アビドスに三年生がもう1人いる世界線   作:最葛餅(藻屑)

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悪夢枕②

「それで、なんで俺らで買い出しなんですか。」

 

「“これが男の宿命だよ、アヤト”」

 

 

 今現在、私たちはアビドス高校の近くにあるスーパーで色んなものを買っていた。

買うものは主に夕食用の食材や、夜更かしの時に食べるらしいお菓子など諸々……私たち含め、合計8人となるとそれなりに多く買わなければいけない。

 

ただ、私は生徒ほど力が強いわけではないのでこうしてアヤトを連れてきているという訳だ。

お陰で様々なものが買えたので良かった。

 

 

「“それにしても、アビドス高校に全員分の布団ってあるの?”」

 

「ありますよ?アビドスは砂嵐が多かったのは先生も知ってると思いますけど、それで帰れなくなった生徒の為に貸し出してたりしてたらしいです。まぁ、今はめっきり使われることはありませんが……」

 

「“なるほど、だからアビドス高校でやるんだね”」

 

「らしいですよ。まぁ、各々の家ですることもたまーにあるそうですけど。」

 

 

 なるほどね〜と言いつつ、アビドス高校へ歩いていく。

その道中でシロコ*テラーと会い、一緒に向かうこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ……ねむ……」

 

 

 深夜、ほぼ日も回りかけと言う時間帯に俺はそんな言葉を零す。

ここ最近の悪夢のせいで眠れなかったのも原因だが、第一こんな時間まで起きることの方が稀だ。

 

目の前の後輩とホシノは元気に遊んでいるし、先生も控えめながら子供心を取り戻した様に一緒に遊んでいる。

このまま寝に行ってもバレないんじゃなかろうか。

 

 

「ん、寝るならホシノ先輩を呼んでくるけど?」

 

「うわっ、いたのかシロコ。お前もあっちに混ざってきたらいいのに。」

 

 

 隣からいきなり声が聞こえてきて、完全に油断していた俺は驚いてしまう。

……普段だったら絶対に気付く筈なのに。

 

 

「私は先輩のお目付け役。ホシノ先輩から見ておいてって言われた。」

 

「シロコ……前も言ったが俺に先輩ってつけなくても良いんだぞ?世界は違えど今のお前は俺らと同じ三年生なんだからよ」

 

「ん、それでもアヤト先輩はアヤト先輩。これからも先輩って呼ぶね。」

 

「ふーん、そうか。まぁそこまで言うなら俺は止めないさ。」

 

 

 その言葉とほぼ同時に欠伸をしてしまう。

そろそろ本気で寝てしまいそうだ。でも、かなり前の件もあるからみんなの前で寝るのだけはやりたくない……から仕方なく立って

 

 

「シロコ、俺は寝てくる。ホシノに言うなら10分後とかにしてくれ。

 

 

 とだけ言い残し、こっそりと部屋から抜けていった。

途中、先生と目が合ったがシロコと話していた内容を聞いていたのか、見て見ぬ振りをしてくれた。ありがとう先生、また次の当番は色々と手伝うからな。

 

と、そんな事を心の中で呟きつつ、みんなで寝る予定らしい部屋に一足先に入り、一番端の布団に入った。

 

 

「今夜こそ、悪夢を見ません……よう……に……」

 

 

 そんなちっぽけな願いと共に、意識が段々と落ちていく。

今日こそ、今日だけでも悪夢を見なかったら嬉しいな、なんて願いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、相棒は?」

 

 

 後輩達と先生とトランプをしている時に、アヤトがこの部屋にいないことにふと気づいた。

おかしい、シロコちゃんにはアヤトが寝るなら言う様に伝えていた筈なんだけど……

 

 

「アヤト先輩なら寝に行ったよ、ホシノ先輩。」

 

「なんで言ってくれないのさ〜シロコちゃん、おじさんシロコちゃんを信用してたのに〜」

 

 

 とまぁ怒った様に言うが、正直シロコちゃんでも気づかない可能性はあると思う。

だってアヤト、本気で隠す時は誰にも気づかれない様にするし……

 

 

「ん、アヤト先輩は10分後なら言っても良いって言ってたから、そっちが一段落ついたら言うつもりだったよ。」

 

「うへ、そうだったの?」

 

「うん、アヤト先輩もなんだかんだ寂しがってるんだと思う。じゃなけりゃ、こんなこと絶対に言ってない。」

 

 

 アヤトがまさかシロコちゃんにそう言ってるとは思ってなかったから、久々に驚いてしまう。

多分、シロコちゃんが言ってることも一理あると思うけど……やっぱり、悪夢が原因なのだろう。

 

 

「じゃあ、おじさんも眠いし先に寝ちゃうね〜。明日は自由登校の日でもあるから、夜更かしはしちゃっても良いよ〜!」

 

 

 とだけ言って、後の事は先生に任せてからアヤトの所に行く。

行くと言っても、寝るために布団を敷いていた部屋は隣なのですぐに着くことができた。

こっそりと、静かにドアを開ければアヤトが端で丸まりながら寝ていた。

 

 

「アヤト〜?もう寝ちゃった?」

 

 

 そう小さい声で聞いてみるが反応はない。恐らく、それだけ熟睡しているんだろう。

寝れていることに安心しつつも、やっぱりまだ不安があった。

 

 

「悪夢……見てないかな。」

 

 

 そう、悪夢を見てないかどうか。

先生曰く、悪夢は強いストレスを抱えている時などが見やすいらしい。今回のこのお泊まり会だって、アヤトのストレスが少しでも減れば良いなと思ってみんなを集めた。まぁ、みんなには話してないから珍しかっただろうけど。

 

 

「アヤト、ちょっと布団の中お邪魔するね。」

 

 

 そう言って私はアヤトの眠っている布団に静かに近づいて、アヤトの体勢を横向きに変える。

そしてその中に、アヤトの腕で自分を包む様に入る。

 

 

「うへ〜……やっぱりアヤトはあったかいや」

 

「う……うぅ……」

 

 

 アヤトの温かさを感じていればアヤトからうめき声の様なものが聞こえる。

その声に反応してアヤトに体ごと顔を向ければいきなり抱きしめられた。

 

……抱きしめられた?

 

 

「あ、アヤト!?」

 

 

 できる限り声量を落として抵抗しようとしたけど逃げられない。いや、逃げようとしていないのかもしれないけど。

でも、変だ。アヤトは変な夢を見る事はあれどこうやって体を無意識に動かす事は無かった気がする。

 

 

「……そうだよね、アヤトも苦しんでるんだよね」 

 

 

 そう言葉を零したら、アヤトの頭の方に近付いていた。なんでか分からないけど、したい事は分かっていた。

 

そのままアヤトの頭を私の胸に当てて、自分の心音を聞かせる様にしていた。

多少恥ずかしいけど、それもすぐに無くなった。だって、目の前の頼れる相棒が悪夢に苦しんでるんだから。寝ている間だけでも安心できる様にしないと。

 

 

「ん……」

 

「わわっ…………うへっ」

 

 

 無意識に頭を撫でていたらアヤトが抱きついてきた。

やっぱり、なんだかんだ言って人肌が恋しかったのだろう。

 

やっぱり、アヤトも私と同じ子供なんだって感じた。じゃなければ、こんな風に甘えてくる事は無かったと思う。

 

 

……このアヤトは他の人には見せない様にしよう、そうじゃなかったら、アヤトがどうなっちゃうか分かんないもんね。

 

そんな事を寝ながら考えてた私が次に目を覚ますのは、珍しいアヤトの叫び声だった。




━━本文同日、ホシノ退出後のアビドスメンバーのお話(先生視点)






「ん、ホシノ先輩が出ていって30分経った。」


 ホシノが隣の部屋に行ってから大体30分程経った頃、大きい方のシロコがそんな事を呟いた。
どうやらホシノが戻って来てない事に気づいて呟いたらしい。原因の分かる私からしたら微笑ましい光景が繰り広げられているのかも知れないが、まだ行くつもりはない。


「確かに……何かあったんでしょうか……」

「“ん〜、まぁあったと言えばあったし、ないといえばないかな?”」

「何よそれ、どういうこと?」


 おっと、口を滑らせてしまったらしい。だがまぁホシノもこのお泊まり会の概要は伝えていると思うし、多分大丈夫な筈だ。
……多分、きっと、恐らく。ちょっと怖いから聞いてみよう。


「“えっとね、まずみんなは何でこのお泊まり会が開かれたか分かる?”」

「?なーんにも。ホシノ先輩から理由もなく誘われたわよ?アヤネちゃんと珍しいね〜って話しながら準備してたくらいだし。」

「“oh…………”」


 どうやらホシノはみんなに話してないらしい。こうなると少々……いやかなり面倒だ。主にアヤトの名誉のために。さてさてどうはぐらかすかと少々冷や汗をかいていた所で……


「まぁでも、大方アヤト先輩関連ってのは分かるわよ。」


 と、セリカから言われた。どうやらセリカ……アビドスのメンバーも気付いていたらしい。


「まぁ、最近のアヤト先輩って異様に優しかったですもんね。私何があったのか率直に聞きそうでしたし。」

「そうそう、ノノミ先輩とか驚愕してアヤト先輩に率直に体調聞いてたくらいだし。」

「“あぁ、やっぱり聞いてたんだ……”」

「勿論ですよ〜、いつも厳しい先輩が急に優しくなったんですから聞いちゃうのも仕方ないですよ〜。ねー?シロコちゃん。」

「ん、最近のアヤト先輩は銀行強盗しようとした私を止めなかった。」

 と、少し離れた所でシロコとシロコ(大きい方)を撫でくりまわしたりほっぺをむにむにしたりしていたノノミが混ざってくる。
確かに言われてみればそうか、急に優しくなったら怖いよね。なんて聞いた事を考えながら話すかどうかを迷っていた。


「まぁでも、私たちもなんでも根掘り葉掘り聞く気は無いわよ。誰だって隠したい事はあるでしょうし。」

「ですね。話せる様になったら話してほしいな〜……って感じでアヤト先輩には言ってますから。」


 その言葉を聞いて、やっぱりアビドスの子達は優しいなって、アヤトは後輩にも同級生にも愛されているんだなって感じた。そうでなきゃ、こんな子達になっていない筈だ。


「“そっか……じゃあ、先輩達の寝顔でも見に行こっか!”」

「……えっ」

「……へ?」


 そんな二人の腑抜けた声と共に、私は部屋から出ていった。












「ほっ、本当に覗くの……?」

「“何を当たり前の事を。あの二人の油断し切った寝顔なんてなかなか見れないんだよ?”」


 目を輝かせながら言う私に、セリカは呆れを、アヤネはあははと困惑した笑いを。
ノノミとシロコとシロコは私以上に目を輝かせていた。


「さて、準備はいい?」

「早速行っちゃいましょ〜!」

「あぁ、もうしーらない……」



 その言葉と同時にセリカが扉をゆっくり開ける。なんだかんだ見てみたかったんだね、と生暖かい目線を向けつつも肝心の二人が寝ているだろう部屋に入っていく。
その部屋の中には……


「すぅ……すぅ……」

「んん……ほしのぉ……」


 あら〜^^
なんとまぁお互いがお互いを抱きしめて寝ちゃってるじゃ無いですか!
しかもホシノは穏やかに微笑んでるし、アヤトは顔こそ見えないものの悪夢を見てなさそうで安心安心!いやぁ〜素晴らしいものが見れました。眼福眼福。

明日からの仕事もこれのお陰で頑張れちゃうな〜、写真撮っとこ。


「先生、その写真あとでくださいね⭐︎」

「“勿論だよノノミ。この写真はみんなで共有しよう。”」


 とだけ言って、その部屋を後にした。
え?なんで戻ったかって?そりゃあお片付けしないとだめじゃないか。


あれから数日後、ホシノに抱き枕にされているアヤトはなんだかんだ悪夢を見なくなったらしい。よかったね、アヤト
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