個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
皆さんチャンミとかやってますか?
作者は今までやってこなかったんですが、最近チャンミに向けて育成を始めてみたりしています。
難しくて心が折れそうな日々ですがサポカもそろってきたので何とか頑張ってみます。


No.10

 戦闘訓練の翌日。

 私は、少し苛立ちながら席に着いた。

 校門前でオールマイトの授業についてインタビューを受けたのだが、あまりにもしつこかったためマスコミ陣を抜けるのに一苦労したからだ。授業についてならまだしも雑誌のモデルのスカウトなんかもしてきて本当に大変だった。

 窓の外を見ると相澤先生とプレゼント・マイク先生がマスコミの対応をしているのが目に入る。

 その光景を眺めながら頭を冷やすため昨日の訓練を振り返るようにした。

 昨日の訓練は、私にとって大きな課題を残すものだった。八百万さんに言われた「チームとしての動き」。……あのアホ(爆豪)と同類だなんて、心外にも程がある。

 

「おはよう、天馬ちゃん」

「おはよう、梅雨ちゃん」

 

 昨日から名前で呼び合うようになった梅雨ちゃんが、ケロリと挨拶してくれる。

 クラスメイトとの距離は少しずつ縮まっている。……約一名、朝から机を蹴飛ばして機嫌の悪い爆豪くんを除いて。

 

 ホームルームが始まり、相澤先生が教壇に立った。

 

「……昨日の戦闘訓練、ビデオを見せてもらった」

 

 先生の気だるげな視線が、教室全体を舐めるように動く。

 

「爆豪、ガキみたいな真似はやめろ。能力はあるんだからな」

「……わーってるよ」

「緑谷も、いつまでも腕を壊してちゃ話にならん。『できない』じゃすまされねぇぞ」

「はい!」

 

 そして、その視線が私に向けられた。

 

「駿河。お前は一昨日の面談で言った通り、余計なもの(スキル)を削ぎ落として戦っていた点は評価する。だが、それで視野が狭まってちゃ世話ねぇぞ」

 

「……はい」

 

 私は短く答える。相澤先生の目は、相変わらず鋭い。

 まるで、私の皮を一枚剥いで、その下にある「何か」を暴こうとしている捕食者のような目だ。

 

「さて、今日のホームルームは……」

 

 またテストか、とクラスが身構える中、先生が告げたのは意外な言葉だった。

 

「学級委員長決めだ」

 

「「「学校っぽいの来たあああああ!!」」」

 

 教室が一瞬で沸き立つ。

 「俺が!」「私が!」と立候補の嵐だ。ヒーロー科において、集団を率いるという経験はトップヒーローへの近道でもある。

 

「俺だろォが!!」

「俺がなって女子のスカートを……」

 

 混沌とする教室。私はその騒ぎを少し離れたところから静観していた。

 自分がやる気はない。リーダーシップなんて柄じゃないし、私はただ、誰よりも速く走れればそれでいい。

 でも、この「個性」豊かな猛獣たちを率いるなら、ただ強いだけじゃダメだ。

 

「……あら、天馬ちゃんは、やらないの?」

 

 梅雨ちゃんがケロリと聞いてくる。

 

「私はいいよ。先頭を走るのは得意だけど、集団を率いるのは……まだ、課題が多いし」

 

 昨日の今日だ。私はまだ、自分のことで精一杯だ。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 一際大きな声が響いた。飯田くんだ。

 

「他を牽引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ勤まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…これは投票で決めるべき議案!!!」

 

 さすが真面目を湧き水で煮込んだような性格の飯田くんだ。

 そのそびえ立った手がなければクラスメイトの尊敬をもっと集めていただろう。

 「一番やりたがってるのお前じゃねーか!」とツッコミが入るが、結局彼の提案通り投票で決めることになった。

 

(委員長、ねぇ……)

 

 私は手元の投票用紙を見つめる。

 どうせみんな自分に入れるだろうから自分に入れるという手もある。が、それは私の美学じゃない。

 なら、誰が適任か。

 

(……あいつかな)

 

 私は、迷わず一つの名前を書いた。

 入試の時、私の前を走っていた背中。昨日の訓練で、どんな状況でも役割を全うしようとした真面目すぎる男。なんだかんだ彼には一目置いている。

 

     *

 

 ――開票結果。

 

 1位:緑谷出久(3票)

 2位:八百万百(2票)

 

 黒板に名前が張り出される。

 

「3票!? 誰だよデクに入れた奴!!」

「まぁ、おめーに入れるよかわかるけどな!」

 

 爆豪くんが吠える中、私は自分の名前に「1票」入っていることに驚いていた。

 

(誰だろう……緑谷くんか麗日さんかな。お礼のつもりだとしたら、お人好しすぎるよ)

 

 私は小さく苦笑した。

 そして、もう一つ。「1票」が入った名前があった。

 

「ゼロ……じゃない!? 1票入っている!!」

 

 ガタッ! と席を立ったのは、飯田くんだ。

 彼は自分の名前の横にある「1」という数字を見て、信じられないという顔で震えている。

 

「き、奇特な方がいるものだ……! 自分のことしか考えていないこの状況で、あえて他者を評価し、この俺に貴重な一票を……!」

 

 飯田くんは眼鏡を光らせ、感動に打ち震えていた。

 私は頬杖をついて、そっぽを向く。

 ……別に、そんな大げさに感謝されたくて入れたわけじゃないけど。

 まあ、ゼロ票で落ち込むよりはマシでしょ。

 

     *

 

 昼休み。学食は今日も賑わっていた。

 私は一人で席に座り、高タンパクなメニューを口に運んでいた。すると、緑谷くん、麗日さん、飯田くんの3人がやってきた。

 

「駿河さん、隣いいかな?」

「ん、どうぞ。……委員長、大変そうだね」

 

 顔を真っ青にしている緑谷くんに声をかける。

 

「う、うん……僕なんかが委員長でいいのかなって」

「いいんじゃない? 昨日の緑谷くんの執念、みんな見てたしね」

 

 そんな会話をしていると、飯田くんが真面目な顔で口を開いた。

 

「いや、緑谷くんのあの気迫は人を動かす。適任だよ。……それに比べて僕は、自分で提案しておきながら、結局票を集められなかった」

「でも飯田くん、1票入ってたやん!」

「ああ! その1票が本当に嬉しかった! 誰かはわからないが、その期待に応えたかったのだが……」

 

 飯田くんが悔しそうに拳を握る。

 私は黙ってサラダを口に運んだ。

 この時知ったが飯田くんはお坊ちゃんらしい。なんでもヒーロー一家でそれもあのインゲニウムの弟であるそうな。戦闘服(コスチューム)が似ていたためファンかと思ったがこの事実には結構驚いた。

 

 そんな雑談に花を咲かせていたその時だった。

 

 ――ウゥゥゥゥゥン!!!

 

 けたたましいサイレンが、学食中に響き渡る。

 

『セキュリティレベル3が突破されました。生徒は速やかに屋外へ避難してください』

 

「レベル3……!? 誰かが敷地内に侵入したってこと!?」

 

 食堂内は一瞬でパニックに陥った。

 我先にと出口へ殺到する生徒たち。悲鳴、怒号、足音。

 私は反射的に立ち上がり、耳を伏せた。

 

「……ッ、うるさい」

 

 大音量と集団パニック。私の『馬の本能』が最も嫌う状況だ。

 出口付近で人が将棋倒しになりかけている。

 

「落ち着いて! 走らないで!」

 麗日さんたちの声もかき消される。

 

 その時、窓の外を見た飯田くんが叫んだ。

「……、みなさんマスコミです! 今朝のマスコミが、不法侵入しただけです!」

 

 でも、この混乱の中では誰にも届かない。

 飯田くんは必死に状況を変えようと周囲を見渡し、そして決意したように麗日さんを見た。

 

「麗日くん! 僕を浮かせてくれ!」

 

 飯田くんが宙を舞い、壁を蹴って非常口の表示灯の上に立つ。

 そして、腹の底からの大声で叫んだ。

 

「大丈ー夫!!ただのマスコミです!! 何もパニックになることじゃありません!!大丈ー夫!!」

 

 その凛とした声が、パニックを切り裂いた。

 人々が彼を見上げ、冷静さを取り戻していく。

 

「ここは雄英です! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」

 

 非常灯の上のパイプに捕まり、非常口のピクトグラムのようなポーズ。

 少し滑稽で、でも誰よりも頼もしいその姿を見て、私は確信した。

 やっぱり、私の目に狂いはなかった。

 

     *

 

 午後のホームルーム。

 緑谷くんの申し出により、委員長は飯田くんに交代することになった。

 クラス中が「ま、そうなるわな」「あの非常口見せられたらな」と納得する中、飯田くんは感極まった様子で引き受けていた。

 

 私はそれを、少しだけ満足げな気持ちで眺めていた。

 

     *

 

 そして翌日。

 本日のヒーロー基礎学は、相澤先生、オールマイト、そしてもう一人の計3名体制で行われる「人命救助(レスキュー)訓練」だ。

 私たちはバスに乗り込み、目的地へと向かっていた。

 新委員長はバスの席順の指示を出していたが、ああいうタイプのバス*1ではなくこういうタイプのバス*2だったため委員長一発目の指示は空回りに終わった。大丈夫か委員長。

 

「駿河さん、飯田くんを委員長に推薦したの、もしかして駿河さん?」

 隣の席の麗日さんが小声で聞いてきた。

 

「……なんで?」

「いや、なんとなく! 駿河さん、飯田くんのこと評価してるっぽかったから」

「バレた? ……まあ、あんなに不器用で真っ直ぐな『ヒーロー』は、他になかなかいないでしょ。入試の時、私が麗日さんたちを助けたみたいになってるけど、本当は誰よりも先にあの場で助けに動いてたの飯田くんなんだよ。それを見て私も『助けなきゃ』『負けてられない』って思ったから動けたんだ。本当にかっこいいよ彼は」

 

 私は窓の外を見ながら答えた。

 窓に反射して見える麗日さんの顔はいつにも増してニコニコしている。

 なんか恥ずかしいなこれ。

 すると、少し離れた席からカエルっぽい独特の声が響いた。

 

「ねえ緑谷ちゃん。私、思ったこと何でも言っちゃう性格なんだけど」

「! 蛙吹さん、なに?」

「『個性がオールマイトに似てる』」

「えっ!!??」

 

 梅雨ちゃんの爆弾発言に、緑谷くんが挙動不審になる。

 そこへ、切島くんが「いやいや」と割って入った。

 

「似てるっつーか、オールマイトは怪我しねーだろ。似て非なるアレだぜ。でもいいよなぁ、増強型はシンプルに派手で! 俺の硬化なんて対人じゃ強いけど地味だぜ」

「派手で強えっつったら、やっぱり轟と爆豪、あと駿河だろ」

 

 上鳴くんがこちらを指差す。

 

「え、私?」

 

「だってよー、昨日の訓練見たけど、あのウェイトつけて飯田と張り合うとかバケモンだろ。完全にプロ向きだと思うぜ?」

 

「そうね。天馬ちゃんの個性は、ただ速いだけじゃなくて『頑丈』よね。それに個性把握テストの50m走の時もまるでスタートの合図を分っているみたいだったわ。何かコツでもあるのかしら」

 

「そーなのか?よく見てんなぁ梅雨ちゃんは!まぁでもそーいうの含めて、駿河はすげぇよな。昨日の戦闘訓練見ててよ、俺勝てるイメージ湧かなかったもん……」

 

 上鳴くんの言葉を受けて梅雨ちゃんが、あごに指を当ててじっと私を見た。その大きな瞳に見つめられると、心の中まで見透かされそうでドキッとする。

 

「飯田ちゃんのあの加速(レシプロバースト)をまともに食らって吹っ飛ばされたのに、天馬ちゃん、ピンピンしてたじゃない」

「うっ」

「普通なら骨折してもおかしくない衝撃だったわ。それを瞬時の判断で受け流したのか、元々体が頑丈なのか……。なんだか、個性を使っているというより、生き物としての『格』が違う感じがしたわケロ」

 

「あ、あはは……まあ、走るには筋肉が必要だし? 馬並みに頑丈ってことで!」

 

 私はしどろもどろな愛想笑いを浮かべて誤魔化した。

 鋭い。鋭すぎるよ梅雨ちゃん。

 スキルは使っていなくても、ウマ娘としての基礎身体能力は隠しきれないらしい。

 

 ふと視線を感じて前を見ると、バスのバックミラー越しに相澤先生と目が合った。

 先生は何も言わなかった。疑うような目でもない。

 ただ、静かで重い視線だった。

 ……少しだけ居心地が悪い。

 

「へっ何が格だ。テメェは俺がそのうちぶっ潰してやる」

「一体その『そのうち』はいつ来るんだろうね?爆豪くん」

「爆豪さ、この付き合いの浅さで糞を下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」

「テメェのボキャブラリーはなんだコラ殺すぞ!!」

(かっちゃんがイジられてる…!!信じられない光景だ。さすが雄英…!)

 

「……もうすぐ着くぞ。いい加減静かにしろ」

 

 先生の言葉でバスが止まる。

 目の前に現れたのは巨大なドーム状の施設。救助訓練施設らしい。

     *

 中に入ると、水難救助や火災救助などが想定されたエリアが所狭しと広がっている。

 まるで『USJ(ユニバーサル・スタジオ・〇ャパン)』だ。

 新しい施設に来て高揚しているA組を、この施設の主であるスペースヒーロー『13号』先生が出迎えてくれた。

 

 13号先生がこの施設の説明をするが、この施設は正式名称は『ウソの・災害や・事故ルーム(USJ)』なのだという。いいのかよ、それ。

 オールマイトがまだ来ていないことに相澤先生が不機嫌そうにする中、13号先生による「個性の危険性」についての講和が始まる。

 

 ――個性が、人を救う力にも、殺める力にもなる。

 ナガンさんの悲しげな瞳が、一瞬だけ脳裏をよぎった。

 

 しかし。

 その講話が終わり、訓練が始まろうとしたその瞬間。

 

 ――ザワッ、と。

 私の『馬の本能』が、全身の毛を逆立たせた。

 食堂の時のパニックとは違う。

 もっと冷たくて、粘り気のある、純粋な「悪意」。

 

 広場の中央、噴水の前。

 空間が歪み、不気味な黒い「霧」が広がっていく。

 

「……っ、何……!?」

 

 相澤先生がいち早く気づき、ゴーグルを装着した。

 

「一塊になって動くな!! 13号、生徒を守れ!!」

「え? 入試みたいにもう始まってるパターン……?」

「動くな! あいつらは――」

 

 霧の中から現れたのは、無数の異形たち。

 そして、その中心に立つ、全身に「手」を纏った男。

 

「――、『(ヴィラン)』だ」

 

 相澤先生の鋭い声が響く。

 平和な日常が、音を立てて崩れ去った瞬間だった。

*1
4列シート

*2
縦横混合シート




天馬(……げっ、目が合った。相澤先生、めっちゃ見てくるじゃん。なんだろ、今の梅雨ちゃんの発言でまた疑われた?それとも『50kgじゃ軽すぎたか。次は100kgだな』とか考えてる?うわぁぁ……その静かな目が一番怖いんですけど!胃が痛い……!)
相澤(……蛙吹の言う通りだ。『格』が違う。そう評されるのも無理はない。飯田のレシプロを受けて無傷なタフネス。『馬』の個性とは別の理屈で動く体。やはりお前は、俺の常識の外にいる存在だ。――だが、もう迷わん。お前が何者だろうと、ヒーローの見込みはあると俺は判断した。覚悟しておけよ、駿河)

天馬「……ねえ、なんか先生の視線、熱くない?」
梅雨「愛の鞭じゃないかしら、ケロ」
天馬「重いよ!!」

続く?
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