サヴァイヴ〜ドルトムント財閥〜   作:一塔

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人材探し

 宇宙管理局の局長室は、いつもより少しだけ重い空気に包まれていた。

 

 壁一面の窓の向こうには、ロカA2の人工空が淡い青を広げている。

 外から見れば、穏やかな午後だった。

 

 けれど、室内にいる者達の表情は、決して穏やかではない。

 

 局長は大きな机の向こうに座り、両手を組んでいた。

 その前には、統括官用の制服を少し着崩したペルシアが立っている。

 

 いつものように、椅子にだらりともたれているわけではない。

 甘いものを片手に愚痴をこぼしているわけでもない。

 資料を見て「ハゲそう」と呟いているわけでもない。

 

 背筋は伸びている。

 目は鋭い。

 表情に笑みはない。

 

 その横にはフレイが控えていた。

 

 フレイの手元には端末があり、先ほど終了したばかりの宇宙管理局内シュミレーションの記録が表示されている。

 

 緊急時救助対応シュミレーション。

 

 想定は、民間輸送船の推進系統異常。

 そこへ人工干渉の疑い。

 さらに救助艇の接近困難。

 オペレーションルームで情報を集約し、統括官判断のもと、救助班、宇宙警察、スターフォックスとの連携を組む。

 

 机上では簡単に見える。

 

 だが、実際に動かしてみれば、結果は惨憺たるものだった。

 

 局長はペルシアを見た。

 

「それで、率直な評価を聞かせてほしい」

 

 ペルシアは即答した。

 

「全然ダメ」

 

 局長の眉がわずかに動く。

 

 フレイは表情を変えない。

 

 ペルシアは続けた。

 

「フレイはともかく、他は全然ダメだよ」

 

 その言葉には、いつもの軽さがなかった。

 

 冗談でもない。

 誇張でもない。

 現場を見た統括官としての、冷静な評価だった。

 

 局長は深く息を吐いた。

 

「そこまでか」

 

「そこまで」

 

 ペルシアは端末を取り出し、局長の机上モニターへデータを送った。

 

 画面に、シュミレーション中の時系列が表示される。

 

 異常発生。

 初報受信。

 状況確認。

 救助艇要請。

 現場映像取得。

 人工干渉疑い。

 宇宙警察連絡。

 統括官判断待ち。

 追加情報未整理。

 通信混線。

 救助対象船の姿勢悪化。

 対応遅延。

 

 ペルシアは画面を指差した。

 

「まず、初報から状況整理までが遅い。遅いだけならまだいい。問題は、遅いのに情報が整理されてないこと」

 

「具体的には?」

 

「誰が、どの情報を、どの優先順位で拾うのか決まってない。みんな一応端末を叩いてる。でも、欲しい情報が出てこない」

 

 ペルシアは別の画面を開く。

 

「例えばここ。推進系統異常って初報が入ってるのに、姿勢制御と重力制御の確認が遅い。輸送船なら、推進だけじゃなくて姿勢が崩れた瞬間に救助難度が跳ね上がる。なのに、担当者は推進系統だけ追ってた」

 

 局長は画面を見つめる。

 

「担当範囲を守ったとも言えるが」

 

「それがダメなの」

 

 ペルシアは即座に言った。

 

「オペレーションルームは、担当範囲だけ見てればいい場所じゃない。現場は一つの異常だけで動かない。推進が死ねば姿勢に影響する。姿勢が崩れれば救助艇の接近角が変わる。接近角が変われば牽引方法が変わる。牽引方法が変われば、要救助者の安全確保も変わる」

 

 言葉が鋭くなる。

 

「一つの情報から、次に壊れる場所を想像できない人間は、オペレーションルームには向かない」

 

 フレイは静かに頷いた。

 

 局長はペルシアの表情を見て、少しだけ目を細める。

 

「かなり厳しいな」

 

「厳しくしないと人が死ぬから」

 

 ペルシアは迷わず言った。

 

 局長室の空気が、さらに静かになる。

 

「それに、画面切り替えが遅い。現場映像を出してって言ってから、実際にモニターに出るまで四十七秒」

 

 ペルシアはモニターに時間を表示した。

 

「四十七秒。たったそれだけって思うかもしれないけど、宇宙空間の事故対応で四十七秒は長い。接敵するか、船体が割れるか、要救助者が意識を失うか。その判断が変わる時間よ」

 

 局長は黙って聞いている。

 

「しかも、出てきた映像が違う。私が欲しかったのは救助対象船の右舷損傷部。でも出てきたのは全体俯瞰。全体を見るのは大事だけど、その時点で必要だったのは牽引可否の判断。なら損傷部の拡大映像を先に出すべきだった」

 

 ペルシアは自分の耳元を軽く叩いた。

 

「私は耳で現場の声の色が拾える。でも、映像がないと判断できないものもある。音だけで全部できるわけじゃない。だから、オペレーションルームが目になってくれないと困る」

 

 フレイが端末に記録を残す。

 

 局長はゆっくり頷いた。

 

「他には」

 

「報告が怖いくらい曖昧」

 

 ペルシアは言った。

 

「“危険です”“難しいです”“対応中です”。そんな言葉、現場では何の役にも立たない」

 

 局長の視線が鋭くなる。

 

 ペルシアは構わず続けた。

 

「危険なら、何が危険なのか。船体が割れる危険なのか、救助艇が巻き込まれる危険なのか、乗員が負傷する危険なのか。難しいなら、何が難しいのか。距離なのか、角度なのか、通信なのか、時間なのか。対応中なら、誰が何をいつまでにやってるのか」

 

 ペルシアは机に指を置いた。

 

「言葉が曖昧だと、判断が曖昧になる。判断が曖昧になると、指示が遅れる。指示が遅れると、現場が迷う。現場が迷えば、死ぬ」

 

 最後の言葉だけ、声が低かった。

 

 局長は何も言わなかった。

 

 ペルシアはさらに資料を切り替える。

 

「それと、私が一番腹立ったのはここ」

 

 モニターに、シュミレーション中の音声ログが表示される。

 

 ペルシアが指示を出している。

 

『現場映像、右舷損傷部を出して』

『救助艇の接近角、現在値と推奨値』

『人工干渉反応の発信源、三点測位』

『スターフォックスに通信準備』

 

 だが、返答は遅い。

 

『確認中です』

『少々お待ちください』

『担当者に確認します』

『ええと、どの画面ですか』

 

 ペルシアは唇を引き結んだ。

 

「私が怒鳴ったら、全員の手が止まった」

 

 フレイが静かに補足する。

 

「実際に、統括官が声を荒げた後、オペレーター三名の入力が一時停止しました。平均停止時間は三秒から六秒です」

 

「三秒止まれば十分危険よ」

 

 ペルシアが言う。

 

「怒鳴られたから止まるなら、緊急時に使えない。もちろん、私が怒鳴らないようにする努力も必要。でも、事故現場で声が荒くなることはある。現場から怒号が飛ぶこともある。救助艇のパイロットが叫ぶこともある。泣いてる家族の声が入ることもある。そのたびに手が止まるなら、オペレーションルームには置けない」

 

 局長は少しだけ目を伏せた。

 

「人員の問題か」

 

「人員の問題。訓練の問題。あと、適性の問題」

 

 ペルシアははっきり言った。

 

「全員を鍛えれば使える、とは言わない。向いてない人間もいる。逆に、今は別部署にいるけど向いてる人間もいると思う」

 

 局長は組んでいた手を解き、椅子の背にもたれた。

 

「フレイはどう見た?」

 

 フレイは一歩前に出た。

 

「統括官の評価に概ね同意します」

 

 ペルシアが少しだけ横を見る。

 

 フレイは端末を見ながら続けた。

 

「私自身も、記録係としてシュミレーションに入りましたが、情報の粒度が揃っていませんでした。各担当者が取得した情報は存在していましたが、判断に必要な形で統括官へ上がっていません」

 

「そう、それ」

 

 ペルシアが頷く。

 

「情報があるのに使えない。これが一番もったいない」

 

 フレイはさらに続ける。

 

「また、オペレーションルーム内での声の重なりが多く、重要報告が埋もれる場面が複数回ありました。統括官の指示を復唱する者、現場からの報告を拾う者、時系列を整理する者が明確に分かれていなかったことが原因です」

 

 局長はフレイを見た。

 

「改善すれば使えるか?」

 

「一部は可能です。ただし、現在の全員をそのまま中核に置くのは危険です」

 

 フレイは淡々と言った。

 

「特に、判断者に近い席には、緊急時の声や情報量に耐えられる者を置く必要があります」

 

 ペルシアは腕を組んだ。

 

「フレイはともかく、他は全然ダメ。これは感情じゃない。シュミレーション結果としてそう」

 

 局長はしばらく黙った。

 

 机上のモニターに、先ほどの記録が流れ続けている。

 

 彼は長く宇宙管理局を見てきた。

 事故も見てきた。

 失敗も見てきた。

 書類上では優秀な人間が、現場で動けなくなる瞬間も見てきた。

 

 ペルシアの言い方は厳しい。

 

 だが、間違ってはいない。

 

「ペルシア」

 

「何?」

 

「君から見て、今の宇宙管理局のオペレーションルームは、どこが一番弱い」

 

 ペルシアはすぐには答えなかった。

 

 少し考え、局長の目を見た。

 

「“誰かが何とかしてくれる”って空気」

 

 局長の表情がわずかに変わる。

 

「続けてくれ」

 

「緊急時なのに、自分の席だけ守ってる。自分の担当だけやって、判断は上がすると思ってる。もちろん最終判断は私や局長がする。でも、その判断材料を作るのはオペレーションルームの仕事よ」

 

 ペルシアは窓の外へ一瞬だけ視線を向けた。

 

「事故現場では、現場の人間が命を削って情報を出してくる。パイロットが片手で操縦しながら叫ぶこともある。救助班が機体の外で危険を見てることもある。乗務員が乗客を抱えながら報告することもある」

 

 声が静かになる。

 

「その声を、机の前で受け取る側が鈍いのは許せない」

 

 局長は沈黙した。

 

 ペルシアの言葉には、過去の重みがあった。

 

 救助を見てきた者の声。

 間に合わない恐怖を知っている者の声。

 白い点の点滅を祈るように見つめた者の声。

 

 局長はゆっくりと頷いた。

 

「分かった」

 

 ペルシアは少しだけ肩の力を抜いた。

 

「分かってくれたならよかった。私は別に、みんなを潰したいわけじゃない。向いてない席に置いて潰す方がよっぽど残酷だと思ってるだけ」

 

「君らしい言い方だ」

 

「褒めた?」

 

「半分は」

 

「フレイみたいなこと言わないで」

 

 フレイは表情を変えずに言った。

 

「私は事実を述べています」

 

「ほら、似てる」

 

 ほんの少しだけ空気が和らいだ。

 

 だが、局長の顔はすぐに真剣に戻る。

 

「では、次の仕事だ」

 

 ペルシアの眉が動いた。

 

「嫌な予感がする」

 

「その予感は当たっている」

 

「局長、そういう時は否定して」

 

「必要な仕事だ」

 

 ペルシアは小さくため息を吐いた。

 

「何?」

 

 局長は机の上の資料をペルシアへ送った。

 

 ペルシアの端末に、新しいファイルが表示される。

 

『オペレーションルーム中核要員選定について』

 

 ペルシアは画面を見た瞬間、嫌そうな顔をした。

 

「……うわ」

 

 局長は構わず言う。

 

「オペレーションルームに入るメンバーを探してほしい」

 

 ペルシアはゆっくり顔を上げた。

 

「私が?」

 

「そうだ」

 

「人事まで?」

 

「統括官として必要な機能だ」

 

「私、資料と会議と訓練とスターフォックスの運用と局長説明と宇宙警察との調整と救助班の指導計画とシステム部の見直しも抱えてるんだけど」

 

「知っている」

 

「知ってて増やすの?」

 

「君が一番適任だ」

 

 ペルシアは額に手を当てた。

 

「またその言い方……」

 

 局長は少しだけ笑った。

 

「君は、今日のシュミレーションで誰が使えるか、誰が危険かを一番正確に見た。耳でも、目でも、現場の流れでも判断している」

 

「それはそうだけど」

 

「オペレーションルームは、統括官の生命線になる。そこに誰を置くかは、君が決めた方がいい」

 

 ペルシアは黙った。

 

 局長の言葉は正しい。

 

 悔しいが、正しい。

 

 スターフォックスが現場で動く。

 救助班が飛ぶ。

 宇宙警察と連携する。

 局長が最終判断をする。

 

 その間で情報を吸い上げ、整え、必要な形で統括官へ渡す場所。

 

 それがオペレーションルームだ。

 

 そこが弱ければ、どれだけ現場が優秀でも遅れる。

 

 どれだけフォクス達が速く動いても、どれだけペルシアが判断しても、情報が来なければ意味がない。

 

 ペルシアは端末の画面を見つめた。

 

「何人?」

 

「まずは中核メンバーとして六人から八人」

 

「多いわね」

 

「全交代制を考えれば、最終的にはもっと必要だ。ただし、最初から大人数を動かすと教育が薄くなる。まず君が信頼できる中核を作ってほしい」

 

「中核……」

 

 ペルシアは指先で端末の縁を叩いた。

 

「役割は?」

 

 局長は答える。

 

「そこも君に設計してもらいたい」

 

「丸投げじゃない」

 

「任せている」

 

「便利な言葉」

 

 フレイが静かに言った。

 

「統括官、役割設計から行った方が、結果的に人選しやすいと思います」

 

「分かってるわよ」

 

 ペルシアは小さく息を吐き、すぐに表情を切り替えた。

 

「まず、最低限必要なのは五つ」

 

 局長が少し身を乗り出す。

 

「聞こう」

 

 ペルシアは端末にメモを打ち込みながら話す。

 

「一つ目。情報受信。現場、救助艇、宇宙警察、スターフォックス、民間船、全部の通信を拾う人間。声を聞き分けられる必要がある。ただ聞くだけじゃなくて、重要度を判断できる人」

 

 フレイが記録する。

 

「二つ目。映像・センサー担当。現場映像、熱源、損傷部、軌道、姿勢データを即座に出せる人間。ここは手が速くて、画面構成が上手い人じゃないとダメ」

 

「システム部から引けるか?」

 

「引けるかもしれないけど、システム部の人間は現場感覚が弱い可能性がある。そこは訓練が必要」

 

 ペルシアは三本目の指を立てる。

 

「三つ目。時系列記録。何が何時何分に起きて、誰が何を判断したかを整理する人間。ここはフレイが一番向いてる」

 

 フレイがわずかに目を動かした。

 

「私ですか」

 

「そう。あなた、記録が正確だし、感情で文章を歪めない。あと私が怒鳴っても手が止まらない」

 

「慣れましたので」

 

「慣れたって言われると複雑ね」

 

 局長が小さく笑う。

 

 ペルシアは続ける。

 

「四つ目。現場判断補助。これは少し難しい。救助対象船の状態、牽引可否、接近角、二次被害の可能性を見て、私に判断材料を渡す人間」

 

「専門性が必要だな」

 

「必要。ここは救助班経験者か、元パイロットか、整備系の強い人間がいい」

 

 ペルシアは五本目の指を立てた。

 

「五つ目。外部連携。宇宙警察、民間企業、医療班、救助艇との連絡調整。ここは言葉が強すぎても弱すぎてもダメ。相手から情報を引き出して、余計な喧嘩をしない人」

 

「君には向かないか」

 

 局長が冗談めかして言う。

 

 ペルシアは即答した。

 

「向かないわね。私は喧嘩になる」

 

 フレイが淡々と頷く。

 

「自覚があるのは良いことです」

 

「フレイ、そこは否定して」

 

「事実です」

 

 ペルシアは少しだけ口を尖らせた。

 

 だがすぐに真面目な顔に戻る。

 

「この五つを核にして、交代要員を育てる。最初は六人から八人でいい。フレイを入れるなら、残り五人から七人」

 

「フレイを入れる前提か」

 

 局長が言う。

 

「入れるしかないでしょ」

 

 ペルシアは当然のように答えた。

 

「フレイは統括官補佐として私の隣にいてほしい。少なくとも最初の立ち上げでは絶対必要」

 

 フレイは一瞬だけ黙った。

 

 それから、静かに言う。

 

「承知しました」

 

 ペルシアはちらりとフレイを見る。

 

「嫌?」

 

「いいえ。必要であれば入ります」

 

「頼りにしてる」

 

「はい」

 

 短いやり取りだったが、そこには確かな信頼があった。

 

 局長は満足そうに頷いた。

 

「選定期限は?」

 

 ペルシアが嫌そうに顔を上げる。

 

「今、それ聞く?」

 

「必要だ」

 

「一週間」

 

 フレイが即座に言う。

 

「統括官、一週間では現部署への照会、候補者面談、適性確認、簡易シュミレーションまで含めると厳しいです」

 

「じゃあ十日」

 

「最低二週間は必要かと」

 

「二週間も待ってたら次の訓練が遅れる」

 

「急ぎすぎると精度が落ちます」

 

「うーん……」

 

 ペルシアは腕を組んだ。

 

「じゃあ、一次選定を一週間。仮メンバーで簡易シュミレーション。正式候補を二週間でまとめる。これなら?」

 

 フレイは少し考える。

 

「可能です。ただし、各部署から候補者情報を即時提出してもらう必要があります」

 

 局長が頷く。

 

「それはこちらから通達する」

 

「助かる」

 

 ペルシアは端末に大きくメモを打ち込んだ。

 

『オペレーションルーム中核要員

一次選定 一週間

仮シュミレーション

正式候補 二週間』

 

 そこで、ペルシアはふと顔をしかめた。

 

「……これ、また資料増えるわね」

 

「当然だ」

 

 局長が言う。

 

「局長、私を資料で殺す気?」

 

「君は資料では死なない」

 

「分からないわよ。精神が先に死ぬかもしれない」

 

 フレイがすぐに言う。

 

「資料作成は私も補助します」

 

「フレイ……」

 

 ペルシアは少し感動したように見た。

 

「ただし、逃げた場合は捕まえます」

 

「感動を返して」

 

 局長は小さく笑った。

 

 だが、すぐに表情を引き締める。

 

「ペルシア」

 

「何?」

 

「これは君にとって負担の大きい仕事になる。だが、宇宙管理局にとって必要な改革だ」

 

 ペルシアは黙って局長を見る。

 

「これまでの宇宙管理局は、現場の優秀さに頼りすぎていた。救助班、管制官、パイロット、時には外部協力者。だが、それを統合する部屋が弱ければ、いずれ限界が来る」

 

「もう来てるわよ」

 

「そうだな」

 

 局長は素直に認めた。

 

「だから、変える」

 

 その言葉に、ペルシアは少しだけ目を細めた。

 

 局長が続ける。

 

「君が言った通り、オペレーションルームは“誰かが何とかしてくれる”場所ではいけない。誰かが命を削って出した情報を、次の判断へ変換する場所でなければならない」

 

 ペルシアは静かに息を吐いた。

 

「……分かった」

 

 声には覚悟があった。

 

「やる」

 

 フレイが端末に記録する手を止める。

 

 ペルシアは続けた。

 

「ただし、私の基準で選ぶ。年功序列とか、部署の顔色とか、そういうのは知らない。向いてない人は落とす。使える人は若くても入れる。現場経験がなくても、適性があれば育てる」

 

 局長は頷いた。

 

「それでいい」

 

「あと、候補者には厳しくやる。泣くかもしれない」

 

「泣かせる前提か」

 

「泣かせたいわけじゃない。でも、緊急時に泣くくらいなら、訓練で泣いた方がいい」

 

 局長は少しだけ目を伏せた。

 

「その通りだ」

 

 ペルシアはフレイを見る。

 

「フレイ、まず候補者リストを集める。部署は管制、通信、救助班、整備、システム、医療連携、あと事務方からも一応」

 

「事務方からもですか?」

 

「必要。時系列記録と外部連携は、必ずしも現場職だけが向いてるとは限らない。むしろ冷静に文章を整理できる人間がいるかもしれない」

 

「承知しました」

 

「条件は、手が速い、耳がいい、言葉が具体的、怒号で止まらない、分からない時に分からないと言える、責任を人に押し付けない」

 

 フレイがそのまま打ち込む。

 

「最後の条件は重要ですね」

 

「重要よ。緊急時に“私は聞いてません”って言う人間はいらない」

 

 ペルシアの声が冷える。

 

「聞いてなくても拾いに行く。分からなくても確認する。自分の席から情報を取りに行ける人間がほしい」

 

 局長は頷いた。

 

「面談は君が行うのか?」

 

「一次はフレイと私。必要ならフォクス達にも見てもらう」

 

「スターフォックスも?」

 

「現場側から見て、使えるオペレーターかどうかは大事。フォクスは判断が早い。クリスタルは声の違和感を拾える。スリッピーはシステム面を見る。ファルコは……」

 

 ペルシアは少し考えた。

 

「ファルコは圧をかける役」

 

 フレイが端末から顔を上げる。

 

「圧をかける役とは」

 

「ファルコのちょっと荒い言葉で手が止まるか見る」

 

「それは訓練項目として明記しづらいです」

 

「じゃあ“高負荷音声環境下における作業継続性確認”」

 

「適切です」

 

「ほら」

 

 局長は思わず笑った。

 

「君達は本当に相性がいいな」

 

 ペルシアとフレイが同時に言う。

 

「そうですか?」

 

「そうでしょうか」

 

 二人は顔を見合わせた。

 

 そして、ペルシアが先に肩をすくめた。

 

「まあ、フレイがいなかったら、私の資料は終わらないからね」

 

「統括官が逃げなければ終わります」

 

「逃げる前提で話さない」

 

「実績がありますので」

 

「局長、フレイが厳しい」

 

「必要な補佐だ」

 

「味方がいない」

 

 少しだけ場が和らぐ。

 

 だが、その下には新しい仕事の重さが確かにあった。

 

 

 局長室を出ると、ペルシアは廊下で大きく伸びをした。

 

「はぁー……また仕事が増えた」

 

 フレイは隣を歩きながら言った。

 

「重要な仕事です」

 

「分かってるわよ」

 

「候補者リスト作成のため、各部署への照会文を本日中に出します」

 

「本日中……」

 

 ペルシアは嫌そうな顔をする。

 

「今日、もう帰っていい?」

 

「駄目です」

 

「即答」

 

「今、局長から正式に依頼を受けました。初動が重要です」

 

「フレイって、真面目ね」

 

「統括官が不真面目な分、必要です」

 

「それ、ひどくない?」

 

「事実です」

 

 ペルシアは口を尖らせたが、すぐに真面目な顔に戻った。

 

「でも、オペレーションルームは本気で作らないとダメ」

 

「はい」

 

「あそこが変わらないと、次も遅れる」

 

「はい」

 

「現場でフォクス達がどれだけ速く動いても、オペレーションが詰まったら意味がない」

 

「その通りです」

 

 ペルシアは歩きながら、局内の廊下を見渡した。

 

 すれ違う職員達が、統括官の姿に軽く頭を下げる。

 ペルシアは軽く手を振りながらも、目は職員一人ひとりの動きを見ていた。

 

 歩き方。

 反応の速さ。

 挨拶の声。

 視線。

 手元の資料の持ち方。

 誰が周囲を見ているか。

 誰が自分のことだけで精一杯か。

 

 フレイはそれに気づいた。

 

「もう見ているのですか?」

 

「当然」

 

 ペルシアは小さく笑った。

 

「オペレーションルームに向いてる人間って、普段から出るのよ」

 

「例えば?」

 

「周りの音に反応できる人。誰かが物を落とした時、ただ見るだけじゃなくて、危ないかどうか判断する人。会話の途中でも緊急音に気づける人。あと、怒られた時に目が死なない人」

 

「最後は統括官基準ですね」

 

「大事よ」

 

 ペルシアは廊下の先を見た。

 

「私の隣に立つなら、私の声に潰されちゃ困るもの」

 

 フレイは少しだけ目を細めた。

 

「統括官は、ご自身の声が強い自覚はあるのですね」

 

「あるわよ。私、優しいだけの女じゃないし」

 

「優しい自覚もあるのですね」

 

「あるわよ。私、優しいから」

 

「そこは少し疑問が残ります」

 

「フレイ?」

 

 そんな会話をしながら、二人は統括官室へ戻った。

 

 扉を開けると、中にはスターフォックス達がいた。

 

 フォクスは資料を読んでいる。

 ファルコは椅子にもたれて腕を組んでいる。

 スリッピーは端末を開いてナウスと何かを調整している。

 クリスタルは窓際で静かに外を見ていた。

 

 ペルシアが入ると、ファルコが顔を上げた。

 

「長かったな」

 

「仕事増えた」

 

 ペルシアは即答した。

 

 スリッピーが苦笑する。

 

「また?」

 

「また」

 

 クリスタルが振り返る。

 

「今度は何?」

 

「オペレーションルームの中核メンバー探し」

 

 その言葉に、フォクスが資料から顔を上げた。

 

「オペレーションルームか」

 

「そう。今日のシュミレーション、見たでしょ」

 

 ファルコが鼻で笑う。

 

「あれはひどかったな」

 

「ファルコ」

 

 クリスタルがたしなめるように言う。

 

 だが、否定はしなかった。

 

 スリッピーも少し困ったように言う。

 

「映像出すの、遅かったよね。システムの問題もあるけど、人の判断も遅かった」

 

「だから作り直す」

 

 ペルシアは椅子に座る。

 

 だらけない。

 そのまま端末を開く。

 

 フレイが隣に立ち、資料を展開した。

 

「一次選定を一週間で行います。各部署から候補者情報を集め、統括官、私、必要に応じてスターフォックスの皆様にも適性確認をお願いする予定です」

 

 ファルコがにやりと笑う。

 

「俺達も見るのか」

 

「見る」

 

 ペルシアは言った。

 

「ファルコには高負荷音声環境下における作業継続性確認をお願いするわ」

 

「何だそれ」

 

「簡単に言うと、ちょっと圧をかけて手が止まるか見る」

 

「俺向きだな」

 

「やりすぎたらクリスタルに止めてもらう」

 

「任せて」

 

 クリスタルが即答した。

 

 ファルコは不満そうに肩をすくめる。

 

「信用ねぇな」

 

「あるから頼むのよ」

 

 ペルシアはさらっと言った。

 

 ファルコは一瞬黙り、視線を逸らした。

 

「……そうかよ」

 

 スリッピーが笑う。

 

「照れた?」

 

「照れてねぇ」

 

 フォクスはペルシアを見る。

 

「俺は何を見ればいい」

 

「現場判断補助。候補者が、現場からの情報を聞いて次に何が必要か想像できるか。フォクスなら分かるでしょ」

 

「ああ」

 

「クリスタルは声と反応。候補者がパニックに飲まれてるか、無理に平静を装ってるか。あと、医療連携に向いてるか」

 

「分かったわ」

 

「スリッピーとナウスは、映像・センサー担当候補の手の速さと画面構成を見る。システムを使えているか、システムに使われているか」

 

「いいね、それ」

 

 スリッピーが頷く。

 

『評価項目を作成します』

 

 ナウスの声が端末から響く。

 

「お願い、ナウス」

 

 ペルシアは一度、全員を見回した。

 

「本気でやるわよ」

 

 部屋の空気が変わった。

 

 ペルシアの声に、いつものだらけた響きはない。

 

「オペレーションルームが弱いと、現場が死ぬ。フォクス達が速く動いても、救助班が頑張っても、情報が詰まったら全部遅れる」

 

 フォクスは静かに頷いた。

 

「そうだな」

 

「私は、もう“情報が出てこないから間に合いませんでした”なんて聞きたくない」

 

 クリスタルがペルシアを見る。

 

 その横顔には、少しだけ過去の影があった。

 

 ペルシアは続ける。

 

「だから、探す。使える人間を。若くても、部署が違っても、今まで目立ってなくても、必要なら引っ張る」

 

 ファルコが笑った。

 

「強引だな」

 

「統括官だから」

 

「便利な言葉だ」

 

「そうよ。便利に使うの」

 

 フレイが静かに言う。

 

「ただし、手続きは必要です」

 

「分かってるわよ」

 

 ペルシアは端末に新規資料を開いた。

 

『オペレーションルーム中核要員選定方針』

 

 タイトルを打ち込む。

 

 そして、指が止まった。

 

「……ねぇ、フレイ」

 

「はい」

 

「これ、また十二種類くらい資料にならない?」

 

「現時点では、選定方針、候補者照会、評価票、面談記録、簡易シュミレーション計画、結果報告、配置案、教育計画の八種類程度です」

 

「八……」

 

 ペルシアは机に突っ伏しかけた。

 

 だが、その直前で止まった。

 

 フォクス達が見ている。

 フレイも見ている。

 ナウスも記録している。

 

 ペルシアはゆっくり身体を起こした。

 

「……やるわよ」

 

 ファルコが少し意外そうに言う。

 

「お、突っ伏さないのか」

 

「突っ伏したいけど、今はやる」

 

 スリッピーが笑う。

 

「ペルシア、偉い」

 

「もっと褒めて」

 

 クリスタルが言う。

 

「終わったらね」

 

「厳しい」

 

 フレイが淡々と続ける。

 

「本日中に候補者照会文を出します」

 

「はいはい」

 

 ペルシアはキーボードに指を置いた。

 

 その目は、もう仕事を嫌がるだけの目ではなかった。

 

 確かに嫌がっている。

 面倒だと思っている。

 資料は嫌いだ。

 

 けれど、その先にあるものを見ている。

 

 事故現場。

 救助対象。

 現場で命を削る者達。

 白い点滅。

 間に合うかどうかの一秒。

 

 ペルシアは息を吐き、最初の一文を打ち込んだ。

 

『本件は、緊急時における救助・捜索・事故対応の即応性を確保するため、統括官判断を支えるオペレーションルーム中核要員を選定するものである。』

 

 フレイが隣で静かに頷く。

 

 フォクス達も、それぞれの席で準備を始めた。

 

 宇宙管理局の新しい仕事が、また一つ動き出す。

 

 ペルシアは画面を睨みながら、小さく呟いた。

 

「本当に、統括官って面倒くさい」

 

 フレイがすぐに返す。

 

「ですが、必要です」

 

「分かってる」

 

 ペルシアは少しだけ笑った。

 

「必要なら、やるわよ」

 

 その声には、確かに統括官の響きがあった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 宇宙管理局の統括官室には、ここ数日、見慣れない顔が次々と出入りしていた。

 

 オペレーションルーム中核要員の候補者。

 

 局長から正式に通達が出されたことで、各部署から推薦者が上がってきたのだ。

 

 管制部。

 通信管理課。

 救助班。

 整備管理部。

 システム部。

 医療連携室。

 外部調整課。

 事務管理部。

 

 部署だけ見れば、幅広く候補が集まっているように見えた。

 

 だが、ペルシアの表情は日に日に悪くなっていった。

 

 最初の候補者が来た時、ペルシアはまだ少し期待していた。

 

 フレイが作成した評価表。

 スリッピーとナウスが用意した簡易情報処理テスト。

 フォクスが見る現場判断。

 クリスタルが見る声の揺れと反応。

 ファルコが担当する高負荷音声環境。

 

 面接といっても、ただ話を聞くだけではない。

 

 緊急通信の聞き取り。

 複数情報の優先順位付け。

 現場映像の選択。

 曖昧な報告を具体化する質問力。

 怒号や混線の中で手を止めない耐性。

 自分が分からない時に、すぐ確認できるか。

 

 オペレーションルームの中核に入れるための適性を見る場だった。

 

 そして、一人目。

 

「志望理由を聞かせて」

 

 ペルシアが椅子に座ったまま言うと、候補者の男性職員は背筋を伸ばした。

 

「はい。統括官直属のオペレーションルームという重要な職務に携わることで、自分のキャリアアップにつながると考えました」

 

 その瞬間、ペルシアの耳がぴくりと反応した。

 

 言葉は丁寧。

 声も大きい。

 姿勢も悪くない。

 

 けれど、声の奥にある色が違った。

 

 現場への関心ではない。

 救助への覚悟でもない。

 肩書きへの期待。

 

 ペルシアはにこりともせず言った。

 

「なるほど。じゃあ、今から簡単な状況想定をするわ」

 

「はい」

 

「民間船から通信。『推進系に異常。船体が揺れている。乗客が騒いでいる』。これを受けて、あなたは最初に何を確認する?」

 

 男性職員は少し考えた。

 

「ええと、上席者に報告します」

 

「それは当然。その前に、何を聞く?」

 

「その前……ですか?」

 

「そう。その通信を受けているのはあなた。相手は現場。通信は切れるかもしれない。最初の十秒で何を聞く?」

 

 男性職員は目を泳がせた。

 

「ええと……被害状況を」

 

「被害状況の何?」

 

「その……損傷とか」

 

「どこの?」

 

「船体の」

 

「船体のどこ?」

 

「……」

 

 沈黙。

 

 ペルシアは椅子の背にもたれた。

 

「推進系異常で船体が揺れているなら、姿勢制御、重力制御、推進出力、乗客の固定状況、負傷者の有無、航路上の障害物、最低でもこの辺りを聞く必要がある。『損傷とか』じゃ現場は答えられない」

 

「はい……」

 

「次。現場が混乱していて、『とにかく揺れてます! 怖いです!』しか言わない。あなたはどうする?」

 

「落ち着くように伝えます」

 

「どう伝える?」

 

「落ち着いてください、と」

 

「それで落ち着くなら苦労しないわよ」

 

 ペルシアの声が冷える。

 

 男性職員は口を閉じた。

 

 横で見ていたファルコが、椅子の背にもたれながら鼻で笑った。

 

「こりゃ駄目だな」

 

 男性職員の顔が赤くなる。

 

 ペルシアはファルコを止めなかった。

 

 むしろ、その反応を見るためでもあった。

 

 男性職員の手が完全に止まった。

 

 端末に入力していた指が、宙で固まる。

 

 フレイが静かに記録した。

 

「高負荷音声環境下、入力停止。停止時間、五秒」

 

 ペルシアはそこで面接を終えた。

 

「ありがとう。結果は後日」

 

 男性職員が退室した後、ペルシアは机に額をつけた。

 

「一人目からこれ?」

 

 フレイは端末を確認しながら言った。

 

「現場情報の具体化能力に難があります」

 

「難があるどころじゃないわ。キャリアアップ目的で来る場所じゃないのよ、ここは」

 

 ファルコは笑った。

 

「まあ、肩書きは派手だからな。統括官直属って言われりゃ、出世したい奴は寄ってくるだろ」

 

「寄ってこないでほしい」

 

 ペルシアは心底嫌そうに言った。

 

 

 二人目は通信管理課からの推薦だった。

 

 経歴は悪くなかった。

 通信処理速度も速い。

 複数回線を扱った経験もある。

 

 ペルシアは少しだけ期待した。

 

 だが、簡易テストが始まった瞬間、その期待は沈んだ。

 

 ナウスが複数の通信音声を流す。

 

『こちら救助艇二号、接近角変更を要請』

『民間船より、乗客一名意識混濁』

『宇宙警察より照会、人工干渉疑いの根拠を送れ』

『現場より、右舷外装に亀裂拡大』

『医療班、搬送人数確認中』

 

 候補者は素早く聞き取り、端末に入力した。

 

 確かに、手は速い。

 

 だが。

 

「優先順位をつけて」

 

 ペルシアが言うと、候補者はすぐ答えた。

 

「宇宙警察への照会回答を優先します」

 

 ペルシアの眉が動いた。

 

「理由は?」

 

「関係機関への回答が遅れると、調整に支障が出るためです」

 

「右舷外装に亀裂拡大してるのに?」

 

「それは現場が対応中かと」

 

「乗客一名意識混濁は?」

 

「医療班が確認中です」

 

「救助艇の接近角変更は?」

 

「救助艇側で判断するものかと」

 

 ペルシアはゆっくり息を吐いた。

 

「つまり、あなたは自分の担当外だと思った情報は優先しないのね」

 

 候補者は少し戸惑った。

 

「いえ、そういうわけでは……」

 

「そういうことよ。今の優先は、右舷外装の亀裂拡大。船体が割れたら救助艇の接近角も医療搬送も全部変わる。次に意識混濁。搬送優先順位が変わる。宇宙警察への回答は必要だけど、今この瞬間の救命判断より上じゃない」

 

 候補者は沈黙した。

 

 ペルシアは淡々と告げる。

 

「通信処理は速い。でも情報の重みを読めてない。オペレーションルームの中核には置けない」

 

 候補者が出ていった後、スリッピーが少し困ったように言った。

 

「手は速かったんだけどね」

 

「手だけ速くても駄目」

 

 ペルシアは椅子に沈んだ。

 

「早押しクイズじゃないのよ」

 

 クリスタルが静かに頷く。

 

「声は落ち着いていたけれど、現場の痛みが聞こえていなかったわ」

 

「そこなのよ」

 

 ペルシアは天井を見上げた。

 

「情報を文字として拾うだけなら機械でいい。人間を置くなら、そこに命が乗ってるって分かる人じゃないと」

 

 

 三人目。

 

 救助班からの推薦だった。

 

 現場経験はある。

 救助艇にも乗ったことがある。

 体格もよく、声も大きい。

 

 ペルシアは少しだけ身を乗り出した。

 

「現場経験があるのね」

 

「はい。救助班で五年勤務しています」

 

「なら期待してる」

 

 候補者は自信ありげに頷いた。

 

 しかし、面接が始まって数分で、ペルシアの期待はまた崩れた。

 

「オペレーションルームに入ったら、現場に何を求める?」

 

 ペルシアが聞くと、候補者は胸を張った。

 

「現場の判断を尊重します」

 

「それは綺麗な言葉ね。具体的には?」

 

「現場が一番分かっていますので、こちらは支援に徹します」

 

「じゃあ、現場が間違った牽引位置を指定したら?」

 

「現場判断を尊重します」

 

「その位置にグラップルを打ち込むと船体が割れる可能性が高いと分かったら?」

 

「……現場に確認します」

 

「確認して、現場が『大丈夫だ』と言ったら?」

 

「現場判断を」

 

「違う」

 

 ペルシアの声が鋭くなった。

 

 候補者の表情が固まる。

 

「現場を尊重することと、現場に責任を丸投げすることは違う。オペレーションルームは、現場が見えていない情報を持っていることがある。全体映像、過去データ、類似事故、構造図。現場が危険な判断をしているなら止めるのも仕事よ」

 

「しかし、現場の士気を――」

 

「士気で船体は割れなくなるの?」

 

 ペルシアの声に圧が乗った。

 

「救助班出身なら分かるでしょう。現場は視野が狭くなる。助けたいと思うほど、無理をする。だから外から見る人間が必要なの。あなたは現場を尊重してるんじゃない。責任を取りたくないだけ」

 

 候補者の顔が赤くなる。

 

「それは違います」

 

「なら、止められる?」

 

「……」

 

「現場歴五年の救助班長が、『俺が行く』と言った。でもあなたの手元のデータでは、二次爆発の可能性が高い。止められる?」

 

 候補者は言葉を詰まらせた。

 

 ペルシアは静かに告げた。

 

「止められないなら、私の隣には置けない」

 

 退室後、フォクスが低く言った。

 

「現場経験はあるが、外から見る役には向いていない」

 

「そう」

 

 ペルシアは深く頷いた。

 

「現場に戻した方がいい。あの人は現場で動く方がたぶん強い。でもオペレーションルームでは危ない」

 

 フレイが記録する。

 

「配置不適。現場職継続推奨、としますか」

 

「そうして」

 

 

 四人目。

 

 事務管理部からの推薦だった。

 

 文章は整っている。

 記録も正確。

 誤字脱字も少ない。

 

 フレイは少し期待していた。

 

 だが、候補者は最初の質問でこう言った。

 

「緊急対応の経験はありませんが、記録であればマニュアル通りに行えます」

 

 ペルシアは嫌な予感がした。

 

「マニュアルにない状況だったら?」

 

「上司に確認します」

 

「上司が現場対応中で返答できなかったら?」

 

「確認が取れるまで待ちます」

 

「待てない状況なら?」

 

「ですが、手順上は確認が必要ですので」

 

 ペルシアは目を閉じた。

 

 フレイもわずかに目を伏せた。

 

 ペルシアは優しく言った。

 

「あなたは悪くないわ」

 

 候補者は少し驚いた。

 

「え?」

 

「悪くない。事務管理部ではきっと必要な人。正確に手順を守れるのは大事。でも、緊急時のオペレーションルームでは、手順が現場に追いつかないことがある」

 

 ペルシアは少しだけ声を落とした。

 

「そこで固まる人を、私は置けない」

 

 候補者は唇を噛んだ。

 

 ペルシアは続けた。

 

「記録補助としてなら訓練の余地はある。でも中核ではない」

 

 候補者が退室した後、フレイが静かに言った。

 

「記録能力自体は高かったです」

 

「分かってる。だから落とすのが少し惜しい」

 

「補助要員候補として残しますか」

 

「残して。中核じゃなくて、後方記録支援なら伸びるかもしれない」

 

 

 五人目。

 

 六人目。

 

 七人目。

 

 候補者は続々と来た。

 

 だが、どれも噛み合わなかった。

 

 肩書き目当て。

 上に気に入られたいだけ。

 統括官直属という響きに惹かれただけ。

 緊急時の声に弱い。

 情報を具体化できない。

 判断を他人に投げる。

 分からないのに分かったふりをする。

 自分の担当外に目を向けない。

 現場経験を誇るが、全体を見られない。

 逆に書類は強いが、現場の速度に耐えられない。

 

 ペルシアの機嫌は、面接のたびに悪くなっていった。

 

 夕方。

 

 統括官室の机の上には、面接記録の山ができていた。

 

 ペルシアは椅子に深く沈み、額に手を当てている。

 

「……変なのばっか寄越しやがって」

 

 低い声だった。

 

 フレイが端末を見ながら言う。

 

「統括官、言葉遣いが荒くなっています」

 

「荒くもなるわよ」

 

 ペルシアは顔を上げた。

 

「各部署、本気で選んでる? それとも邪魔な人材を押しつけてる?」

 

 ファルコが足を組みながら笑った。

 

「まぁ、入社してすぐに統括官なんて地位になった奴は好かれねぇよな」

 

 ペルシアはじろりとファルコを見る。

 

「笑い事じゃない」

 

「笑い事だろ。向こうからすりゃ、若い女がいきなり上に来て、しかも宇宙ハンターまで連れてきて、現場に口出してんだぜ。面白くねぇ奴はいるだろうな」

 

 フォクスが静かに言う。

 

「候補者の質が意図的に偏っている可能性はある」

 

 クリスタルも頷く。

 

「本当に優秀な人材を出したくない部署もあるでしょうね。自分の部署から抜かれたくないもの」

 

 スリッピーが端末を見ながら言う。

 

「システム部も、できる人ほど手放したがらないと思うよ」

 

 ペルシアは机を指で叩いた。

 

「つまり、こっちに来てる候補者リストは、各部署にとって都合のいいリストってことね」

 

 フレイは少し慎重に言った。

 

「全てがそうとは限りません。ただ、部署推薦のみでは偏りがあることは確かです」

 

「でしょうね」

 

 ペルシアは椅子から立ち上がった。

 

 その動きは、怒りを含んでいた。

 

「こうなったら、自分の足で全部の管制を見て探す!」

 

 部屋の全員が一瞬止まった。

 

 フレイがすぐに言う。

 

「それでは日程がかなりかかります」

 

「構わない!」

 

 ペルシアは即答した。

 

 フレイは表情を変えずに続ける。

 

「管制関連施設だけでも、本局内に三か所。外部管制センター、救助艇管制、通信監視室、軌道監視室、医療搬送連携室、民間航路調整室を含めれば、相当な数になります」

 

「だから何?」

 

「現在の統括官業務と並行する場合、少なくとも十日以上、場合によっては三週間以上必要です」

 

「いいわよ」

 

「よくありません」

 

 フレイの声が少し強くなった。

 

 ペルシアはフレイを見る。

 

 フレイは引かなかった。

 

「統括官が全ての現場を直接見ることには意味があります。しかし、無計画に回れば通常業務が止まります。局長報告、訓練計画、スターフォックス運用、宇宙警察との協議、救助班指導、システム部改修、すべてに影響が出ます」

 

「分かってる」

 

「では――」

 

「でも、候補者リストを待ってても駄目なのよ」

 

 ペルシアの声が低くなった。

 

 フレイは口を閉じた。

 

 ペルシアは続けた。

 

「各部署が“出していい人間”だけを寄越すなら、こっちが欲しい人材は見つからない。本当に必要な人間は、今も現場で普通に働いてる。誰にも推薦されないまま、埋もれてる」

 

 フォクスが静かに頷く。

 

「あり得るな」

 

「絶対いる」

 

 ペルシアは言い切った。

 

「緊急音に誰より早く顔を上げる人。通信が混線しても、必要な声だけ拾える人。上司に言われなくても、次の画面を出せる人。報告が曖昧なら、自分から聞き返せる人。そういう人は、面接用の推薦書じゃ見つからない」

 

 クリスタルが柔らかく言う。

 

「現場の中で見ないと分からないわね」

 

「そう」

 

 ペルシアは深く頷いた。

 

「私は耳で分かる。声の色、反応の遅れ、嘘、不安、焦り、集中。面接の場で取り繕った声じゃなくて、普段の声を聞きたい」

 

 ファルコはにやりと笑った。

 

「抜き打ちで見に行くってわけか」

 

「そう。抜き打ち」

 

 フレイがすぐに言う。

 

「それは各部署から反発が出ます」

 

「出せばいい」

 

「統括官」

 

「反発する部署ほど怪しいわ」

 

 ペルシアは腕を組んだ。

 

「こっちは遊びで人を探してるんじゃない。次に事故が起きた時、誰が私の隣で情報を出すかを決めるのよ。部署の顔色なんて知ったことじゃない」

 

 フレイは沈黙した。

 

 ペルシアの言い分は乱暴だ。

 だが、正しい。

 

 候補者リストだけを見ていては、確かに本当に必要な人材は見つからないかもしれない。

 

 フレイは端末を閉じた。

 

「……分かりました」

 

 ペルシアが少し驚いたように見る。

 

「いいの?」

 

「無計画に回るのは反対です。ですが、統括官が直接現場を見る必要性は認めます」

 

 フレイはすぐに端末を開き直した。

 

「日程を組みます」

 

 ペルシアの顔が明るくなりかける。

 

 だが、フレイは続けた。

 

「ただし、条件があります」

 

「条件?」

 

「一つ。視察は抜き打ちで行いますが、最低限の安全上の連絡は局長経由で行います」

 

「まあ、それはいいわ」

 

「二つ。通常業務に支障を出さないよう、一日あたりの視察時間を制限します」

 

「えー」

 

「三つ。視察後は必ず記録を作成します」

 

「出た、資料」

 

「必要です」

 

「う……」

 

「四つ。統括官が感覚で候補者を拾った場合でも、必ず簡易適性試験を行います」

 

「当然」

 

「五つ。疲労が見られた場合、視察を中止します」

 

「それはいらない」

 

「必要です」

 

「フレイ」

 

「統括官が倒れれば、この計画全体が止まります」

 

 ペルシアは言い返そうとして、やめた。

 

 以前なら反発していた。

 だが、フレイが本気で心配していることは分かる。

 

「……分かった」

 

 フレイは頷いた。

 

「では、視察計画を作成します」

 

 ファルコが楽しそうに笑った。

 

「面白くなってきたな」

 

「ファルコも来る?」

 

 ペルシアが聞く。

 

「俺が行ったら目立つだろ」

 

「それはそう」

 

 スリッピーが手を上げた。

 

「システム部を見る時は僕も行きたい。画面構成とか操作の癖は見られると思う」

 

「お願い」

 

 クリスタルも言う。

 

「医療搬送連携室を見る時は、私も同行するわ」

 

「助かる」

 

 フォクスは短く言った。

 

「救助艇管制を見る時は俺が行く」

 

「頼りにしてる」

 

 ファルコは肩をすくめた。

 

「じゃあ俺は?」

 

「高負荷環境が必要な時に呼ぶ」

 

「結局圧担当かよ」

 

「適材適所」

 

「便利な言葉だな」

 

 部屋に少しだけ笑いが戻った。

 

 だが、ペルシアの目は真剣だった。

 

 

 その夜。

 

 統括官室には、まだ明かりがついていた。

 

 フレイは視察日程を組んでいる。

 スリッピーとナウスはシステム系視察のチェック項目を作っている。

 クリスタルは医療連携に必要な観察項目を整理している。

 フォクスは救助艇管制で見るべきポイントをメモしている。

 ファルコは椅子に座って退屈そうにしながらも、候補者の面接記録を眺めていた。

 

 ペルシアは窓際に立ち、宇宙管理局の夜景を見ていた。

 

 局内のあちこちに光が灯っている。

 

 管制室。

 通信室。

 救助艇格納区。

 整備区画。

 医療搬送連携室。

 

 そのどこかにいるはずだった。

 

 まだ誰にも見つけられていない人材が。

 

 推薦書には載らない。

 肩書きも派手ではない。

 けれど、緊急時に必要な一秒を拾える人。

 

 ペルシアは小さく呟いた。

 

「絶対、見つける」

 

 フレイが顔を上げる。

 

「統括官?」

 

「何でもない」

 

 ペルシアは振り返った。

 

「フレイ、明日はどこから?」

 

「本局第一管制室です。民間航路の通常監視を担当しています。緊急対応では初報の受信源になることが多い部署です」

 

「いいわね。最初に見るにはちょうどいい」

 

「その後、通信監視室。午後に救助艇管制を予定しています」

 

「詰め込んだわね」

 

「統括官が全て見ると仰ったので」

 

「言ったけど」

 

「日程がかかるとも申し上げました」

 

「はいはい」

 

 ペルシアは椅子に戻り、端末を開いた。

 

「じゃあ、明日の準備だけして帰るわよ」

 

 ファルコが目を細める。

 

「帰る気あるのか?」

 

「あるわよ」

 

 クリスタルが静かに言う。

 

「本当に?」

 

「あるってば」

 

 フレイが淡々と告げる。

 

「二十二時には退室してください」

 

「門限みたいに言わないで」

 

「実質、門限です」

 

「フレイ、厳しい」

 

「必要です」

 

 ペルシアは文句を言いながらも、明日の視察用メモを作り始めた。

 

 その表情は、少しだけ楽しそうでもあった。

 

 机の上に来る候補者を待つのではない。

 自分の足で探しに行く。

 

 その方が、ペルシアらしい。

 

 フォクスはそんなペルシアを見て、静かに言った。

 

「統括官らしくなってきたな」

 

 ペルシアは顔を上げる。

 

「今さら?」

 

「ああ」

 

「褒めた?」

 

「半分は」

 

「また半分」

 

 フレイが横から言う。

 

「残り半分は、無茶をする危うさへの懸念かと」

 

「フレイ、通訳しない」

 

 スリッピーが笑った。

 

「でも、ペルシアが直接探した方が見つかりそうだよね」

 

「でしょ」

 

 ペルシアは少し得意げに笑う。

 

「私の耳と目を信じなさい」

 

 クリスタルが微笑む。

 

「ええ。信じているわ」

 

 その言葉に、ペルシアは一瞬だけ照れたように視線を逸らした。

 

「……じゃあ、ちゃんと見つけないとね」

 

 フレイは静かに頷く。

 

「はい」

 

 こうして、オペレーションルーム中核要員探しは、候補者面接から、ペルシア自身による全管制視察へと切り替わった。

 

 各部署が出してきた推薦リストでは見つからなかった。

 

 ならば、こちらから見つけに行く。

 

 肩書きではなく、現場の反応を見る。

 推薦文ではなく、声を聞く。

 面接用の言葉ではなく、とっさの判断を見る。

 

 ペルシアは端末に、明日の視察メモの一行目を書いた。

 

『第一管制室。初報を拾う耳を見る』

 

 その文字を見つめながら、ペルシアは小さく笑った。

 

「さあ、どこに隠れてるのかしらね」

 

 その声には、久しぶりに獲物を見つけに行くような鋭さがあった。

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