個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。


No.11

「動くな! あいつらは――『(ヴィラン)』だ」

 

「13号にイレイザーヘッドですか…先日いただいたカリキュラムではオールマイトがここにいるはずですが…」

「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」

「どこだよ…せっかくこんなに大勢引きつれて来たのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて、子供を殺せば来るのかな?」 

 

 先日のマスコミ侵入騒動はどうやらこいつらのせいのようだ

 

(ヴィラン)ン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込むなんてアホすぎるぞ!」

「先生侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが…!」

「ここだけか学校全体か…なんにせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことできる『()()』がいるってことだな」

 

 A組の成績上位者が状況を分析する中、13号先生と上鳴くんに的確に指示を出し臨戦態勢に移る相澤先生。

 

「先生は一人で戦うんですか?あの数じゃいくら『個性』を消すって言っても…!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛で正面戦闘は…」

 

 相澤先生を心配する緑谷に対して、「一芸だけじゃヒーローは務まらん…13号!任せたぞ」そう言って相澤先生が飛び出した。

 

 多勢に無勢。無謀に見えるその突撃はしかし、洗練された「合理」の塊だった。

 捕縛布で敵を絡め取り、個性を消し、無防備になった懐に打撃を叩き込む。

 

「すっげ……」

「あれが、イレイザーヘッド……!」

 

 クラスメイトたちが息を呑む。私も、その動きに目を奪われていた。

 無駄がない。私の「走り」とは違う、戦闘に特化したプロの動き。

 だが、感心している場合じゃない。

 

「はやく避難しましょう!」

 

 13号先生の指示が飛ぶ。私たちは出口へと走るが、それを黒い霧が遮った。

 

「初めまして、我々はヴィラン連合。僭越ながら……」

 

 黒霧と名乗るヴィランが、オールマイトの不在を嘆き、私たちを殺すと宣言する。

 その瞬間、私の横から二つの影が飛び出した。

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

 

 爆豪くんと切島くんだ。爆破と硬化の奇襲。

 しかし、それは霧のような敵には通じない。

 

「危ない危ない…そう、生徒といえど優秀な金の卵」

 

「ダメだどきなさい!二人とも!」

 黒霧が何かをしようとしているのを察知した13号先生が叫び二人を止めるが時すでに遅し。

 黒い霧が広がり、視界が闇に覆われる。

 

「散らして、嬲り、殺す!」

 

 浮遊感。

 次の瞬間、私は空中に放り出されていた。

 

     *

 

「うおっ!?」

「チッ!」

 

 眼下には、廃墟のようなビル群。倒壊ゾーンだ。

 そして、その隙間を埋め尽くすように、数えきれないほどのヴィランたちがこちらを見上げていた。

 

「おいおい、ガキが降ってきたぞ!」

「殺れ! ヒーローの卵だ!!」

 

 着地と同時に、殺気立った大人たちが襲い掛かってくる。

 切島くんが硬化で防御し、爆豪くんが掌を向ける。

 

 でも。――それより速く、私が動いた。

 

「……邪魔」

 

 ドォンッ!!

 

 踏み込み一発。

 コンクリートの地面がクレーターのように陥没し、私は砲弾となって敵のど真ん中を突き抜けた。

 すれ違いざまに蹴り、殴り、吹き飛ばす。

 今日は訓練用のウェイトなんてつけていない。私の体は、羽のように軽い。

 

「ぐあぁぁッ!?」

「な、なんだコイツ速すぎ……!」

 

 一瞬で5人が宙を舞った。

 爆豪くんが目を剥いてこちらを見る。

 

「あァ!? テメェ……俺の獲物横取りすんじゃねぇ!!てかなんでオレと同じとこ来てんだ殺すぞ!」

「知らないよ!それに早い者勝ちでしょ、爆豪くん。……そうだ、ねえ、競争しない? どっちが早くここを掃除できるか」

 

 私はニヤリと笑って挑発した。

 爆豪くんの顔に青筋が浮かび、凶悪な笑みが広がる。

 

「上等だオラァ!! 負けた方は一生パシリな!!」

「乗った!」

 

「えええ……この状況で競争!? お前ら肝座りすぎだろ……!」

 

 切島くんが頭を抱える横で、私たちの「掃除」が始まった。

 数は多いが、個々の質は低い。ただの烏合の衆だ。

 

「死ねェ!!」

 

 爆豪くんが爆風で敵を吹き飛ばす。

 私は壁を蹴り、天井を走り、三次元的な機動で敵を翻弄する。

 

「おらよっ!」

 

 回し蹴りで一人を壁にめり込ませる。

 その時、背後からわずかな違和感を感じた。

 姿は見えない。だが――

 

(それで隠れてるつもり?)

 

 私の頭上の「耳」がピクリと動く。

 風の音、衣擦れの音、そして心臓の鼓動。

 右後方、4時の方向!

 

「そこッ!!」

「な、なんでわかっ――!?」

 

 空間に向かって後ろ回し蹴りを放つと、何もない空間から呻き声と共にカメレオンのようなヴィランが弾き出された。

 透明化の個性か。

 

「残念。私の耳からは逃げられないよ」

「オラァッ!!」

 

 吹き飛んだカメレオンに、追撃の爆破が直撃する。

 爆豪くんだ。

 

「チッ、見えねえ敵とかウザってえんだよ! もう少しましなパスしろ馬女!」

「パスじゃないし! 私の獲物取らないでよ!」

「うるせェ! 俺がとどめ刺しただろうが!!」

 

 言い合いながらも、体は止まらない。

 切島くんも「男らしくねぇ不意打ちは許さねぇ!」と硬化で暴れまわっている。

 数分も経たずして、倒壊ゾーンのヴィランは全滅していた。

 

     *

 

「……ふぅ。雑魚ばっかり。私30人、爆豪くんは?」

「勝った!オレは31人だ!一生パシリとして扱き使ってやるぜ!」

「ひどい!か弱い乙女に『扱き使ってやる』なんて。きっと人には言えないあんな事やこんなことを要求してくるにきまってるわ!」

「しねぇわ!クソが!」

 

 私がアホを煽っていると、切島くんが心配そうに広場の方角を見た。

 

「ここを片付けたのはいいけどよ……広場、どうなってるかな。相澤先生、一人だろ?」

「そうだね…行こう。嫌な予感がする」

「急に落ち着いてんじゃねぇ!馬女ァ!」

 

 アホの喚き声とは別に私の『耳』が、広場からの異音を捉えていた。

 打撃音。骨が砕ける音。そして、楽しげな笑い声。

 

 私たちはビルを飛び出し、広場が見渡せる場所へと走った。

 そして、そこで見た光景に、全身の血が凍りついた。

 

 広場の中央。

 そこには、黒い異形の怪物――『脳無』と呼ばれるソレに組み敷かれ、片腕をありえない方向に折られた相澤先生の姿があった。

 地面に叩きつけられ、血まみれになった先生。

 その頭を、怪物が掴み上げ、さらに地面へ叩きつけようとしている。

 

「――ッ!!」

 

 頭の中で、何かがブチリと切れた。

 恐怖? いや、違う。

 あの人を。私のことを散々疑ってきて、やたらと勘の鋭いあの先生を。

 でも、それでも私たちを守ろうとしてくれている人を。

 あんなオモチャのように扱うなんて。

 

「…一名逃げられました」

「は?はあー…黒霧おまえ、おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ…さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない、あーあ…今回はゲームオーバーだ」

 

 私の馬の耳が捉えたその言葉に血が沸き上がるのを感じる。

 

「ゲーム…オーバー?……ふざ、けるなッ!!」

 

 しかし沸き上がった血はすぐに熱さを忘れさせる光景が目の前に広がる。

 

「けどもその前に平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」

 

 全身に手をつけた男――死柄木が、梅雨ちゃんに手を伸ばしていた。

 

 私は地面を蹴った。

 爆豪くんと切島くんが反応するよりも速く。とっさだった。

 

 絶体絶命。しかし

 

「本っ当にかっこいいぜ…イレイザーヘッド」

 

 相澤先生が死柄木と呼ばれる男の個性を抹消していた。

 先生が作ったその隙間。一瞬の空白に、私は滑り込んだ。

 

「その汚い手を、梅雨ちゃんから離しなさいよォォォッ!!」

 

 ドゴォォォォン!!

 

 助走を乗せた全力の飛び蹴り。そしてこれはたまたまだが、緑谷くんのパンチが同時に死柄木と呼ばれる男に放たれた。

 しかし――妙な感触だけが脚に残る。

 

「……硬っ!?」

 

 脳無は自身を盾に死柄木を守る。

 蹴った感触が気持ち悪い。まるで分厚いゴムの塊を蹴ったようだ。

 脳無はわずかに後退しただけで、平然と立っていた。

 

「……『ショック吸収』だぜ。無駄だよ」

 

 死柄木が自慢するように言う。

 直後、脳無の巨大な腕が裏拳で迫った。

 速い。風圧だけで肌が切れる。

 私は腕をクロスさせてガードするが、あまりの重量に体が浮いた。

 

「ぐぅッ……!」

 

 吹き飛ばされ、数メートル後ろに着地する。

 腕が痺れている。

 パワー負け。相性が悪い。

 

「駿河さん!?」

「緑谷くん、下がって!」

 

 私は先生の前に立ちはだかり、脳無を睨みつける。

 今の蹴りが通じないなら、スピードで撹乱するか?

 いや、後ろには動けない先生がいる。私が避ければ先生が死ぬ。

 なら――真正面から、アイツを止めるしかない。

 

「力比べがしたいなら、相手になってやる……!」

 

 私は深く息を吸い込み、自身の奥底にあるシステムにアクセスした。

 求めるのは、誰にも負けないド根性。日本総大将の底力。

 

 ――力を貸して、『スペちゃん』!!

 

『――いっけぇぇぇぇ!!!』

 

 私の体がまばゆい光に包まれる。

 黒いライダースーツが光の粒子となって弾け飛び、現れたのは白と紫を基調とした、フリルのついた勝負服。

 腰には蹄鉄のチャーム。右耳には紫のリボン。

 

 【継承:スペシャルウィーク】

 

「なっ、着替えた!?」

 

 追いついてきた切島くんが素っ頓狂な声を上げる。

 

「へぇ……お前、魔法少女か何かか? チートキャラは嫌いなんだよね」

 

 死柄木が首をガリガリと掻きながら、不快そうに私を見た。

 

「殺せ、脳無」

 

 怪物が吠え、地面を砕いて突っ込んでくる。

 私は一歩も引かず、拳を握りしめた。

 真正面から殴り合う。

 

 ドォォン!!

 

 衝撃波が広がる。パワーでは正直負けている。

 でも相澤先生を守らないといけない。

 ここから先は一歩も進ませない、痛いけど、耐えて耐えて耐えてやる!粘り強さじゃ、負けない!

 

 私は一歩も引かず、脳無をジリジリと押し込んでいく。  しかし。

 

「へぇ……脳無とパワー勝負ができるのか。お前、ほんとに何?……まぁでも、ヒーロー志望ならこっちは見過ごせないだろ?」

 

 死柄木が悪辣にニタリと笑う。

 

 黒い霧が、私の背後――相澤先生の倒れている場所に開いた。

 そこから、死柄木の手がぬっと現れる。

 標的は、動けない相澤先生の顔面。

 

「っ!?」

 

 しまった――!

 

 脳無と組み合っている今の体勢では、間に合わない。

 スペシャルウィークの爆発力を持ってしても、このコンマ数秒の遅れは取り戻せない。

 

 先生が死ぬ。

 その絶望が脳裏をよぎった、その時だった。

 

 時が止まったような感覚。

 またここに来た。白亜のゲートが並ぶ、どこか懐かしい草原。

 そこで、誰かが私に語りかけてきた。

 

――静かな、鈴を転がすような声が、心に響いた。

 

『……前だけを見て』

『誰にも譲らない。……貴女だけの、景色を』

 

 ゲートが開くと同時に出てきた栗毛の髪を持つ少女。私と同じ耳と尻尾。

 凛とした瞳は先頭の景色のみを捉え、静かに私に語り掛け前を走る。

 

「……うん、行くよ」

 

 私は迷わず、その後を追った。

 総大将の力が霧散し、代わりに、極限まで研ぎ澄まされた「速さ」の概念が全身を駆け巡る。

 

 【継承:サイレンススズカ】

 

 緑と白の勝負服へ換装した瞬間、私は思考するよりも速くスキルを発動させていた。

 出遅れなど許されない。ゲートが開いた瞬間に、トップスピードへ到達するための集中力。

 

 【レアスキル発動:『集中力』→『コンセントレーション』】

 【効果:スタートが得意になり出遅れる時間が少なくなる】

 

 世界が、スローモーションに変わった。

 死柄木の指が、先生の肌に触れるまで、あと数センチ。

 脳無の拳が、私の目の前にある。

 その全てが、止まって見える。

 

(――そこが、私の場所だ!!)

 

 【スキル『ロケットスタート』のヒントLvが3上がった】

 【スキル『ロケットスタート』を獲得した】

 【レアスキル発動:『ロケットスタート』】

 【効果:スタート時に加速力が上がる】

 

 新たな私のスキルが、私の脚に更なる力を注ぎ込む。

 レース後半、誰よりも前へ。誰にも影を踏ませない、異次元の逃亡劇。

 

【固有スキル発動:『先頭の景色は譲らない…!』】

【効果:最終直線で差を付けて先頭にいるとさらなる脚を使って、速度を上げる】

 

 ザンッ!!

 

 音すら置き去りにする加速。

 脳無の拘束をすり抜けたのではない。脳無が私を認識する前に、私はもうそこにいなかった。

 私は相澤先生の元へと「ワープ」と思える速さで接近し、向かい襟首を掴みその場から離脱していた。

 

「……は? 速すぎて、見えなかったぞ……バグかよ……」

 

 黒霧のワープゲートから死柄木が手を引き抜きながら、呆けた声を出す。

 数メートル離れた場所に、私は先生を抱えて着地した。

 緑と白の勝負服が、風になびいている。

 

「……あぶなかった」

 

 私が呟くと同時に、遅れて衝撃波と突風が巻き起こった。

 まさに、異次元の逃亡者。

 

「……駿河、か……?」

 

 薄目を開けた相澤先生が、掠れた声で私を見る。

 私はニッと笑って、先生を安全な場所へ寝かせた。

 

「安心してください、先生。……あんな鈍足じゃ、私の『背中』も見えませんよ」

 

 その言葉は、私自身の言葉であり、私の中にいる彼女の言葉でもあった。




スペちゃん「スズカさん!会いたかったです!」
スズカ「私もよスペちゃん!」
天馬「で、私が産まれたってわけ」

続く?
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