5 years later〜エピソードZA〜   作:nami73

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 AZからタワーにまつわる話を聞かされたユリーカはMZ団と一緒にメディオプラザへ走る。
 ガイとフラエッテがタワーに乗り込むもアンジュは暴走を開始してしまった…!


第12話 プリズムタワー大暴走! 立ち上がれ、ユリーカとミアレの勇士たち

ゴアアアアッ!!

 

 メガエネルギーによるショッキングピンクの光が収まったかに思えたプリズムタワーが再び発光。それどころか内部よりえいえんのはなに似た巨大な花やケーブルじみた根が多数飛び出し、全体が土台からツルで持ち上げられた4足生物のように変貌。先端に至ってはさながら竜の顎を思わせる頭部へと変化してゆく。

 

「これぞまさしく神の裁き! ミアレジムのユリーカよ、そして偉大なるスクライアの民たるこのボクを馬鹿にした愚か者どもよ、絶対的な裁きの前に恐怖し、絶望しながら滅び去るその哀れな顔を見せて欲しいテツ〜! ジュウジュウジュウジュウジュウ!!」

 

 ユリーカを尾け回していたデフェールが屋根裏から勝手に勝利宣言をする。

 アンジュに関わる一切においてスクライアの民は関知していない。全く何の関係もない。

 ただただ訪れたミアレの危機を自分の気に入らない者たちへの制裁であると吹いているだけに過ぎない。

 デフェールは、プリズムタワーが暴走を始める正確な日時を能力としてあらかじめ見通していた。だが元来ミアレの人たちが向けてくる視線に対して一方的な認知の歪みから逆恨みを拗らせ、ヌーヴォカフェでの一件が憎悪の決定打となり誰にも告げはしなかった。

 加えて憎きユリーカへの復讐が何より最優先で、元々街の未来などはどうだっていいのだ。

 街の人たちが慌てふためく様をギリギリまで見届けてから背中のリュックサックに搭載したジェットパックで逃げる算段であった。

 

 

 

「なに!? なに!?」

 

「これは一体!?」

 

 デウロとピュールはパニック寸前までに驚き、

 

「こちらメディオプラザ! 異常事態発生! 本部応答を!!」

 

 マスカットはしきりにスマホロトムで連絡を取りにかかるも膨大なメガエネルギーの暴走により上手く通話先とコミュニケーションが取れていない。

 

「ほら来た!!」

 

 唯一ユリーカだけはこの状況を予測していた。『女のカン』が当たったと、ない胸を張っている暇はない。

 

「プニちゃんズ!! 全員集合!!」

 

 すぐさま号令をかければ、プニちゃんは四つ足の跳躍で垂直跳びを見せた。

 

『同胞たちよ、今こそ結集の時ぞ!!』

 

 タワーの先端が変貌した『アンジュ』の頭部が、黄緑色の光を放つプニちゃんを感知する。

 

「「オオオオオオオッ!!」」

 

 プニちゃんとアンジュ、2つの咆哮が重なり合う中でプニちゃんが放つ光と同じ色をした夥しい数の物体があちこちから飛び込み、包み込んでゆく。

 

『50%!!』

 

 プニちゃんの姿が猟犬を思わせるフォルムから、巨大な大蛇のそれへと変化する。それでも黄緑色の物体……ジガルデセルの合流は止まらない。

 

『ぬおおおおおッ!! 100%オオオオオッ!!』

 

 やがてプニちゃんは、右翼に蒼、左翼に紅のハニカム状の模様を浮かべた巨人へと姿を変えた。

 ジガルデ・パーフェクトフォルム……研究家たちが便宜上つけた学名だが、ユリーカからすればプニちゃんはプニちゃんとしか呼びようのない話だ。

 

『ユリーカ』

 

 プニちゃんが大地に降り立ち、片膝を折ってユリーカに右手を差し伸べる。

 アンジュの暴走にプニちゃんの合体……想像を超える事態の連続にデウロもピュールも言葉が出なくなっていた。

 ユリーカはプニちゃんの手のひらの上に乗り、そんなお友達へニカッと笑みを向ける。

 

「デウロさん。ピュールさん。ユリーカに任せて! ガイさんとフラエッテの頑張りは絶対無駄にしないから!!」

 

 プニちゃんは腕を上げ、ユリーカを右肩に乗せる。主人と認めた者だけの指定席だ。

 

「いくよプニちゃん!! ミアレのみんなを助けるために!!」

 

「でね〜!!」

 

『了解した!! 我が主人ユリーカ!!』

 

 ユリーカはタワーを……アンジュを見据え、ポシェットの中からデデンネが出発進行を促す。

 

ギュオオオッ!!

 

 アンジュと対峙すべく飛び立つプニちゃんの勢いに、デウロは尻餅を突いてしまった。半分腰が抜けていた。

 

 

 

 クエーサー社の社長であるジェットは落ち着きに満ちた貴婦人であり、強い責任感とそれを果たすための実能力を兼ね備えている。故に半ば外れクジを引かされたも同然な『都市再開発計画』でありながらもその遂行に邁進し続けていた。

 街中に野生ポケモンの居住区であるワイルドゾーンを広げ、ZAロワイヤルの運営も自社で一手に担っていたのもAZからの情報提供はありつつ、彼女なりにミアレの人たちに尽くしたいという善意からであった。

 

「社長! バトルコートにヘリが来ました! 安全なところまで避難を!」

 

「いいえ。こうまで事態が深刻化したならば責任を免れることは出来ません。わたくしも陣頭に立ち事態の収集に回ります!」

 

 故に自分1人避難するというのは彼女の性分として到底受け入れられることではなかった。

 

「いえ! 今が深刻な事態であるからこそ、社長には事後の対応のためにこの場は逃れて頂かねばならぬのです!」

 

「…ッ!?」

 

「失礼ながら、社長が無理を押して現場に留まり続けるのは、自分からすれば『逃げ』としか見えません!! 我々クエーサー社社員一同としては、心苦しくとも社長にはより困難な道を選んで頂かなくては!」

 

 常務の言葉にジェットは絶句する。仕事ぶり以外は取り立てて目立つところのない小男としか印象を持っていなかったのも大きかった。

 

「生きる方が、戦いであります!」

 

「……分かりました」

 

 ジェットが折れる形でヘリへ乗り込んでいき、いざ浮上というタイミングだった。

 

「ぺぺぺぺ〜!!」

 

「暴走メガジュペッタ! 当機を狙ってます!」

 

「対応班はどうした!?」

 

「周囲の対応に追われているようです!」

 

 ジェットの隣に座る常務と副操縦士が怒鳴り合う中、左右より挟み撃ちをするジュペッタの両手から放つシャドーボールがヘリを襲う……まさにその時だった。

 

「しゃもらぁぁぁッ!!」

 

「ぺぶぁ!?」

 

 飛び出したメガバシャーモのブレイズキックを左側面より直撃したジュペッタが彼方へ吹っ飛んでゆく。

 

「バシャーモ仮面、参上ッ!!」

 

 ヘリの左側のジュペッタをバシャーモ仮面が対峙するのと同時に、あくエネルギーの奔流が叩き込まれて右のジュペッタも撃墜される。

 

「あなたたちのお相手は、わたくしパキラが務めさせていただきます」

 

「がるぉぉぉッ!!」

 

 バシャーモ仮面と同じく駆け付けるは、メガヘルガーを連れたパキラだった。

 

「離陸します!!」

 

 奇襲を免れ空へ飛び立つヘリの窓から、ジェットは瞬く間に暴走メガシンカポケモンたちに囲まれるバシャーモ仮面とパキラを見下ろす。

 

「ありがとう、ございます……!」

 

 自らが果たすべき責任のため、軽々しく投げ出せないこの命のために躍り出てくれた勇士たちに、貴婦人は涙とともに呟くよりなかった。

 

「この街を愛するヒーローとして!」

 

「カロスリーグ四天王として!」

 

「「ミアレを守る!!」」

 

 

 

「ラシーヌ工務店総出で避難ルートを確保するためのバリケードを作るぞ!! 露払いは俺とメガドリュウズが務める!!」

 

「父さん!」

 

 工務店の屈強な作業員たちを暴走メガシンカポケモンたちから守りつつ檄を飛ばすタラゴンの元に駆け寄るは彼と同じ褐色肌の青年だ。側には金髪の女性が付き従っている。

 

「お前……何しに来た」

 

「決まってるだろう、この辺りはもう危ない! 彼女と父さんを連れて避難しようと……!!」

 

「この馬鹿野郎ッ!!」

 

バキィッ!!

 

 息子が言い終わる前に父の鉄拳が左の頬をぶん殴る。倒れ込む息子の胸ぐらをタラゴンは掴み上げた。

 

「ここが危ねェって分かってンなら、なんで彼女を連れて来たァ!?」

 

「ぼくが無理やりついて来たんです! お義父さんも一緒じゃなきゃ嫌だって……」

 

 息子の見つけて来た彼女にタラゴンは怒気が弱まる。我が子の伴侶となってくれる未来のお嫁さんに対してはどうしても弱かった。

 

「……倅よ。お前は先週、この子と結婚したいって挨拶に来たよな」

 

「うん……」

 

「ならばまずいの1番に守るべきは俺なんかじゃねェ。彼女だ! 分かるか? 俺の言うことが」

 

「父さん……」

 

 息子と彼女へタラゴンは背を向け、ヘルメットのズレを直す。

 

「俺は、お前らがこれから幸せに生きていくためになすべきことをなす。それが、先に逝っちまった母ちゃんとの約束だからな」

 

 わらわらと押し寄せるメガバクーダの群れを前にドリュウズは爪を研ぐ。

 

「だが俺だって死ぬ気はさらさらないんだぜ? お前らが結婚して、生まれて来た孫ちゃんを目一杯可愛がりてェからな!!」

 

 向けた背から『早く逃げろ』と伝えれば、覚悟を決めた父に息子は頷き、彼女を守るように立ち去ってゆく。

 

『そう、それでいいんだ』

 

 修羅に入る直前のタラゴンの表情は、穏やかであった。そうしてすぐに吼えた。

 

「後に続く子供たち、孫たち世代のご安全のために、このミアレを守り抜いてみせらぁ!!」

 

 

 

「カラスバ様ぁ!! 組の衆の8割が暴走メガシンカ相手にポケモン全滅させられてもうて戦うこと出来まへん!!」

 

「寝ぼけたこと抜かすなァ!! オレらスジモンがこういう時に街のため、堅気の皆さんのために命張らんでいつ命張るっちゅうねん!! 目の前真っ暗なっとる場合ちゃうぞ!!」

 

「押忍!!」

 

「ポケモンやられた奴らみんな集めェ!! 『アレ』やるで!!」

 

「「「「「うおおおおお!!」」」」」

 

 カラスバの号令に呼応し、サビ組の組員たちが集まり、組み合わさってゆくことで巨大な人型のボディを作り上げる。

 

「カラスバ様ァ! 頭部分がどうしても足りません!!」

 

「見さらせェ!! コレがオレらスジモンのキズナの証!! 勇気爆発じゃあああ!!」

 

 カラスバが組み上がったボディを駆け上がり、欠けた頭部へ収まれば、

 

プッピガァァァン!!

 

「これぞサビ組名物『刃暗武麗張庵(バアンブレイバアン)』!!」

 

「「「イサミ〜〜〜ン!!」」」

 

 合体完了直後の隙にメガカイロスの群れが飛びかかる。

 カラスバに焦りはない。連中からの打撃は届かないと確信していたからだ。

 

「むどぁぁぁッ!!」

 

 迫るカイロスを纏めて薙ぎ払うは『黄金の翼』……硬き外骨格を攻めの力に変えたメガエアームドを扱うは、不敵に笑うジプソ以外にないのがカラスバであった。

 

「遅いでジプソ!!」

 

「すみません。病院から抜け出すにしても暴走メガシンカポケモンがたむろしてましてね」

 

「幹部のくせにいらんことするからやアホ」

 

 サビ組で預かった暴走メガスターミー出現の一件で負傷し、治療中の身を押して出向いてきたジプソにカラスバは冷たく言い放つ。コレこそが両者にとって当然のやり取り、その距離感だ。

 

「返す言葉もありません。しかしわたくしもスジモンの端くれ……命の投げどころは弁えてますれば」

 

「当然や。いくで!!」

 

 指示を受け、組み上がった人型ボディがカラスバのメガペンドラーを左手に構える。

 

「おらあああああッ!!」

 

 丸くなった状態のペンドラーがハンドボールの要領でスローイングされれば、その先のメガユキノオーの群れを薙ぎ倒していった。

 

「ここがオレらスジモンの筋の通しどころや!! 何が何でもこのミアレの街ィ、守り抜いてみせるでぇ!!」

 

 

 

「ちゃれむおら!」

 

 暴走メガチャーレムの蹴りが機材を破壊し、ホテルシュールリッシュへ続くピンク色のホロが消失してゆく。

 

「ユカリ様! ユカリゾーン発生装置がやられました!! これでは避難誘導出来ません!!」

 

「あらあら、それは大変」

 

 血相を変えるMSBC会員のおぼっちゃまに対し、ユカリは普段と変わらぬ調子でスタスタとホテルの外に出る。

 スウ、と息を深く吸い込めば、

 

「展開! ユカリゾーン・オリジン!!」

 

 両手を上げ、手首を額の上で折り曲げ、体を若干くの字に曲げることで消失したピンク色のホロと変わらぬエネルギー空間が出現。ホテルシュールリッシュまでの経路を指し示した。

 

「おぉ! コレが噂に聞くユカリゾーン・オリジン!! ホロ技術は溢れ出るユカリ様の覇気の再現だというが生で実物を見れるとは!!」

 

 MSBC会員たちが皆ユカリを褒め称える。

 

「ふぅぅぅ!!」

 

 そこにメガフーディンが制御したスプーンをユカリ目掛けて発射。

 

「ゆ、ユカリ様! お逃げ下さい!!」

 

「ユカリゾーン・オリジンはわたくしの覇気を放ち続ける性質上、このポーズを維持しないと展開させられないんですの」

 

「「「えええええッ!?」」」

 

 サラリと話すユカリに会員たちが叫び、絶望する中だった。

 

「真なる力を掴んで超えろ!! ヤミラミ!! 全開突破のメガシンカ!!」

 

「やみみぃ〜!!」

 

カキン!

 

 飛び出したメガヤミラミが自身より大きな赤い宝石でスプーンを跳ね返した。

 

「ようお嬢様、そのポーズ、キマッてんねい!!」

 

「マヨネーズ様!」

 

「私たちもいるわよ!!」

 

「やっちまえガブの字!!」

 

 メガアブソルがフーディンを狩り、メガガブリアスがメガボスゴドラをじしん攻撃でまとめて倒す。

 背中合わせのアヤカとルイが、ユカリに不敵な笑みを見せた。

 

「暴走メガシンカポケモンへの対応はお三方にお任せして、MSBCは避難が遅れた方々の救助を! わたくしはユカリゾーンを維持し続けますわ!! たとえこの命尽きようとも!!」

 

「「「分かりました! ユカリ様!!」」」

 

 空中戦をひと段落させたメガピクシーが舞い降り、相棒の無事に変わらぬ笑みでユカリはその場の全員に指示を飛ばした。珍妙なポーズを取ったまま。

 

『どこかにいないかしら? ドラゴンポケモンのようなしなやかさと強靭さを併せ持ち、わたくしの思うがままに動いてくれるしもべは……』

 

 ふと、こんなことも頭によぎりながら重ねて号令した。

 

「富める者としての責務、今こそ果たす時! ノブレス・オブリージュの精神にてミアレをお守り致しましょう!!」

 

 

 

「助けてくれ〜!」

 

 メガサーナイトとメガエルレイドに挟み撃ちにされ、泣き叫ぶ男は蹲るしかなかった。

 頭を抑え、避けられぬ苦痛に恐怖する。が、いつまで経っても攻撃されることはない。

 

「ん? あぁっ!」

 

 男が顔を上げれば、暴走メガシンカポケモンたちはメガリザードンXによりKOされていた後だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

 グリが差し伸べる手に、男は躊躇した。

 

「どうして……俺、アンタたちを悪く言ってたのに」

 

 悪の組織の流れを汲むフレア団ヌーヴォ、その『風当たりの強さ』の一端を男は担っていた。世界を滅ぼそうとした奴らに連なる者は皆悪だと断じ、彼らの活動に抗議していたのがこの場では後ろめたさに繋がっていた。

 

「同じミアレに住む仲間同士……これ以外の理由が要りますか?」

 

「ッ!」

 

「グリ! 招かれざる客追加だ! もう数えるのも面倒くさい!」

 

 タテガミがボリュームアップしたメガカエンジシが走り込み、その背より降りるグリーズの背後にはメガスピアーの群れ……。

 

「街の北部に広がっているピンク色のホロに従えば避難場所まで行けます。ここは我々が抑えに入りますのでどうかご無事で」

 

 グリは男の手を半ば強引に取って立ち上がらせ、出発を促す。

 この時点で、男の中にあるフレア団ヌーヴォへの悪感情は消えていた。

 

「あ、ありがとう! アンタたちも気を付けて」

 

「礼なら全部終わってからカフェに来て言いなよ。こいつの不味いコーヒー頼みながら、さ」

 

 グリーズの軽口を契機に男は走り去ってゆく。

 

「さてと、これはなかなか」

 

「思いっきり暴れてやるしかないだろ?」

 

 グリーズにグリは首肯する。

 空中で奮闘乱舞する巨影をチラと見てから、敵意剥き出しの群れへ視線を移す。

 

「ヌーヴォの仲間たちが心配だ。あまり時間はかけてられませんよ」

 

「任せろ!」

 

 リザードンとカエンジシは、自らの闘志を炎と変えて飛び込んでいった。

 かつて世界を滅ぼそうとした悪の残滓は、生まれ育った街を守るために命を燃やしていた。

 

「たとえくそったれでもおれの青春を生んでくれた場所……この街とこれからも共にあるために、おれたちはミアレを守ってみせる!!」

 

 

 

「オオオオオオオッ!!」

 

「う〜ッ、しつこいなぁもう!」

 

「でねでね!」

 

『タワーそのものを肉体としているだけあってしぶとい奴だ……!』

 

 変わり果てたプリズムタワー……アンジュ本体を相手取るユリーカは、プニちゃんを縦横無尽に動かして幾度となくダメージを与えていた。

 プニちゃんの全身を形成するセルたちが、文字通りその身を削って放つサウザンアロー、アンジュの真下の大地よりエネルギーを叩き込むグランドフォースを立て続けにぶつけるもアンジュの活動は未だ停止していない。

 アンジュに対するユリーカの所感としては、パーフェクトなプニちゃんで負ける道理はない相手、というところだ。

 ただあまり時間をかけるのもよくない。地上で頑張っている人たちにも限界はあるのだから。

 

「ユリーカさん。だいぶ攻めあぐねておられているようですな」

 

「マスカットさん!」

 

 プニちゃんの隣にメガジジーロンが飛翔してくる。その背にはマスカットの姿があった。

 

「メディオプラザ周辺は、デウロさんとピュールさんが頑張るからと送り出されてやってきました」

 

「そうなんだ。えっとね……あのアンジュを止めるだけならそんなに難しくないの。ただ、それは長期戦を前提にするからであって……」

 

「なるほど。普通に打ち勝つだけならば問題はないものの、時短となると面倒だと」

 

「でね!」

 

 ユリーカの要領を得ない説明からすぐに要点を導き出すマスカットにデデンネはサムズアップを送る。

 

「要は、ユリーカさんとプニちゃんさんが必殺の一撃を叩き込める隙をタワーに対して作ればよろしいのですね」

 

「それは、そうなんだけどさ」

 

 アンジュはいわばプリズムタワーを媒体としたメガエネルギーの権化であり、そこからくる攻撃はプニちゃんだからこそ苦もなくいなせるに過ぎないのだ。

 

「大丈夫、このマスカットにお任せ下さい! ガイさんとも約束しましたからね。ユリーカさんをサポートすると!」

 

 分厚い胸板を叩いて見せてから、マスカットはジジーロンをアンジュめがけて突撃させる。

 

「マスカットさん!」

 

 ユリーカは、手を伸ばし叫ぶしかなかった。

 

「オオオ……オオオオ……!!」

 

「我々が相手だ!! ぬううううん!!」

 

「じろぉぉぉ……!!」

 

モリモリモリモリモリィィィッ!!

 

 アンジュに宣戦布告をするマスカットが上半身のスーツを内なる膨張によって破って筋骨隆々たる姿を見せる。

 

 

 

「なにやってんだマスカットさん!! 無茶だ!! 逃げろーッ!!」

 

「きゅる……!」

 

 ジジーロンめがけ、アンジュがケーブルのような根を幾重にも振るいかかる。

 逃げ場のない攻めに晒されるマスカットの姿に、タワーのコックピットからツルに押し潰されるのをフラエッテとどうにか凌いで幽閉されたままのガイもまた叫ぶ。

 

 

 

「愛する娘と暮らすこのミアレの街を、これ以上傷付けさせはしない!!」

 

 迫る根を前に、ジジーロンが全身から紺碧のドラゴンエネルギーを充満させてゆく。

 マスカットは背後のユリーカを向き、右の敬礼と笑みを見せた。

 

「それではユリーカさん……ミアレの未来を頼みます!」

 

「ろおあああああああッ!!!」

 

「うおおおおおおおおッ!!!」

 

チュドオオオオオン!!!

 

 瞬間、ジジーロンは自らのドラゴンエネルギーとメガエネルギーを過剰放出させ、盛大な爆発を起こして根を払い除けてゆく。

 

「あぁ……! ああッ……!!」

 

 力を使い果たし、落下してゆくジジーロンとマスカット……。

 ユリーカは、力一杯に歯を目を食い縛った。泣いている暇などありはしないのだ。

 




 『ジェット』
 65歳。クエーサー社代表取締役。
 ミアレシティ再開発計画に名乗りを上げた敏腕女社長で街の人たちからの支持を多く集めている。
 ガイとはなにやらただならぬ関係があるようだが……?
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