5 years later〜エピソードZA〜   作:nami73

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 フレア団が遺したものを背負って戦うグリを相手にユリーカは勝利を収めた。
 Aランクとなったユリーカの前に現れた巨躯の老人は、自らをAZと名乗るのであった。


第11話 明かされる過去 ユリーカ覚悟完了

「あっ、AZさんお帰り! と、ユリーカちゃん?」

 

「先日はサビ組とのことで間に入っていただき、ありがとうございました」

 

「こんにちはデウロさん。気にしないでよピュールさん。ユリーカとMZ団はお友達、でしょ?」

 

「でねでーね!」

 

 グリとの試合を終えたユリーカは、AZの案内を受けホテルZに赴いた。

 困った時はお互い様、とユリーカはデウロとピュールへニッコリと笑顔を見せる。

 

「ガイはどうした?」

 

「ランクアップ戦、って言って出かけてる」

 

「今度のランクアップ戦に勝てばいよいよランク:Aですからね。気合い入ってましたよ」

 

「そうか、それはいいな」

 

 穏やかな笑みをデウロたちに向けるAZの側に寄り添うのは、ユリーカもよく知るいちりんポケモンフラエッテ。

 花を手に持つ習性のあるポケモンだが、その花が問題だった。

 黒く禍々しい色の花を持つフラエッテなど見たことないのだ。

 

「AZさん。そのフラエッテ……」

 

「この子も話に関わってくる。すべては、屋上で話そう」

 

 

 

 辺りはすっかり暗くなり、彼方には完全に囲い隠されたプリズムタワーが見える。

 エレベーターでホテルの屋上へと場所を移したところだった。

 

「やったぜみんな! ランク:A到達! ってユリーカ?」

 

「ガイさん」

 

「でーね」

 

 すぐ後に続く形でガイが帰ってきて合流したのだ。

 

「帰ってきたタイミングでちょうどみんなエレベーターで昇ってくもんだからビックリしたぜ」

 

「おめでとうガイ。MZ団も皆揃ったならばちょうどよい」

 

 AZの表情に浮かぶ険の理由、それをこれから語るのだろうとユリーカは見た。

 

「どうしたんだ? AZさん?」

 

「これから語るのはわたしが犯した罪……そして後悔の物語だ」

 

 たったひと言だった。それだけで、ズシリと背中にカビゴンがのしかかってきたような重みがあった。

 

「3000年前のいくさは、多くのものを奪った。様々なポケモンの未来……たくさんの人の日常……わたしのフラエッテも戦場に駆り出され、命を落とした」

 

 AZとフラエッテが視線を交わす。

 

「わたしは愛するフラエッテを生き返らせるため、命を与えるキカイを造った」

 

「命を与えるキカイ?」

 

「ユリーカさん、まずAZさんのしれっと3000年以上生きているという前提には突っ込まないのですか?」

 

「嘘なの?」

 

「いや、この雰囲気的にそんなことはない、と思いますが」

 

 キョトンとするユリーカにピュールは言葉を引っ込める。

 

「フラエッテは蘇り、わたしは愛する者を取り戻した」

 

 AZはユリーカたちに視線を戻す。

 

「だが怒りは収まらなかった。愛するポケモンを傷つけた世界が許せなかった」

 

 ユリーカたちは、AZの心境に自分を重ね合わせる。

 ユリーカはデデンネを、ガイはライボルトを、デウロはスターミー、ピュールはズルズキン……固い絆で結ばれた相棒がいなくなることなど、想像するだけで胸が張り裂けそうになった。

 

「わたしは怒りのままにキカイを最強の最終兵器にした。すべてのものを奪おうとする愚かな戦争を終わらせるために、わたしは破壊の神になることにした」

 

「それって……!」

 

「きみの想像する通りの人物と同じことをしたのだユリーカ。もっとも、その者とは違って、わたしにはきみやきみの仲間たちのような止めてくれる相手はいなかったがね」

 

『まだだ! まだ終わっちゃいない!! 動け!! 動くのだぁぁぁぁぁッ!!』

 

 5年前、カロスの危機を救う最後の一撃をプニちゃんが巨石に見舞い、禍々しい色の空にこだましたフラダリの絶叫をユリーカは思い出す。

 

「最終兵器から放たれた光は天に届くと地をめがけて降り注ぎ、地表を焼き払ったのだ」

 

 語りながらAZは屋上に備え付けの椅子へ腰掛け、長すぎる足を折り曲げる。

 

「だがフラエッテは知っていたのだろう。わたしが与えた命は他のポケモンから奪ったものだと。フラエッテはどこかに去り、残されたわたしは3000年も彷徨うこととなった」

 

「きゅるる……」

 

 AZにフラエッテは申し訳なさげな表情を向ける。フラエッテとしても辛い選択だったのだろう。

 

「でも、今こうして一緒にいるってことは分かり合えたんだよね」

 

 ユリーカにAZは、笑みを作った。ほんの少しだけ上がった口元には照れが垣間見えた。

 

「その果てしない旅の中でわたしは時の権力者に頼まれた……カロスを守る存在が欲しいと。わたしは考えた。奪うものであってはならない、永遠の命を持ったフラエッテの力を皆に分け与えるものがよいと」

 

「それが、プリズムタワーの中にあるもの?」

 

 ユリーカに、AZはゆっくり首肯した。

 

「『アンジュ』……それは、永遠の命を得てしまったフラエッテの生きる意味となるものであり、わたしなりのフラエッテへの贖罪だ」

 

 AZは彼方のタワーを見やる。

 

「わたしはフラエッテと再会し、アンジュを動かす日を夢見ていた……その日は来ないままであったが、それは平和だったということだ……だが今のアンジュ……タワーは、メガシンカしたフラエッテがいないのにメガエネルギーを過剰に放出している」

 

「それって、フラダリたちが動かした巨石のせい?」

 

「おそらくは、な。巨石をきっかけとしてアンジュ自体が生成し、内蔵していたメガエネルギーが漏れ出した。このままでは暴走メガシンカが多発し、ポケモンは苦しみ、人が襲われる。それを止めるにはメガシンカ使いがメガシンカしたフラエッテとともにアンジュの操縦席に向かうしかない」

 

「AZさんやフラエッテ、そしてタワーにそんな秘密が……」

 

 ソファへ腰掛け、足を組むガイには言葉が見つからなかった。あまりにも壮大で、あまりにも苦しい話であるからだ。

 

「だからタワーを鎮めるために最強のメガシンカ使いが必要なのか」

 

「でもどうしてフラエッテはメガシンカが出来るのですか? 普通メガシンカが出来るのはそれ以上進化しないポケモンだけです」

 

「それは普通のポケモンの話、でしょ?」

 

 ピュールが疑問を投げ掛ければユリーカがサラリと話す。ユリーカからすればフラエッテの持つ黒い花を見れば、彼女が普通のポケモンではないのは明らかなことだった。

 

「わたしのフラエッテは進化できない……多くの命を与えられた特別なポケモンだから……としか言えないな」

 

 AZとしてもメカニズムとしてハッキリ説明はできないと素直に明かす。

 

「3000年ぶりに会えたのはフラエッテの許しであり、わたしの贖罪としてタワーを止めるためなのだろう。だがわたしにはトレーナーとして戦える気力は残っていない……」

 

「確かにそもそもの原因はAZさんにあるのかもしれないけど、タワーの暴走は想定外なんだろ」

 

「いいえ! AZさんの責任です。ボクたちMZ団は尻拭いです」

 

「ピュール!」

 

 デウロがピュールを制止する。しかしピュールは止まらない。ここまでの話を真実として受け取るが故の反応だ。

 

「AZさんが責任を取ろうとしているのはボクにも分かります。ボクだってAZさんにお世話になっていますし……でも、ボクだってこんなこと言いたくないけど、責任の所在はハッキリさせておかないと、ボクたち死ぬかもしれないのですよ!?」

 

「その通りだ」

 

 ピュールへのAZの肯定が、若者たちの議論を止める。

 

「わたしに力がないばかりにきみたちに迷惑をかけている。本当に申し訳ない……」

 

「ユリーカは別にAZさんに迷惑かけられてるわけじゃあないからいいけど」

 

「でんね」

 

「プリズムタワーはユリーカちゃんの家だったんじゃあないの?」

 

「寝泊まりするならパパの家あるから大丈夫」

 

 ユリーカが話す中、ガイはソファから立ち上がる。デウロに聞かれてそう言えばと思い出すが些細なことであるとした。

 

「AZさん。オレたちMZ団とユリーカに任せなって!」

 

ドゴオオオオオッ!!

 

 ガイの大見栄の最中だった。街全体に轟音が響き、強烈な揺れが大地を走る。

 

「うわわ!?」

 

「な、なになに!?」

 

「ねぇ! タワーが!!」

 

 屋上より見えるプリズムタワーの囲いが吹き飛ばされ、内部から怪しい輝きが満ちているのが見て取れる。

 

「プリズムタワーが……」

 

「なんだよ、あのヤバい光は!?」

 

 デウロにガイが驚愕する中、ユリーカはAZの隣に立つ。

 

「この時が来てしまった。タワーが……アンジュが暴走する」

 

「暴走したらどうなるの?」

 

「タワーから過剰に放出されるメガエネルギーによって……街のポケモンたちが……メガシンカしてしまうだろう」

 

「きゅるるぅ……」

 

 咳き込むAZにフラエッテは不安げに寄り添う。

 

「大丈夫だってAZさん。オレたちがなんとかするぜ!」

 

 ガイの青いスマホロトムが着信を伝える。相手はマスカットだった。

 

「マスカットさん。用件はタワーのことだろ」

 

『はい……非常に不味い事態です。一刻も早く対応していただきたいです』

 

「分かった。すぐ行くよ」

 

 通話を切り、ガイはデウロとピュールを見る。

 

「MZ団! メディオプラザに集結するぞ」

 

 リーダーの指示にデウロもピュールも頷いた。恐怖こそあれど、チームの結束が優った。

 

「メガシンカしたフラエッテがタワーごとアンジュの力を得て『アンジュフラエッテ』となるのが正しい姿。タワーを正しい姿にすれば暴走は止まるはず。だがポケモントレーナーでもないわたしでは足手纏いになるだけだ。ここからきみたちを応援している」

 

「きゅる……」

 

 フラエッテの瞳に哀しみが浮かぶ。AZは、フラエッテに柔らかな笑みを向けた。

 

「フラエッテ、頼むぞ」

 

「きゅるる!」

 

 フラエッテは、その場でくるりと回って気丈に振る舞った。

 

 

 

 ホテルZを飛び出したユリーカとMZ団はすぐにメディオプラザへ辿り着き、待機していたマスカットと合流をしていた。

 

「ユリーカさん。MZ団の皆さん。早速ですが状況を説明させていただきます。端的に言うとタワーから放出されるメガエネルギー量が増加し続けています。このペースで放出されると、街中に暴走メガシンカポケモンが溢れます」

 

「きゅるる!」

 

「フラエッテさん。AZさんは教えてくださいました。メガシンカしたフラエッテと、そのトレーナーであれば大丈夫だと!」

 

 マスカットはフラエッテから、改めてユリーカとガイへ視線を移す。

 

「ここにはランク:Aのトレーナーが2人いらっしゃいますがどちらがタワーを制御なさるのですか」

 

 問いかけにガイが1歩前に出た。

 

「オレだ」

 

 名乗り出るガイに、誰も口を挟みはしなかった。

 

 

 

 時はほんの少し遡る。

 メディオプラザへ向かう道中において、マスカットの問いかけは想定の範囲内だった。

 

「オレかユリーカか、どちらか勝った方がフラエッテとタワーの制御に向かう! コレでどうだ?」

 

「うーん……そんな暇なくないかなぁ?」

 

「なんだよ? オレなんかとは決着をつけるまでもないってか?」

 

「違うよ。あたしとフラエッテはついさっき会ったばかりなんだよ? それに比べてガイさんは、少なくともユリーカよりはフラエッテと仲良しになってるでしょう?」

 

「そりゃあ、まぁなぁ」

 

「あたしとピュールが寝泊まりするようになる前からガイはホテルZにいるもんね」

 

「先生言ってた。ポケモントレーナーに必要なのは心、技、体を鍛え抜いたポケモンとトレーナー……そして両者の間に芽生えた確固たる信頼関係だって。そりゃあバトルとなったらガイさんだろうが誰だろうがユリーカが勝つ気全開でやるけど、フラエッテと仲良くなってるのはどう考えてもあたしよりガイさんじゃない」

 

 ユリーカが語るのは師の言葉。遠くはジョウトの港町に私塾を置く師と、そのポケモンたちの笑顔が脳裏に浮かんでいた。

 

「そういうことなら任せてくれ! オレがミアレのみんなやポケモンを守るんだ!」

 

 ガイは走りながらドンと胸を叩き、決心を固めた。

 

 

 

「承知いたしました。何かありましたら、ユリーカさんをバックアップします」

 

 ガイの覚悟を感じ取り、マスカットも納得をする。そこでガイのスマホロトムが着信を伝えた。AZからだ。

 

「AZさん、どうした?」

 

 応答しながらガイは通話をスピーカーモードに切り替える。

 

『大事な時に一緒にいなくて申し訳ない……3000年も生きてしまうと身体のあちこちにガタがきているようだ』

 

「タワーのことで心労とか色々あるんだろ。AZさんは3000年かけてようやくフラエッテと会えたんだろ。これから楽しく暮らせるようオレたちが解決してくるぜ」

 

『気遣いに感謝する、ガイ。デウロ、ピュール、そしてユリーカ。ミアレを……この地方を守りたかったわたしの思いを託す。未来を……街のポケモンや人を頼む。フラエッテ、『えいえんのはな』と呼ばれるその力を若者たちに貸してやってくれ』

 

「だってさ、フラエッテ」

 

「きゅる!」

 

 呼びかけられたフラエッテはガイの側へと寄る。準備は、すべて整った!

 

「いくぞ!」

 

 ガイがメガリングを翳せば、フラエッテがメガシンカを開始する。

 虹色の繭より姿を見せるは黒い花……肥大化した『えいえんのはな』の花弁が機械的な形状となり、伸びた茎が本体に巻き付いて一体化したような見た目となったアンジュフラエッテ……AZの願いの結実だ。

 

「きゅる」

 

 フラエッテはガイに左手を差し出す。一緒に行こう、と笑みを向ける。

 ガイは、ほんの少しだけ応える指先を曲げるも、すぐにピンと伸ばし直し、手を取る。

 

「いくぜ、フラエッテ!」

 

 ガイとフラエッテの周囲を虹色の球体が包み込む。

 球体は宙に浮き、上昇し続け、プリズムタワーの高層部へ突入する。

 そこはまさしく、ユリーカが幼き日に侵入をあにより禁じられていた封鎖区域であった。

 

「行っちゃった……」

 

 デウロが呟く中、ユリーカのボールからプニちゃんが姿を見せる。

 

「プニちゃん。他のみんなの集まり具合はどう?」

 

『万事抜かりはない。既に指示通り、我が片割れ含めた90%分全て待機させてある。そなたからのひと声でいつでも100%形態となって見せようぞ』

 

 ガイとフラエッテが突っ込んでいった先を見上げたままユリーカとプニちゃんは念話をする。

 

『このまますんなりいくわけがない』

 

 ユリーカとプニちゃんは、この確信を共有していた。

 

 

 

「ここがタワーのコックピットか……」

 

 タワーの封鎖区画へ突入したガイの視界に飛び込むは、過剰なメガエネルギーによるショッキングピンク一色な部屋の中央に置かれた巨大な座椅子。どこかレトロチックなデザインも、虹色に光っているのでどうにもミスマッチに思えた。

 

「みんな。ちゃんと配信見てるか? フラエッテ、やるぞ!」

 

 ガイの呼び掛けに応じてフラエッテは作業を開始した。肥大化したえいえんのはなに、タワー中のメガエネルギーを吸収してゆく。

 

 

 

「こちらマスカット。タワーの光だが収束したようだ」

 

 マスカットはスマホロトム越しに連絡を取っている。おそらくはクエーサー社の本部ビルにいるスタッフだろう。

 デウロとピュールが安堵する中、ユリーカだけは緊張の糸を解きはしなかった。なぜかと問われるならば、それはもう『女のカン』としか言いようがなかった。

 

 

 

 アンジュフラエッテの花が吸収したメガエネルギーは部屋の天井付近へと浮かび上がる。

 後はこの凝縮されたメガエネルギーを処理すれば事態は解決、そうガイが安堵していたところであった。

 

ズオオオオオッ!!

 

 凝縮されたメガエネルギーが物質化し、数多の根となりガイを襲ったのだ。

 

 




 『ピュール』
 15歳。ポケモントレーナー。
 MZ団の一員でファッションデザイナー志望の少年。チームでは常に1歩引いたところから意見を出すポジション。
 冷静沈着だが心奪われた存在に対しては強いこだわりがあるみたいだよ。
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