背筋を伸ばす。
「……はい」
「飲みすぎ」
「……はい」
「あと、さっきの話、場が盛り上がるのは分かるけど、ミラが困ってる」
エリンが言うと、ミラは慌てて首を振った。
「い、いえ! 困ってはいません! その……!」
言いかけて、ミラは詰まった。
困っていないわけがない。
でも、楽しかったのも本当だ。
エリンはミラを見て、ふっと目を細めた。
柔らかい目だ。
さっきまでの凍るような視線じゃない。
「大丈夫。ミラ、困ったら困ったって言っていいの」
「……はい」
ミラは、胸の奥がじんとした。
エリンは、もう一度リュウジを見る。
その目は、さっきより少しだけ――ほんの少しだけ、いたずらっぽい。
リュウジは気づいたのか、気づかないふりをしたのか。
わずかに視線を逸らして、咳払いを一つした。
「……エリンさん。ウーロン茶、追加しますか」
敬語で、丁寧に。
いつも通りに戻す、その手付きが上手い。
エリンは口元を押さえ、笑いを飲み込むみたいに小さく息を吐いた。
「……お願い」
短い返事。
でも、さっきより柔らかい。
タツヤはそれを見て、にやにやしながら生を一口飲もうとした。
そしてエリンの視線が動いたのを見て、すっとジョッキを置いた。
「……ウーロン茶にしとく」
「そうして」
エリンが言う。
言い方は優しいのに、逆らえない。
周りが、くすくすと笑いを取り戻す。
さっきの熱狂は、火が消えたわけじゃない。
火力を調整されて、ちょうどいい温度になっただけだ。
ミラは、その“調整”を見てしまった気がした。
エリンがまとめている、というより――
この班の空気は、エリンがいるだけで整っていく。
そして。
その空気の中心にいるエリンが、今夜だけはほんの少しだけ、揺れているように見えた。
冗談の矢が飛んでも、涼しい顔でかわす。
かわすのに、完全には遠ざけない。
リュウジが「失礼です」と言った時、エリンは怒らなかった。
むしろ、嬉しそうに見えた。
嬉しそうに見えたのが、ミラの勘違いであってほしいような、勘違いじゃない気もするような。
タツヤがウーロン茶を頼む姿を見て、ククルが小声でミラに耳打ちした。
「ね、ミラ。今の見た?」
「は、はい……」
「エリンさん、ああいう時の笑顔、ちょっと怖いでしょ」
「……はい……でも……」
「でも?」
ミラは答えに迷って、そして正直に言った。
「……ちょっと、羨ましいです」
ククルが目を丸くして、それからふっと笑った。
「うん。分かる。なんか、羨ましいよね」
エマはプリンを食べながら、完全に楽しそうだ。
「この班、ほんと飽きない」
カイエが柔らかく頷く。
「……うん。飽きない。疲れるけど」
「疲れるけど、楽しい」
ククルが言い、ミラが小さく頷いた。
エリンは、卓の端でウーロン茶をゆっくり飲みながら、少しだけ頬を緩めていた。
その横顔は、さっきまでの“鬼”じゃない。
でも、優しいだけでもない。
リュウジがそれを横目で見て、何か言いかけて、やめた。
言葉にしなくてもいい。
今夜は歓迎会だ。
余計なものは、ウーロン茶の底に沈めておけばいい。
……そう思っているはずなのに。
エリンの笑みが、さっきより少しだけ“満更でもない”形になっているのを、リュウジは見逃せなかった。
見逃せなかったからこそ、見逃したふりをした。
そして、その不器用さを、エリンは気づいているようで――気づいていないふりをした。
それがまた、周りの煽りを静かに燃やす。
火種は消えない。
ただ、エリンが火力を管理している。
タツヤがウーロン茶を一口飲んで、情けない顔で言った。
「……泡立てたウーロン茶、やっぱ気になるんだけど」
「班長」
エリンがにこっと笑う。
「はい」
「気にしなくていい」
「……はい」
卓がまた笑いに包まれた。
笑いは、さっきより少しだけ落ち着いて、でも熱は残っている。
高揚感だけが、ふわふわと宙に浮いたまま――居酒屋の明かりに照らされて揺れていた。