個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
戦闘描写うまく書けているか心配です。


No.9

 春の暖かな日差しが降り注ぐ通学路。

 雄英高校の巨大な校舎を見上げながら、私は少し気怠げに歩を進めていた。

 昨日の筋肉痛が少し残っている。相澤先生の「合理的虚偽」のおかげで、初日から全力を出しすぎたせいだ。

 

「あ、あの! 駿河さん!」

 

 背後から、おどおどとした声が聞こえた。

 振り返ると、モジャモジャ頭の緑谷出久と、隣でニコニコしている麗日お茶子が立っていた。

 

「おはよう。……えっと、緑谷くんと、麗日さんだっけ」

 

「う、うん! おはようございます!」

 

 緑谷くんは直立不動で挨拶を返してくる。緊張しすぎでしょ。

 

「あの……入試の時は、助けてくれて、ありがとうございました!」

「お礼言うの遅なってごめんね! 私も、助けてくれたの駿河さんだよね?ほんまにありがとう!」

 

 二人が深々と頭を下げる。

 ああ、そのことか。

 

「気にしてないよ。あの状況なら当然のことだし、飯田くんが飛び出してなかったら動くこともできなかったから」

 

 私はひらひらと手を振った。

 

「それに、お互い合格できたんだから、結果オーライでしょ?」

 

「そ、そうだけど……! でも、昨日は個性把握テストでバタバタしてて、お礼が言えなくて……」

 

 律儀な子だなぁ。

 私は少し笑って、再び歩き出した。

 

「ま、これからもよろしくね。同じクラスなんだし」

「は、はい! よろしくお願いします!」

「よろしくね、駿河さん!」

 

     *

 

 雄英高校ヒーロー科。

 そのカリキュラムは、午前中はごく普通の高校と同じく必修科目の座学が続く。

 プレゼント・マイク先生はハイテンションな英語の授業をするものだと思っていたが内容は意外にも普通だった。みんなも「普通だ…」と思ったに違いない。それでも私は真面目にノートを取っていた。

 ヒーローたるもの、知性も必要不可欠だ。ナガンさんも「馬鹿なヒーローじゃ生き残れない」と言っていたし。

 

 そして、昼休みを挟んで午後。

 いよいよ、待ちに待った時間がやってきた。

 

「――わ――た――し――が来た!! 普通にドアから来た!!!」

 

 ドォォン! という効果音が聞こえてきそうな勢いで、教室の扉が開かれた。

 そこには、アメコミ画風の筋骨隆々な大男――No.1ヒーロー、オールマイトが立っていた。

 

「すげえ! 生オールマイトだ!」「画風がちげえ!」「かっけー!」

 クラス中が沸き立つ。

 

「さあ、早速だがヒーロー基礎学の授業を始めるぞ! 今日の課題はこれだ!」

 

 オールマイトが「BATTLE」と書かれたカードを掲げる。

 

「戦闘訓練!!」

 

 そして、教室の壁から次々とアタッシュケースが現れた。

 それぞれの出席番号が振られている。

 

「そしてこれには、入学前に君らに提出してもらった『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた、戦闘服(コスチューム)が入っている!」

 

「「「おおおおお!!」」」

 

 テンションが最高潮に達するクラスメイトたち。

 私も、自分の番号のケースを受け取り、少しだけ胸を高鳴らせた。

 

「着替えたらグラウンドβに集合だ!」

 

     *

 

 女子更衣室。

 次々と着替えていくクラスメイトたちのコスチュームは、どれも個性的だった。

 麗日さんのパツパツな宇宙服風スーツや、芦戸さんの露出度高めなエイリアン風スーツ。八百万さんの創造に特化した大胆なデザインには、同性ながら目のやり場に困ってしまった。

 

 私は自分のケースを開け、真新しいスーツに袖を通す。

 

「……よし、完璧」

 

 私のコスチュームは、黒を基調としたシンプルなライダースーツだ。

 伸縮性と防刃性に優れたハイテク素材で、身体のラインにぴったりとフィットする。

 装飾は少ないが、腰のメインベルトから同じ素材のベルトが両腿にかけてU字のループを描いて垂れ下がっており、そこから唯一の装飾として、腰元のベルト通しに、紫色のリボンがついた蹄鉄型のチャームが一つだけ揺れていた。日本総大将――スペシャルウィークの象徴だ。

 

「わぁ、駿河さんのカッコええね! なんかプロっぽい!」

 

着替え終わった麗日さんが目を輝かせて寄ってきた。

 

「……あれ? でも、入試の時とちょっと違うような?」

「え?」

「助けてくれた時、なんかこう……もっとフリフリした、アイドルみたいな服じゃなかったっけ?」

 

 麗日さんの無邪気な指摘に、私はギクリと固まった。

 入試の時は、継承して『勝負服』になっていたからだ。

 

「あ、あー……あれは、ほら。その……」

「その?」

「……き、気分じゃなかったっていうか! 今クリーニング中っていうか! ほら、あれはここぞという時の一張羅だから!」

「そ、そうなんや? おしゃれさんやねぇ」

 

 しどろもどろな言い訳に、麗日さんは不思議そうに首を傾げつつも納得してくれた。

 危ない危ない。変身システムのことなんて説明できないし、ごまかしきれて良かった。

 

「ありがとう。麗日さんのも可愛いよ。……ちょっとキツそうだけど」

「そ、そうなんよ~! 要望の書き方間違えたんかなぁ、恥ずかしいわ……」

「腰のそれ、素敵ね。何かの御守りかしら?急にごめんなさいね。私、蛙吹梅雨っていうの。よろしくね。天馬ちゃん」

 

 蛙吹さん「梅雨ちゃんと呼んで」梅雨ちゃんが私の腰のチェーンを見て、ケロリと言った。

 

「ん、まあね。……私の『勝利の女神』たちのお守りかな」

 

 私はチャームを指で弾き、不敵に笑った。

 

     *

 

 屋内演習場、モニター室。

 個性豊かなコスチュームに身を包んだA組の面々が集結していた。

 

「格好から入るのも大切なことだ少年少女! 自覚するのだ、今日から自分はヒーローなんだと!」

 

 オールマイトの熱い訓示の後、今回の「屋内対人戦闘訓練」のルール説明が行われた。

 2対2のチーム戦。ヒーロー役とヴィラン役に分かれ、制限時間内にヒーローが核を回収するか敵を制圧すれば勝ち。ヴィランは核を守り切るかヒーローを制圧すれば勝ち。

 

「コンビはくじ引きで決めるぞ!」

 

 次々とチームが決定していく中、私は最後のくじを引いた。

 

「……ん、余り?」

 

 私の手元には白紙のくじ。21人クラスの宿命だ。

 

「むぅ、駿河少女が余ってしまったか。……では、今回は最初のチームに加わってもらおう!」

 

 オールマイトが指差したのは、最も因縁深い組み合わせのチームだった。

 

 ヒーロー役Aチーム:緑谷出久・麗日お茶子

 ヴィラン役Dチーム:爆豪勝己・飯田天哉

 

「えっ!? 3対2ですか!?」

 

 緑谷くんが驚きの声を上げる。

 

「そうだ! ヒーローAチームに駿河少女を加える! これで3対2の変則マッチだ!」

 

 ……なるほど。面白くなってきた。

 私は緑谷くんたちの隣に並ぶ。対面には、凶悪なヴィラン顔でこちらを睨みつける爆豪くんと、真面目な顔でエンジンを吹かしている飯田くん。

 

「むぅ、しかし3対2ではヒーロー側が有利すぎるか。ヒーロー側には何らかのハンデを……」

 

「あァ!? イラネェよそんなモン!!」

 

 オールマイトの言葉を遮り、爆豪くんが吠えた。

 手榴弾のような籠手をカチカチと鳴らし、殺意全開の目で私たちを――特に私と緑谷くんを交互に見る。

 

「デクも、そこの馬女も! まとめてぶっ潰すのにハンデなんざ邪魔なだけだ!! 全力で来いや!!」

 

 ガンガンと籠手を打ち鳴らし、威圧的な態度を撒き散らす彼に、私は嫌悪感を隠さずに溜息をついた。

 大きな音。攻撃的な態度。私はこういう人は嫌いだ。それに加え挑発的な態度をとられると考えるより先に口が開いてしまう。悪い癖だと思う。

 でも悪い癖というのはそうやすやすと抑えられるものでもなく…

 

「……うるさいなぁ。キャンキャン吠えないでよ、耳に響く」

「あァ!?」

 

「まあまあ爆豪少年! 公平性は保たねばならん!」

 

 オールマイトが強引に割って入り、私に重厚な金属製のバンドを渡してきた。

 

「駿河少女には、この『超圧縮ウェイト』を両足に装着してもらう! 総重量はだいたい50kgだ!」

「ご、50キロ!?」

 

 緑谷くんが悲鳴を上げるが、私は無言でそれを受け取り、手足に装着した。

 ……ズシリと重い。これじゃトップスピードは出せないし、ステップのキレも鈍る。

 でも、動けないほどじゃない。

 

「へぇ……ちょうどいい負荷だね。これくらいないと、爆豪くん相手じゃイジメになっちゃうし」 「テメェ……後悔させてやるわ!!」

 

     *

 

 訓練開始のブザーが鳴り響く。

 緑谷くんと作戦を考えながらビルの前まで移動する。

 ヴィランチームが待ち構える建物へ、私たちは窓から潜入を開始した。

 

「来るよ!」

 

 私の警告と同時だった。

 曲がり角から爆豪くんが飛び出してくる。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 ドォォン!!

 

 いきなりの奇襲攻撃。爆音と衝撃波が狭い通路を駆け抜ける。

 私は顔をしかめながらバックステップで回避するが、ウェイトのせいで反応が一瞬遅れる。

 

「かはっ……!」

「緑谷くん!」

「駿河さん、麗日さん! 行って!!」

 

 緑谷くんが爆豪くんに組み付き、私たちを先に行かせる。

 私は一瞬迷ったが、爆豪くんの殺意が緑谷くんに集中しているのを見て判断した。

 

「行くよ麗日さん! 離れないで!」

「は、はい!」

 

 私たちは通路を駆ける。

 ……遅い。いつもの感覚で地面を蹴っても、重りのせいで体が重い。

 それでも常人よりは遥かに速いが、走る楽しみが半減だ。

 

 核のあるフロアに到達すると、そこには飯田くんが待ち構えていた。

 ブツブツと何か物思いにふけっているようだが。

 

「俺はァ、至極悪いぞォオ…」

「ブフォッ!!」

「麗日さん、集中!」

「むッ?ヒーローか?爆豪くんが飛び出した時点で君たちが来ることはわかっていた。だから君たち対策で部屋の中にあるものを片付けさせてもらった!」

 

 言葉通りに部屋の中にあるものはすべて片付けられ、恐らく自身が動きやすいフィールドになっている。

 私と飯田くんの個性は脚が速いという点で似ているが、瞬発力と小回りが利くという点では私の方が有利だ。つまり狭い屋内とはいえ障害物が少ないほうが私へのアドバンテージを作れると踏んだのだろう。流石だと思う。

 

 飯田くんがエンジンを吹かす。

 私は麗日さんに目配せをした。

 

「私が引きつける。その隙に核を!」

「わかった!」

 

 私は飯田くんに向かって突っ込んだ。

 飯田くんのキックが迫る。

 ウェイトのついた脚で、それを強引に受け止める。ガギィン! と重い音が響いた。

 

「ぬっ、重りをつけてその威力か! だがスピードは僕が上だ!」

「どうかなッ!」

 

 私は回転を加えて、重りの遠心力を利用した回し蹴りを放つ。

 飯田くんが大きくのけぞる。

 いける。スピードがなくとも、パワーと技術なら私の方が上だ。

 重りをつけた状態での格闘戦、意外と面白いかも。

 ナガンさん仕込みの格闘術をお見舞いする。

 

「そこだッ!」

「うおっ!?」

 

 私は飯田くんを壁際に追い詰め、ラッシュをかける。

 完全に制圧できる。これで終わり――そう思った時だった。

 

 ドゴォォオオン!!!

 

 建物全体が震え、鼓膜が悲鳴を上げた。

 階下で爆豪くんが大技をぶっ放したらしい。直後インカムから緑谷くんの切羽詰まった声が響いた。

 

『――麗日さん、駿河さん、状況は?』

 

インカム越しでも、向こう側の凄まじい爆発音が鼓膜を叩く。私は思わず片方の耳を伏せ、荒い息を吐きながら答えた。

 

「こっちは核の部屋! 飯田くんがガチガチに守ってて、麗日さんが手出しできない状況だよ!」

『わかった……! 麗日さん、 今から建物の中央を破壊する!!何とかしてその瓦礫を飯田くんにぶつけて!』

「はあ!? 破壊って……ちょっ、デクくん!?」

『その隙にそのまま核へ……!!』

「……無茶苦茶言うね。いいよ、やってやるッ!」

『合図をだすから、そしたら作戦実行するよ!』

 

 直後。オールマイトの中止のアナウンスと緑谷のインカムが同時に聞こえてきた。

 

『『訓練中s…』行くよ!』

 

『――デトロイト・スマッシュ!!』

 

 緑谷くんの咆哮と共に、足元から凄まじい風圧が突き上げてきた。

 建物の中央部を突き抜ける垂直の衝撃波。床が、天井が、紙細工のように粉砕されていく。

 それに合わせて麗日さんに一番近い柱まで走っていきその柱をへし折る。

 

(お願い!麗日さん!何とか伝わって!)

 

「麗日さん!」

「 即興必殺・彗星ホームラン!!」

 

 麗日さんが破壊された柱を抱え込み、自身の個性を付与して飯田くんへ向けて一気に振り抜いた。

 浮遊する瓦礫の弾幕。飯田くんが「核を死守する!」と、弾丸のように核へ向かって飛ぶ。

 

「……逃がさないよ」

 

 私は全力で踏み込んだ。

 ウェイトによる慣性を逆に利用し、最短距離で飯田くんの進路へ割り込む。

 

「ぬぉ!? 駿河くん!」

「あなたの相手は私だよ、飯田くん!第二ラウンドと行こうか!」

 

 正面に回り込み飯田くんを肉弾戦に誘い込み、その機動力を完全に封じ込めようとするがその瞬間、飯田君のスピードが急上昇した。

 

「レシプロッバーストッ…!」

 

 急加速した飯田君の蹴りを食らい後方に大きくふっ飛ばされる。

 

(クソっ、奥の手か!)

 

 しかしその隙、その一瞬に、背後を、個性を自身に使い通り抜けた麗日さんが無防備な核へと飛び込んだ。

 

「確保ぉぉぉ!!」

 

『ヒーローチーム、WIN!!』

 

 ブザーが鳴り響く。

 飯田くんは悔しそうに、「奥の手だったんだがな…」と大きく息を吐いた。

 勝者に立っているものはいない、そんな結果で私たちの戦闘訓練は幕を閉じた。

 

     *

 

 訓練終了の合図と共に、演習ビルの砂塵がゆっくりと収まっていく。

 ボロボロの状態で運ばれていく緑谷くんと、信じられないものを見たという顔で立ち尽くす爆豪くん。

 私たちは、先にモニター室へと戻っていた。

 

「おかえり! すごかったね!」

「最後、柱をへし折ったのビビったよ!」

 

 クラスメイトたちの称賛の声を浴びながら、私は手足の『超圧縮ウェイト』を外す。解放された途端、体が羽のように軽く感じられた。

 

「……さて! 今回のベストは、飯田少年だ!!」

 

 オールマイトが満面の笑みで宣言する。勝ったのは私たちヒーローチームだが、MVPは敗北したヴィラン側の飯田くん。

 納得のいかない顔をするクラスメイトたちを前に、八百万さんがスッと手を挙げた。

 

「ハイ、オールマイト先生。……今回のMVPが飯田さんである理由は明確ですわ。彼は爆豪さんの単独行動という不測の事態にも動じず、自身の役割に徹しました。部屋の遮蔽物を片付けたのも、駿河さんの機動力と麗日さんの個性を封じるための極めて合理的な判断ですわ」

 

 八百万さんの理路整然とした分析が、モニター室に響き渡る。

 

「爆豪さんは論外。個人的な私怨で暴走し、屋内での大規模爆破などヒーローとしてもヴィランとしても落第点です。緑谷さんは無茶が過ぎます。それに爆豪さんと同じように大規模攻撃をしましたわ。二人は核が隠されているビルだという想定を全く無視しております。最後に麗日さんは中盤の緩みそして攻撃が場当たり的でした」

 

 そして、その鋭い視線が私に向けられた。

 

「……駿河さん。貴女もですわ」

 

「え?」

 

「貴女、途中から飯田さんとの肉弾戦を()()()()いませんでしたか?」

 

「うっ……」

 

 痛いところを突かれた。

 ウェイトの重さを利用した格闘が思った以上に手に馴染んでしまい、正直、麗日さんのサポートを後回しにしていた自覚はある。

 

「あの状況で麗日さんが柱に気づかなければ、敗北していたのは貴女方です。味方を信じて背中を預けるのと、味方を置き去りにして暴れるのは別物ですわよ。……以上です」

 

「……おっしゃる通りです」

 

 私はぐうの音も出ず、肩を落とした。

 そんな私を見て、さっきまでボロクソに言われていた爆豪くんは、静かに「チッ」と舌打ちを打つだけだった。「ハッ! ダッセェな馬女!! 結局テメェも同類じゃねーか!!」とかまた煽ってくるもんだと思ったのに。すこし肩透かしを食らった気分だ。それにしても。

 

(相澤先生に言われた通り『スキル』に頼らないようにはしたけど、そこに意識が行き過ぎたかな?まだまだ課題がいっぱいだ…)

 

 私は一人、深く溜息をついた。

 ヒーローへの道は、ただ速く走れるだけではゴールできないらしい。

 




天馬「最終ラウンドだ!WRYYY!!!」
天馬「無駄無駄無駄ァ!」ドドド
飯田「オラオラオラァ!」ドドド
天馬「何ィ!?」
飯田「君の敗因はたった一つだ。たった一つのシンプルな答えだ」
飯田「君は廊下を走り過ぎだ」
とどろろろきさん「お前も走ってるじゃねぇか委員長(予定)」

某日廊下での一幕
続く?
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